色情妖怪は賢者にスタイリッシュ転生したようです
気がつくと、僕は賢者になっていた。
以前は人間を困らせる悪い妖怪だった僕が、妖怪退治されてしまったまでは覚えている。
だがしかし、僕を退治した人間が曲者だった。
その人間は恐ろしい事に、悪い妖怪を良い妖怪に転生させる術を使えたのだ。
賢者と言うのは人間の中でも特別賢い奴の事だと思っていた。
だが僕は今、賢者に転生している。
何て事はない。人間より優れた能力を持つ妖怪が、人型に転生した存在が賢者だったのだ。
僕は色情妖怪だった。
一言で言えば、人間をエッチな気分にさせて困らせる妖怪だ。
だから賢者に転生しても僕はエッチな妖術しか取柄が無いし、他に何もできそうにない。
なのに、良い妖怪に転生したせいで人間を困らせたい気分もすっかり冷めてしまった。
これから何をして生きていけばいいのか、これが分からない。
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特にやる事もなく数年が過ぎた。
元より妖怪なので、人間と違って食べなくても生きられる。
けれど、それでは退屈なので人間たちの手伝いをしながら暮らしてきた。
少しずつ、少しずつ、人間の社会に溶け込む事に成功している。
人間との生活も中々興味深い。
特に人間同士の色恋沙汰が大好で、ついつい観察してしまう。
これも、元色情妖怪のサガか。
恋愛でも、両想いなはずなのに、何時までもお互いが思いを伝えられない状況はヤキモキしてしまう。
そういう時は決まって、片方は相手の事を待っていて、もう片方が相手に思いを伝える勇気がないのだ。
ふと、転生する前は、無差別に男女をエッチな気分にさせて遊んでいた事を思い出す。
その時は、浮気でドロドロの関係にはなっても、恋愛が停滞するなんて事はなかったのになあ。
────そうだ!
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「ハァハァ……今日は君の事が一段と可愛く見えて、、、もう我慢できない! 好きだユッコ!」
「いいよ、待ってたんだからッ!」
まったく上手く行くものだ。
賢者になったところで、僕には何もできないと思っていたのに。
まさか、エッチな妖術が役立つなんて。
僕の周りでカップルが次々と誕生するので、僕が恋愛のパワースポットなんて噂が流れ始める。
次第に噂は曲解して「僕に恋愛相談をすると上手く行く」と言われるようになった。
おかげで僕は『愛の賢者』と呼ばれ、毎日恋愛相談を受けている。
転生前のエッチな知識と妖術をフル活用しながら、今日も僕は良い妖怪として活躍している。