表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者レギオン  作者: 塩幸参止
35/41

第六章 悪意ある遺物・その2

 その日の深夜、俺はヒジリのオートマトンに揺り動かされて目を覚ました。身体を起こして、隣で寝ているミレイユを見る。


 ありがたいことに、ミレイユは布団のなかで静かに寝息を立てていた。起きられても面倒だし、ここは気配を消しておくか。


「きたよ。『レギオン』からの回線で。勝負したいって」


 気配を消した俺にむかって、ヒジリが小声で言ってきた。


「なんて言ってた?」


 同じく、俺も声を落として訊いた。


「いまからこいだって。ひとりで」


「場所は?」


「あの学校でいいって。たぶん、霧島を誘きだして、その隙にミレイユを誘拐するつもりだろうね」


「おまえもそう思うか」


 とは言うものの、ここで行動しないわけにもいかない。あえて釣られる手しかなかった。


「ファリーナのことは、何か言ってるか?」


「おとなしくひとりできたら返してやるって」


「やっぱり、そういうことを言ってくるか」


 俺は立ちあがった。ヒジリが見あげる。


「行くの?」


「行くしかないだろう」


 俺はタンスの上に置いていたスマホを手にとった。ヒジリに渡す。


「いまからでいいから、宮古にメールをして呼びだしてくれ。朝までミレイユと一緒にいてくれれば、それでいい」


 言って、俺は寝ているミレイユのそばに転がっている剣を拾いあげた。


「じゃ、行ってくる」


「え」


 ヒジリのオートマトンが心配そうな顔をした。自分の手にはまっている指輪――本体を指さす。


「僕は行かなくていいの?」


「最初から剣を持って行くんだ。召喚する必要がないんだから、AIジュエルは必要ないだろう」


「それは、そうだけど」


「いままでありがとうな」


 俺はヒジリの頭をなでた。ヒジリが困った顔で俺を見あげる。


「それは死亡フラグだよ」


「そんなもの、俺は信用してないんでな」


 笑って言い、俺は玄関に立った。


「ここで静かに待ってろよ」


 言ってから靴を履きかけ、俺は、もうひとつ言わなくてはならないことを思いだした。振りむく。


「もし、明日になっても俺が帰ってこなかったら、おまえがミレイユの護衛をしろ。俺の跡を継げ」


「え」


「もうファリーナと喧嘩はするなよ」


「そんなのって」


「いいか、これは命令だ」


 声を押し殺しながらも強く言い、俺は背をむけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ