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勇者レギオン  作者: 塩幸参止
13/41

第二章 魔族来襲・その4

      2




「せいやあ!」


 危険だとささやく本能に呼応し、俺は無意識に気合いを発していた。同時に硬質な金属を打ち合わせる甲高い音が俺の前で響く。俺の振った剣が敵の攻撃の何かを跳ね返したか、あるいは切り飛ばしたらしい。どういう攻撃がきたのかは俺にも見当がつかなかった。ほとんど条件反射の動きだったからな。


「ふむ。どこの何者かは知らんが、不意打ちに反応できるほどの力量はあるようだな」


 霧の彼方から声が聞こえた。声に記憶はない。前方に集中しながら、俺は左右に目をやった。アスファルトではなく、土と化した地面に光るものが落ちている。半分に切れた五百円玉だった。 


「ということは、指弾術か」


 異世界大戦で敗北してから学習したのか、最近は魔族のなかにも、ただの力任せではなく、人間の使う戦闘技術を模倣する輩が現れだしたとは聞いていたが。俺が反射で切り捨てたのは、中国武術の応用だったらしい。


 それにしても、魔力と技術の総合格闘法とはな。昨日の、本能に任せて襲いかかるヘルハウンドとはレベルが違うようだ。


「それはいいけど、もったいねーことする奴だな」


 五百円だぞ? 牛丼屋で食事をして釣りがくる。金に苦労してない野郎は好きじゃない。正当防衛を理由に、本物の妖魔退治の技でやっちまうか。いや、どうせやったって金にならないから、眠らせるだけで終わらせちまおう。無駄な抵抗をしてきたら俺も剣に念を込めるかもしれないが。


「いけません!」


 俺が構えたら背後からミレイユが声をかけてきた。まだわかってないらしい。ヒジリが腕を押さえてくれているおかげで助かった。あらためて剣を前方にむける。白い霧をかき分け、黒い服を着た奴が姿をあらわした。


 額に生える一対の角は、そいつが魔族であることを証明していた。ということは、やっぱり俺に用があるってことか。


「何者だてめえは?」


「おれはドゾと名乗っている」


「すんなり答えるんだな」


「誰に殺されたのか知らなくては浮かばれんだろう?」


 言いながら、すうっとドゾが右手を伸ばした。握られていた銀色の輝き。やばい! 俺は勘に任せて剣を振った。甲高い金属音が響き、俺の顔の横を軽い風が吹き抜ける。半分に切った指弾がかすったらしい。いまのはあぶなかったと心の片隅で思いながら俺は駆けた。剣が届く間合いまで近づき、力任せに剣を振る。


「なるほど。ただの指弾術では通用しないわけか」


 というドゾの声は俺の横で聞こえた! 顔をむけると、五メートルほど離れた場所にドゾが立っている。確かに斬ったと思ったんだが。高速移動? いや、これは瞬間移動か。俺は残像か幻覚に襲いかかったらしい。指弾は後天的な技で、こっちがこいつの生まれついての能力だな。とりあえず、俺はドゾにむかって剣を構えなおした。


 ドゾの眉が寄った。


「なんだその構えは? ふざけているのか?」


「あいにくと大真面目なんでね」


「そうか。では死ね」


 言うと同時に、ドゾの全身から魔力が膨れあがった。――こりゃ、核シェルターの強化コンクリート防壁でも貫通するレベルだぞ。こいつ、中級魔族か、それ以上だな。その魔力が一瞬で右手の五百円に宿る。何をする気か想像はついた。魔力指弾で俺の剣をへし折る気らしい。俺はタイミングを計った。ドゾの右手に集中する――


“起こり”が見えた!


「せいやあ!」


 俺は剣を振った。勘もいいところだが、これが功を奏したようである。はじけるような音が響き、直後、指弾を撃ったドゾの身体がのけぞった。


 胸から噴きあがる鮮血は人間と同じ赤だった。もっとも、これで倒れもしないところは、さすが魔族と言っておこうか。


「貴様――」


 胸を押さえながら、ドゾが驚愕の表情で俺を見た。


「どうしてだ?」


「ピッチャー返しははじめての経験だったか?」


 俺は剣を峰打ちに構えながら答えた。普通に切ったら指弾を両断するだけである。峰打ちなら跳ね返せるかと思ったんだが、うまく行ったらしい。


 ドゾは、相変わらず、険悪な形相で俺をにらみつけていた。


「そうではない。なぜ、その剣が折れないのかと訊いている」


「そこまで親切に答える筋合いはねーなー」


 俺は剣を峰打ちではなく、普通に構えなおしながらドゾへ間合いを詰めた。あのレベルの魔力を一瞬で指弾に込める手腕も大したものだったが、今回は相手が悪かったと思ってもらおう。

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