翌朝
たかひろくんにマンツーマンで勉強を教えたことで私は面倒見のいい姉になれたのだろうか。
たかひろくんとの勉強時間を終えて、夕食とお風呂も済ませ、自分の勉強も終わった。
あとは寝るだけという時間だ。
私は寝る前に今日の出来事を振り返りつつ、少し悩んでいた。
「いつか本当の自分の気持ちと向き合う時がくるかもしれない。」
本当の自分の気持ち。
たかひろくんが義理の弟であることが色々な意味で私を戸惑わせてる。
寝る前に1日の出来事を振り返るのは私には結構ある。
でも普段なら「今日は楽しかったな」とか「今日は疲れたな」とか、そんな程度に軽く振り返るだけだ。
今日はたかひろくんのことしか思い浮かばない。
自分の頭の中のほとんどが彼のことでいっぱいになっている。
それがなんだか嬉しいような切ないような、後ろめたいような、複雑な感じだ。
寝る前にそんなことを考えてしまうのは不思議だ。
だけど、今の私は新しい家族をまずは受け入れていきたい。
心のどこかにモヤモヤっとした想いがあったとしてもだ。
今すぐに義理の弟を「弟」だと割り切ることも出来ないし、たかひろくんへの淡い気持ちをハッキリさせることも出来ない。
だから、私はなりゆきに任せるしかない。
そう思って、今日はとりあえず何も考えずに寝ることにした。
そして、翌朝となり、私は目覚まし時計のアラームを止めて、ゆっくりと体を起こした。
何となく軽やかな朝だった。
たぶん、その理由は、たかひろくんとコミュニケーションをとりやすくなったからだと思う。
一緒に朝食を食べて、一緒に学校に行く。
そのことを想像するだけで今日という日が楽しくなる予感がする。
何故楽しいのかは分からないし、それを考える必要も無いのだろう。
昨日と同じ朝が続げは良いと思う。
私は無意識に普段より入念に髪をブラッシングしたり身なりを整えていた。
たかひろくんから「きれいだ」と言われたのが影響した行動なのだろうか。
朝の食卓に向かうだけなのに、妙に意識してしまう。
もしかしたら、昨日と同じ朝のようだけど、私には昨日までとは違う特別な朝なのかもしれない。
そんなことを思いながら私は食卓に向かった。