理想の男の子
「僕ね、お姉ちゃん好きだよ。」
「それって、どういうこと?」
今日はたかひろくんと良い感じで過ごしていたのに、私はビックリし過ぎて冷たく問いただしてしまった。
やはり私は男の子への苦手意識が強すぎて、上手く対応出来ないようだ。
でも、今日の流れから考えると、彼特有の素直さや無邪気さから出た言葉なのだろう。
「だって、お姉ちゃんは優しいし、勉強教えてくれるって言うから。」
彼は照れることもなく、穏やかな笑みを浮かべていた。
私は自意識過剰だったのだろうか。
「お姉ちゃんなんだから当たり前よ。」
私は気持ちを切り替えてニッコリしながら彼に言った。
正直なところ、男の子への苦手意識だけではなく、恋愛感情を含めた「好き」だったらどうしようという戸惑いはあった。
それも含めて私は自意識過剰だったのかもしれない。
「僕、ずっと一人っ子だったし。お姉ちゃんが優しくしてくれるのが嬉しいんだ。」
彼は嬉しそうに話していたが、どこか悲しげで寂しそうな表情だった。
「お母さんはいつも優しかったけど、それでもね、家に僕一人で居る時間もあってさ。それが寂しくって。」
「だから新しい家族が出来るって聞いて嬉しかったんだ。」
「そっか。でも、それはお姉ちゃんも同じかもしれない。だから、私も嬉しいよ。たかひろくんが弟になってくれて嬉しいよ。」
「最初はぎこちなかったけど、もうこれからはさ、遠慮なく仲良くやってこうよ。お姉ちゃんを頼ったり甘えてもいいからさ。」
私も心の奥に隠してた気持ちを彼に言った。
きっと彼も今まで言えなかった気持ちを言ってくれたのだろう。
私は彼を抱きしめて髪をなでなでしたくなった。
でも、それを今やってしまうと自分の中にある感情が全て爆発しそうで怖かった。
私は彼の肩を軽く優しく叩いて、
「じゃあ、お勉強を始めようか。」と言った。
「うん、ありがとう。」
彼も優しく微笑んだ。
私は「お勉強を始めようか」と言ったあとに、変な妄想をしてしまった。
でも、彼が変なことを思うはずないので、そんな自分が恥ずかしくなった。
どうやら私は男の子が苦手な一方で、理想の男の子を探してるのかもしれない。
そして、それが今目の前にいる弟であることを自覚してしまい、猛烈にドキドキした。
彼の隣に座って、まずは数学の勉強から始めた。
しばらくは彼の学力を把握しようと思って黙って見ていた。
2分くらい悩み始めたので、そろそろ解き方を教えようとした時だった。
彼と私の指先が触れてしまった。