表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

弟との出会い

ひとりっ子として16年間生きてきた。

お父さんと2人で10年間生きてきた。

この日々にすっかり慣れた私には心配事はなかった。

お父さんはいつだって優しいし、亡くなったお母さんの代わりに家事をやるのも苦ではなかった。

お父さんも仕事が忙しい中、わりと家事をやってくれる。たまに悔しいくらいお父さんは家事が上手で女子力が妙に高い。

そんなお父さんが大好きで尊敬してるけど、もしも私がこの家を出て行くことになったらどうなるんだろうか。家事は大丈夫そうだけど寂しくないのかな。

今のところ私はまだ高校生だし、学生の間は家にいるだろう。近い将来のことだろうけど、もしお父さんと離れて暮らすようになったらきっとお互いに寂しい。

私は高杉あかね16歳。とても平凡な私の今の悩みはそれだけだ。



お母さんが亡くなった悲しみも消えてはいない。でも私はお父さんと2人で過ごす日々も楽しい。

お父さんは優しいしカッコいいし、きっとモテるんだろうなと。そんな想像もしてる。

つまり自慢の父なのである。


そんな自慢の父から衝撃の話を聞くことになるのだ。


「あかね。父さんは再婚する。新しいお母さんとも仲良くやってくれ。」

正直その話にはビックリした。

でも、お父さんがモテそうなことは普段から想像していたし、再婚してお父さんが幸せならそれでいいと思った。

それに、お父さんが最近悩んでることはなんとなく感じていた。たぶん再婚のことで悩んでいたのだろう。

悩むということは亡くなったお母さんのことを気にしていたり、私と上手くやっていけるかどうか考えていたのだろう。

私に再婚の話をする時も苦しそうな顔をしていた。

だから私は笑顔で「いいよ。新しいお母さんと仲良くするよ。」と答えた。


その2日後、早速お父さんが再婚する女性を私に紹介してくれた。どこか雰囲気や顔がお母さんに似ている。なるほどなぁ、永遠のサヨナラをしたお母さんは大事な存在だけど、新しいお母さんも受け入れやすい気がした。

新しいお母さんは山口真美さんという人だ。「あかねです。よろしくお願いします。」と挨拶したら、「礼儀正しい子なのね。でも、丁寧な言葉遣いは今月いっぱいにしたいわね。」と真美さんは優しく微笑んだ。

「すいません。」と咄嗟に答えたら、お父さんと一緒にくすくすと笑っていた。

うちのお父さん(高杉三郎)と真美さんは本当に仲が良さそうだ。

「まぁ無理せずゆっくりやろうや」とお父さんは私の肩をポンと軽く叩いた。

「あかねちゃんの礼儀正しさは好きよ」と真美さんは自然な笑みで語りかけてきた。

急には無理かもしれないけど、なんとなく私は新しい家族としてやっていけそうな予感がしていた。直感的に私と真美さん(新しいお母さん)は相性が良さそうな気がした。

そう、私とお父さんと真美さんは合う。その予感は間違っていないだろう。


しかし、次の瞬間、ちょっと驚く話が出てきた。

「それでね、あかねちゃん」

「なんでしょうか真美さん。いえ、お母さん」

「あら早速お母さんと呼んでくれるのね。ありがとう。」

「あ、まぁ、その。慣れておかないと…」私は照れたような気まずそうな笑みを浮かべた。

「あかねちゃんは弟や妹が欲しいと思ったことはある?」

「う〜ん、ずっとひとりっ子で育ってきたので、わかんないですね。想像したことないなぁ。」

「例えば弟がいたらどう?仲良く出来るかしら?」

「どうだろうなぁ。いたらいたで仲良くすると思いますよ。」

私は頭の片隅で次の言葉を予想していたが、やはり予想通りだった。

「私ねぇ、中学生の息子がいるのね。だから、早い話あかねちゃんの新しい弟になるわ。仲良くしてほしいな。」

「え?マジですか?」

「あれ?三郎さんから聞いてなかったかしら?」

「ちょっと!お父さん!」

お父さんは気まずそうに「あ、いやぁ、まぁ、そのアレだ。急にたくさんのこと言うと混乱するかなって」

「うーん。わかりました。仲良くします。」

私はもうなるようになれという気持ちで開き直っていた。どのみち家族として再スタートするのだ。3人でも4人でもいい。

「今日は来てないんですか?」

「実はあと5分くらいしたらここに来るわ」

「へー。そうなんですか。なんかドキドキする。」


そして約5分後にやって来たのは、少しあどけない感じの大人しい少年だった。

「弟」という存在は全く実感がわかないけど、私より背が低くて幼い感じだったので「そうか、弟だ。」と自然にそう思えた。私は考え方が単純なので弟や妹は自分より背が低くて見た目も幼いと決めつけていた。

その意味ではイメージ通りの弟だった。


孝宏たかひろ)です。えーと…」

たかひろくんはモジモジしていた。

モジモジしてる感じは可愛らしくて悪くない。私は頼もしい男の子も好きだが可愛い感じの男の子も好きだ。私は16歳なのに母性に目覚めそうになってしまった。

とりあえず反抗的な子ではなさそうなので安心した。

「たかひろくん、よろしくね。私はあかね。これから姉と弟だね。」私は出来るだけ笑顔で優しく答えた。

たかひろくんはまだモジモジしながら「お、お姉ちゃん、よろしく」とぎこちなく言った。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ