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あらやだ! コレあれやろアレ! なんやったっけ? そうや転生やろ! ~大阪のおばちゃん、平和な世の中目指して飴ちゃん無双やで!~  作者: 橋本洋一
第八章 魔法学校陰謀編

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あらやだ! 上級生の襲撃だわ!

 実は担任の先生が死ぬんは初めてやない。

 前世での人生の中で一人だけおったんや。

 中学三年生の担任で、バイク事故に遭うて死んでもうたんや。まだ四十代やった。

 物凄く人気のある先生やなかったけど、嫌われているわけやなかったから、葬式では泣く子が多かった。あたしも泣いてもうた。

 親のいないあたしを一人の生徒として差別無く接してくれたのは、振り返るとその先生だけやったな。

 確か名前は――楠木先生やった。顔もぼんやりと覚えとる。


「鈴木。お前の進路はお前が決めるもんだ。他人が決めるもんじゃない」


 楠木先生はそう言うて自主性を重んじてくれた。ぶっきらぼうやったけど、それでも優しい先生やった――





「ユーリ。何ぼうっとしているのよ?」


 ハッとして現実に戻る。目の前には呆れた顔のデリア。そして心配そうに見つめるイレーネちゃん。

 デリアの提案であたしたちは学校の図書室で勉強中やった。少しでも強うならんと思うてたから、デリアの強引な誘いは渡りに船やった。それに何かしとらんとクヌート先生のことを思い出してたまらんからな。


「ああ、なんでもあらへんよ?」

「もしかして、まだクヌート先生のことを考えてたの?」


 デリアの指摘は全然ちゃうけど、恩師のことという点では似たようなことやったから「そうやな」と否定せえへんかった。


「考えても無駄というわけじゃないけど、もう終わったことを考えるのは生産的とは思えないわよ」

「デリア。そんな言い方ないんじゃないですか?」

「いや。イレーネちゃん。ええで。デリアの言うとおりや」


 素直なあたしに疑問を持ったデリアは「もしかして犯人探しする気じゃないでしょうね?」と今度は鋭い指摘をした。


「あはは。そないなことはせえへんよ」

「逆にしないのは、あなたにしては奇妙だと思うけどね」

「それはどないな意味やねん」

「大陸を統一した平和の聖女らしからぬって言いたいのよ」


 するとイレーネちゃんも「そうですね。ユーリらしくないですね」と同調した。


「ユーリが真面目に授業を受けて、真面目に勉強しているのがおかしく思います」

「……真面目に授業を受けて、真面目に勉強することがクヌート先生への供養になるからな」


 誤魔化しではあらへんかった。むしろ本音やった。クラウスに調べることを禁じられてから、真面目に学校生活を送ることをしとるのは、そうやないとクヌート先生が報われへんと思うからや。


「……まあそれならそれでいいけど」


 デリアは少しだけ拗ねたようなことを言う。


「私の知るユーリなら、全てを投げ打って、担任の死を探ると思ったのだけれど。期待はずれのようね」


 そう言うてデリアは荷物を持って立ち上がった。あたしは「どこに行くねん」と訊ねた。


「もう図書室の終了時間よ。帰りましょう」


 窓を見ると、夕焼けになっとる。あたしは手早く片づけをする。イレーネちゃんも同じく整理をする。


「あ、イレーネちゃん。先帰とって。あたし、修練塔に寄ってから帰るわ」

「訓練ですか? 精が出ますね」

「いや。ランドルフたちが怪我しとったら治すためや。練習にもなるしな」


 そう言うて、二人と別れる。デリアは怪訝そうな目で見とるけど無視した。

 動かないで居て五日。そろそろランドルフたちに何らかの情報が入ったはずや。

 期待して図書室から外に出て修練塔に向かう。


 しかし道中は寒かった。日本でたとえると二月やからな。マフラーとかコートなどの防寒着は必須やった。

 だいたい寒いのは苦手やねん。暑いのも嫌いやけども。

 そないな益体のないことを考えていると――


「そこのお前。平和の聖女、ユーリだな」


 後ろから声をかけられた。振り向こうとしたけど、急に熱を感じたのでほとんど反射的に左に回避する。

 物凄い音を立てて目の前の木が勢いよく燃える――

 もしも直撃してたらと思うと、ゾッとする。


「な、なんやいきなり!?」


 後ろを見ると、そこにはどっかで見た黒いローブの上級生がおった。

 不良みたいに目つきの悪い生徒。明らかにこちらを敵視しとる。

 この子は確か――


「入学式でエーミールを虐めとった上級生やな」

「なんだ。俺のことを覚えていたのか」


 驚いた様子やけど態度や空気は変わらへん。明らかに殺すつもりや。


「女と戦う趣味はないけどな。悪いが死んでもらう」

「物騒やな。どうして殺されなあかんのや」

「簡単だ。お前は俺の夢を奪った」


 夢? あたしがこの子の夢を奪ったんやろか?


「アストとの戦争の機会を奪いやがって。おかげで偉くなることもできなくなった。戦争のために強くなったのに、徒労になったんだ!」


 ああ、そうか。この子は進んで人殺しになろうとしたんやな。


「だから貴様を殺す。まさか入学式に絡んだ女が平和の聖女だったとはな。裏ギルドに依頼した甲斐があったぜ」

「裏ギルド? なんやそれは?」

「お前が知る必要はない。ここで死ぬのだからな!」


 そう言うて魔法を行使する上級生。


「……名乗りもせず、後ろからの不意打ち。なるほどな」

「……? 何がなるほどなんだ?」


 あたしはびしっと指差した。


「あんたは卑怯者やな」


 挑発が効いたのか、何の躊躇もなく火の魔法を撃ってくる。

 しかし魔力を溜める時間が短いせいか、先ほどよりも威力は小さい。


「アクア・ショット!」


 あたしは横に走り出しながら水の魔法を撃った。火の魔法に直撃する。すると思うたとおり水蒸気のよる霧と煙が発生する。これで視界不良になるやろ。


「くっ。こしゃくな!」


 声のするほうへ走り出す。向こうはこっちが逃げるとばかり思うとるはずや。

 だからこそ、奇襲になる。


「うお!? お前――」

「遅いで」


 目の前に現れたあたしに驚く上級生。素早く袖と襟を掴んで、得意の一本背負いをした。


「ぐふ! あががっが!」

「まだ終わらんで! 腕挫十字固や!」


 いわゆるアームロックをかけると「いでえええ!」と悲鳴をあげる。


「くそ! なんだそれは!」

「もう二度とあたしに危害を加えんなら、解放してやるで」

「誰がそんなことを――」

「ならこのままへし折るだけや」


 冷たい声音で言うたら「ちくしょう。分かった。二度と関わらない……」と言うたから解放してやった。


「へ、平和の聖女は、暴力を嫌い、人の死を厭う、優しい女のはずじゃあ……」

「誰がそないなことを言うたんや?」

「そ、それは、裏ギルドの連中が……」

「あたしはそないに優しい人間ちゃうで。覚えとき」


 上級生はあたしをおそろしいと思うたのか、何も言えへんかった。


「さて。さっきも訊いたけど、裏ギルドってなんやねん?」

「……古都の裏社会のことだ。そこに行けばどんな情報も手に入る……」


 どんな情報も手に入る、か……


「なあ。裏ギルドってどこにあるんや?」

「それを知ってどうするんだ?」

「ちょっと調べてもらいたいことがあってな」


 ここで知りあったのも何かの縁や。裏ギルドちゅうのがはっきりと分からんけど、あたしの知りたいことはそこで知れるかもしれんな。


「案内せえや。そしたら許したるわ」

「……分かったよ。ちくしょう。こんななら別の方法で殺せば良かったぜ」


 ぶつぶつ言う上級生にあたしは「あんたの名前は?」と訊ねた。


「俺はオスカーだ。それ以外訊くな」

「愛想悪いなあ。まあええか。さあさっさと案内するんや」


 あたしの知りたいこと。それはもちろんクヌート先生の死や。

 まあ期待はしとらんけどな。

 それでも何か掴めるんちゃうかと思わなくもなかった。


 せやけど気づかへんかったんや。

 あたしとオスカーを見張るもんが居って、しかも後をつけているなんて。

 案外、あたしも鈍いんやな。

 油断ちゅうか学校内の事件やなのに、警戒せえへんのがそもそもおかしかったんや。

 いや学校自体が敵やなんて思ってもみなかった。

 何故なら、学校は生徒の味方やと、前世の思い込みで考えていたからや。

 ほんまに情けない。郊外訓練で分かっとるやろ?

 学校が何か隠しとる、もしくは画策しとることなんて。

 ほんま自分、あほうやな。


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