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あらやだ! コレあれやろアレ! なんやったっけ? そうや転生やろ! ~大阪のおばちゃん、平和な世の中目指して飴ちゃん無双やで!~  作者: 橋本洋一
第六章 戦争回避編

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あらやだ! アスト王に会うわ!

 無事特使に任命されたあたし。今すぐにでもアストに向かいたかったけど、出発まで五日を要した。その理由は貴族出身の文官や武官の反対が大きかったからや。その間、王城で軟禁されとった。おとんやおかん、エルザに会いたいなあと思うても叶わんかった。

 代わりにイレーネちゃんに手紙を出した。特使に任命されたこととアストに向かうこと。そして国が大きく変わることを記した。イデアル王国の早馬を使こうたから、すぐに届くやろ。

 そんで、行なわれた会議の内容やけど――


「歴史あるイデアルを、終わらせてよろしいのですか!?」

「子供の戯言を聞き入れるなど、正気ですか!?」

「王よ! もう一度考え直してください!」


 まあなんちゅうか、政権を返上するちゅう題目やけど、それでも降伏と変わりないんやから、自分たちの立場がどうなるか、分からんのも反対の理由やろうな。


「では、こうしようではないか」


 三日間の紛糾した会議の末、宰相であるゴットハルトさんが困憊した貴族たちの不安を取り除くようなまとめ方をしたんや。


「まず、イデアル王は彼の領地、天領を治める領主になっていただく。それ以外の領地は我々の元の治めるとおりにすること。また税率は政権返上する前のものにすること。貴族の爵位は政権を返上した後も変わらないこと。つまり我々の権限は変わらないようにすることをソクラに要求する。これでよろしいだろうか」


 これは上手いやり方やった。会議に次ぐ会議の結果、疲労で頭も精神も限界に来たときに貴族らが望むことを提案してきたんや。当然、反対するものは少数やった。

 その少数、唯一頑固に反対したのは、先代のイデアル王で元帥として活躍した老人とその一族やった。


「今まで流した血を無駄にするのか! 今までの戦いを無に帰すのか! 子供の言うことを真に受けて、それで良しとするのか!」


 気持ちは分からんでもないけど、それでもこれから流れる血が無駄にならんほうが百倍ええやろと思わんでもなかった。

 結局、イデアル王の「もう決定したことだ。文書も作成した」という鶴の一声で会議、後の世では『最も徒労であり、無駄であった、さりとて一滴の血も流さなかった会議』と評されたものは終わったんや。




 そして会議が終わって二日後。ようやくアストに向かうことができた。

 そこで思わぬ再会があった。


「久しぶりだな。俺を覚えているか?」

「ああ、久しぶりやな!」


 王座の間に呼ばれてきたら、そこにおったのはイデアル王と宰相と、その護衛。そしてラクマ山で出会った気のいいあんちゃん――ドランやった。

 筋肉隆々の身体。青い髪に白い鉢巻。真っ赤な服。王城やのに素足。相変わらずの野性味溢れるファッションや。


「どうしてここに? 護衛騎士やからイデアル王を護衛してるん?」

「違うな。お前たちを護衛するためだ」


 筋肉を見せびらかすようなポーズをとりながら、自慢げに話すドラン。


「へえ。ドランさんが一緒なら心強いわ。よろしゅうな」

「おう。任せておけ。ああ、それからさんはつけなくて良い。ドランで構わない」

「えっとユーリさん。紹介してくださいよ」


 面識のないクラウスが紹介を求めた。そして面識のあるデリアは顔を引きつらせておった。なんでやろ?


「あー、こちらは――」

「お前たち! イデアル王の御前であるぞ! 分を弁えよ!」


 武官らしき人が我慢ならなかったのか、無礼を指摘した。あたしたちは急いで跪いた。


「そうか。面識があるのなら話が早いな」


 イデアル王は愉快そうに言うた。なんや知らんけど、前に会うたときより元気がええな。


「護衛騎士、ドラン。そなたに命ずる。ユーリ、デリア・フォン・ヴォルモーデン、クラウスの三名を無事にアストまで護衛し、無事にプラトまで帰還させること。これをアダム・カイザー・イデアルの名において遵守せよ」

「ははっ。身命を賭して、任務を全うします!」


 こうしてドランが護衛に加わったんやな。


「特使をユーリとし、副特使をデリア、クラウスとする。異存はないな?」

「あたしでいいんですか? デリアのほうが向いていると――」


 そう言いかけたのをデリアが「駄目よ。政治的にアウトよ」と言いよる。正直、どこがアウトなのか分からんかったけど、デリアがそう言うんなら、そうなんやろうな。


「では、この封書を持ち、今すぐ出立せよ。期待しているぞ」


 そんなわけでプラトを出発して、アストに向かったんや。特使専用の馬車に乗って、ゆったりと。アストの首都、サンドロスまで二日かかるらしい。

 その間、デリアとクラウスと一緒に魔法の練習をしとった。練習と言っても、魔力球の生成しかやらへんかった。狭い馬車の中ではそれが限界やった。王城で散々もてなされたせいで身体がなまって仕方ないんやけどな。それになんかやらんと暇潰せへん。


「ふむ。ランクSの生徒となると、勉強熱心だな」


 ドランは感心したように言う。すると先ほど挨拶したクラウスが「ドランさんは魔法を使わないらしいですね」と言うた。


「それなのに素手で魔物を倒すなんて。凄いですね」

「そうだな。魔法を使わずとも、人間にはもう一つの可能性がある。『気』を操る方法、『操気法』があるのだ」


 ソウキホウ? なんやそれ? あたしらはぽかんとした顔でドランを見た。


「なんですか? 操気法って?」

「そうだな。体内には魔力の他に気というものがある。それを操り、攻撃力と防御力に転換し、爆発的な威力を発揮するのだ。主に騎士の攻撃方法だな」

「知らんかったなあ。二人とも知っとったん?」


 デリアもクラウスも首を横に振った。ドランは「まあお主らは魔力を持っているから必要のないことだ」と言うた。


「操気法は努力が必要だが、才能は必要ない。誰にでもできる。魔力ほど便利ではないがな」

「なあドラン。ちょっとだけ教えてくれへん?」


 あたしが訊ねるとドランは「教わってどうするんだ?」と不思議そうな顔をした。


「あのな。あたしの柔道――体術なんやけど、魔法と相性が悪いねん。でもな、操気法やったら、相性ええかもと思うたんや」

「それなら魔法を極めてからだな。操気法と魔力操作の感覚は似ているらしい。そうだな、三年生か四年生になって、自由行動ができるようになったら、訪ねてこい」

「ほんまか? 楽しみにしとるで。そうや、飴ちゃん食べるか? 二人もどうや?」


 こうして会話と飴ちゃん、勉強を楽しみつつ、アストの首都、サンドロスまで来たんや。

 しかし途中の関所はなんとかなったんやけど――


「止まれ! ……イデアルの者か。何用でサンドロスに来たのか?」


 サンドロスの街に入る直前で衛兵に呼び止められた。横柄な衛兵で馬車旗を見て、特使やと分かった上で止めたんやな。

 仕方なく馬車から出た。四人の衛兵に槍を構えられながら「あたしが特使のユーリや」と言うた。

 すると衛兵たちが鼻で笑った。


「ふん。なんだ子供か。特使を務めるだと? 笑わせるわ。そんなに人材がいないのか」

「あなたの名前はなに?」


 そう言った衛兵をデリアが厳しく問い詰めた。


「なんだと?」

「特使、外交上はイデアル王に匹敵する権限を持つユーリに対して無礼な口の利き方、態度。それをアスト王に報告するわ。良かったわね。あなた確実に処分されるわ」


 その言葉に衛兵は顔を青ざめた。そしてデリアは一喝する。


「イデアル王国が宰相、ゴットハルト・フォン・ヴォルモーデンの孫娘、デリア・フォン・ヴォルモーデンの友人に対して、無礼だわ! さっさと門を開けなさい!」

「――っ! おい、急げ! 開門するんだ!」


 衛兵たちは気圧されてもうて、素早い動きで開門の準備をした。


「流石デリアやな。ありがとな」

「貴族の威厳ってやつですね。素晴らしい」

「……褒めても何もでないわよ」


 デリアを口々に褒めたら顔を真っ赤にして恥ずかしがっとる。可愛いな。

 門を抜けるとすぐに目抜き通りやった。内陸国のイデアルと違って、海に面しとるアストは海産物が多かった。

 市場は活気が多かった。しかし馬車を見る目は敵意と不安、そして悲しみと諦めが入り混じったものやった。多分、戦争を始める気なんやと思うとるやろな。

 でもまあ、本当は逆なんやけどな。アストにイデアルはソクラに政権を返上するから、戦争起こさんといてえな、みたいなこと言うつもりやとは今は言えへん。


 アスト王がおる王城はイデアルのそれと違って華美で奢侈なものやった。宮殿と評したほうがええな。

 それでいてセンスがええ。大阪を思い出してしまう。

 その王城手前で馬車を降りた。すると足元に鞠のようなボールが転がってきよった。

 何気なく拾うと「あの、ごめんなさい」と小さな声がした。

 見ると、美しい茶髪のお姫様がおったんや。目がぱっちりしていて、お人形さんみたいで、緑色のドレスを着ていた。多分エルザと同い年やろな。


「ああ。お嬢ちゃんの鞠か? ほれ、道で遊ぶと危ないで?」


 多分、王城前で遊んどるちゅうことは貴族か王族か、どちらかと思うけども、判断つかなかった。


「……ありがとう」


 消え入りそうな声で礼を言うて、女の子は王城の中に入っていった。そして乳母らしき女性と手をつなぐ。そしてこっちを見た。と思ったら目を逸らしてしもうた。

 デリアは厳しい顔で女の子を見とる。


「あの子、どっかで見た気がするわ」

「知り合いなん?」

「いえ――多分敵よ」


 そうか。やっぱりアストの王族か貴族やろな。

 それからアスト王のおる王座の間まで案内してもらった。事前のアポは取っているはすやから、すんなりと会えるはずや。

 先頭はあたし。次にデリア、三番目にクラウス、最後尾にはドランや。ドランなら何があっても守ってくれるやろ。

 王座の間に着いた。中に入るとイデアル王と会うたときと同じく家臣たちがずらりと並んどる。


「よく来たな。お前が特使のユーリだな」


 跪いてアスト王の到着を待っとると、そんな風に声をかけられた。多分、アスト王やな。


「面を上げよ。特使よ」


 顔を上げると、そこにはイデアル王と対象的に白髪と皺だらけのおじいさんがおった。

 灰色を基調にした服。豪華やない、それでも詫び寂びな感じがする。

 なんや知らんけど、王様やっとると顔が強面になるんかな。不思議でしゃーない。


「私がアストの王、イグムント・カイザー・アストである。それで特使は何を伝えにきたのかな。宣戦布告か?」


 周りの家臣たちもそう思うておるやろな。殺気というか敵意というかそないなもんを醸し出しとる。


「いいえ、違います。むしろ逆です」

「逆? 平和条約か? それとも降伏か?」

「そのどちらでもありません」


 わざと焦らして、相手の出方を伺う。これはデリアに教わったテクニックや。


「では何の目的で来たのだ?」

「ご報告に参りました。我がイデアル王国は、ソクラ帝国に――」


 そこで言葉を切って、続けて王座の間中に響く声で言うた。


「政権を返上することを決めました」


 あたしの言葉に皆はざわめき始めた。動揺と不意を突かれた表情やった。


「なんだと? 政権を返上するだと? ならば、イデアルはどうなる?」

「ソクラ帝国に土地と兵権などを譲るんやと思います」

「馬鹿な……イデアル王が、納得したと言うのか!?」


 アスト王は酷く動揺しとった。すかさずあたしはこう言うた。


「つきましてはこちらに対する攻撃、侵略行為を自重していただきたいのですが――」

「……それは仕方ないだろう。しかしどうして王たる者が、自ら権力を手放す? 理解できん」


 ほんまに分からんようやな。仕方ないから説明したった。


「そら。アスト王国との戦争を避けるためでしょうよ」

「たったそれだけの理由でか?」

「何言うてますのん。平和ちゅうのは、何にも換えがたいものですわ」


 それを聞いたアスト王はシニカルな笑みを見せた。いや自虐的と言うべき笑みやった。


「なるほどな。私も老いぼれたものだ。こんな方法があるとは」


 このとき、アスト王も決意したようやった。


「悪いが平和条約は結べないな」

「……それはどういう意味ですか?」

「簡単なことだ」


 アスト王は厳しい顔つきを緩めた。


「私も政権をソクラ帝国に返上する。ただそれだけだ」


 流石のあたしも度肝を抜かれた。デリアもクラウスもドランも、周りにおる家臣たちもショックで声が出えへんかった。


「……ど、どういうことですか?」

「おそらくだが、イデアル王も同じ気持ちだったと思う」


 アスト王が理由を口にしようとした、そのときやった。


「ちょっと待て。そんなことは許さないぜ」


 王座の間が乱暴に開かれた。そして大勢の騎士が入ってくる。

 その中心には、鎧姿の強面なお兄さんがおった。二十代後半。茶髪でおそらくこの場におる誰よりも強いと感じるいでたち。


「平和条約? 政権返上? そんなことさせたら、つまらねえじゃねえかよ」

「……何しに来たんだ! タイガ!」


 アスト王にタイガと呼ばれた男はにやりと笑って言うた。


「そんなもん決まっているだろう? クーデターだよ、親父」


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