植物利用
「鑑定なんだけど、自分以外は鑑定できないものなのかな?」
{ふむ。お主のは自己鑑定だものな。そもそも鑑定自体、レアな能力だ。やはり1万人に1人くらいだな。そして他の人間や魔物を鑑定するものが一般的だが、名前、種別、スキル、ランク、戦闘力が表示される程度で、お主の自己鑑定画面のように詳細ではない}
「え、俺のあれは詳細なんだ」
{我の知る限り、次のレベルまでの経験値とか、装備判定は出ないし、画面も1枚だな}
「俺の正面画面の『クリュウ・マスタ 自由人』のあの1枚ってこと?」
{ああ、その画面がな、『誰某 戦士 剣術の素養 剣術C FL10-12』こんな感じに表示される}
「なるほどー」
「そういえば、鑑定機ってものがあったけど」
{あれはな、鑑定スキルを持つ者が背後におって、単にその鑑定スキル行使の結果である鑑定画面を、誰にでも見えるようにするための機械に過ぎん}
「へえ~~。ということは鑑定画面って本来はほかの人には見えないんだ。あれ?でも地竜は俺の出した自己鑑定画面が見えたよね」
{それは我がお主の呼び出した精霊で、霊的に繋がっておるからであろうな}
「ふーん。とにかく俺のステイタスは他人に知られることはないし、鑑定されても『クリュウ・マスタ 自由人』って出るだけか。じゃあ鑑定されない限り自由人ってばれないわけだ」
{そうだな。あえて自由人と名乗る必要はないだろう。偽ると鑑定でばれたときに気まずいが、お主のその装備なら黙っていれば戦士と見られよう}
「魔法を使っているところがばれたら?」
{魔法戦士と見られるな}
「更に精霊術を使っているところがばれたら?」
{ふうむ、精霊魔法戦士かな。まあそういうのはあまり聞いたことはない。お主はそういう珍らしい存在だということだ}
まあどう名乗るとかその辺のことは、街に行ったら時に考えればいいや。
今は魔法の練習だ。
{そろそろ実戦訓練をするとよい。我は先行して、道程上の厄介そうな敵を始末して来よう}
「俺から離れることもできるのかい?」
{お主の気配を見失わない程度の距離ならな。では行って来る}
地竜が見えなくなった。
なるほど見えなくてもどこにいるか大体分かる。
ふふふ、霊力がゼロになって戻って来たのも分かるな。
そして呼び出し状態というか、ドアをオープンのままにしておけば、霊力が満タンになると地竜は勝手に顕現して出撃して行く。
さて、俺の方はと。手始めにスライムからだ。
ほとんど動かない的なので石礫を当てるのはたやすい。
ぱすっ。びっちゃぁ!
あ、これはオーバーキルだ。もっと威力を絞らなきゃ。
地竜が戻った時に聞いてみた。
「スライムは水属性なの?」
{そうだ}
「赤いスライムは火属性?」
{レッドスライムは火だな。水っぽいのや毒っぽいものは水属性。火魔法を使うのは火属性。飛ぶものや動きが俊敏なものが風属性。人型のは無属性。その他は土属性と見ておけば、それほど外れない}
「なるほど。で、相性がいいとどれくらい効果が上がる?」
{水属性にはざっと倍。風属性にはざっと半分}
「それは大きい!水と風だと4倍の開きがあるのかー」
相性、馬鹿に出来ん。とりあえず風属性は要注意だな。動き早いし。
目標の隣町に向って、目につく魔物を片っ端から石礫で狩りながら進む。
水属性は良いカモだ。
絞りに絞った霊力1の石礫で、スライムもポイズントードも木っ端微塵に粉砕。
クリティカル判定も緩いようだ。端以外に当たればほぼクリティカル。
初見の毒々しいヘビも粉砕。なるほど毒っぽい奴も水属性と。
他方、風属性には苦戦した。
蜂やらトンボやら、鳥型の魔物やら、なかなか当たらない。
逆に言うと、狙いの正確性を磨く良い訓練になる。と思って頑張る。
比較的のろくて手ごろな大きさの蝙蝠蝶がよい練習台になる。
剣術の練習台としてもお馴染みのあいつだ。集合する習性があるしな。
そして的は小さいが動きの鈍い蜂は、至近距離ならまずまず仕留められるようになった。
しかし、トンボや鳥は依然として難敵だ。
初速を遅くして進路を操りながら当てる感じなのだが、遅すぎると簡単に躱されるし、速いと操り切れないしで、なかなか対応できない。
遠方のカイトを、超速でいとも簡単に撃ち落とした地竜の石弾が、絶技であることを改めて思い知る。
そしてその地竜が遠征して倒した敵を、行く先々で目にする。
ビッグボアより一回り小さい猪。
{これはただのボアだ。ランクD。こ奴はじっとしていると気配を探知しにくい。突然飛び出して来てぶつけられると怪我をするからな}
今度は体長2m、体重150キロくらいの黒い熊。
{ブラックベアだ。ここらの食物連鎖の最上位の種族だな。ランクCで力が強い}
ランクCということなので魔石を取り出す。色はやっぱり黒だよな。
そしてブラックベアによく似ているが、黒い中に白っぽい斑点のある黒熊。
{ブラックマジックベアだ。ブラックベアの頂点に君臨する。こいつは土魔法の一種の土槍を使う。要注意だ。ここらでは単体ならこいつが一番強そうだ。ランクB}
魔石を取り出すと、黒の中心に白点が一つ。
{肉も美味いと思うぞ。基本的にランクが高いほど肉が美味い。魔素が凝集されるからな}
その場で火を起こして、食事タイムにした。
「うっはー、目茶目茶美味だー!この世界の食べ物は美味い!魔素のせいなのかなー」
{魔素が旨味のもとなのは当たり前だ}
「地竜、食べれなくて残念だったな」
{ふはははは、魔素の上位にある霊気。しかもエレメントの好意を得るお主の霊気はとびきり上質。我はその上質の霊気を直接摂取するのだぞ。残念なことがあるか}
「あー、活動しやすいとか言ってたのはそういうことか。俺を食うなよ」
{霊気を生産し続けるお主を食うわけがない。むしろ全力で守る}
「うーん、守られて有難いけど、あんまり嬉しくないのはなぜかな?」
{ぜいたく言うな。ほれ、もりもり食うのだ}
食べれるだけ食べて、背嚢に詰めれるだけ肉を積んで、再び歩き始める。
魔法の訓練が楽しくて時間を忘れて没頭していたけれど、そろそろ陽が暮れそうだ。
{今夜の寝床を用意しなければならん}
「安全で快適なのがいいな」
{……}
{警戒すべきは、ブラックマジックベア、オーク山賊ゴブリンなどの集団、そして毒持ち。となれば比較的安全なのは木の上だな}
「寝入ったら落ちるんじゃないか?」
{こうしておけば大丈夫だろう}
地竜が木の枝を密集させて編み上げ、巨大なかごのようなものを作り上げた。
「今何をやった?」
{植物操作だ。我と霊的に繋がっておるのだから、お主にもやり方は分かっただろう?}
うーん、そう言えばなんとなく。でも出来るかな?出来そうにない気がするなぁ。
枝を動かそうとしても動かない。うーん、うーん。
ピコーン!おっ、来たか。あれ?でもやっぱり動かないぞ。
自己確認してみると『植物利用』。その中味は『成長促進/植物素材』。
「操作じゃなくて利用かぁ」
{はて?心当たりのない魔法だな}
促進というからには…、うん、木の枝が伸びる、葉が茂る。下草も繁茂して濃くなる。
そして植物素材か!よいではないか!!
果物出ろ!…出ない。野菜…出ない。米出てくれ…出ない。小麦粉…出ない。
食べ物はダメなのかな。
糸、あっ出た!布、これも出るぞ。板も行けた。棒もOK。
そうか植物製の材料だ。そして食べ物は除外かぁ。何か微妙だ。
とりあえず、上下の葉っぱを茂らせ、地面の下草を繁茂させて、寝床のかごを隠す。
かごの底面には板と布を敷き、体の上にも布を掛ける。
おお!快適で安全な寝床が出来た!!
植物利用もなかなか良いではないか!
{周囲に魔物除けを作って来る。お主、寝ても探知を切らないようにするのだぞ}
「え、そんなこと出来ないよ」
{寝ても耳は聞こえるだろう。それと同じだ。心掛けひとつだ}
そうかなー、そうなるといいけど。
とりあえず木の上のベッドは快適だ。そよ風が心地いい。
探知の範囲をゆっくり伸ばしてみる。スライムがいる。蟻がいる。ヘビがいる。
森と草原だからなあ。生き物で一杯だよ。
クリュウ・マスタ 自由人
素養
言語対応
東方共通言語
鑑定
自己鑑定
魔術
練魔素
生活魔法
飲料水/パン/浄化/着火
土魔法E←UP!
石礫D←UP!
植物利用←NEW!
成長促進/植物素材←NEW!
精霊術
練霊素/精霊の声/竜気
超取得/超成長/超回復/探知
スペック
FL19-28D(201)
フィジカルレベル19
戦闘力28
ランクD
次のレベルまでの必要経験値201
ML12-14/14E(74)←UP!
マジカルレベル12←UP!
魔力量14←UP!
ランクE←UP!
次のレベルまでの必要魔術経験値74
SL14-17/17D(107)』←UP!
スピリチュアルレベル14←UP!
霊力量17←UP!
ランクD←UP!
次のレベルまでの必要精霊術経験値107
スキル
剣術D/槍術G/投石術F
装備
ミスリルソード150、ミスリルチュニック100、革のブーツ2
(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D良い