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終戦と戦後処理

ヌバル兵達は、凍り付いたように動かなかった。いや動けなかった。

元々、この戦には大義名分が無い。単に悪魔に牛耳られて命じられるがままに動いていただけであった。

自分たちが完全な賊軍であると判ってはいたが、それでも「勝てば官軍」の意識に支えられていた。

その頼みの悪魔軍が全滅した今、タグケフ連合軍に二正面作戦を挑んでいるヌバルに勝の目は寸分も無い。

しかも、その悪魔軍をあっという間に無傷で殲滅してしまった驚異の存在が、空中から睨みを利かせている。

全く生きた心地がしない。


タグの街壁の門が開き、騎兵の一群が戦場へ駆け出した。騎兵隊の後ろには歩兵隊が続く。

タグケフ連合軍がヌバル軍の制圧に動き出したのだ。

騎兵の先頭にいたエランが叫ぶ。

「武器を捨てろ!悪いようにはしない」

ヌバル兵は、その言に従って武器を足下に置き、さらには兜や鎧を脱ぐことで進んで恭順の意を示した。

兜の下には、憑き物が落ちてむしろほっとしたような表情が浮かんでいた。

*****


将斗は、ヌバル軍の眼前で空中に浮いていた。

「いやー、マジでつらい。立っていられない」

骨の多くが砕け、筋と健はあちこちで断裂し、いくつかの内臓も傷付いていた。

高空から加速度を付けて落下する重量物と正面衝突し、更には魔法盾を20枚も踏み抜いた衝撃は、将斗の体をズタズタにしたのである。


聖{あんまり無茶しちゃだめですよー}

聖竜の祝福の重ね掛けと自らに発動した聖治癒により急速に回復しつつある。

治癒系の魔力がぽわーんと傷に染み渡って心地いい。

だが、完治までにはまだ時間がかかりそうである。


マット「敵兵が武装解除に応じて良かったねー。これでめでたく終わるかな?」

「そういう言い方はよせよ。フラグというか…、ほら、さっそく!」

ヌバル軍後方の一台の馬車が馬首を返して逃走を始めていた。

仕方ない、治療の途中だが追うとしよう。


即座に追い付いて連携索を切り、馬と馬車を分離させる。

停止した馬車に乗り込んでみるとそこにいたのは…。

「わ、儂は悪くない。悪魔に心臓を握られていて逆らえなかったのだ」

「どこかで見た顔だと思ったら、ヌバルの領主か。そっちは…側近の召喚士だな」

「儂らを知っておるのか?よし、ならば見逃せ。褒美はたんまり取らせるぞ」

はぁ、往生際の悪い。腰に手を当てて呆れていると、領主の目が俺の剣を凝視した。


「それは、我が家宝の吸魔の剣!なぜ貴様が持っている?このコソ泥め!」

「ん?これはラミアクイーンから奪ったものだが。そうか、あれもお前たちの仕業か」

「返せー!!」

ヌバル領主は吸魔剣を奪い返そうと夢中になり、後先考えずに俺に突進した。

軽く弾き返そうとしたが、足腰に全く力が入らない。そうだ、骨も肉もボロボロだった。

思わず馬車の床に尻もちをついてしまう。

「痛っ!尾てい骨が!!」


吸魔剣を手にし、眼前で尻もちをついている無防備な体勢の俺を見て、領主の顔つきが変わる。

「貴様はここで儂の手にかかって死ね!」

大袈裟に振りかぶって、斬りつけようとした。

しかしこの領主、あまり実戦向きではない。隙だらけである。

魔収納からミスリルソードを呼び出して手にし、風爪で射程を伸ばして軽く振ると。

「あれ?」簡単に首が切断出来てしまった。


何が起こったのか理解出来ていなかったのだろう、勝ち誇った表情を張り付けたままの首が転がり、ヌバル領主はあっさりと絶命した。

「ある意味幸せな死に方だな。こいつには相応しくないんだが」

吸魔剣をその手から取り戻し、収納する。

「ひいぃぃー」

振り返ると、召喚士が情けない悲鳴を上げた。


「何をしている?」

「いえっ、これは別に、悪魔を呼び出そうとしてるとか、そんなことは決して…」

「ミルラと言ったか。お前もろくでも無い事ばかりする奴だな」

「なぜ私の名を?あー!あなたは私が呼び出した役立たずの自由人!?」

「ほう、よく覚えていたな」

「な、ならば私はあなたの父親も同然だぞ?」


「面白い事を言うもんだ、召喚される側の迷惑も顧みず。それにお前の迷惑な召喚のおかげで何人の命が無駄に散ったことか。貴様も万死に値する」

「ま、待って。せめてこの召喚を完成させてから。やっと悪魔召喚が確実になって。命令は聞かないけど、今度こそは、ひぐぼっ」

細首を刎ねた。実にあっけない。

ろくでなしの主従が、凄惨な有様の馬車の中で、仲良く雁首を並べている。

こいつら本当に迷惑コンビだったよな。でもこれでヌバル関係は一段落しそうだ。


馬車の中が見苦しいので、念入りに浄化を掛けておく。

「マサト殿!ここにおられるか?」

エランが来たようだ。引き渡してこの場を任せよう。

「悪魔召喚の首謀者を討った。見てくれ」

これで本当に終戦ということだろう。

*****


{あの御仁はそこまでしぶとかったでござるか}

天竜のペナルティは一時間程の顕現停止だった。

{裂空の切断面に配慮が足りなかったでござるな。こう、二本の角と魔石を結んだ三点を含む面を意識して、いやしかしそうなると地割れが…}

なにやらぶつぶつ言いながら自分の世界に入り込んでいるけど、無事に再顕現出来て良かった。

それに俺の体も完治して、すっかり元通りだ。


今俺は、ランクAの洞窟のある俺の所有地に来ている。

新しく得た力を試し撃ちしながら、確認作業を進めているのだ。

空間魔法の縮空は、転移後の位置を視認するだけの簡単仕様だ。

俺の体が触れているモノも一緒に転移する。

ただし、転移後に固形物と重なると失敗転移として、数mはじき出された変な位置に出るので要注意だ。


転移石は、視線の通らないところでも対になるゲート石さえ設置しておけば転移出来るので、縮空とはいい意味で役割分担が出来ている。

ちなみに、天竜の転移は、見えているところとイメージ出来るところに転移出来る。

イメージは、何度も行って印象深いところのほか、予めゲートを設定した地点となる。

天竜のゲート設定は、地面に手を触れると一瞬魔法陣が浮かび上がって地中に溶けるように消えるので、見ていて格好いい。


雷魔法の電撃は、宙を飛ばして放電させることも出来るが、地面に手をつくなどして導電体を利用するとより威力を保ったまま遠くまで攻撃範囲を広げることができる。濡れた地面とか金属が最高だ。水流刃や水竜の協力によって、より強力になる。

電撃の威力は最高出力にすれば、敵単体を黒焦げに出来るし、感電死させるだけなら家一軒分の敷地程度までの範囲攻撃が可能だ。出力を落とすと、スタンガンのように麻痺させる攻撃も可能だし、低出力を広範囲に及ぼして100m程度の距離内の敵全てを麻痺させるなどの芸当も出来そうで、なかなか使い勝手が良い。


技能魔法の亜空間収納は、生物以外なら何でも分量無制限に収納出来る。ただし時間は普通に経過する。

モノの出し入れはイメージで行うが、ごちゃごちゃ詰まっていると少し戸惑う。

収納手段はかなり増えた。それぞれ特色があるので役割を分担させて使って行こうと思う。

まずは愛用の腕輪型魔収納。重さ100キロまでに制限されるが、慣れもあって、出し入れの使い易さはこれが一番だ。装備や薬品類、魔石類、そして貴重品は、ここに収納する。

経過時間が100分の1になる遅延収納、ここには主に食品を収納する。

封印玉、これは生物を収納する部屋として利用する。

そして亜空間収納は、その他一切合切だけれど、大物や、魔物の死体の収納に使うことになりそうだ。


天竜だが、その戦闘力は目を見張るものがある。ランクA程度の魔物ならほぼ瞬殺する。

ただし、単体相手専門である。

{敵を尊重し、都度全力で向き合ってこそ、でござる}だそうだ。

彼は、他の竜達が好戦的なのとは異なり、戦うこと自体は好まず、斬るべきものを必要最小限に斬ることを良しとする独特の美学を持つ。

特に裂空は、世の理を乱す禁じ手なので、みだりに抜いてはいけないと真顔で言う。

居合風にしているのは、発動時間を出来るだけ限定するための工夫だとか。

気の良いお兄さんなんだけど、求道者らしいストイックな一面を持つこだわりのサムライなのだ。

*****


此度の戦乱の後、ヌバルはケフの直轄領となった。

ヌバルの長官として、なんとタグのエランが派遣されることになった。

他にも、タグやシガキから多くの人材が派遣されて要職を占め、中堅職以下にはヌバルの職制がほぼそのまま活かされて、ヌバル人も一部の上層部以外には不満もなく、至って平和に統治されている。


ケフとタグ・シガキはもともと友好関係にあったが、ヌバル戦をきっかけにその結びつきは強固となり、ケフ(旧ヌバルを含む)、タグ、シガキの3国は、ほぼ一体となって、小都市国家連合の中で一歩も二歩も抜け出した軍事力と経済力を誇った。

対抗勢力のオーツを抑え、ならず者国家のヌバルを滅ぼしたケフ連合は、名実ともに小都市国家連合の核となったのである。


旧宗主国として権威を持ち、新しい理念で公平かつ合理的な統治を進めようとするケフは、小都市国家連合の各国の支持を得て、大きな求心力を発揮して行く。

そして各国に支部を広げる冒険者ギルドは、冒険者のネットワークを各国に広げて、その一体化に大いに貢献することとなり、こうして小都市国家連合は、かつてのまとまりを取り戻しつつあった。

*****


ケフ宮殿内の相談室で俺は難しい顔をした連中に取り囲まれ、厳しく詰問されていた。

「ヌバルの領主になるのはどう?」「断る!」

「ケフの官位は?」「いらない」

「タグかシガキの貴族になるのがいいんじゃないか?」「絶対いやだ」

「禁忌の英雄の正式称号は?」「絶対絶対いやだ!」

「全くもう、我儘なんだから。どうすればいいのよ」

「そりゃあもちろん、放置してもらうと助かる。メンドクサイの嫌い」


「はぁ」「マサトらしいね」「もうそれでいいんじゃない」「褒章金だけは受け取れよ」

「どしてそうなる?」

「マサトはね、ケフの威信の最重要要素になっちゃってるの」

「そうそう。それなのに正当に評価されていないとなれば、不安定要因になるってわけさ」

「そんなもんかね。じゃあ仕方なく受け取っておくよ」


俺としては、ケフという心地良い居場所を守るための当然の行動だったし、兵器や魔石の対価は都度受け取っていたし、強い相手と戦えて、成長出来て、新しい仲間も増えて、もう十分見返りを得てるんだけどなあ。

そうそう、多少恨みのあった馬鹿コンビを討つことも出来たというオマケもあったな。


こうして俺は、タグとシガキからそれぞれ20万G、合計40万Gの褒賞金を受領して、第一等戦功者として表彰された。

第一等戦功者への報奨金は10万Gが相場らしいが、新兵器や魔石、転移石、炭素鋼武器等の貢献もあったからせめて20万Gはどうしてもということだった。

お金もねー、既にたくさん持っていて、あんまり使いどころもないんだけどな。

冒険者生活で受け取る分だけでも十分というか、十二分以上というか。

衣食住には困らない体質だし。


まあそのうち、例の広大な所有地の開発でもすることになれば、資金が必要になるかも知れない。

まだあそこに入り込めるのは、俺以外では命知らずのランクB冒険者ぐらいしかいないんだけど、いずれは魔物の脅威も薄れて行くだろうし。

薄れるかな?そうなる…よな?

*****


クリュウ・マスタ 自由人

素養

 言語対応

   東方共通言語/古代神聖言語

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

土魔法B

     石礫B/土槍B/石盾

   火魔法B

     火球B/炎盾

   水魔法B

     水流刃B/水盾

風魔法A

     風爪B/突風A/風盾/空調

光魔法B

     光矢A

   氷魔法C

     氷縛C/氷杭B

空間魔法

     縮空E←UP!

   雷魔法

     電撃F←UP!

   

  植物利用

     成長促進/植物素材

   聖魔法

     聖治癒

   金属加工

     変形/修復

製薬

   付呪

亜空間収納←NEW!

 精霊術

   練霊素/精霊の声/漆竜気

     

 超取得/超成長/超回復/知覚同調/竜知覚(抑)


スペック

 FL70-3590B(2,763,563)←UP!

 フィジカルレベル70←UP!

 戦闘力3590←UP!

 ランクB

 次のレベルまであと経験値2,763,563

 

 ML69-3263/3263B(296,629)

 マジカルレベル69

 魔力量3263

 ランクB

 次のレベルまであと魔術経験値296,629


 SL70-4308/3590(+718)B(786,752)

 スピリチュアルレベル70

 霊力量3590

 ランクB

 次のレベルまであと精霊術経験値786,752


スキル

 剣術A/槍術A/投石術B/格闘術A/盾術A/弓術B



装備

 神槍グンニグル1500

 ミスリルソード150/ミスリルスーツ180/ミスリルフード100/

 ミスリル手袋50/ ミスリルブーツ50/ミスリルリング(+20%)

吸魔の剣50


主なアイテム

 飛行スーツ/魔話機/耐性の指輪/

 自動調理器/遅延収納/転移石10/

魔兎執事マット/珊瑚の指輪/封印玉/

 魔収納/ミスリルナイフ/テント/

 寝袋/調理セット/霊力の指輪/

 魔石 火A100・B100、闇A1000・B100、水A100・B100、

 地A100・B100、風A1000・B100/無属性A1000

 回復薬極10/傷薬極10/毒消し極10/

 万能薬究10/万能耐性薬究10エリクサー究10/ネクタル10

 魔力充填薬極10/魔力回復促進薬極10/霊力充填薬極10/

 霊力回復促進薬極10/


所持金  9,957,000G(千以下略)

ポイント   89,000P(千以下略)


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D=良い C=優秀

      B=傑出 A=達人級

   物価1G=約1万円

   ポイントは、シェルター都市製品によりバラツキはあるが、1P=10G=10万円程度










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