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友来たる

「マサト、久しぶり!」

「マサト殿、ご活躍の程、眩しく拝見していますよ」

「あーっ、ソーシン!それにエランさんも!どうして俺がここにいると?」

ソーシンはタグの訓練所からの友人であり、ヌバル戦の戦友でもある。

エランさんは、模擬戦の相手をしてくれたランカーであり、諜報方面のエキスパートで、ヌバル戦では将隊の一員だった。

ふたりともタグでの知己であり、俺の数少ない大切な友人である。


「どうしても何も、『バサード三部作』だと今はケフ宮殿で影の大御所になってるって話だからさ」

「なんだよ三部作って?それに何御所だって!?」

「第一部がタグ泉編、二部がシガキ城編、三部がケフ湖編だよ。俺らは一部二部がほぼ実話って知ってるから、三部もそうだろうと思ってさ」

「現在はケフでご活躍中と確信して、お訪ねした次第です」


「あれって大筋の事実は合ってるけど、あの主人公はどう見ても俺じゃないだろ!」

「そうか?どう見てもマサトそのものだと思うけどなー」

「まあまあ。それはさて置き、本日お訪ねしたのは、マサト殿と旧交を温めることの他に、要件が二つあってのことなのです」

(ドキッ。来たか!拘束の上、処罰か!?)

「一つ目は、ヌバルとの泉紛争の功績によるタグからの報償10万G及び、シガキの街を魔物の襲撃から救った件の褒賞としてシガキから預かった10万Gの合計20万Gをお渡しすること」


「え!?ヌバル関係でもシガキ関係でも、俺って罪人でしょう?」

「やはりそうお考えでしたか。ヌバルの件は私の説明で予断を与えてしまって本当に申し訳ない。紛争後の協議によりヌバルは自らの非を認めて、貴族殺害の責は一切問わずと明言してますので心配無用です」

「でもシガキは?俺、偉いさんをぶっ飛ばしちゃって…」

「その件についても、事実を確認せずに非礼を働いたとして、元宰相が処罰されてます。マサト殿はシガキでも救国の英雄扱いですよ!」

「そうなの?ふー、お尋ね者じゃなくて良かったー!なんだ、びくびくして損したー」


エランさんは申し訳なさそうな顔。ソーシン、キースは苦笑い。

ララは可哀そうなものを見る目をしてて、ユリアはきょとん?としている。

「いや、だってさ、じっくり沙汰を待ってたら捕まったりして大変そうだったからさー」

肆竜{かかかかか(大笑)}聖竜{うふふ可愛い}闇竜{アホじゃな}

あーだめだ、誰もまともに聞いてくれない。エランさんの顔はますます青くなるし…。


「まあ、その件は分かったよ。20万Gはありがたく頂戴します。で、もう一つの要件って?」

「ここだけの話ですが、実はヌバルに再度妙な動きがあるのです。タグ一国に留まらない大事になる可能性がありますので、タグの諜報部隊が掴んだ極秘情報を伝えに参りました」

エランさんの話を再現ドラマ風に語るとこんな感じだった。

*****

<ヌバルの不審な動き BYタグ諜報部>

「謎の召喚士よ、我がヌバルが小都市国家連合の支配者となるために、新たに将軍を召喚するのだ」

「領主様の御心のままに。出でよ、悪魔将軍!」

ゴロゴロゴロ、ピッシャーン!

「グレーターデーモン、お招きに従い、参上致しました」

「うむ。将軍の配下の将を呼び寄せて悪魔の軍隊を組織するのだ。兵は我が軍から貸し与えよう」

「はっ。レッサーデーモン10将、整列せよ。頼もしき自慢の将どもにございます。どうぞご覧下さい」

「ふはははは。これで小都市国家連合は我がものよ。まずは憎きタグとシガキから血祭に上げてくれようぞ。タグめが、首を洗って待っているがよいわ。ふはは、ふははははは」

*****


「…という訳なのです」

「悪魔を呼ぶなんて正気の沙汰じゃないわね。グレーターデーモン1体とレッサーデーモン10体は間違いないのですか?」

「間違いありません。そしてタグあるいはシガキを攻めるのも確実です。タグとシガキは連合を組んで迎撃する準備を進めているところです」


「グレーターデーモンと言えば、統合スキルを持つランクSの悪魔。それが10体のランクA悪魔のレッサーデーモンを配下に、ヌバル兵を率いた悪魔と人族の連合軍を組織とは!これは最悪の脅威です!」

「ユリア、悪魔に詳しいな」

「グレーターデーモンがレッサーデーモンを率いて、かつて西の列強の1国を滅ぼしたという伝承があるのよ。それにそもそもランクAの魔物自体が、1体で街1つを滅ぼすと言われている程だから」


{悪魔の件、みんなはどう思う?}

闇{グレーターデーモンは将軍の器では無い。せいぜいが小隊長クラス。10体のレッサーデーモンを率いるのが限界の小モノじゃ}

水{脳筋軍曹}

風{でも強いッスよね}


地{統合スキルで10体のレッサーを率いるグレーターデーモンに正面から当たっても勝ち目はないぞ}

火{レッサー10体だけだといい勝負?グレーター1体だけでも5分5分かなー。でも両方同時は無理}

聖{レッサーとグレーターを分離させて個別に戦いましょう。聖結界内で各個撃破すれば、負けることはありません。逃げられると追えませんが}

俺{と言っても、敵も組織だしなー。それにヌバル兵も数は多いし、トップ層の兵はなかなか侮れない}

闇{あの程度の小モノひと捻りじゃ!と言えないのが今の我らの現実よの。く、悔しいのじゃー!!}

(闇竜、みんな、すまん。俺、頑張って成長するから。必ずみんなをもっと自由にする…)


「ヌバルの侵攻はいつぐらいになりそうなのですか?」

「最短で、編成にあと7日、進軍に3日程度ですから、戦端が開くのは10日後以降になるはずです」

「迎え撃つタグとシガキには、何か作戦はあるのですか?」

「作戦という程でもありませんが、大筋としては、立て籠もって外壁を頼りに防衛し、攻められなかった方の街からは開戦中の街へ援軍を出すという程度ですね」


「ケフからの援軍を出せるかどうかは王の決断を仰がなくてはなりません。決断後にお知らせします。ヌバル情報は、今後もこまめに知らせていただけると助かります」

「エランさんに魔話機というのを1台渡して置きますね。それと俺単身でなら、正面から防衛軍に加わることも遊軍として側面や背後を突くことも、臨機応変に出来ると思うから」

「マサト殿にご助力いただければ万人力です!」

「バサード4部作めが楽しみかな?」

「ソーシン、そういう言い方はやめろー!」

*****


<ヌバルの実際>

「ミルラよ、勇者の召喚も精霊使いの召喚も失敗ばかりじゃ。お前がまともに召喚出来る者は無いのか?」

「領主様、不肖ミルラ、国唯一の召喚士として幾度も召喚に成功しているではないですか」

「お前はあれを成功というのか?まあ何某かは召喚はされとるがな…。そうじゃ、魔法使い、いや大魔導士が良い。多少失敗しても、少なくとも魔法使い部隊の厚みを増すことは出来よう」

「評価は納得できませんが、ご命令は承知致しました。偉大なる魔道の者を召喚致して見せますよ!」


召喚士ミルラの描いた二重の魔法陣が光り、互い違いに回り出す。

中央に設置した生贄が消え、効果音が鳴ると、スモークの中に大きな影が浮かび上がった。

「わ!異形のモノが出た!悪魔か?」

チャコールグレーの巨体に、渦を巻く二本の角。複眼と複雑な形状の顎は昆虫を彷彿とさせる。

「我はグレーターデーモン。我を呼び出せしは貴様らか?」地の底から響くような不快な声だ。

「いかにも、余はヌバル領主なるぞ。余のしもべとして世界制覇の先兵となるがよい」


「ふん、笑止!貴様ごときが何をほざく。己こそが我が下僕となれ!」

グレーターデーモンの掌から鎖が伸びて領主の胸に吸い込まれ、そして消えた。

「貴様の心臓を手中に収めた。我が命に背けばこうなるぞ」

悪魔が手を軽く握る仕草をする。

「ぐわぁぁぁー、わ、分かった。言うとおりにする」

「言葉遣いがなってない!」

「うぐぐぅ、苦しい。分かりました、仰せの通りに致しますぅ」

「ふはははは。馬鹿め。世界制覇とは笑わせてくれる。だが世の中に混乱を齎すのは悪くは無いな。手始めに貴様の軍を10の部隊に編制し直せ。各部隊長には我の直属の配下を当てる」

「はっ。直ぐに手配致します」


「おい、そこの召喚士。我が配下のレッサーを10体呼び寄せるのだ」

「はい、承知致しましたっ」

*

「馬鹿者!この赤茶色の毛の動物は何だ」

「何かは分かりませんが…可愛いであります?」

「ほざけ!我が欲するは、レッサーデーモンだ。これ以上変なモノを呼んだら、どうなるか判るな!」

「は、はいぃ!」

**

「貴様、またしても…。ふざけているのか!役立たずのその腕を握り潰してくれるわ!!」

「ひぃー堪忍して下さい。ぎゃあぁぁーー」

「もう片方の腕が残っているうちに、サッサと呼べ!」

「は、はひぃぃ!」

***

「やれば出来るではないか。なんだ貴様?真っ白になりおって、惰弱な奴め」

「ふひぃ………」

(完全に枯渇して、もはや抜け殻か。しばらくは使い物にならんな。まあいい。それよりも)

「さて、戦争だ。人間どもの愚かな潰し合い、とくと楽しませてもらうとしよう。ふはは、ふはははは」





「で、お姫様とのロマンスはどうなってんの?このこのー」

「な、そんなの出鱈目に決まってんだろう!」

「出鱈目…(しょんぼり)」

ガスガス!

「ララ、蹴るなよ、痛いよ?」

「マサトの馬鹿!無神経!」

「なんだよー??」

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