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瘴気の洞窟

冒険者ギルドの活動が始まってひと月もすると、新たに柵で囲われたケフ新街区周辺域や街道沿いは、ほぼ安全地帯となった。

新たな耕作地として作付けも行われており収穫が楽しみである。

その外辺部にはまだ魔物が出るとはいえ、ランクG、せいぜいランクEの魔物しか出没しないので、初心者パーティーの入門討伐のために有用とも言えた。


中堅どころ以上の冒険者は徐々に遠方に足を延ばし、特に北西部は強めの魔物が多い領域として、ランザそしてメカオの街と最前線が押し上げていった。

やがてメカオには冒険者ギルドの仮支部が設けられることとなり、ランザとメカオは、ケフの友好都市となる。

冒険者の勢力圏が広がることは、そのままケフの勢力圏が広がることと同義であった。


メカオと言えば、気になるのは瘴気が漏れ出していた洞窟である。

俺は先行して洞窟の調査を敢行することにした。

街道から逸れて約5キロほど森の中にその洞窟はある。

今後の冒険者の便宜のため、密集する枝やつる植物を斬り払って道を作りながら進む。

さすがにこの辺りともなると、遭遇する魔物の数は街や街道周辺とは比べ物にならないほど多い。

未開の森に生息する手つかずの魔物達が人間の気配に集まってくるのだろう。


ただ、魔物の多くはランクD以下で、たまにランクC、希にランクBといった程度。

ヌバルやケフの森林とさほど変わらない。

パーティーランクBならば対応可能、パーティーランクCなら複数パーティ推奨というところだ。

さて、街道から逸れて歩くこと2時間、やっと洞窟にたどり着く。まあ突風で飛べばすぐなんだけどね。

ぽっかり空いた暗闇からは、相変わらず瘴気が漏れ出ていて、ひどく不気味だ。


洞窟に足を踏み入れた。瘴気濃度が濃い。

刺激的な生臭さで不快だが、毒ガスのように直接的なダメージをもたらすものではない。

瘴気が赤黒い鈍い光を放つので、奥まで進んでもある程度の視界が確保できる。

それは良いのだが、瘴気自体が妙な気配を持つので、中に潜む魔物の気配が捕らえにくくて困る。


不用意に壁に手をついた際に、何かが指に噛みついた。

「うわぁ!」不意を突かれたので驚いた。

体長20㎝ほどの頭でっかちの蜥蜴のような魔物だった。仮称『影蜥蜴』としておく。

他方の手で影蜥蜴の頭に水流刃を打ち込むと。フッと消えてしまった。

どうやら死ぬと消滅するらしい。

ミスリルの手袋をしていたから良かったものの、素手なら指を食いちぎられていたな。


影蜥蜴は濃い瘴気の中で気配を消すのが上手いので、用心しなければならない。

存在を察知できさえすれば怖い敵ではない。水流刃や光矢のいい餌食である。

30㎝ほどのやや大きめの影蜥蜴は、毒や地火風水4属性の弱い初級魔法を使ってくる。

こいつらは死ぬと魔石だけを残して消える。残した魔石はランクCだった。

ゆっくりと進みながら影蜥蜴の微弱な気配を探りあてては消滅させ、魔石が残ればそれを回収するという作業を繰り返した。


そして目にした不思議な光景。

一際濃い瘴気だまりで、渦を巻くように凝集した瘴気塊がドクンドクンと脈打ったと思った次の瞬間、そこに一匹の影蜥蜴が誕生していた。

地{こ奴らは瘴気性の魔法生物だな}

「こんな魔物もいるのか…」

風{普通の魔物に比べて、肉体性が希薄で瘴気性が強いっすね}


更に奥に進む。

何かが天井から剥がれたと思ったら、翼をはためかせて飛び回り、火球や水球を打ち込んで来る。

こいつは仮称『影蝙蝠』としておこう。

視線に乗る光矢で、難なく数匹を消滅させる。

やはり瘴気性魔法生物で、ランクは影蜥蜴同様、CないしD。

空中を飛翔する分、影蜥蜴の進化形という感じだ。

光矢は視認できるかぎりまず外すことは無いが、水流刃だと不規則に飛び回ると当てるのは少し難しい。


しかし多数が飛び回っている時に、10本指から出した水流刃で、動きを予測しながら当てるのは楽しい。

「指と連動させた並列思考はいい頭の体操になるなぁ」

水{ん。ボケ防止}

うーん、自分ではもっとこう、指揮者的というか芸術的な何かのような気がするんだが…。

空中で魔石に変わって落下するのを足で踊るように捉える。

地面に落ちたのを踏んでも魔収納には入るんだけどね。


洞窟は複雑に分岐している。迷わないように分岐ごとに進行方向への矢印を付けておく。

こうしておけば、戻る時に矢印の根元側を辿って行けば出口に着くはずだ。

奥へ奥へと入っていくと、徐々に影蜥蜴や影蝙蝠の数が増え、ランクCの個体が増える。

ここは冒険者の訓練と魔石収拾にうってつけの空間だ。


洞窟深度が深くなると、ところどころに打ち捨てられた武器や防具が散見されるようになった。

そこで力尽きた昔の武人の装備だろう。

瘴気には金属製品の状態を保つ性質があるようだが、冒険者の体は食われたしまったのか、見当たらなかった。そう言えば防具類も革部分だけが消失している。

ここで倒れて、ミスリルスーツその他の装備だけが抜け殻のように残されることを想像してぞっとした。


最深部の行き止まりに達すると、影蜥蜴と影蝙蝠で溢れんばかりであり、全て倒した後もかなりの頻度で瘴気から新たに発生していた。

こいつらの多くは、こうして最深部で発生して、徐々に浅い所へ広がって行くのだろう。

全ての分岐を一度に探査し尽くすのは到底無理なので、いったん洞窟の出口まで戻る。

すると、漏れ出ていたはずの瘴気がぴたりと止まっていた。

火{だいぶやっつけたもんね。魔石も100個くらい手にいれたし}

聖{洞窟内に十分な数の魔法生物が満ちたら、また瘴気が漏れ出すのでしょうね}


ケフの冒険者ギルドまで飛んで戻り、洞窟の調査報告をした。

そして魔石を買い取ってもらって250G。

あれ?ぼったくってない?

まあ分量が多くても全て即座に買い取ってくれるからそんなものなのかな。

*****


翌日の午前中、日課となっている基礎訓練と引率、そして七星結界の設置と模擬戦数戦を消化する。

そして昼ごはんを食べ、再度七星結界の設置をした後、単身で飛翔し瘴気の洞窟に来てみた。

「うーん、案の定瘴気が漏れてる」

昨日の努力の成果のはずの瘴気漏出防止は、1日しか持たなかった。


冒険者パーティが育って、毎日数パーティが洞窟に挑むようになれば瘴気処理も軌道に乗るだろう。

今日は昨日と違う分岐を辿って最深部に到達したが、出現する魔法生物の状況は昨日と変わりなかった。

影蜥蜴と影蝙蝠。深くなるほど数が多くなり、強い個体も増える。ただし、ランクC止まり。

うん安定してていいね。

これなら安心して討伐に臨める。


洞窟を出て、更に北西へ飛び、第2の瘴気の洞窟へ向かう。

洞窟周辺部の森林に出没する魔物はランクBまでだが、強い魔物の数が増えている。

1体のランクBと交戦している最中に他のランクBと遭遇する可能性も低くない。

このあたりだと、冒険者パーティの推奨ランクはAか、ランクB複数パーティとなってくる。

なかなかハードルが高い。

近場の都市化が進めば、魔物はもう少し弱くなるかも知れない。


さて、第2の瘴気の洞窟の内部はどうか。

洞窟自体は第1の洞窟同様、岩石質の天然の洞窟だ。

瘴気濃度は第1の洞窟よりも高い。

そこで遭遇したのは、体長1mから1.5mほどの獣型の魔物。

仮称『影狼』としておく。


動きは素早く跳躍力が強いので、洞窟内を立体的に縦横無尽に跳ね回る感じだ。

爪と牙の毒攻撃に加えて、地火風水4属性の球、更には矢を飛ばして来る。魔法の飛翔速度も速い。

ランクはほとんどがB。それが複数出る。強敵だ。

ちょっと広い場所に出た。

聖{6体いるわよ}

「各自1体ずつ受けもとう」

伍竜と阿吽の呼吸で瞬時にターゲットの分担を確定させる。念話ネットワークは凄い。


担当を割り振っても、敵からの攻撃は当然肉体を持つ俺に集中するので、並列思考で回避に備えつつ、俺の担当ターゲットの毒持ち影狼に光矢を当てる。

魔法生物である影狼は頭部が弱点というわけではなく、眉間を細く射抜かれれてもそれだけでは死なない。

天井を蹴って加速度を付けながら降下して咬みつこうとする牙を躱して、すれ違いざまに吸魔の剣を振るうと、何の手応えもなく剣が影狼を通過する。


思わず空振りしたかと身構えるが、吸魔の剣が触れたとみえて、奴らはその存在根拠である魔力を失って、魔石を残して瞬時に消滅してしまった。

少々違和感があるが、慣れるとスプラッターな殺戮よりも後味が良さそうだ。

伍竜もそれぞれの獲物を仕留めていた。


床に散らばった魔石を踏んで収納をしている最中に、火槍が襲って来た。更に上から水槍が迫る。

療法を回避して確認すると、攻撃を仕掛けて来たのは岩に擬態していたドーム型の魔法生物だった。

仮称『影蛸』としておく。

こいつらは岩に擬態する他、動き回ることはないが、岩から出たり入ったりする。

岩の中に隠れているときは防御姿勢であり、攻撃不可となる。

そして攻撃には中級4属性魔法を使ってくる。

今回は水竜の落滴と地竜の石弾で2体の影蛸を仕留めた。

岩から出ている時は防御力はさほど強くはない。完全に奇襲型の魔法生物だ。


影狼と影蛸が多数で襲撃してくるとなかなかの脅威だ。

対処が難しい時は聖結界を張って、その中から遠隔攻撃で対処するのが安全策なのであるが、できるだけ結界に頼らず襲い来る各種攻撃を予測し、躱し、叩き落す。

これは最高の訓練になる。

獲得できる経験値と魔石も相当に美味しい。


第2の瘴気の洞窟は、俺のお気に入りポイントとなり、数か月にわたって日参することになった。

ここで隠蔽された気配察知の技を磨いたほか、各種スキルも地味に鍛え上げ、順調にレベル上げも出来たので、狼と蛸には本当に感謝しなければならない。

そして、落ちている武器防具もミスリルやアダマンタイトという価値ある逸品が多い。

ここは、ランクB冒険者の聖地と言っても過言ではない場所になる予感がする。


そしてそれだけではない。

地{ほう、これはなかなかの銀鉱脈だ}

水{あっちは掘ればいい湯出る}

鉱脈があり、温泉も湧くらしい。

「そんなのが判るのか?」

風{竜知覚と竜の勘ッスね}

この地は直轄にして開発せねば。その日が待ち遠しい…。

*****


冒険者ギルド試行から1か月後


クリュウ・マスタ 自由人

素養

 言語対応

   東方共通言語/古代神聖文字

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

土魔法B

     石礫B/土槍B←UP!/石盾

   火魔法B

     火球B/炎盾

   水魔法B

     水流刃B←UP!/水盾

風魔法A←UP!

     風爪B←UP!/突風A←UP!/風盾/空調

  植物利用

     成長促進/植物素材

   聖魔法

     聖治癒

   光魔法

     光矢B←UP!

   金属加工

     変形/修復

製薬

 精霊術

   練霊素/精霊の声/伍竜気

     

 超取得/超成長/超回復/知覚同調/竜知覚(抑)


スペック

 FL53-646B(78,206)←UP!

 フィジカルレベル53←UP!

 戦闘力646←UP!

 ランクB

 次のレベルまであと経験値78,206

 

 ML53-646/646B(39,881)←UP!

 マジカルレベル53←UP!

 魔力量646←UP!

 ランクB

 次のレベルまであと魔術経験値39,881


 SL54-937/781(+156)B(127,256)←UP!

 スピリチュアルレベル54←UP!

 霊力量781←UP!

 ランクB

 次のレベルまであと精霊術経験値127,256

スキル

 剣術A/槍術B←UP!/投石術B←UP!/格闘術A/盾術B/弓術B←UP!


装備

 ミスリルソード150/ミスリルスーツ180/ミスリルフード100/

 ミスリル手袋50/ ミスリルブーツ50/ミスリルリング(+20%)

吸魔の剣50


主なアイテム

 魔収納/ミスリルナイフ/テント/寝袋/調理セット

 魔石 火A、闇A・B4、水A・B10、地B10、風A

 回復薬上・極10/傷薬下・極10/毒消し下・極10/防眠薬下/万能薬下/

 魔力充填薬極10/魔力回復促進薬極10/霊力充填薬極10/

 霊力回復促進薬極10/エリクサー極


所持金 35,770G


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D=良い C=優秀

      B=傑出 A=達人級



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