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毒と山賊

桐生将斗はこうして、一応安定した小さな生活圏を手に入れた。

狩場となる草原と森と川、安全な寝床、飲料水と食べ物、話相手となるエレメント。

生活魔法で入手できる食パンは、実は各種栄養素や食物繊維が摂取できる完全食品であった。

将斗はそうと気付いてはいないが。


ミスリルの武器と防具のお陰で、フィジカルレベルは順調に上昇して行った。

エレメントと話しをするので、意識しないままにスピリチュアルレベルも結構上がった。

精霊術「精霊の声」の行使には、実はそれなりのスピリチュアルポイントを消費するのである。

他方でマジカルレベルは低空飛行であった。生活魔法以外の魔法がどうしても使えなかったからだ。


レベルアップは、ポイントを使って敵を倒して経験値を獲得することと、もうひとつ、ポイントを消費することそれ自体によっても、もたらされるのである。

自己確認の鑑定素養を持つ将斗であったが、未だMLとSLのレベルアップの法則性を完全に理解するには至っていなかった。

*****

そんなある日、小さな事件が起こった。

「狼が5匹か、こいつら戦闘隊形を取りやがって、しゃらくさい」

将斗が対峙しているのはグレイウルフ、風属性ランクE、獲得経験値4の魔物。


魔物のランクとは、1対1で人と戦って同等となることを基準に設定される。

将斗のFLはランクDなので、グレイウルフ単体ならば優位に戦えるが、相手が5匹、しかも獣なりに連携して組織的戦闘をして来るとなるとかなり手強い。

ちなみに属性については、人の物理攻撃は無属性なので、魔物が何属性であろうと相性は問題にはならない。属性についての説明はまたの機会に。


なお、将斗にはミスリルソードの+150とミスリルチュニックの+100があるから、将斗のFLがランクDと言っても事情はそう単純ではない。ランクは素の戦闘力を基にしたものなのである。

このように、ランクは一応の基準に過ぎず、装備や技能・経験によってどのような結果がもたらされるかの予測は難しい。それこそ本人の経験的判断がモノを言うのだ。


行ける。将斗はそう判断していた。

真っ直ぐに一番強い狼に向って行く。こうすると奴らはなぜか攻撃の手が止まるのだ。

ボスに遠慮するのか、ボスとの一騎打ち優先思考があるためなのか。

ここで賢いボスならば、群れに攻撃命令を下すところだが、このボスはそうしなかった。

愚かにも一騎打ちを選択したのである。


将斗に飛び掛かろうと跳躍したボス狼は、空中では持ち味の俊敏な動き発揮できず、もはや単なる的に過ぎなかった。

将斗はダッシュで距離を詰め、真向から斬り下げて一刀両断する。

間を置かず、あまりの結果に呆然としている手下狼軍団に駆け寄り、うち一匹を屠る。

我に返って、算を乱して逃げ出す狼どもを追い掛けて、更に一匹を仕留める。


「熱っ」

突然右膝下に熱を感じた。チュニックとブーツの境目の素肌の部分だ。

見ると紫のドロリとした液体が付着している。

もはや逃げる狼を追うどころではない。

辺りを見回すと、ショッキングピンクの小さな蛙。目は紫、口を開けるとその中も紫。

突然、ペッと蛙の口から紫の液体が飛び出す。


スッと避けてブーツの底で蛙を踏みつぶす。分かってさえいれば将斗にとっては、何てことのない敵だ。

こいつはポイズントード。レベルE、水属性の魔物だ、毒を持っている。

毒持ちの魔物はたとえ弱くても、攻撃を受けると致命的となりかねない。

特に今回のように、毒消しが手元に無い時には。


「やばいなぁ、さっそく腫れてきたぞ」

エレメントを呼び出して、毒消しになるものが入手できないか聞いてみる。

{ドクケシソウ}{ウン、ドクケシソウ}

「どこにある?」

{コッチコッチ}


まずい、まだか、遠いよ。

だんだん足から痺れが全身に回り、目がかすんで来た。

{コレダヨー}

あった。良かった…。


急いで毒消し草の葉っぱをちぎって膝下に当てる。

どうやら症状の進行は止まったようだ。しかし回復しない。

{タベテタベテ}{モグモグゴクンテ}

経口摂取か。うぇぇ、苦い~~。

{ギャァァ}{ヤダー}

エレメント達もなぜか悶えている。


努力して丸々2本食べた。

口腔、喉、胃、消化器官の粘膜という粘膜から毒消し成分が吸収され、毒の不快感が徐々に終息していく。

「ふー助かった。ありがとな」

{ヤッターヨロコバレタ}{ウワーイ}{ワーイ}


「念のため、毒消し草を摘んで背嚢に入れておこう」

出来れば薬としての毒消しが欲しいところだが…。

いずれは街に行って入手しようと決意する将斗であった。

*****

また別のある日のこと。

「チッ、山賊か」

この界隈には山賊がいる。何人いるのかは不明だが、常に複数で行動している。

遭遇しないように気を付けていたが、今日は生憎と発見されて追い掛けられているのだ。


草むらをかき分けると、地肌が露出している場所に出た。

しめた!ここで一気に引き離す。

そう思って走り出すと、ひゅんっと矢が顔を掠めた。

あっ、前方の木の上に射手がいる。

それだけじゃない、周囲の草むらのここにもあそこにも山賊たちの気配が。


まずい。これは計画的な罠だ。ここに追い込まれたんだ。

俺は走りながらポーチからゴルフボール大の石を取り出し、木の上の射手に向って投げた。

石は当りはしなかったが、射手は避けようとしてバランスを崩し、勝手に落下してくれた。

よっしゃあ!


包囲の薄いところに突入する。一人を斬り伏せる。

そいつの剣を奪って、数人が潜む場所を狙って投げ込む。

ガサガサッ。「ギャッ」「そこかっ!」

キーン、ガキン!「ウギャー」


うまい具合に同士討ちが始まった。

馬鹿な奴らで助かったぜ。

騒ぎに紛れてそーっと逃げ出す。


「ふー、ねぐらにたどり着いたー」

しかし、まずいことになった。

さっき山賊たちは10数人はいた。

少なくとも1人が死んで1人は重症。軽症者は多数人にのぼる。

奴らは本気で俺を倒しに来るだろう。


しかも俺を倒せばミスリル装備が手に入る。

奴らは主に毛皮製の粗末な服と、有り合わせの剣や弓だ。

ミスリル装備は垂涎の的だろう。売っても相当高いはずだ。


山賊は装備も貧弱だし統率も緩い。正規軍に比べればずっと弱いだろう。

それでもゴブリンや狼よりは組織だってるし強い。

曲がりなりにも人間の武装戦闘集団だ。

敵が3人なら要注意、5人なら危ない、それ以上なら逃げるしかないだろう。


このねぐらも人間の注意力を持ってすれば容易に発見される。

俺の通り道が付いているし、追跡されることもあり得る。

うーん、潮時か。ここを離れる時期が来たようだ。


クリュウ・マスタ 自由人


素養

 言語対応

   東方共通言語

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

 精霊術

   練霊素/精霊の声

     

 超取得/超成長/超回復/探知


スペック

 FL19-28D(265)

 フィジカルレベル19 

 戦闘力28

 ランクD

 次のレベルまでの必要経験値265

 

 ML4-7/7F(16)

 マジカルレベル4

 魔力量7

 ランクF

 次のレベルまでの必要魔術経験値16


 SL9-11/11E(2)』

 スピリチュアルレベル9

 霊力量11

 ランクE

 次のレベルまでの必要精霊術経験値2


スキル

 剣術D/槍術G/投石術F


装備

 ミスリルソード150、ミスリルチュニック100、革のブーツ2


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D良い





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