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脱出水神島

紫蛙の口が開いた。いかん、あの超速の舌が来る!

咄嗟に土魔法の石礫を3発放つと、シュパッと伸びた舌が全てを絡め捕った。

飛ぶ物に反射的に反応したらしい。

おや?紫色の汁が飛び散った。石礫が舌を傷付けたようだ。


あの舌は、というか紫蛙自体が、結構柔らかいのかも知れない。

そして、水属性の魔物なので土魔法が効果的ということか。

紫の飛沫がこっちにも飛んで来たので、顔の前に手をかざしたところ、ジュッと皮膚が溶けた。強酸だ。

おいおい、飛沫もやばいぞ!


必要な情報は得られた。

まず水棒の先端の目を風竜の風衝撃で潰す。水神にこちらの手の内を晒したくない。

「伏せて!」予め味方に警告する。

あの紫の飛沫がかかるとやばそうだからな。

飛沫ケアのために透明石盾を4枚、各人の手前に展開する。

水棒に風刃を数発飛ばし、形を維持出来ない程度の分量に分割しながら刻み、新たな目の出現を妨げる。


よし、準備完了。

地{我の出番だな!}

{頼むぞ地竜}

ブーッと辺りを震わせるようなブザー音が短く響き、地竜の石弾バルカン掃射が炸裂!

単発だとパシュッという発射音なのに、弾数が飛躍的に増えるとこんな感じの音に変化する。


瞬間的だったがピンポン球大の石弾を20発は叩き込んだ。

着弾直前の目を見開いて驚く蛙顔を脳裡に残し、紫蛙は形を保つことが出来ず瞬時に爆散した。

強酸液が飛び散ったものの、石盾でほとんどはカバー出来た。

仕上げに風竜の暴風で、未だ空中に漂う細かな飛沫を吹き飛ばす。


「蛙をやったぞ。でもここにいると次が来る。急いで逃げよう!」

ユーリ達が顔を上げた時、目にしたのは地面でシュウシュウ泡立っている紫の液体と、スリングを片手にぶら下げて立つ俺の姿。もちろんスリングはカモフラだ。

全員でダッシュで逃げた。


ひとしきり走って泉との距離を広げた。

水神は追って来ない。

ユ「石で倒せたのかい?」

「石と魔法を同時に叩き込んだよ」まあ嘘ではないかな?

カバーし切れずに浴びてしまった強酸の飛沫で、全員が軽い火傷を負っていたので、ララの水魔法で治療してもらう。ヒリヒリしていたのがすんなり収まった。

むしろヒンヤリして気持ち良い。


それにしても。

{あいつ、何だったんだろう?肆竜も知らないなんて}

地{我らは、精霊使いと結びついていない時間の方が長いからな。知らぬことも多い}

{そんな時はどうしてるんだ?}

風{拡散して無意識のまま漂ってるだけっすよ}

火{精霊使いと縁を結んだ時だって、普通は、戦闘時にごく短い時間呼び出されるだけだしさ}

{そうか、常時顕現させておまけに、話し相手までする俺はよほどの変わりダネなんだな}

水{(コクン)それがいいの}


本拠地に戻ってきた。みんな半ば放心状態だったがだんだん落ち着いて来て、水神のことを振り返る。

ラ「水神の正体って、カエルだったの?」

俺「いや、たまたまあの形になっただけじゃないか」

キ「強酸性になるとか、性質も色々と変わるようだな」

ユ「まともに戦いたくない相手だね」

俺「同感だ。あれはただ捕食し、身を守るだけで、特別攻撃を好むようには思えなかった」

キ「追ってこなかったしな。しつこくないのは救いだ」

*****


空が暗くなってきた。夕飯を食べながらぽつぽつと話をする。

ユ「明日で試練も終わりだね」

ラ「どうやら生き残れそう」

キ「試練の様子も分かったし、水神も見れた」

俺「番号札はあんまり集まらなかったな。1人2枚だけだ」


俺を除く3人が顔を見合わせている。妙な空気だ。

ユ「僕たちはさ、オーツ兵になる気はないんだよ。だから札はサブにあげるよ」

俺「俺もオーツ兵になる気はサラサラないよ。試練に参加したのは偶然だし」

キ「実は俺達は、オーツの兵士採用方法の調査が目的だった。それは十分果たせたし、水神の正体を知るというおまけまでついた」

ラ「パンも美味しかったし」

ユ「サブには本当に世話になったね。どうやってお礼しようか」


俺「じゃあ、島を出て船を降りたらなんかご馳走してくれよ。それでチャラということで」

ユ「うん。チャラになるとは思わないけど、ご馳走はするよ!」

みんな嬉しそうにしているし、俺も色々面白かったから、これでいいか。

でも、まだあと一日あるんだけどな。

*****


水神島7日目、最終日の朝。人数は14人。俺達の他にはちょうど10人。

朝の行事をこなしているうちに、ドンドンドンと太鼓の音が鳴った。集合の合図に違いない。

ゆっくり準備を整えてから船着き場のある崖の前の広場に行くと、俺達4人の他に現れたのは6人の傭兵達、他の4人の気配は島のどこにも無い。

あれ、10人じゃなかったっけ?

6人からは新しい血の臭いがした。そうか、仲間4人を殺して札を奪ったか…。


「残ったのはお前たちか。よくやった。まず番号札を回収する」

札をGに交換してもらう。

6人の傭兵は1人あたり10枚以上持っていた。だいぶ上前を撥ねたのだろうが優秀な成績だ。

「生き残りはちょうど10人だ。よろしい、全員騎士団員として採用しよう」

ユ「いえ、僕たち4人は、採用は遠慮させてもらいます」

ギロリと俺達を睨み付けるスキンヘッドの採用官。苦々しい表情だ。


「お前ら6人は採用でいいんだな」

「「もちろんです!」」残り6人の傭兵が答える。いや既に新入のオーツ騎士団員か。

「では騎士団員としての最初の命令を実行してもらう。この4人をこの場で殺せ」

おっと、そう来たか。

6人は躊躇なく剣を抜き、俺達に向き直る。剣にバリエーションがあるが6人とも剣士だ。

「へへ、初仕事だ。悪く思うなよ」

番号札の枚数では負けたけど、直接対決ならどうかな?

キ「俺達を甘く見ると後悔するぜ」


俺とキースは素早く前に出た。ララは下がって弓を構え、ユーリはララの近接護衛。俺達の戦闘隊形だ。

敵6人はそこそこ粒がそろってるが、キース程の腕ではないように見える。

6人は、俺とキースに2人ずつ、残りの2人が回り込んでララ達に向う。

馬鹿め、戦力を分散させてくれたから扱い易いわ。


突風を使いつつ素早くダッシュし、無手のまま振りかぶった敵Aの懐に飛び込んで腕を掴み、肘と肩の関節を極める。

もう一人の敵Bの剣戟を、動きを制した敵Aの首で受け止める。いい感じに8分目まで斬れた。

同士討ちで動揺し、首に食い込んだ剣を持て余す敵Bの後頭部を掴み、敵Aの剣を立てたまま引き倒す。

敵Bは顔面を地面に打ち付け、敵Aの剣を背中に貫通させて俯せに地に伏せる。

敵Bの延髄を強く踏み付けて仕上げ。

敵Aは既に絶命している。

余裕のある時は無手もいいものだ。


キースが2人を相手に切り結んでいるので、接近して背後から1人の心臓辺りを殴り付けて動きを止める。

もう1人はキースが腕と足を斬って無力化していた。

キースがこの2人にとどめを刺している間に、ララとユーリを見れば、肩と腹に矢を受けた敵をユーリが刺殺しており、最後の一人は今まさに水球を顔面に受けて倒れようとするところだった。

みんな強いな、6人を瞬殺だ。


あっ!?土槍が飛んで来た。このままだと胸のど真ん中に突き刺さる。

咄嗟に風盾を展開し、身を屈めつつ斜め上方向に逸らす。

この土槍は、あのスキンヘッドの採用官が放った土魔法だ。

こいつを含めてオーツの兵はここに3人いる。

土魔法使いがぶつぶつ詠唱を始めていたが、遅いっ!

風竜が風刃で首を刎ねる。

兵の1人にはララの矢が眉間に刺さっており、最後の1人はキースが斬り捨てていた。


崖から船までは、縄梯子と組梯子で繋がっていた。

この機会を逃さずに、素早く梯子を伝って船に乗り込む。

「あとのはどうした?」

船に残っていたオーツ兵が尋ねて来る。甲板に5人いる。

ユ「あれ?上で何か合図してますよ、何だろう」


兵が島方向に視線を移した途端、ユーリのレイピアが閃き、ララの短弓から矢が奔る。

キースは右の兵に斬りかかる。躊躇が無い。

ユーリの小芝居に合わせて、みんな素早く攻撃している。

俺も左の兵を斬っていた。

オーツ兵達、悪く思うなよ、お前たちは俺達を殺そうとしたんだから排除せざるを得ない。


俺達は瞬きする間に船を制圧した。甲板には俺達4人と、オーツ兵だった死体だけ。

おっかなびっくり船倉を覗いて見ると、そこにいたのはなんと土ゴーレム。

オールを漕いで船を進めていたのはこいつらだったんだ。

でもどうやって動かすのかな?

「船を出せ!」

スキンヘッドの真似をして見たけどダメ。


うん?ゴーレムがちらちらと見てるのは、船倉中央の模様。これは魔法陣か。

ゴーレムの仕草は、動力がないよと訴えているかのよう。

試しに魔法陣に土魔法の魔力を注いでみると…。

「引いて―、漕ぐ―」

動き出した(笑)。


スキンヘッドの真似をして「取舵一杯!」とか「面舵15度」とかいうと曲がってくれる。

「こっちに進んで」ユーリが示す方向に合わせて針路をとる。

わははは、順調じゃないか。

しかし、嫌な感じが漂う。

ラ「うわぁ、来たかもー」

船を取り囲む水面下広範囲に水神の気配。


そして、水面からザバァーっと触手が無数に持ち上がり、四方八方の船べりから船内に侵入して来た。

ブーーッ。ブザー音が長く響く。

船の上空に陣取った地竜が石弾バルカン掃射で、船の外周に沿って触手を薙ぎ払う。

俺は船内に残った形のある水神部分に向けて、船を壊さない方向に石礫を飛ばして対処する。

気付くとキースもユーリもララも奮闘していた。

水神の切れ端が全部水に戻り、一旦落ち着いたので、霊力と魔法の充填促進薬を飲んで身構える。

ララには魔法充填薬を渡して置いた。


また来た!触手の第2波。こんどは色付き触手混じりだぞ!

再びバルカン掃射と、切れ端の処置。石盾を逐次展開して飛沫に対処する。

うーん、忙しい!手が足りない。触手が多過ぎる。

まずい!霊力が切れた。バルカン掃射が止まる。


ふと思いついて、甲板上のオーツ兵の死体を湖面に投げ込んでみた。

おお、触手が引いていく。そして湖面はいきなり静かになる。

「…鎮まった」

「生贄が有効なんだ」

「これで1時間は大丈夫かも」

船はかなりボロボロになったが航行には支障ないようだ。

どうやら切り抜けた!


ユ「ところでサブ、土魔法も凄いね!」

俺「あ」

せっかく片手にスリングをぶらせげてカモフラしてたけど、無駄だよねーやっぱり。

「「「ぷぷぷっ」」」

思わず赤面した俺でした。


「目指す岸までどれくらいかかる?」

「どうかな、2時間ちょっとくらいかな」

「オーツ兵の死体があって良かったね」

「全くだ」

水神の制御方法ってこういうこと?


その後もう2度ほど死体を投げ込んだ。

生贄で鎮めて1時間程経つと、再度船の周囲に水神の気配がしてくるので、すかさず死体を投げる。

すると気配はすーっと鎮まる。

そうこうするうちに、目指す岸に到着。

素早く降りて、土魔法と掛け声で船を湖の中心部方向に航行させる。

この船、きっと1時間後には襲撃されて沈んでしまうんだろうな。

やばい!オーツの街からも追われる身になったかも…。

*****


クリュウ・マスタ 自由人

素養

 言語対応

   東方共通言語/古代神聖文字

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

土魔法B

     石礫B/土槍D/石盾

   火魔法B

     火球B/炎盾

   水魔法C

     水流刃C/水盾

風魔法B←UP!

     風爪C←UP!/突風B←UP!/風盾/空調

  植物利用

     成長促進/植物素材

   金属加工

     変形/修復

製薬

 精霊術

   練霊素/精霊の声/肆竜気

     

 超取得/超成長/超回復/知覚同調/竜知覚(抑)


スペック

 FL47-401B(2,258)

 フィジカルレベル47

 戦闘力401

 ランクB

 次のレベルまであと経験値2,258

 

 ML48-441/441B(13,195)

 マジカルレベル48

 魔力量441

 ランクB

 次のレベルまであと魔術経験値13,195


 SL49-582/485(+97)B(18,681)

 スピリチュアルレベル49

 霊力量485

 ランクB

 次のレベルまであと精霊術経験値18,681


スキル

 剣術A/槍術G/投石術D←UP!/格闘術A/盾術B


装備

 ミスリルソード150/ミスリルスーツ180/ミスリルフード100/

 ミスリル手袋50/ ミスリルブーツ50/ミスリルリング(+20%)

吸魔の剣50


主なアイテム

 魔収納/ミスリルナイフ/テント/寝袋/魔石闇A・B4、水B10、地B10

 回復薬上・極10/傷薬下・極10/毒消し下・極10/防眠薬下/万能薬下/

 魔力充填薬極9/魔力回復促進薬極9/霊力充填薬極10/

 霊力回復促進薬極9/エリクサー極


所持金 302G


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D=良い C=優秀

      B=傑出 A=達人級



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