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これが水神?

水神島4日目の朝。さて、今朝の人数は、23人だった。マイナス5人。順調に?減っている。

「さあ今日は右半分の内陸寄りを探査するよー」

うは、やっぱり行くんだ。律儀というか、怖いもの知らずというか。


今日も罠を警戒して慎重に進む。

発見した罠はできるだけ解除しておく。次にうっかり掛からないようにしておかないとね。

行く手に何らかの気配を察知した場合は、しばらく身を潜めて様子を伺う。

ただ昨日までと違って、魔物達はこちらに気が付くと向こうから回避しているようだった。

強者認定されたかな?魔法で脅したのが効いたか。それとも戦闘場面を見られたか。

挑戦者達も、少なくとも正面から戦おうとする者はいない。

それだけ知恵が回って慎重な奴らが、生き残ったということだろう。


何事も無く順調に逆端に到達する。

ユ「さて、こうなって見ると、重要ポイントはやっぱり中央の泉だね」

ラ「泉に行くつもり?」

キ「俺は反対だ」

俺「まずは遠くから様子をみたいけどな」

ユ「うん、観察ポイントからじっくり眺めようか」


ということで、最も良さげな観察ポイントである左半分の内陸寄りの高台に移動する。

途中、ゴブリン数匹の群れに遭遇するも、難なく殲滅し、無事到達。

泉ウオッチングを開始する。

兎や鼠、ボアに狼、ゴブリンとかコボルトなど、動物や魔物がしょっちゅう水を飲みにやって来る。

ここらの地方は雨が少なく、10日に一度くらいしか降らないらしい。

川が無く、断崖に囲まれたこの島では、この泉から水を飲むしかない。


「あ!」ボアが1匹、泉に引きずり込まれた。

「何があった?」「見逃した」「水が盛り上がったけど」「俺もそれしか分からなかった」

観察を続けること1時間。

「お!」「まただ!」今度はオークが一匹引きずり込まれた。

「水が盛り上がったと思ったらオークが消えた」

「何か水が巻き付くような変な動きだったよ」


俺は竜知覚のズームアップでもう少しはっきり見た。

水面から何かが出て来たというよりも、水面が変形して触手のような形状になり伸びて、オークに巻き付いて捕らえ、素早く水中に引き込む、その際に盛大に水しぶきが上がる。

泉は凄く深くて、オークは水中深くまで引きずり込まれて行って、そこから先の様子は分からなかった。


「あ、何か出て来た!」

それは剣だった。あのオークが持っていた剣だ。

ペッと吐き出されるように泉のふちに剣が放り出され、岩に当たってギャリーンを音を響かせる。

別のオークがそれを拾って、グホグホ喜んでいた。


その後も同様だった。

謎の存在は時々泉に近付く生物を引きずり込み、武器や防具があったらそれを吐き出す。

それは消化できない物をペッと吐き出すような感じに思われた。

頭部を捕らえられた場合は無言で、手足を捕らえられたなら悲鳴を上げながら、引きずり込まれて行く。

夜中に時々聞こえていた断末魔はこれだったんだ…。


夕方近くになって、本拠に戻り、夕飯を摂ったが雰囲気は重い。

ユ「あれがきっと水神だね」

ラ「神様っぽくないけど…」

キ「あれの正体は何だと思う?」

俺「とても大きな生物の一部分のような気がする」

アレの気配はそれほど強いモノではないが、地下一面に広がっているような感じがするのだ。


ラ「水にしか見えなかったよ」

ユ「透明なのかなぁ?」

キ「伸び縮みしているような感じだったぞ」

俺「色々な形に変形しているように思えた」


ユ「剣を吐き出すのはどうしてかな?」

俺「金属は消化できないからじゃないか」

キ「うん、そう思う。兜や槍の穂先も出してたものな」

ラ「あれが他の餌を引き付ける誘因になってたかも」

謎は深まるばかりだが、アレのイメージはだいたい掴めた。

だからどうこう出来るという感じはしないが…。


食後の暇つぶしにキースに投げナイフを教わったが、どうも投げると回転してしまってダメだ。

やっぱり石の方が俺には合ってる。

「石を投げるなら投石紐スリングがいいぞ」

丈夫な紐があれば簡単に作れるというので、植物素材で作った麻紐で作ってもらった。

中央部分に石受けの編み目を作って、そこに石を入れ、紐の両端を持ってグルグル回して、片端を離すと石が飛んで行く、ただこれだけのものだ。簡単にハンマー投げをする道具という感じ。


その威力は抜群だ。初速150~200キロくらいあるんじゃないかな。飛距離も200メートル以上ある。

ただし、正確に狙うのはとても困難で、まあ数撃ちゃあたるかも程度。

でもこれ、地竜の石弾のカモフラとして有用かも。

指弾用の小石に加えて、スリング用のピンポン玉~こぶし大の石も確保して、魔収納へ入れて置く。

地{むふふ、良いぞ良いぞ}


指弾、模擬戦、浄化、など夜の行事を一通り済ませて、寝床へ。

不寝番の順番を決めて、眠りにつく。

恒例の断末魔ももう慣れっこなので、さほど気にせずぐっすり眠れた。

*****


5日目の朝。今日の人数は、19人。マイナス4人。俺達4人の他には15人だけになってしまった。

今日はまっすぐ、泉ウオッチングポイントへ直行。

むむ?何かある。

剣・槍・兜・胸当て。まだあるぞ、番号札が2枚に数枚の銀貨と銅貨。

動物達が水を飲みに来ても泉は沈黙。ゴブリンにも沈黙。


ラ「どうする?拾いに行く?」

俺「それを待ってるような気がして仕方ないが」

キ「俺もそう思う」

ユ「もう少し様子を見ようか」


しばし観察をしていたら、泉に接近する人間の気配が2つ。

勇者か愚者か、番号札その他を拾いに行くようだ。

いや革袋も持っているので水も汲むんだ。どうせならおまけ付きのうちにということか。

片手に剣を持ち、もう片手に革袋を持ちながらその手でまず番号札を拾おうとする。

その時、水面から触手が伸びた!2本だ。


おお!泉に近い方の男が剣で触手を斬った。斬った先は水に戻ってバシャリと落下、しかし残った触手が更に伸びて男の足を掴む。それを斬ろうと振り上げた剣を持つ腕を、もう一本の触手が掴む。

「うわぁぁぁ、嫌だあぁぁぁー」叫びながら引きずられ、泉に飲み込まれる男。

もう一人は札1枚と銀貨を拾って逃げ出していた。


「斬ったな」「ああ」

水{斬ったら魔素が放出された。水属性}

風{魔素と水が結びついている時は、触手の形になってたっすね}

地{魔素が水に溶けた状態の、液体型の魔物のようだな}

火{単なる集合体なのか、どこかに核があるのか、判別できなかった」

竜達にも未知の魔物ということか。


やがて、ペッと新たな剣と札とお金が吐き出された。

怖いもの知らずのゴブリンがやって来て、それらを拾い上げる。

水も飲んでホクホクしていたところへ、新たな人間が登場。

「グギャー!」

ゴブリンを倒して、札その他も横取りして行った。


本拠地に戻って、今日見た現象を解き明かすために協議する。

仮名『水神』は水属性の魔物ということで意見は一致。

キ「剣で斬れたから、物理攻撃は通用するってことだな」

俺「大きなダメージではないけど、嫌がっていたとは思う」


ユ「攻撃する時と見逃す時があるのはどうしてかな?」

ラ「気まぐれ?」

俺「1体を引きずり込むと、残りは見逃すのかも」

キ「引きずり込んだ後は、1時間くらいは安全タイムなのかも知れん」


色々試して見たくてウズウズする。

課題は、各種攻撃の有効性と、安全確保の方法、安全性の見極め。

そして、出来れば謎生物の全貌の解明。

明日に向けて、みんなでワイワイ作戦を立てながら、本日は終了となった。

*****


6日目。今日は17人。マイナス2人。目撃した1人以外にもう1人減っただけか。安定してきた?

さて今日も泉ウオッチング。

お、剣と番号札とお金がこれ見よがしに撒かれている。

ラ「餌でおびき寄せるなんて、知能が高いのかな」

キ「なんせ、神様だもんな」

ユ「悪意の無い自然な行動に見えるよ。ごく普通の野生の魔物なんじゃない?」


獣や魔物は水を飲みに来るが、人間はなかなか現れない。

痺れを切らしたのか、とうとう1匹の狼が犠牲になった。

数分後、剣と番号札とお金を回収しに人間が現れる。無事回収できた。

「このタイミングはやっぱり」

「うん。犠牲が1体出ると、暫くは安全タイムと考えていいみたいだ」


それから1時間後、今度はゴブリンが狙われた。

{風竜、頼むぞ}

風{うっす}

風刃で触手を切断する。斬った先は水に戻り、魔素が一部消失、一部は切断元に回収されて再度触手が伸びる。もう一度風刃で切断。泉から新たな触手が1本出て来る。

「グギャ、ゴギャ」腰が抜けて四つん這いになっているゴブリンどもが這いながら逃げようとする。


触手を根元に近いところから切断すると、切断先は丸まって形を保ったままになった。

そこに風刃をもう一発叩き込むと、水に戻った。放出された水属性の魔素は霧散する。

俺「なるほど、分かってきたぞ」

ある程度以上の魔素がないと形を保てないんだと思う。

ユ「サブ、風魔法で攻撃出来たね!」

ラ「あーっ、何か来る!」


泉から空中高く、水の棒が伸びていた。

その棒が、グーンと俺達のウオッチングポイントに肉迫する。

そして棒の先が膨らんだと思ったら、そこにパッチリと目玉が出現した。

ギロリとこちらを見回す。

キースが目玉にナイフを投げたが、目玉はそれをひょいと躱した。


目玉が閉じたと思うと、その部分は水の容量を増してモリモリと膨らみ、色付いて来る。

と、水の棒から切り離されて地上に降りた水の塊りは、大きな蛙の姿になっていた。

オークよりも大きい。重さ1トンは軽く超える。

色は紫。いかにも毒がありそうだ。

キースがナイフを投げ、ララが短弓を射た。

紫蛙は口を開けて超速で舌を伸ばし、空中でナイフと矢を絡めとった。


一旦口に入れたものの、食えんとばかりにぺっとナイフと矢を吐き出す。

紫蛙の行動パターンは『水神』そのものだ。

おや?ナイフと矢じりが少し溶けている。どうやらこいつ、強力な溶解液を持っているようだ。

超速の舌と溶解液と、そしてたぶん毒持ち。

一方、紫蛙を切り離した水の棒の先端には、新たに目玉が出現して、こちらに向けてパッチリと見開かれていた。じっくりと観察するつもりらしい。

さあて、どうする?



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