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第三勢力

ふと嫌な気配を感じて頭上を見ると、そこにハーピーがいた。

青い顔の風魔法系の奴で、以前見た同種よりも一回りから二回り大きい。

火{キングハーピーだよ}

水{の精霊}

「精霊!?」


そういえば半透明っぽい。うちの参竜よりだいぶ濃いけれど。

キングハーピーから風刃が撃ち出された。そこそこ強力な奴だ。

足捌きで躱し、かつ、ミスリルソードで受け流してみた。風刃の軌道が逸れる。

「精霊の攻撃でも物理的な防御はできるんだ」

水{魔法防御が無意味なだけ}

火{精霊の攻撃が生身に当るんだから、物理防御にだって当たるよ}

「そういうもんか」


キングハーピーが一瞬の溜めの後、大きな霊力を放出した。

俺の周囲で暴風が吹き荒れ、無数の風刃が乱舞する。

しかし、ミスリルの防具は風の衝撃を消し、風刃も完全に防ぐ。

反射的に双剣で大き目の風刃はカットしてしまうが。

「うっとおしいな。火竜、あいつをやっつけられか?」

火{当然よ!まっかせて~}


爆が発動。キングハーピーの頭部が爆散した。と思ったとたんに全体が雲散霧消してしまう。

「あれ?消えた。そうか、精霊だから死なずに消えるだけか。精霊使いの方をやっつけないとだな」

ヌバルの将隊を見る。竜の視覚で、ググーッとズームアップ!

偉そうにしている小太りの若い男。ローブ姿の女一人と男二人。そして奇妙な服装の痩身の男。

ゆったりした袖の派手な浴衣風の着物にじゃらじゃらした飾りをぶら下げ、頭には毛皮の帽子。

なんかあたふたしている。こいつが精霊使いに違いない。


む!他の4人が味方の兵に向けて攻撃魔法を次々に発射している。危険だ。放置したくない。

タグの将隊はどうしているんだろう?

あっ!ボロボロだ。火魔法で広範囲に燃えている。しかも全員血だらけ傷だらけで、生命反応なし。

将隊は攻撃しないなんて嘘じゃないか!

よし、もう容赦しない。


「水竜、ヌバル将隊付近に油霧多目に。火竜、あの豚男に爆で点火だ」

水{(コクン)出したよ}

火{行っけー!大点火!}

カッ!眩い光が目を射る。ヌバル隊将陣のあった場所に巨大な火球が膨れ上がる。でかい!!

地表を舐めるように土煙が広がる。

うわっ来た。これ爆風だ。衝撃波というほどではないが、かなりの風圧と熱。

この距離でこれほどだから、至近距離ではどえらいことになっただろう。

ドォゥーーン!グラグラグラ。腹に響く爆音と地面の振動が遅れてやって来る。

*****

<パサン視点>

重装歩兵方面には手練れの敵兵がいる。あ奴ひとりに蹂躙されたようだ。

始末せねば。

「あ奴を殺せ」

「クァー」

ハーピーキングを仕向ける。俺の言葉を理解する賢い奴。そして無敵の強さ。

俺はこいつと共に、この世界でどこまでのし上がれるだろうか?


「まだ抵抗しているタグ兵がいるな。貴様ら、とっとと皆殺しにせんか。パサンお前もだ」

「はっ」

うるさい豚め。

しかしこいつの権力が俺の後ろ盾になる。

この人間性ではいずれは失脚やむなしだろうが、それまではせいぜい利用させてもらう。


む、どうしたハーピーキング、苦戦しているな。

なんと、やられた!こんなことは初めてだ。

「パサン何を手間取っておる」

「はい、すぐに手を打ちます」


ハーピーキング出てこい。まだ霊力は十分残っているぞ。

だが素直に顕現しない。頭だけ顕現させてしおれている。しっかりしろ!

まさか、怖気づいているのか!?

一体何があったというのだ。


おや、何だ、この霧は。油か?甘酸っぱいような不思議な、だが危険な香り。

「殿下!危険です。避難して下さい」

「何を言うか。2重の防御魔法結界で守られたこの場所より安全な場所などあるものか」

「しかしこれは…」

カッ!!突如ピグジンの顔が歪み、崩れ、割れ目から何本もの眩しい光の筋が伸びる。

静寂の世界の中でのスローモーション映像。

すぐに膨大な光量が視界を埋め尽くす。ホワイトアウト。そして熱……。

*****


「うはぁー、凄かったな」

返事が無い。参竜はいったん消えたようだ。油霧と点火の爆は、残り霊力のありったけだったんだ。

ということは、地竜も消えたはず。

ソーシンらに目を向けると、落馬した騎兵4人と味方2人が戦っていた。

あっ、また一人の味方が背後からばっさり斬られて倒れる。


戦闘現場に向かって走りながら、石礫4発と火球2発を飛ばす。これで魔法は暫く打ち止め。

石礫で1人が倒れる。3人には軽いダメージ。

遅れて火球が粘着。更に2人が脱落。

だが、最後の1人はまだソーシンと斬り合っている。

間に合ってくれ!


これは、相打ちか!?双方の剣が互いの体を貫通し、2人とも地に伏す。

俺が到着した時、既に誰も立っている者はいなかった。

「ソーシン、しっかりしろ!」

「…マサトか、俺頑張ったぜ。歩兵2人と騎兵2人。へへ、大手柄だろ」


傷薬極上を振り掛け、脇腹に刺さっている剣を抜き、再度掛け、更にはもう一本追加して全身の傷に薬を掛ける。

「還ったら、ロランに伝えてくれよ。俺の活躍を…」

「やなこった」

「え!?」

「自分の口で伝えな。ほら、もう傷は回復したぞ」

「あ…」

よかった。ソーシンは死なずに済んだ。


無事な馬が2頭いた。酸霧の余韻、そして爆音と熱波で興奮しているが、ソーシンに確保してもらう。

そして俺は全速力で、戦闘がまだ続いている現場へ駆け戻る。

敵味方の騎馬兵が落馬して徒歩で戦っている。あの爆発でみな落馬したようだ。

敵が多いが、少数の味方も残っている。

再顕現した参竜に援護を頼む。

地{よし}火{わかった}水{(コク)}


参竜に任せればそちらは安心だ。

俺はタグの将隊陣だった場所へ向かった。

これは…酷い有様だ。

焼け焦げてまだ熱の残る地面に、黒焦げの死体が3つ。

小さなのはパリスだ、首の取れかかっているのは子爵。

でかいのはウンボムか。


ウンボムの焼死体がやけに盛り上がっているので、ひっくり返してみると、そこには侯爵夫人の焼けていない体があった。

しかしすでにこと切れている。

体中に深い創傷がある。

地{嵐刃を使ったようだな。上級風魔法の範囲攻撃。あのキングハーピーの精霊だろう。そのあとでとどめとばかりに火板ファイアープレート、中級火魔法の範囲攻撃を使ったと見える}


うん?あっちに倒れているのはエランじゃないだろうか。

駆け寄ってみる。やっぱりエランだ。まだ息がある。傷は…打ち身だけだ。落馬して頭を打ったのか?

念の為に傷薬を掛けると、エランが覚醒したので、残りを飲ませた。

「う…マサト殿か。そうだ!将隊は?」

俺はゆっくり首を振る。


「そうか、それで戦況は?」

改めて、戦場を眺める。

敵は全滅したようだ。

味方騎兵の残兵が2人、剣を杖によろよろと歩いている。

遠くには馬を連れたロランがトボトボとこちらに向かっている。


「どうやら勝ったようだ」

「ヌバルの将隊はどうした?」

「俺が倒した」

「敵隊長のピグジンも?」

「もちろん」

「そうか…流石だな。しかし……」

意外にもエランは暗い表情。続く言葉を待ったがそのまま口をつぐんでしまった。


結局生存者は、エラン、ソーシン、騎兵2人、そして俺のわずか5人。

騎兵2人は満身創痍でボロボロ。傷薬極上2本で何とか回復させる。

敵は見事に全滅。

ヌバル将隊跡地は、クレーター状に抉れて土がむき出しになり、広範囲に焦げて、未だにおき火が燻っている状態だ。

「一体何をどうやったらこんなことになるんだ?」

「まあ、油に火を付けたっていうか、そんな感じで…」


「マサト殿、大手柄なのだが、問題は敵将の領家三男坊を傭兵の貴殿が倒したことだ。ヌバルは下手人としてマサト殿の身柄を要求するだろう。そして残念ながらタグはそれを拒めない」

真剣な、そして悲しそうな表情でそう告げるエラン。

ソーシンも二人の騎兵も青ざめた表情で無言の肯定。

「そうか、そういうものなのか。じゃあ俺はタグに戻るのは止めた。この後どうしようかな?」


ふと戦場を見ると、ゴブリンとコボルトが倒れた兵の装備を集めている。

「なんだ?あいつら」

「人型の魔物は人の武器を見つけると我が物にする習性がある」

「それにしても数が多いな」

ざっと見、100匹以上いる。

そして、泉の茶屋を既に魔物がちゃっかりと占領していた。

ゴブリンとコボルト、そしてオーク、なんとオーガまでいる。


「なんだこれ、こんなことあるの?」

驚くソーシン。

「いや私も初めて見る。何かこの異種の魔物どもを統率する上位の魔物が背後にいそうだ」

エランが冷静に判断する。

あちらでは、コボルトが奪った剣を嬉し気にビュッビュッと振っていた。


茶屋にいるオーガらは既に装備を調達済みで、みな帯剣している。鎧は付けていたりいなかったり。

「これはひょっとすると、最初に駐屯タグ兵やヌバル商人を襲ったのは、奴らかも知れないな」

よく見ると、今回戦場にならなかった茶屋周辺の地点に、古い斬殺死体が転がっている。

「魔物にたぶらかされて、タグとヌバルが殺し合い…」

騎士の1人が呟いたが、どうやらそれが真相のような感じだ。


「よし決めた!俺はあの魔物どもを殲滅して、背後の上位の存在に迫って見るよ」

「マサト殿、それはさすがに自殺行為では?」

「いやぁ、タグに戻っても処刑待ちの身なんでしょ。だったらイチかバチかも悪くない」

まあね、ハーピーの巣でも生き延びた俺だし、何とかなるかも?


「分かった。貴殿の判断に任せる。我らは取り敢えず報告のためにタグへ戻る」

「マサト、死ぬなよ」

「ああ、大丈夫だろ、たぶん」

生き残った馬のうち、状態がよさそうなのを4頭集めて、エラン達はタグへ向かった。

馬に不慣れなソーシンを気遣って、駆け足ではなく、速足で。

それでも陽が落ちるまでには到着するとのこと。


さて、ゴブリンその他に向き合うとするか。

背後の上位存在って何だろうな?まさか、竜とか。

地{いや、それはない。竜が近くにいればそれと分かるからな}

水{魔人でもない}

火{オークキングとかジェネラルとかそういうのかな?}

地{それにしては、統率や狂暴性が今一つだな}


「ま、何でもいいや。やれるところまでやってみて、危なそうなら逃げよう」

水{(ワクワク!)}

火{ふふふ、面白そう}

地{やめるときはすぐに言うのだ。我らの制止を期待するな}

水{戦いだしたら止まらない}

火{はっじまっるよー}

こいつらやばい。戦闘、好き過ぎ…。

*****

クリュウ・マスタ 自由人

素養

 言語対応

   東方共通言語/古代神聖文字

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

土魔法C

     石礫C/土槍E/石盾

   火魔法C

     火球C/炎盾

   水魔法E←UP!

     水流刃E←UP!/水盾

植物利用

     成長促進/植物素材

   金属加工

     変形/修復

製薬

 精霊術

   練霊素/精霊の声/参竜気

     

 超取得/超成長/超回復/知覚同調/竜知覚(抑)


スペック

 FL35-128C(2812)←UP!

 フィジカルレベル35←UP!

 戦闘力128←UP!

 ランクC

 次のレベルまであと経験値2812

 

 ML33-106/106C(1417)←UP!

 マジカルレベル33←UP!

 魔力量106←UP!

 ランクC

 次のレベルまであと魔術経験値1417


 SL34-139/116(+23)C(2602)←UP!

 スピリチュアルレベル34←UP!

 霊力量116←UP!

 ランクC

 次のレベルまであと精霊術経験値2602


スキル

 剣術B/槍術G/投石術F/格闘術A/盾術C


装備

 ミスリルソード150/ミスリルスーツ180/ミスリルフード100/

 ミスリル手袋50/ ミスリルブーツ50/ミスリルリング(+20%)

鋼の短剣(良質)10


主なアイテム

 魔収納/ミスリルナイフ/テント/寝袋

 回復薬上・極10/傷薬下・極4/毒消し下・極10/防眠薬下/万能薬下

 魔力充填薬極10/霊力充填薬極10/エリクサー極


所持金 300G


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D=良い C=優秀

      B=傑出 A=達人級



水竜の油霧は単なる油では無く、極めて爆発力の強い物質のようです。

ちなみに、ニトログリセリンは杏のような香りのする液体であり、添加物によってはアーモンドのような香りがするそうです。

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