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魔法研修所

魔法というものが存在するこの世界ではあるが、魔法が使える者の割合は多くはなく、総人口の1%程度に過ぎない。魔法使いであることはそれだけで特権なのである。

そして魔法の力は遺伝に左右されるところが大きく、魔法使いの家系がこの世界の貴族となっている。

魔法使いと言えばだいたい貴族であり、貴族と言えば何らかの魔法が使えると期待されるのだ(必ずしもそうとは限らないところが、色々と混乱を招いているわけであるが)。


血統により同系統の魔法が遺伝することが多いが、むろん絶対ではない。

生活魔法の使い手は主に商業系に、生産技能系魔法の使い手は財閥系に、精神感応や真偽判定などの統治系魔法の使い手は領主や王族あるいは大臣や側近などの宮廷系の道に進むことになる。

そして、攻撃魔法や防御魔法の使い手は武官系魔法使い、治癒や加護魔法の使い手は神官となる。


魔法研修所は、戦闘に関係する武官系魔法使いと神官が研鑽を積む場であるが、たたでさえ少ない魔法使いの更にその一部門なので、会員数はとても少ないのだ。

ただ魔法は体力に直接左右されるものではないので、老若男女を問わず、魔法使いには女性や子供老人の姿も見ることができる。この点も兵士とは大きく異なる点であった。

*****

衛兵が二人で警備している扉があった。ここが魔法研修所らしい。

女性神官は顔パスのようで、目配せするだけで、同行していた俺も扉を通してもらえた。

中はサロンのような部屋であり、奥の卓に老人が一人座っていた。卓上の札には教官と書かれている。

「パリスよう来た。ときに、その御仁はどなたかな?」

「見学希望の方で、領主様の特別許可証をお持ちです」


「桐生将斗です」

「キリュウ家とな、はて?」

「実家は遠国にあります。訳あってこの世界を旅しています」

「ほう、それはそれは。して、貴殿は何か魔法をお使いになるかの?」

「石礫と火球と水流刃、あと石盾と炎盾です」

「なんと、土・火・水の3属性、そして攻防ともに使うとは!」


普通は1属性のみであり、2属性使うことも稀である。攻撃か防御のどちらかに特化するのが通常だ。

将斗は生活魔法や技能系魔法を隠すつもりは無く、練兵場からの流れでついこう答えたのだが、幸いであったと言える。


「石礫と火球は初級魔法、水流刃とはあまり聞かぬ魔法だの。何発くらい打てるかの?」

「6発ですね」

将斗は通常使う威力前提で答えた。ちなみに、普通は魔法の威力の加減はほとんど出来ない。

そして両者の間で大いに誤解があったのは、将斗は連発回数を答えたが、魔法教官の老人は一日の使用回数を尋ねたのであった。


この世界の常識では、素の魔力は夜間に眠らないと回復しない。起きていても時間経過で若干量は回復するが、とにかく回復はとても緩やかである。

将斗の超回復では魔力切れから1分で回復するが、これはとんでもないチート能力なのである。


魔力充填薬を使えば強制的に回復できるが、服用するたびにその日の最大魔力値は減少して行く。

素で魔力値100なら、初回服用では80まで、2回目の服用では64までという風に。

減少割合は1割ないし5割程度で、もちろん減少割合が小さいほど優秀である。


なお、魔力回復薬は、回復速度を上げる薬であるが、上質のものでも本来8時間睡眠を要するところ、4時間で足りるとかその程度である。なお上質回復薬だと起きていても12時間で全回復する。

将斗の場合、1分で回復するところが30秒に短縮される効果がある。

*****

「属性は多彩、使う魔法は各属性初級(ただし水流刃は保留)、魔力量は中級程度というところじゃな。では次に魔法の威力を見てみるか」

魔法を良く知る人に客観的に判定してもらうのは良いな。


魔法教官が奥の扉を開けると、そこは中庭だった。

15mくらい先に的があり、その先には土塁が積んである。

男児と女児が2人ずつ魔法を撃つ訓練をしていた。

ぶつぶつ呟いては、可愛い声で「えいっ」と掛け声を出して、ふよふよと火球や水球を発動していた。

的の手前に素焼きの円盤をセットしてそれを魔法で割るのだ。射撃場みたいな感じだな。


「そこに立って、右端の的を狙って撃ってみなさい」

「はい」

無造作に石礫を撃った。皿が割れ、的を貫通し、後ろの土塁にズボッとめり込んだ。

「え!?」「無詠唱?」「はやっ!」「すげぇー」

子供達が囃し立てる。


「マサト殿は無詠唱で魔法を使うのだな」

「え、は、はい」

え、これって変なのかな?

将斗は意識していなかったが、無詠唱魔法は珍しいのだ。


「では次は盾を貫けるかやってみなさい」

教官が、短く何が呟いて、的の前に風盾を展開する。

さっきと同様に無造作に石礫を撃つと、何事も無いように、風盾を貫通し、皿が割れ、的を貫通し、後ろの土塁にズボッとめり込んだ。

「「え!?」」みんな驚いている。


今度は教官は、従者に的前に魔法陣を書いた木札を設置させて、2枚の風盾を展開した。

俺の石礫は、2枚の風盾・皿・的を貫通し、後ろの土塁にプスッとめり込んだ。

「石礫で、分の悪い風盾を2枚も貫通するとはのぉ。威力は極上じゃ」


次は盾の威力をみることになった。

教官が攻撃魔法を撃ち、俺が的の前に盾を出して防ぐ。

教官は風刃を撃つというので、俺は取り敢えず土盾を出した。

教官が短く呟いて撃つ。詠唱短縮という奴らしい。土盾は風刃を弾いた。

続いて風矢。これも弾く。気のせいか教官の顔色が変わったような。

子供達も女性神官も固唾を飲んで見つめている。


「では次は風槍じゃ」

今度の詠唱は前よりも少し長い。大きな魔力が込められているぞ。

パシュッという発射音とともに長大な風槍が放たれた。風魔法の上級技らしい。

さすがに石盾を貫通し、皿を割り、的に僅かに突き刺さったがそこで風槍は止まる。石盾は消滅した。


「マサト殿の魔法の威力は攻防ともに上級相当じゃ。石盾で風槍とほぼ同等なのじゃから誇ってよいのぉ」

子供達が嬉しそうに、紅葉のような手で拍手してくれている。

「研修所は、魔法発動の確実性、威力の増大を訓練し、詠唱短縮を学ぶところじゃから、マサト殿にはもはや不要じゃな。タグの街に所属されるおつもりなら、是非魔法使い部隊にお入りなさい」

うーん、嬉しいような残念なような。

*****

貴族街を出て、薬屋へ行く。

「こんにちは。あの薬、売れました?」

高価過ぎて売れ行きが懸念された極上の薬の状況を尋ねてみる。

「売れた。3本があっという間に完売じゃ。さすが貴族は金を持っとる。在庫があったら引き取らせてくれんか。今度からは1本250Gじゃ」


即席で魔法充填薬極上を1本作って卸した。『製薬』がある限り、金には困らない!

「ところで、薬草と毒消し草以外で、ここらでとれる有用な植物ってありますか?」

「ここらではその2種類じゃな」

残念!


さっそく街の外に出て、薬草と毒消し草を積んで、極上の傷薬と毒消しを各10本作った。

そして周囲の安全を確認しながら、回復薬・魔力充填薬・霊力充填薬も各10本作る。

そうだ、鋼の短剣を作っておこう。

水竜に頼んで鋼のインゴットを出してもらい、火竜に頼んで鋼の短剣を打ってもらう。

それを金属加工で、丁度良い形に成型し、補修で研ぐ。


左手で持つ武器が、鉄の短剣から鋼の短剣にグレードアップした。

威力も6から10にアップ。あれ、意外と少しだけだった…。

まあこれはね、ミスリルソードが良すぎるわけで。


水{えと…}

「ん、何?」

水{水盾、出るよ}

「おおー!そうか、これは火攻撃を効果的に防げるんだよね」

水{(コクン)}


「てことは…」

出た!俺自身も水盾を出すことが出来た。

これで盾も3種類。石水盾も出せる。ただし、水炎盾や石水炎盾は無理だった。

「なるほどー、反する属性の盾は共存させられないのか」

火{うん。反対属性の同種魔法は相殺しちゃうからね}


「そう言えばさ、俺の魔法って、種類は初級で威力は上級だったけど、参竜の魔法はどうなんだろう?」

地{石弾と土槍は中級だな}

火{火球は初級。爆と炎は上級}

水{落滴は中級。霧は上級}

「俺の水流刃は?」

水{オリジナルだけど、たぶん初級相当}


火{ヌシさんが成長すれば、上級やそれ以上の魔法も含めてもっと多彩に使えるようになると思う}

「ごめんよ、俺のせいで」

地{なんの。お主の霊力の風味は極上だからごめんどころではない}

火{うん!}水{(コクコク)}


「参竜の魔法の威力はどうなんだろう?」

火{ヌシさんの魔法威力が上級なら、あちしらは超級かな?}

地{それとな、儂らの魔法は魔素ではなく、上位互換の霊気から組み立てられておるから、普通の魔法盾は素通りする。霊気から作る魔法盾でなければ防げない}

「なんと!それは凄いな」


「そもそも参竜って、ランクで言えばどれくらい強いの?」

地{今の状態でどれくらいかのう?ランクBには楽勝じゃったからランクA程度かの}

水{霊力が尽きれば消えちゃうけど…}

火{ただ生身じゃないから、たとえやられても消えるだけで死なずに再顕現できるよ}

地{お主がやられれば終いだがな}

「ぐっ…」


「生身の竜っているのかな?いたらどれくらい強いのかな?」

火{レッドドラゴンはどこかで生き残ってると思う。数は少ないだろうけど}

水{ブルードラゴンもいる…はず}

地{アースドラゴンも生存しているはずだ。どの竜もその強さは、最低でもランクSだな}


「やっぱりいるんだ。で、そんなに強いのかぁ。そのうち竜に出会うこともあるかな。戦ったら厳しそうだなぁ。参竜は実体じゃないから不滅だけど、物理攻撃力がないんだね」

地{もしも竜に出会ったら全力で逃げることだ}

火{下手に手を出すのは絶対に避けてね!}

水{(コクコクコク!)}


まあ滅多に出会うことはなさそうだ。

さて、陽が暮れて来たのでタグの街に戻ることにしよう。

お金の心配も無くなったし、今夜は宿屋に泊まってみようかな。

*****


クリュウ・マスタ 自由人

素養

 言語対応

   東方共通言語/古代神聖文字

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

土魔法C

     石礫C/土槍E/石盾

   火魔法C

     火球C/炎盾

   水魔法G

     水流刃G/水盾←NEW!

植物利用

     成長促進/植物素材

   金属加工

     変形/修復

製薬

 精霊術

   練霊素/精霊の声/参竜気

     

 超取得/超成長/超回復/知覚同調/竜知覚(抑)


スペック

 FL34-116C(2938)

 フィジカルレベル34

 戦闘力116

 ランクC

 次のレベルまであと経験値2938

 

 ML31-87/87C(675)

 マジカルレベル31

 魔力量87

 ランクC

 次のレベルまであと魔術経験値675


 SL31-104/87(+17)C(2104)

 霊力量87

 ランクC

 次のレベルまであと精霊術経験値2104


スキル

 剣術B/槍術G/投石術F/格闘術A/盾術C


装備

 ミスリルソード150/ミスリルスーツ180/ミスリルフード100/

 ミスリル手袋50/ ミスリルブーツ50/ミスリルリング(+20%)

鋼の短剣(良質)10


主なアイテム

 魔収納/ミスリルナイフ/テント/寝袋

 回復薬上・極10/魔力回復薬上/傷薬下・極10/毒消し下・極10/防眠薬下/万能薬下

 魔力充填薬極10/霊力充填薬極10/エリクサー極


所持金 302G


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D=良い C=優秀

      B=傑出 A=達人級

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