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謎めいた扉

洞窟の奥へ奥へと進んでいった。

回廊が複雑に入り組んだ構造だが、双竜の意見も聞きつつ、迷わず進む。

離脱して若干の先行偵察が可能だし、彼らの竜知覚は俺のと違って抑制が無い完全版なので信頼できる。


サクサク進むうちやがて、やや幅が狭まった回廊に出た。長さ20mにわたり、床面がうねうねぐにょぐにょとぐねっている。

「げ、これ全部、蛇!」

地{毒蛇ばから各種集めたサンプルプールという感じだな}

火{立派な蛇地獄だよー}


「ミスリル防具で防げるよね?」

地{と思うがな}

火{でも噛まれまくったり毒液噴射を浴びまくったら?}

地{多少の毒は通るかも知れんな}

「毒消しは…、下しか持ってない。これって弱毒用だよな」


火{ぱっと見、強毒や猛毒の蛇もたくさんいるよ}

地{見たこともない新種も培養されているようだから、猛毒以上の劇毒とか極毒なんかもあるかもだ}

「…帰ろか」

火{まさか}

地{却下}


しばし作戦会議。知恵を絞って、持てる能力を総動員しての打開策を検討する。

その結果立案したのは、名付けてモーゼ作戦!

まず蛇床の壁際、幅1m、長さ5mを火竜が面炎で焼く。

そして地竜が1m、2.5m、4mの位置に2センチほど互い違いに土槍を生やす。

そしておれが植物素材で作った高さ1m、長さ5m、厚さ1センチの板を土槍の隙間に差し込んで立て掛ける。


これで蛇の海と一応遮断した歩行可能な通路、名付けてモーゼ道ができて、5mだけ先へ進めるはず。

焼け残りの蛇や、床・天井・壁面から新たに湧き出す蛇を、両刀と石礫で退治及び牽制しつつ進み、1分後に魔力と霊力が回復したら、同様にしてもう5m先までモーゼ道を伸ばす。

動いている蛇が数えるほどならば、双剣の餌食とすることは難しくない。

時に足を上げて蛇アタックを躱しつつ、前後左右に双剣を振り抜いて、ピシュンピシュンと蛇どもの細い鎌首を刎ね続ける。


ところが、死んだと思っていた蛇がしぶとく生きていて、首だけの蛇に突如噛みつかれたりもした。

それでも噛まれるのが数回程度なら、ミスリル防具が牙の貫通を防いでくれる。

蛇は強靭な生命力を持っている。首を刎ねてもしばらくは生きていて、牙が届けば噛みついてくる。

なので、単に首を刎ねるのではなく、頭自体を両断するように努める。


縦でも横でも水平でもよい。小さな頭蓋を破壊するように狙いを付けて精密に剣を振るう。

鎌首がシュッと伸びた後の蛇の攻撃モーションは割合に直線的なので、迎撃は容易であり、それも横断ちよりも攻撃ラインに沿った縦断ちの方がより柔軟に対応できるので、縦に頭を断ち割る攻撃を多用した。


竜知覚(抑)の質と速度は蛇攻撃を完全に凌駕していた!

そしてハーピー戦に続いて毒蛇戦も、剣速・軌道認識・折り返しての連撃の組み立てといった剣技の進歩にとても役に立ったのであった。

ハーピー戦は狙いよりもとにかく手数、毒蛇戦は正確性、ともに力技以外の部分の錬成につながった。


同時に襲い掛かる蛇が2~3匹なら難なく、10匹以上でも時間差があれば対処は可能だ。

躍るような軽快なリズムで体が自然に反応する。ピシュン、ピシュン、俺はもはや蛇斬りマシンだ。

切断後に首だけで飛んでくるしぶとい奴は、足や肘、そして剣の柄を使って叩き落す。

手に負えないほどの多数の蛇が、塊りでモーゼ道に侵入してきたときは、火竜の火炎放射や地竜の散弾で援護射撃をしてもらい、間引かれた残りを素早く感知して対処する。

こうして毒蛇どもを嫌という程、屠りまくって、わずか5~6分で蛇地獄をクリア!


「ふー、板が出せて良かったー」

モーゼ道を作り出せたのは、蛇がどさどさっと侵入することを防いだ板の功績が大きい。

植物素材、なにげに役に立った。


蛇地獄を抜けると、そこには妙な小山があった。

どうやら雑多な道具類が積み上げてあるようだ。

色味を判別するために、小さな火球を浮かべて照らしてみる。

これは…、錆びた鉄器が多いがそれに混じって、新しいピカピカの鉄器、水晶製品、宝石、金貨。

それらが積みあがって山になっている。


火{ハーピーが集めたお宝だね。あいつらピカピカ光るものが好きだから}

地{今は錆びてボロボロの鉄器も、拾った時は光っていたのだろうよ}

「なるほど、金とか宝石類は劣化しないから、未だにピカピカってことか」

ハーピーのお宝山を掘って、金や宝石等の価値のありそうなものをピックアップして行く。


「いよっしゃあ、あったー!領家の宝刀だ」

あのイラストどおりの、深紅の地に碧の蔦が絡みついたような装丁。何かの宝石製なのだろうか?

長さ30センチくらいの小刀だった。

抜こうとしたが抜けない。無理に抜いて壊れたら大変なのでそのまま背嚢に入れる。


ひとしきり詰め込んで、さてそろそろ良いかと背嚢を持ち上げようとして驚いた。凄く重い!

地{金はな、密度が高くて重いのだ}

これはちょっと持ち運ぶのは無理だ。少し減らさないと。

火{ほら、欲張らないで出した出した}

蟹の土鍋や盾、予備の剣、テントと寝袋も置いて行こう。

「くーっ、テントと寝袋、買ったばっかりなのに」


背嚢は容量的には全然余裕なんだけど、なんせ重い。

レベルが上がって筋力も上がったけど、今後の素早い行動を考えると、やっぱり背嚢重量は60キロぐらいがいいところかな。

火{欲張りは短命の始まり!}

はいはい。

断腸の思いで水晶や金や宝石類も多少放棄。

「うくくっ、悲しい。」

重量を調整して、背負い直す。これならば良し。


しかしまだまだ奥まで洞窟は続いているよ。

「さて…帰ろか」

火{まさか}

地{却下}

はいはい。


更に奥へ奥へと進む。下りが多い。だんだんと山の内部を下方に降りて行っているな。

おっと、広いドーム状の空間に出た。ここが行き止まりか。

天井まで10mくらい、床は直径20mくらい。半円状の部屋だ。

どんづまりまで行くとそこの壁の一部は不自然に扁平だった。

これは、ひょっとすると扉か?

ふと首の後ろあたりがぞくっとして、跳び退って回避した。

一瞬視線を感じたように思ったのだが…、気のせいだった。


「なんだ石像か」

壁一面に、巨大な苔むした猿の石像のレリーフが無言で佇んでいた。

天井まで続くほどでかい。不気味だ。

石像なのに、ひしひしと圧迫される感じがある。


小火球を浮かべて、扁平な部分の周囲を照らし出しててみる。

うん、確かに扉だ。なんか変な仕掛けがあるぞ。縦に並んだ3つの窓。

小窓の中と左右には妙な記号。

そして扉の上部には、動物の絵と妙な記号の羅列。


ピコーン!あ、突如記号が意味のある文字に化ける。

「一度の間違いは許される。しかし二度目には死を」と読める。

そして、扉の仕掛けに記された記号は、数字だった。555。


自己確認画面を見ると、新たな表示が。

『言語対応 東方共通言語/古代神聖文字』

壁の脅し文句は、古代神聖文字で書かれた警告文ということか。


そして壁の絵はパネル状に10枚。

鬼、豚、蛇、獅子、蝶、蛇、蜂、梟、魚、猿

扉の仕掛っぽいのはどうやらダイヤル錠らしい。

555と縦に並んだ3窓全てが5になっている。

どうやらこれを1回か2回で合わせなければならないようだ。

…これは詰んだか。手がかりが無い。


「帰ろか」

火{うーん}

地{古代文明は今より遥かに進んでいた。それが死を警告するからには…}

「侮れん!」


火{あのふくろうどっかで見たような…。あ!ハーピーの顔だ}

ん、ハーピーと言えばさっき散々戦った。次は蛇に悩まされて、ここには猿の石像!?

「ゴクリ」

地{パネル絵はハーピーが8番目、蛇が6番目、最後の猿が10番目。数字に対応させるようだな}

「となると、860あるいは逆に下から068。開始が1じゃなくてゼロからなら759か957も在り得るな」


火{凄ーい!やってみようよ。あちしの勘では860押し!}

地{第2候補は759だな}

「下から並べることはないかな?」

地{警告文は横書きだ。数字だけ縦書きということはなかろう。となるとこの縦並びは標高差と考えるべきではないか?}


「なるほど、木の上のハーピー、ちょっと下って地べたの蛇、ずんずん下ってここの猿か」

やってみるか。

数字の窓の左右には◄と►のマークが見える。

上窓の►に軽く触れてみる。

ブィンと低い音がして数字が6に変わる。

「おお!機構が生きてる。さすが古代文明!」


もう2回タッチすると上窓の表示は8になった。

中窓の►に1回タッチして6。

同様にして下窓を0にする。

数字窓の下に掌の模様が赤く浮き上がり点滅する。

ここに手を当てろということだな。


掌を当てて見た。

掌模様から数度、同心円上に光が広がるように走り、ブッブッブッと低く唸った後、光が消えて機構が鎮まった。しばらく待ったが何事も起こらない。

「これは、失敗か」

地{そのようだな}

火{残念!でもまだもう1回チャンスがあるよ}


「2度失敗した場合の死ってなんだろうな?」

地{巨猿の石像が復活して襲って来るに鱗1枚}

火{その猿がめっぽう強いに鱗2枚}

「猿が絶望的に強いに金貨1枚。って賭けになんねぇよ!」


緊急時に素早く逃げれるように、背嚢を降ろしてから、数字を759に合わせて、再び浮き出る手の模様に掌を当てる。

今度はさっきと違い、扉に同心円状の光が広がるように走り、続いて壁のあちこちに回路模様のようなものが浮かび上がっては消え、その位置が目まぐるしく変化する。

そして、プッシューッという音とともに、扉の境目にそって光が漏れ、そのまま音もなく扉がスライドして開き、パァアッと光が差し込んで来た。


扉の中は、柔らかい蛍光色の灯りに満ちた、静謐な通路だった。

壁はつるつるピカピカ。これな何の素材だろう。大理石かな?

壁から浮き出た柱に繊細なレリーフ。

壁、天井、そして床の全体が柔らかく発光していて、ぼんやりと明るい。

高い技術水準と芸術性、そして文明の香りと品位を感じさせる造りだ。

通路内の空気は、ひんやりと爽やかで花のようなかぐわしさだ。

空調もきちんと作動しているらしい。


「凄そうだな。地竜火竜は、古代文明のことをどれくらい知ってる?」

地{知っているのは、はるか古代に凄く進んだ文明があったということくらいだ}

火{同じー}

「そんな昔のものが、この状態で保存されてるって凄いな」

火{とにかく、先へ進もうよー!}

背嚢を背負い直して、前進を再開する。


古代文明の通路は、螺旋状に下っていた。そして意外にも間もなく行き止まりに到達した。

そこは…。

「水たまり、というか泉?深いな」

地{水が充満した縦通路というべきか}

火{螺旋階段が続いているよ}


双竜の知覚をもってしても解明し切れないほど先まで続いている水中縦通路。

そしてそこには何やら生物の気配があるという。

古代文明の支配を受けた生物なのか、ゴーレム的な人造生物なのか。

それはともかく、そもそも水中じゃあ無理だ。


火{あちしらは実体じゃないから水中でも平気だよ。水はキレイだし進もうよ}

地{1時間程度なら呼吸を止められるだろう?}

「無理無理。無呼吸はせいぜい1~2分が限界」

さてどうしようか?



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