表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/76

ハーピーの巣

タグ南東の山の麓までたどり着いた。

昨晩は例の樹上寝床にテントを張って寝袋を使って眠った。

これなら雨が降っても大丈夫だし、暖かくて柔らかくて快適に眠れる。

この世界に来てから一番の寝心地だった。

そう言えばまだ建物内で寝たことない…。


さてハーピーの件。

山はそこそこの高さだ。高尾山ぐらい?標高600m程度だろうか。

それでも登山道などあるはずもないので、登るのは結構大変だ。

藪を切り開き、魔物を倒し、虫を追い払いつつ、一歩一歩登って行く。

中腹まで来ると頂上付近に大きな木が見える。白黒まだらの木だ。

竜視覚で注視してズームアップすると、白い鳥と黒い鳥がいて、時々飛んでいるのが判る。


「ハーピーって鳥の魔物だよね」

地{大型の猛禽で、上半身が人間の女に似ている。風属性でランクDからBだ。群れだから手強いぞ}

火{鍵爪が最大の武器で嘴も侮れないよ。有名な催眠攻撃の他に風刃の魔法を使う個体もあるし}

「うわあ。ミスリル防具があるから大丈夫なんだよね」


地{ま、まあな。至近距離から重ね掛けされるとアレだが、まあダイジョブかな?}

火{そうだ、石炎盾ストーンフレイムシールドを使っていこうよ}

「え、ハーピーなんて怖くないんじゃなかったのか?」

地{世の中に絶対は無い}

火{敵が手強いほどワクワクするでしょ?}

「……」


竜は戦闘好き。要注意だな。

さて、早めに防眠薬(上)を飲んでおくとしよう。

こっちから見えるってことはハーピーからも見えてそうだもんな。


藪を抜けて、尾根に出た。歩きやすくなったけれど、ハーピーに発見された。

すでに相当数が頭上を旋回している。

なんだか妙な音が聞こえる。風の鳴る音のようなすすり泣きのような。

ひゅぁぁ~ん、ふぃ~~ん♪

確かテルミンとかいう電子楽器だったかな、それの音に似ている。

高く低く、強く弱く、ぞわぞわする感じ。


「これが催眠攻撃か」

地{音に乗っている催眠効果はミスリルフードとメッシュでカットされてるはずだ}

火{ちょっとでも眠くなったら言ってね。どうにかするから}

「どうにかできるのか?」

火{ありったけの力で近い奴から撃ち落とすからその隙に逃げて!}

「うへぇ、そしたら火竜は消えちゃうじゃん。その後の単独での対処が厳しいよ」


ハーピーはパッと見、外側の羽が黒い奴と白い奴がいる。翼を広げると2~3mくらい。内側の体はややピンク調の白色で、胸におわんのような盛り上がりが二つ付いている。これは…、おっ〇い的なものかな?

顔は丸くて扁平で、まん丸の目玉と鼻のように見える嘴。女の顔といえばそう見えなくも無いが、むしろフクロウに近い。胸があるから女顔に見えるだけかも。まあアレだ。お世辞にも美人顔とは言えない。

顔の色は、赤・ピンク・白の3種類がある。


数羽が急降下して来た。先頭の奴の頭部が爆散。火竜の爆が決まった。

2羽が体を打ち抜かれて墜落。地竜の石弾が貫通したようだ。

地上でバタバタギヤアァと悶絶しているところを、ミスリルソードで両断して始末する。

む!高速エネルギー反応が急接近。これが風刃か。

石炎盾を展開して防ぐ。ガガガガッと手応えを感じる。


更に5羽が急襲。テルミン音が大きくなる。

頭上に火竜の面炎が発生。1羽が反転、1羽を石弾が撃墜、俺の火球で1羽を仕留める。

面炎を抜けて来た2羽を石炎盾にぶち当てて勢いを止め、接地したところをミスリルソードと短剣でとどめを刺す。

いかん、双竜が消えた。俺の魔法も残り一発分。

まだ面炎が燃えているので追撃はない。


急いで近くのブッシュの中に飛び込む。植物の成長促進を発動してブッシュの密度を増しておく。

ふー、ここで少し時間稼ぎができそうだ。

ハーピーの巣らしき大木までは、まだまだ遠い。敵の数は多い。巣に近付けば益々多くなるだろう。

うむ、手強いぞ。どうする?


双竜が復活した。

「とりあえず、ふたりとも消えると一気に形勢が悪くなるからなるべく消えないように頼むよ」

地{一発分程度の霊力は常に残しておくとするか}

火{オッケー}

「俺も魔法は温存して、できるだけ物理で倒すようにする」


地{催眠音波は赤顔が出しているな}

火{風刃はピンク顔から来たよ}

「じゃあ魔法攻撃と盾防御はそいつらが近付いた時限定にしよう。そんじゃ、出るよー」

走り出た。時折進路を変えてジグザグに走る。

うは!10羽ほどが一斉に急降下して来たぞ。


双竜が赤顔とピンク顔を1羽ずつ仕留めた。色顔はあと2羽いるけど、取り敢えず放置。

テルミン音は1羽分だけなら耐えられそうだ。風刃はフットワークで躱す。

鍵爪を立てて迫って来る。猛禽特有の太い脚と鋭い爪、見るからに恐ろし気だ。

双剣の射程に入った、頭、体、足そして翼でも尾羽でも、全て刃が届く限り斬り捨てる。

手負いの白顔が後方の地べたでもがいていても無視して、ひたすら前進。


進路上にいる奴は地上だろうが低空だろうが、手が届く限り殲滅する。

前方、側方、上方、時に旋回して後方をも射程に入れて、縦横無尽に斬り払う。

ハーピーは全体に細身なので、どこから刃を入れても両断するのは容易だ。

豆腐に包まれた青ネギでも斬っているような手応えしかない。

もっともこれはミスリルソードの場合であって、鉄の短剣だと強靭な筋肉層と硬質だが薄い骨という当たり前の感触だ。


体を外して翼を切り裂くことになっても、骨さえ断っておけば、奴らはもはや飛ぶことが出来ない。

地べたをはい回るハーピーは、物理攻撃能力も追跡能力もほぼ無くその脅威度はゼロに近い。

ぼーっとしていれば嘴に突かれることはあるだろうが、むろんそんなヘマはしない。


とにもかくにも、白顔の物理専門ハーピーは当たるを幸い薙ぎ倒して、命を絶ちあるいは無力化する。

赤顔とピンク顔は、催眠攻撃と風刃を封じるため、魔力と霊力の残量に注意しながら適宜遠隔攻撃を交えて積極的に撃墜する。この色顔は地上に墜落しても魔法攻撃があるので、きっちりとどめを刺して置く。


戦闘中、石炎盾はできるだけ温存して、敵攻撃が集中してやむを得ないときだけ緊急防御用として使用することにする。

そして、敵集中による更にどうしようもないピンチの時には、火竜に面炎を発動してもらって、窮地を脱する。

なんせ、敵の数が多いので、何度かそういうピンチも訪れた。


そうやってひたすら突き進み、時に藪に飛び込んで回復するなどして、1時間も奮闘しただろうか、やっとのことで大木の根元までたどり着くことが出来た。

大木は樹高30mほどもある。恐ろしいほどの数のハーピーが枝上に待機し、かつ、ギャアギャアと喧しく周囲を飛び回っている。

テルミン音も相当数の重奏であり、果たして眠らずに耐え切れるのか不安だ。

大木の背後は崖で、その中ほどに岩の割れ目があり、ハーピーが出入りしている。

どうもあの割れ目の中に本当の巣があるらしい。


「しかし数が多いな!」

火{大木もろとも燃やしちゃう?}

「いや、それだとあの割れ目に入れない。あそこは枝を伝って行く以外に行きようが無いよ」

地{少し色顔の数を減らしてから、一気に大木を駆け上がるしかないな}


崖に沿って大木を少し離れたところに、庇状に岩が張り出しているところがあった。

ここを拠点にして、しばし色顔間引き作戦を実施する。

背後及び頭上からの攻撃を、崖と庇岩で防げるので、ここなら安定して戦える。

敵が減って来たら木に近付いて、ハーピーをどっと引き寄せてから、また庇岩の下で戦う。


ここまでで赤顔とピンク顔を各20羽程度、白顔は60~70羽は倒した。合計100羽以上。

しかしハーピーは怯まないな。どんだけしぶといんだ。

地{いやそれは巣に近いから奴らも必死なのだろう?}

そっか、そうだよね。しぶといのはむしろ俺らか。


しばし間引き作戦を継続し、いいかげん疲れて来た。

火{そろそろ、特攻してもいいんじゃない?}

うん、だいぶ数を減らすことができたし、頃合いだろう。

ハーピーの猛攻が途切れた隙を突いて、大木の根元へダッシュ。


走りながら、ミスリルブーツの靴底とつま先、ミスリル手袋の掌全体をトゲトゲに変形させる。

「ふふふ、木登り装備なり」

火{あったまいー!}

「そう?うへへ」

大木の幹に取り付いて一気に登る。カカカカカッ。よしっ!想定どおり。


地{ふむ、ましらのような、りすのような}

ショックだ。もっとこう、ヒーロー的な何かが良かったんだが。

それはともかく、目指す割れ目は、垂直に20m、横に15mの位置にある。


ハーピーが狂ったように攻め寄せて来る。

地竜が植物操作で枝を編み込んで防御壁というか、むしろチューブ状の進路を作ってくれたので、その中を素早くカカカッと垂直螺旋状に登って行く。

確かに、はた目で見るととても人間技には見えなかっただろう。


ぷぁ~あ~ん♪ふぃ~いい~ん♪とテルミン音が一際大きく響く。見ると枝チューブ上の至近距離に赤顔ハーピーが6匹も張り付いてる!

う、なんだか頭がクラクラする。

「まずい!」


素早く2匹をミスリルソードで枝の隙間から刺殺する。

地竜が植物操作で伸縮させた枝で1匹を縊り殺し、火竜が爆で2匹屠り、残り1匹は俺の石炎盾で挟んで焼殺した。

そろそろ高度は頃合いだ、次は枝上を水平方向に、割れ目の斜め上に伸びている梢を目指してひた走る。

3度跳躍して枝を乗り換え、次第に足元が細くなって来たところで、ようやく割れ目のそばに到着。

ここから気合の大ジャーンプ!そして割れ目に転がりながら飛び込む。


割れ目の中は洞窟だった。取り敢えず割れ目に石炎盾で即席の蓋をして、外部と遮断する。

割れ目部分が、洞窟の唯一の出入口になっている。

その横には大きな石の円盤が立て掛けてあった。古代の石貨みたいな奴だ。

相当の重量があるが、なんとか転がすことはできる。

それをゴロゴロンと転がして割れ目を塞ぎ、更に地竜が植物操作で割れ目外部の枝を編み込んでバリケード状態にした。

これでしばらくは、外からハーピーが侵入することを防げるだろう。奴らの巣なんだけどね。


「ふう、一息付けた」

火{ここは随分広い洞窟だよー}

地{そこらの岩棚中、古い巣と営巣中の巣だらけだ。巣をかけ替えてからここで産卵するのだろうな}

火{産卵期は夏だから、今の時期はまだ静かだね}

営巣中だったハーピーどもも、この騒ぎでみんな外に出払ったようだ。

内部は静まり返っている。

外から鳴き声がギャァギャァ、そしてくぐもったテルミン音がふにゃ~ん♪、と小さく聞こえるばかり。


出口を塞いでしまうと洞窟内には光は無いが、エコーロケーションであたりの様子はよくわかる。

「お宝らしきものは見当たらないなー」

火{ずいぶん奥まであるみたいだから、あるとしたらそっちじゃない?}

地{なにやら妙なものもいるようだぞ}

うん、なんだかうねうねしている…。

嫌あな予感がするぞ。

*****


クリュウ・マスタ 自由人

素養

 言語対応

   東方共通言語

 鑑定

   自己鑑定

 魔術

   練魔素

   生活魔法

     飲料水/パン/浄化/着火

土魔法C←UP!

     石礫C/土槍E/石盾

   火魔法C←UP!

     火球C←UP!/炎盾

植物利用

     成長促進/植物素材

   金属加工

     変形/修復

 精霊術

   練霊素/精霊の声/双竜気

     

 超取得/超成長/超回復/知覚同調/竜知覚(抑)


スペック

 FL32-96C(419)←UP!

 フィジカルレベル32←UP! 

 戦闘力96←UP!

 ランクC

 次のレベルまであと経験値419

 

 ML30-79/79C(1978)←UP!

 マジカルレベル30←UP!

 魔力量79←UP!

 ランクC

 次のレベルまであと魔術経験値1978


 SL29-86/72(+14)C(1327)←UP!

 スピリチュアルレベル29←UP!

 霊力量72←UP!

 ランクC

 次のレベルまであと精霊術経験値1327


スキル

 剣術B←UP!/槍術G/投石術F/格闘術A/盾術D←UP!


装備

 ミスリルソード150/ミスリルスーツ180/ミスリルフード100/

 ミスリル手袋50/ ミスリルブーツ50/ミスリルリング(+20%)

鉄短剣(良質)6


主なアイテム

 ミスリルナイフ/回復薬上/傷薬下/毒消し下/防眠薬下/万能薬下


所持金 126G


(注)ランクG=初心者 F=劣る E=普通 D=良い C=優秀

      B=トップクラス A=達人級









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ