49 時は流れて
日が暮れて夕食になり、皆が食堂に集まる。
「よう、褒美について考えたか?」
先に食堂でワインを飲んでいたカイドルが近くに座ったアロンドたちに聞く。
「決めたよ。そんなに突飛なものはでなかったな」
「詳細は聞いてもいいのか?」
アロンドは平太たちに目で問い、頷きが返ってくると簡潔に答える。
「そんな感じか。俺は故郷の支援とかだ。村の近くに山とその裾野に森があってな、そこからたまに魔物があふれ出るんだ。でも村は重要な位置にあるわけじゃないから、兵の巡回もそう多くなくてなぁ。街道整備とか兵の巡回を増やすって願いを出すつもりだ」
「なんでそんな危ないところに住んでるんだ? もっと離れた位置に村を作ってもらうって願いでもよかったと思うが」
「ああ、それもいいな」
カイルドは目から鱗とばかりにアロンドの言葉に反応した。
村の人々が昔から大きな不満を持たずあそこに住み続けていたので、自分もあそこから村を動かすという考えが浮かんでこなかったのだ。
同じ村出身の仲間に目配せして褒美を変えてもらうことにする。
村の位置が大事なのではなく、そこに住む者たちが大事なので、彼らが安全に暮らせるようになるのなら今の村を捨てることも気にしないのだ。
村人も今より安全で住みやすくなるなら反対もしないはずだろう。
「いいアドバイスありがとな」
ばしばしと肩を叩くカイルドに、思いつきなので気にしなくていいと苦笑を浮かべて返すアロンド。
そこに食堂に入ってきたばかりのファラードが近づいてくる。
「なに、もう酔っ払っているのかしら」
「こんくらいじゃ酔いはしないさ。いい話を聞けたんでな上機嫌になっただけだ」
小首を傾げたファラードに、さきほどの会話を話す。
「褒美についてですの」
「おうよ。そっちはなにか考えたか?」
「領地をもらうつもりですわ。広さはそこまででなくてよいので、ほどほどに実入りのある土地を希望ですわ。いつまでもハンターをやれるわけではありませんから、定期的な収入がほしいのです」
「商会を興すとか、城の役職に就くとかでもいいんじゃないか?」
「商才がなければすぐに潰してしまうでしょうに。役職もいずれ退職してしまいますしね。領主ならばある程度の勉強をして、学のある人材に仕事を投げれば、上向くことはなくとも大きく傾くことはないでしょう」
仲間を警備の幹部として雇えば彼らに定期収入を与えることもできるし、子供や孫に不自由な暮らしさせることはないだろうという考えだ。
「大陸西側の領地を渡される可能性もあるが、そこはわかっているのか?」
アロンドの疑問にファラードはわかっていると返す。
「以前の記録から見て、収入が極端に悪い土地でなければ受け入れますわ。一から町や村を作るのもそれはそれは楽しそうですから」
「やる気に満ちてんなー。俺も故郷に戻ったら経営を手伝ってみるかな。当分ハンターを止める気はないが」
話しているうちに料理が全員に配られる。始源の神に祈り、賑やかな食事が始まる。酒も出て、宴会のようになった夕食は二時間ほど続いた。
翌日の昼過ぎに、精鋭組は迎えの馬車に乗って城に入る。このときも精鋭組を一目見ようと人が集まっていた。凱旋用の馬車ではないため、アロンドたちの姿は見えなかったが、歓声は上がってた。
城門を越えて正面の庭馬車を下りて向かったのは、着替え用に準備された部屋だ。ここに来るのにグラースは止められなかった。魔王を抑えるのに重要な役割を負ったということで、魔物であろうが雑な扱いはできなかった。加えて平太が可愛がっているということも口を出せなかった理由の一つだろう。
男性陣は儀礼用のスーツと武器を、女性陣はドレスを準備されていた。これらは各自に与えられたものでパーティーのあとでどうしようが問題ない。
各自それらに着替え、使用人が呼びに来るまで大部屋で待つことになる。
その間にやってきた文官と褒美についての詳細が話し合われて、却下されることなく全て通る。
話が終わる頃に、使用人がやってきて謁見の間に向かうことになる。
謁見はつつがなく終わる。その場にいた貴族の目が平太に集中していたが、珍しいものを見る目がほとんどだった。
王からおほめの言葉をもらった際に、精鋭組は褒美以外に名誉爵位をもらう。地位的には騎士爵と同じだが、大陸どこでもその地位が保証されるため、騎士よりも権力はある。
今日は城に泊まることになり、日が落ちてパーティーが催される。
家臣としてスカウト目的の貴族が精鋭組に話しかけるが、平太だけは王からストップが出ていたので近寄る者はいなかった。そのため相手するのに疲れた者や最初から相手する気のない者が平太の周りに集まる。
「アロンドたちは大変だなぁ」
切り分けたビーフストロガノフをグラースに与えつつ、平太は多くの貴族に囲まれているアロンドとサイニーとラインを見る。
同じくビーフストロガノフを飲み込んでサフリャは口を開く。
「アロンドたちはこの国の貴族だから、今後を考えると無視なんてできないからね」
「付き合い大変だなぁ。次はカナッペなんかいいかなー」
使用人に頼んで、五種類のカナッペをもらう。
「一つもらうわよ」
「どうぞー。グラースはこれな」
サフリャは生ハムのカナッペを取り、平太はトマトとチーズのカナッペを食べたあとにマッシュポテトのカナッペをグラースの口元に持っていく。
追加のカナッペを使用人にもらって、別の料理に向かう。
アロンドたちは娘を売り込んでくる貴族たちの相手をしながら、のんびりと食事をしている平太たちを恨めしげに見ていた。
そんな中、冠婚葬祭を担当する神官の長が平太に近づいていく。
アロンドやカイルドたちに話しかけていた貴族たちは話を続けながら、神官の長にも意識を割く。
少しよろしいでしょうかと声をかけられ、平太は食事を一度止める。
神官の長は自己紹介してから、話しかけた用件について丁寧に話す。内容は始源の神についてだ。どのような姿で、どのような性格なのか。
それらは親神に尋ねても返答は得られなかった。常々知りたいと思っていたところに平太が現れ、興味を抑えきれず尋ねたのだった。
平太もそういったことならば拒否する気も起きず、質問に答える。
付き合いが深いわけではないため多くを答えられたわけではないが、それでも神官の長は満足して礼を言い去っていった。
その会話で、全ての会話を拒否されるわけではないと察した貴族たちは、軽い挨拶程度ならばと話しかけていく。一人一人の話は短くとも、何人も集まれば多くの時間をとられる。
以後パーティーが終わるまで平太は食事をとることはなかった。
正装を脱いで、与えられた部屋に戻った平太とアロンドはベッドに腰かける。グラースは満腹で床に寝転んでいる。
「いろいろと挨拶されたけど、覚えきれなかったよ。アロンドはどう?」
「俺はこの国出身だからね。有名どころは知っていたし、覚える人は少なくてすんでいるよ。ところでパーティーや茶会に誘われていたけど行くのか?」
「行かない。向こうも是非にって感じじゃなかったし」
誘った貴族たちも本音では来てほしいが、がっついた様子を見せることができずにできればというスタンスでいたのだ。
変に勘ぐってあれこれ考えるのもめんどうで、平太は彼らの言葉を素直に受け取って行かないという選択をする。
「俺はいくつか行かないといけない」
やや億劫そうにアロンドは言う。
「がんばれー」
気楽に声援を送る平太もアロンドたちが忙しくしている間、暇というわけではない。
復興に関しての話し合いが行われるのだ。だがその前に、シャンロやジャラッドといった世話になった者に魔王討伐したことを知らせるつもりだ。
「がんばるさ。でも娘を紹介してくるのがなぁ」
「二人以外に増やす気はないんだ?」
「ああ」
自身とコネを得たいというのは理解できるが、多くの嫁を娶るというのは気がのらないのだ。
「大貴族とかが強制してきたら断るのも大変そうだけど」
「のらりくらり、どうにかやるつもりだ」
「……力になれそうにないな」
大仕事を成した英雄に群がることを始源の神は不快に思っているとでも言えば、どうにでもなりそうだと思ったが、ララに頼るのは心情的に嫌だった。
「気分ののらない話はここまでにして、少しは楽しそうな話をしよう。二人との結婚はいつになる?」
「そうだな……そこらへんは話し合ってないけど挨拶回りが終わったらと俺は考えていたな。そのときはパーティーやるからヘイタも来てくれ」
「行くよ、約束だ」
この世界での結婚式について話を聞き、話題は別のものに移っていく。
翌日、精鋭組は城から出て使っていた宿に戻る。
平太とサフリャとグラースは早速荷物をまとめて、まずはジャラッドのいる町へと車で移動する。
町の外で車を止めて、車を消すと二手にわかれる。サフリャはジャラッドの工房へ、平太とグラースは森へ向かう。
それぞれに魔王討伐の報告をすると喜びの声が上がった。
ジャラッドは速報として各地を駆け巡った兵から、狼の魔物たちは感覚として、魔王の死を知っていたが討伐を成した本人たちからの報告は格別のものだったらしい。
喜ぶ長に平太とグラースは一つの提案をする。それは巣を移すことだ。この地は人間との衝突で生きにくくなっている。そこでサフリャの故郷近くにある森に居を移してはと誘う。サフリャの一族は犬を祖とするもので、近い種である狼を悪く扱うつもりはないし、森やその周辺の魔物を退治してくれれば村も住みやすくなる。
その提案に狼の長は、承諾の意思を返す。同時にグラースに長となるよう命じる。ほかの魔物との戦いがあるならば強い長が群を率いた方がいいと考えた。
グラースは長になることを受け入れ、その強さを把握したほかの狼たちも新たな長を受け入れる。
平太はグラースと一度別れて町に入る。工房に向かうつもりでいたが、その前に自警団の詰所に向かう。
そこで兵のまとめ役と再会し、前置きとしてグラースのことを話して、今すぐではないが森から狼がいなくなることを話す。そのせいで新たな魔物が入ってくる可能性も話して備えておいた方がいいと助言する。
まとめ役は助言に感謝し、二ヶ月先を予定して森の調査を行うことにする。
礼を言ってくるまとめ役と別れて平太は今度こそ工房に入る。
サフリャはすでに話を終えて、宿をとるためここを出ていた。夕方にささやかながら宴を行うのでぜひと誘われ頷いた平太は宿に向かう。
宿の従業員に話しかけると、サフリャが二人分の部屋をとっているとわかる。
サフリャの部屋をノックするとすぐに返事があり、中に入る。
「あ、おかえり」
「ただいま」
ラフな姿のサフリャにそう返し、椅子に座る。
「話したとおり、狼たちを誘ったよ。巣を移すことに賛成した」
「すぐに動くって言ってた?」
「うんにゃ、俺たちと一緒に移動するからって言ったら、迎えにくるまでここの森で待つって言ってたよ」
「うんうん、だいたい事前に話し合ったとおりね」
「あとグラースが長になる。その心構えとか教わるためここに滞在する」
「長?」
「今後魔物との戦いが予想されるから強い長が必要だとか」
なるほどとサフリャは理解を示す。
「ほかにはこの話を自警団のまとめ役に話したよ。空白地帯になった森に魔物がなだれ込んでくるかもしれないしね」
「あー、たしかに警告はしておいた方がいいわね。せっかく平和になっていくのに、魔物との衝突で怪我するのもバカらしいし」
「まあ魔王がいなくなった今、過剰に魔物が暴れることはないだろうから、衝突まではいかないかもしれないね」
話しているうちに日暮れ間近になり、二人は工房に向かう。
ジャラッドや弟子たちが魔王討伐を祝い、平太たちの無事を喜ぶ。
食事をしながら、魔王のいる廃墟にたどりつくまでや魔王戦のことを話し、時間が流れる。
腹も満たされ、飲み物を片手にジャラッドたちは今後について話していた。魔物の騒ぎが沈静化に向かうことで実用性のある武具の需要が減っていく可能性を考え、儀礼用の武具に力をいれようかといった内容だった。
それをサフリャは聞きつつ、ワインを杯に注ぐ。それに平太は気づき疑問を表情に浮かべる。
「ん? サフリャお酒飲めたの?」
「いや、飲んだことないよ」
動きを鈍らせると考えて、口にしてこなかったのだ。
しかし魔王と仇の角族を倒したので、戦いに意識を割く必要はなく、なんとなく飲んでみようかと思った。
舌になじませるように少しだけ口に含む。ジャラッドが奮発していいものを出してくれていたおかげもあって、特に不味いとも思わず少しずつ飲み続ける。
「ふふ。くくっ」
ほんのりと顔を赤くしたサフリャの口から笑い声が漏れ出す。
「なにか面白いことでも思い出した?」
「なんでか楽しい」
くすくすと笑いながら答える。
笑い上戸というやつだろうかと平太は、深酔いする前に飲酒を止めるか迷う。しかしここまで楽しげな様子を見たことはないため、もう少しいい気分を味わってもらうのもいいのではと考える。
「まだ飲みたい?」
「んー? そうだねー」
くすくすと笑いつつ明確な返事をしないで杯を傾ける。
「帰って飲もうか。酔いつぶれてもすぐにベッドで寝られるだろうし」
「帰るのー? じゃあおんぶー」
「……ほんとに酔ってるな」
両手を伸ばし甘えてくるサフリャに驚きの表情を見せた平太は、はいはいと答えてジャラッドに宴の礼と引き上げることを伝える。
サフリャをおんぶして、見送りに出てきたジャラッドたちに軽く頭を下げて歩き出す。
上機嫌なサフリャは冷たい夜風がゆるゆると吹く中、鼻歌を歌う。吐く息は白く、それすら面白いようで平太の耳に鼻歌に混じって笑い声も聞こえる。
宿に戻った平太は従業員にコップをもらい、再現でサフリャの飲んでいた酒とつまみをだす。
サフリャをベッドにおろしワインをコップに注ぐ。
サフリャはコップから漂う香りにひかれるように手を伸ばし、コップを傾ける。楽しい気持ちは続いているようで、少し体を左右に揺らし、ニコニコとして酒盛りを続ける。
平太もそんな様子を肴にして、自分のペースでワインを飲む。
瓶の中身が残り三分の一といったところで、サフリャはポテンとベッドに倒れる。幸いコップの中身は空で、ベッドを濡らすことはなかった。
「酔いつぶれたかな」
軽く頬を叩いても反応を見せないサフリャの手からコップをとり、テーブルに置く。
平太は少し様子を見て、嘔吐の心配がないことを確認し自室に戻る。
翌朝、サフリャは二日酔いした様子なく起き出した。
「昨日の記憶があまりないんだけど、どんな様子だった?」
「笑って楽しそうだったよ。はしゃいで迷惑とかはかけてない。どこまで覚えてる?」
「ふわふわとして楽しい感じだったことくらい」
「じゃあおんぶをねだってきたり、鼻歌を歌ったりは覚えてないかー」
「おんぶ? そんなこと頼んだの」
どうしてそんなことを頼んだのか自分でも理解できず、自身に呆れた感情を抱く。
酔ったサフリャの思考は、普段しないようなことをしたかったそれだけだ。頼むのは誰でもよかったわけでなく、酔っていても少しは分別が残っていたため仲間である平太に頼んだのだった。
そんな単純な思考だったと露も思わず、サフリャは真面目に考え込んでいく。
答えの出ない答えを求めるサフリャに、平太は不思議そうな視線を向けた。
朝食を終えた二人は、シャンロに会うため町を出る。
そこでも無事を喜ばれて、魔王退治を労わられる。アロンドたちがいないことを心配されたが、貴族たちの相手で忙しいとわかると安堵した様子を見せる。
シャンロたちにも歓迎を受けた翌日、二人は王都に戻る。
アロンドたちがお茶会に向かっている間に、平太たちは復興に関して話を聞きにやってきた文官を宿の部屋に招く。
肩までの茶髪を綺麗に切りそろえた、二人よりも少し年上に見える女だ。真面目そうな雰囲気をまとい、二人にしっかりと視線を合わせている。
ショルダーバッグを下ろして一礼し、口を開く。
「英雄の方々にお会いできて光栄です。私はメノウと言います。現地までついて行き、ともに復興の手伝いをすることになりました」
メノウも大陸西側出身で、復興の力になりたく思い、立ち上げられた復興部門に異動したのだ。
「よろしくお願いします」
「よろしく。こっちも名前を言った方がいい?」
サフリャの言葉にメノウは首を横に振った。
「すでに聞いていますから大丈夫です」
「そう」
メノウはショルダーバッグから地図と書類を取り出してテーブルに置いて、仕事を始める準備を整える。
「では始めましょう。おおまかな位置は聞いていますが、ここから何日かかるのか、どのようなルートで着くのかを教えていただけますか」
「わかった」
頷いたサフリャは、山越えまではメノウの方が詳しいと考え簡単に、山を下りてから村までは注意点など詳しく話していった。
メノウは頷きつつ手を動かし書類に情報を書き込む。
「場所とルートと日数に関しては、後日もう一度話して言いこぼした情報がないとわかれば本決まりということでよろしいですか」
異論なくサフリャと平太は頷く。
「次に復興の目的といったものです。こちらとしましては大陸西部復興の拠点の一つとして使わせていただきたい。強制ではありませんから、断られても問題ありません。いかがでしょう?」
「仲間からそうなるかもと聞いていた。だから事前に考えていて、それでもいいと結論を出している」
意見を受け入れてもらえたことにメノウは一礼する。
褒美として臨んだ復興なので、サフリャが嫌だと言えば強要できないため別に拠点を作ることも計画していた。だが受け入れられたため、浮いた分の資金などをほかに回すことができ、困っている人を多く助けられる。
今後に上向きな思いを抱いたメノウに、サフリャが条件を口に出す。
「ただし拠点にするのはいいけど、村の立て直しと墓作りを優先してほしい」
「わかりました。こちらに異論はありません。村の建物はどんなふうになっているかわかりますか? 宿泊に利用できそうな建物があれば助かりますが」
「無事とはいえないと思う。魔物が暴れたうえに、人がいなくなった場所だから建物の傷みは激しいものになっているはず」
「そうですか」
人数分のテントを準備し忘れないようにとメモを書き込もうとするメノウに平太がまったをかける。
「宿泊施設に関してはこちらでどうにかなる」
「どのような手段を使うのでしょう?」
「大きな建物を再現、たとえばこの宿を村の外にでも再現すれば、寝泊りは問題ないよ」
「あの城壁を再現したんだからこの宿くらいできるか」
サフリャはすぐに納得し、うんうんと頷く。
「本当に可能なのでしょうか?」
「できる。ただし建物だけで、家具までは無理だと思うからしばらく床で寝ることになる」
なおも疑問顔のメノウに、サフリャが実際にやってみせればいいと提案する。
この話し合いのあと王都の外で実演することになり、できると仮定して話は進む。
ここまで自信満々に言うのだから嘘はないのだろうとメノウも内心信じている。
「だとすると必要資材を減らすことができますね」
平太に協力してサフリャの村だけではなく、ほかの村や町の建物も作ってもらえればと考え、そこで止まる。
始源の神がついていることを思い出したのだ。向こうからの提案の範囲で便利に使う分には問題ないだろうが、そこを超えて振り回した際の不利益を思うと口に出せなかった。
大規模建築計画の誘惑を振り切って、サフリャの村のことだけを考えることにする。
「再現で作ることのできる建物の規模や種類はいかがなものなのでしょう」
「種類は実際にその建物を見て触れれば、再現できるものは増えていく。規模はそれこそ王城も再現可能だけど、村に城とか不釣り合いでしかないですよね」
「そうですね。ですが一度は城の再現を依頼するかもしれません。そのときは気が向いたらでいいですし、必ず報酬をお支払いしますので、協力願えればと」
大規模な拠点をすぐに作ることのできるのはやはり魅力的で、提案だけでも口に出す。
「一度くらいならいいかな。何度も頼まれるのは嫌だけど」
「一度だけならば確約してもらえたと王に報告しても?」
「条件を二つ飲んでもらえるなら大丈夫です」
「条件をお願いします」
「再現するとなるとここと同じ城ができることになります。それは現在所有している王族の心情的にどうなのでしょうか。断りも入れずに作ってあとで文句を言われるのはたまったものではないので、そこら辺の許可を。それが一つ目。もう一つは城をきちんと再現するため、城の中をある程度歩き回って見学させてもらいたい。宝物庫とか立ち入り禁止な場所は、入れなくていい」
メノウはふんふんと頷いて、書類に二つの条件を書き込む。
メノウとしてはこの条件は通るだろうと見ている。城一つ作る資金はとても多い。また時間もかかる。それが短時間で、資金も資材も必要としないでできるなら、城の見学や同じ造りになることくらいどうってことはないだろう。
この予想通り、王族からは承諾が得られた。そして平太の見学のあと、王族だけに伝わる秘密の通路などは作り直された。完全に再現するならば、そういった場所もまた同じなるはずだ。再現された城で隠された通路を発見し情報が広がることで、そこを利用した事件が起こるかもしれないのだ。
「急ぎ報告しますので、明日には返事ができるかと」
「まだ出発しないだろうから、明後日とかでもいいですけど」
「ではそのように。さて次は復興に連れていく人数や種族ですが、希望はありますか」
平太とサフリャは顔を見合わせる。復興のみを考えて、そこに住む者については考えてなかった。
「俺は希望はないけど」
「私も。犯罪者ばかりが集まって険悪な雰囲気になるのは避けたいところ」
「ふむ……お二人ともこの種族は嫌いだといったことはなしとみてよろしいでしょうか」
「ああ、注意点が一つ」
そう言うサフリャにメノウは視線で先を促す。
「私たちの仲間に狼の魔物がいたのは知ってるかしら」
「はい、話に聞いています」
「その仲間が長である群が復興する村近くに住み着く。人と積極的に対立する種じゃないけど、魔物が近くにいるってことを怖がる人もいるでしょう。そのことを連れていく人の説明しておいて」
「魔物ですか」
魔王と戦い、城に入っても大人しかったグラースのみならば、問題はなかっただろう。しかし群となると途端に不安が出てくる。
これまで順調だった話し合いがいっきに困難な方へと傾いたことに、メノウは表情をわずかに歪めた。
「住みつくことを拒否はできませんか?」
「無理だな」
「魔王討伐に同行した魔物と、それが率いる群など強いに決まっています。そんなものが近くにいるとなると復興に集まった人々は怯えながら暮らすことに」
「さっきサフリャが言ったけど、手を出さなければ攻撃してくるような魔物じゃない。前例がある」
「前例?」
グラースたちのこれまでの暮らしや角族から受けた被害について話す。
メノウは思案げな表情になり、あと一押しと考えた平太は続ける。
「グラースたちが森にすむ許可を、城造りの報酬にするというのはどうだ。城を短時間で資材なく造ることの報酬がちんけな金額というわけじゃないでしょう? 十分釣り合うと思うけど」
たしかに城を造ることは莫大な報酬になる。たかだか人一人一年遊んで暮らせる金額ではつり合いがとれないし、その程度平太たちならば簡単に稼ぎだすことも考えられる。報酬が不満として城造りを断られる可能性を考えると、受け入れた方がいいように思えた。
「……わかりました。どうにかその条件でやってみます」
上手いこといかないなと思いつつメノウは書類をまとめる。
「今日はこのくらいにしましょうか。王都の外に出て宿を作ってもらえますか」
「あいよー」
三人は宿を出て、王都からも出て、平地に宿を完全再現する。
実際目にしてみると驚きの思いが湧き、メノウはその表情のまま三階建ての宿の周りを歩く。
「中に入っても?」
「どうぞ」
殺風景な内装は聞いた通りで、皿やフォークといった食器、バケツや箒といった掃除道具、ベッドやシーツといった寝具などはない。それでも雨風をしのぐには十分すぎ、テント暮らしよりも快適だ。
「これはこのままずっとここにあり続けるのでしょうか?」
「俺が消えるようにしなければ、朽ちるまでここにあり続ける」
これならば城に関しても大丈夫だろうとメノウの気分は上向きになり、足取り軽く城に帰っていった。
平太たちも宿を消したあとに町中に戻る。
城に戻ったメノウは早速書類をまとめて、上司に報告し、その上司は急ぎの用件として王の執務室に書類を持っていく。
書類を受け取った王は、魔物に利益を与えるようなことに顔を顰めたものの、城一つ費用ゼロで建築可能ということに感嘆の声を漏らす。平太を欲しいと強く思うものの、始源の神の不興を買うことを恐れてすぐに諦めた。
王は少し迷い見せたが、許可を出す。大陸西部のどこに城を立てるか部下に案を出すよう命じて、ほかの書類に目を通す。この案が書かれた書類はアロンドたちが各国に挨拶回りする際に持っていかれ、各国にも建築場所の案を求めることになる。
アロンドたちや平太たちはそれぞれ貴族への挨拶回りや話し合いといったこの国での用事を終えて隣国に向かう。
国から大型の飛行できる魔物を借りることができ、空を移動して三日ほどで隣国の王都に到着することができた。転移の能力者での移動でもよかったが、各国の歓迎準備を考えると、少し時間のかかる移動の方が都合がよかったのだ。
精鋭組に同行していた外交官が宿の手配をして、精鋭組がのんびりしている間に、外交官は城に行き到着を知らせる。
翌日、王に会い、祝いと労りのため開かれたパーティーに参加し、貴族と話すという以前と同じことをして解散になる。
さらに翌日から貴族の茶会や夜会に参加して、それらを終えると隣国に向かう。
同じことを三度ほど繰り返し、二ヶ月弱で精鋭組は挨拶回りを終える。
平太とサフリャはメノウ側の準備が整っていないということで、途中離脱せず最後まで挨拶回りに付き合った。
そしてアロンドの出身国に戻ってきて、精鋭組は解散になる。
アロンドたちと平太たちがばらばらに動くのと同じように、カイドル組も解散だ。前線のまとめ役が探索に向いた能力持ちを集めて組ませていただけで、昔から組んでいるわけではなかったので、解散もあっさりとしたものだった。カイドルは同郷の者と里帰り、ほかの者たちは出身国の城仕えになると挨拶回りの間に聞いていた。
ファラード組は、平太たちと同じように専属の文官をつけられて、領地経営の準備を進めていた。その文官と一緒に立てた計画に従い動き始めている。
それぞれが動き始めている間にアロンドたちの結婚パーティーが行われ、それを見届けた平太たちも出発するときがきた。
「しばしのお別れだな。元気でな」
「体に気を付けて、復興をがんばってください」
「次会うときも元気な姿を見せてちょうだいな」
騎士団の幹部だと示す紋様を刻んだ鎧を身につけたアロンドと私服を着たラインとサイニーが、それぞれ言葉を送る。
「また会おう。転移の能力者が村に来るらしいから、それを再現できるようになれば簡単に会うことができるようになる」
「そっちも元気で。次会ったら子供の顔が見れるのかな」
アロンドたちに返事をして笑顔で別れる。
少し離れた位置にいるメノウと合流し、十分ほど歩いて車を再現し、雪が降る中グラースたちを迎えに移動を始める。
森で待っていたグラースたちと合流するとすぐに一緒に西へと向かう。群の速度に合わせているため修練場に向かっていたときより移動速度は落ちるが、それでも馬車を使っての移動よりは速かった。
順調に旅は進み、山を越えて、前線基地として使っていた場所につく。
そこで先に出発していた者たちが待っていた。
メノウは彼らと合流し、平太とサフリャはグラースたちと一足先に村に向かう。魔物と一緒に行動するのは避けた方がいいということで、別行動になったのだ。
メノウは一日休んで、必要な食糧と道具を受け取ってから三十人の復興参加者と数名の護衛と一緒に村を目指すことになる。
すぐに出発した平太たちは十日ほどで目的地であるサフリャの村に到着した。
「グラース、あそこが私の言っていた森だよ」
サフリャが指差す方向に、以前の住処と同じくらいの広さの森がある。
グラースが吠えると、ほかの狼の魔物たちがそちらへと向かい始める。
グラースも二人に行ってきますというように軽く吠えてから仲間を追う。
それらの背に向かって平太たちは気を付けてと声をかけた。
「俺たちも村に入ってみようか」
「うん」
雪が積もる村は外から見てもボロボロで、魔物に襲われた当時の様子がなんとなく想像できる。
もともとは畑だった場所は魔物の足跡が無数にあり、荒れ果てていた。建物や柵は魔物の突進を受けて崩れ、雨風にさらされもろくなっている。
そういった荒れ果てた光景の中に、魔物に襲われた村人の骨が転がっている。
サフリャは無言で骨を拾い、一人分を集めると村の外に運んではまた村の中に戻る。
平太もそれを手伝い、今日はそれだけで日が暮れた。
壊れたところが少ない家を簡単に片づけて毛布にくるまり静かに夜を過ごす。
開いた窓に目を向けてサフリャはぽつりと話し始める。
「春にはさ、名前を知らない花がたくさん咲いた。それで花冠を作ったり、摘んで家に持って帰ったりしてた。母さんが家の中が華やかになるって喜んでくれたんだよ」
「……」
返事を求めている様子はなかったため平太は静かに聞く。
サフリャは夏の思い出、秋の思い出、冬の思い出を語る。それは家族だけではなく、村人全員との楽しい思い出で、過去にたしかにあったことだ。
それをサフリャは自分以外にも覚えてほしかったのだろう。
平太はサフリャのそういった考えを察することはできなかったが、この村で起きていた出来事や村人が見たであろう光景を知る。
完全に伝えられたわけではないが、サフリャにはそれで十分だった。復興して、これから作る光景も大事なものだが、以前あったことも大事なもの。少しでも覚えてくれる人がいれば満足できた。
翌日、陰鬱な雰囲気などなくサフリャは骨集めに精を出し、平太は宿の完全再現を行ってからグラースたちの様子を見に行った。現地の魔物との戦いで怪我していたら治療しようと思ったのだ。
森に足を踏み入れると、近くにいたグラースの仲間が姿を見せる。グラースのもとへの案内を頼むと先導してくれる。
すでに住処となるところを決めたのか、ちょっとした広場に狼たちが集まって思い思いに過ごしていた。片隅には狩ったであろう魔物が積まれており、食糧は問題ないようだった。
近寄ってきたグラースに怪我治療をしに来たことを告げると、グラースは小さく吠えて狩りで怪我した狼が集まってくる。骨折や噛み傷を治療したあと、狩りの手伝いは必要か尋ねる。それにグラースは首を横に振って断る。ここら辺りで一番の魔物も、グラースが相手すれば十分だったのだ。
冬が終わる頃には、森を縄張りにできそうで連れてきた平太としては一安心だった。
グラースに別れを告げて村に戻った平太は、寒そうに動いているサフリャに温かいコーンスープを再現して渡す。
たき火も再現して暖をとりつつ、グラースたちの様子を話す。
問題なく過ごしているグラースたちにサフリャも安心したように笑みを浮かべた。
そうして日が暮れて宿で夜を過ごし、平太たちは骨集めを中断して、こっちに向かっているであろうメノウたちを迎えに車を走らせる。
メノウたちは行程の三分の二を踏破していて、村を出発してから二日と経たずに合流することができた。
彼らと一緒に来た道を戻って、平太たちは村に帰ってくる。
「なんだありゃ?」
「俺の見間違いじゃないよな?」
事前に話を聞き、再現された宿を見ていたメノウはそうでもないが、宿が準備されているとだけ聞いていた人々は建っている位置やどこも壊れていないむしろ立派ともいえる外観に驚きの声を上げる。
宿といっても壊れた家をある程度修復したものだと思っていたのだ。
「なんで村の外にあんな立派な宿があるんだよ」
「それに村があれだけ荒れてんのにどこも壊れた様子がないぞ?」
「はーい、皆さん静かにしてください」
メノウが手を叩いて注目を集める。
「あれはこちらのアキヤマ様の能力で造られたものです。幻ではないので安心してください」
どんな能力があれば宿を作れるのかと疑問の視線が平太に突き刺さる。
「疑問はもっともですが、のちのち知る機会もあるでしょう。しばらくはあの宿に寝泊りすることになります。まずは中に入って部屋の割り振りをします。ついてきてください」
返事をした人々を引き連れてメノウは宿に入る。
屋内は温かいとはいえないが、風や雪がないだけでも十分で人々はほっとした雰囲気を漂わせる。
メノウは先に決めていた自分たちの部屋以外に、人々を割り振っていく。
人々が部屋に入って、それぞれ休みだすと、メノウは自身の部屋に平太とサフリャを誘ってこれまでの話を聞く。
メノウの部屋には王都から持ってきた机と椅子が運び込まれている。これらがなければ書類仕事ができないため、ほかの荷物と一緒に運んできたのだ。
椅子に座って話を始めようとするメノウを平太が止める。
「まずは少し温まった方がいい。飲み物はなにが好き? 紅茶でもコーヒーでも緑茶でも出すよ。スープがいいならそれでもいいし」
「では紅茶をお願いできますか」
「はいよ」
城で出された良い茶葉を使った紅茶を三人分再現する。
メノウは温かいカップを両手で持って、ほっとした表情で飲む。
紅茶を飲み終わり、会話が始まる。
村の様子を見て回ったこと、骨を集めていること、グラースたちの様子などなど話していく。
それを聞き、メノウは今後の予定を立てていく。まずは骨集めを皆でやり、墓を作る。同時進行で村の点検。修復して使えそうな家、壊すしかない家をわける。墓作りを終えて、家の修復と撤去を行い、その後に建築や柵の設置や畑の修復という流れになる。
「こういった流れにしようと思います。ただしお二人には手伝いはほどほどにして魔物を狩って食材集めをやってほしいのです。なにか質問や異論はありますか?」
「俺はない」
「とりあえずは私もない。ここを拠点にすると聞いてた。となるとまだ人が来ると思う。その人たちはいつ来る予定?」
「私が聞いた話では、こちらの受け入れ態勢が整ってからということなので、早くても春すぎかと」
「そう。動くのは明日から? それとももう少し休みをとる? 私は旅の疲れをゆっくりとってから動いた方がいいと思う」
「動くのは明後日からにしましょう。さすがに明日からでは皆大変でしょうから。話はこれでおしまいにしようと思いますが、なにか伝え忘れとかはありますか?」
「……あ、風呂を使えるなら使いたい?」
平太の質問にメノウは少しキョトンとして口を開く。
「お風呂ですか? 使えるのなら使いたいのですが、薪の消費は抑えた方が」
「いやお湯を再現でだすから薪は使わない」
この宿には大浴場があり、一度に十五人くらいならば余裕で入ることができる。
「再現ってのはほんとに……便利すぎで堕落してしまいそうです。お願いできますか? 体が温まりますし、疲れもとれるでしょうから」
「了解。男女一時間ずつって感じで?」
「はい。先にどちらを入れましょうか……女を先でいいしょうか? 男たちが入っている間に食事の準備を終わらせます」
頷いた平太は浴槽にお湯を入れるため大浴場に向かい、メノウは女たちに知らせるためそれぞれの部屋に向かう。サフリャはタオルを取ってくるため自室に向かった。
風呂に入れると話を聞いた女たちは嬉しく思いつつも、メノウと同じように薪の心配をしたが、そこは能力でどうにかしたので気にしなくていいということに首を傾げつつ、久しぶりの風呂を堪能するため大浴場に向かう。湯気の上がるなみなみとしたお湯に、歓声を上げて女たちは風呂を楽しむ。
楽しそうな声は部屋にいる男たちにも聞こえてきて、早く自分たちの番がこないか待ち遠しく思う。
男たちも風呂に入り、疲れと汚れを落として食事をとる。
思ったよりも良い生活環境に、彼らは今後の生活が明るいものになりそうだと思いつつ毛布にくるまる。
復興の一歩目から良い雰囲気になり、人々のやる気は上向きのまま、復興が進んでいく。
墓ができあがり、壊れた家の撤去や建築が進んで、どんどん村としての体裁を整えていく故郷にサフリャは感動し、復讐心はすでに遠い過去のものになっていた。
幸せな時間の中にサフリャはいて、その隣に平太がいる。周囲にはメノウをはじめとして新たな村人がいる。
彼らと過ごせる日常はとても楽しく、たまに起こるトラブルも楽しい時間のアクセントだった。
十年近く時間が流れると、村は完全に再建されて、畑などもできて人が安心して暮らせていける場所になった。
今後順調に人が増えるなら町を名乗れるほどの規模になるだろう。
平太は年をとったグラースと一緒にララのいる島に転移して、グラースの封印作業と自身の魂の分割作業を行う。
水晶に包まれたグラースをララは、大神に渡してエラメルト近くの洞窟に設置する。
そのグラースを見守る者として大神は近くにあった町に住んでいた小神の愛し子に頼むことになる。
頼まれた者は断ることなどできず頷き、封印との繋がりを持つ。そして時代が流れ役割はパーシェに受け継がれたが、長い時間の流れで役割は間違った形で伝わることになった。
郷愁はなくなり、心の底から平太はこの時代に生きる者となる。
サフリャとグラースとアロンドたちと共に年を取り、村の経営と発展に力を注ぐ。
さらに時間は流れて村は町になり、フォルウントという名を得て、平太とサフリャが死んだあとも残っていく。平太が残した地球の機械をアレンジして、それを量産して売り、発展は続く。
そして世界に名だたる町としてフォルウントは大きくなっていった。
水晶に包まれて眠る平太は、フォルウント家の敷地内に作られた祠でその時間を共に過ごす。
平太がいつか復活すると聞いていたフォルウント家の人々は、初代様に見守られていると考え、祠を大事にして現代にまで平太の話を伝えていった。




