第1話 少し長めの説明ではあるが、どうかおつきあい願いたい
「はじめまして。」
天真爛漫を具現化したような、まるで太陽のような笑顔をした少女の顔を、
いつまでも僕は、忘れない。
* + * + *
「…ちゃん。…お兄ちゃん!」
「…ん。…はっ!」
覇っ!ではない。今たぶん俺は寝てた。目の前には美少女の顔。内裏七南、わが妹である。
「お兄ちゃん大丈夫?食べながら寝てたよ」
「ああ、サンクス」
現在AM7:30、七南は焼きたてのトーストにマーマレードを塗りつつ、俺の顔を不思議にみる。
「寝言たくさん言ってたよ。全然わかんなかったけど」
「そうか、いっぱい言ってたのか」
恥ずかしすぐる。
「悪いな。別に気にしなくていいぞ。」
「ふーん」
朝の2人の間に沈黙が訪れる。少し窓から入ってくる、春になりかけのほんの少し寒い風と、朝しか鳴かない小鳥のさえずりは、平和の小世界を2人の朝食に添える。
寝たり話したりでまったく朝食を食べていない俺は、とりあえずトーストを一口。
沈黙が苦しいので、朝食の間を使って自己紹介でもするとしよう。
内裏 貴生(17) 内裏家長男、妹は内裏 七南
昨年より、”特別”私学の、八名瀬学園、(通称:やながく)に通っている。
学校での成績はトップ。見た目は、中の上か上の下。身長は170後半、頭以外はとくには取り柄はない一般の男子高校生である。ちなみに趣味は小説を読むこと。
ついでに妹も紹介しとく。
内裏 七南(15) 容姿端麗、成績は中の中でど真ん中ストレート(言ってみたかっただけ)だが、恐るべきPC技能を持っている。その実力は、来年より同じく”特別”私学の一前高校に推薦をもらっているほど。
身長は160前後。スリーサイズは……………略。趣味は散歩とネットサーフィン。
* + * + *
少し長めの説明ではあるが、どうかおつきあい願いたい。
この世界の説明をしたいと思う。(オレ談)
結局のところ、ドラ●もんは完成されずに終わりを告げた22世紀。このころ、ちょうど人類は、今のところ自然界に存在していると考えられていた、ほとんどすべての資源を使い果たした。そんな中、この資源枯渇を予測し、世界の上位に位置する先進国は、国内にすでに、大切に使えば半世紀は持つ(本当に大切に使わなければならないが)といわれるほどの石油等の化石燃料を回収していた。そんな時、日本はというと、ほとんどそれらの貯蓄はなかった。高齢化社会は絶頂を極め、国家の借金は、もう振り切れる寸前である。遅々として進まない日本政府の議論は、ついに、先進国のいわゆる「貯蓄ブーム」に及ぶことはなかった。産業発展の途絶えた日本はその後、一時期はGDP28位まで落ち込んだ。
ところが昨年、とうとう日本は、この暗黒経済から脱却する。しかし、経済発展に石油は不可欠であることは言うまでもない。ならばなぜ?答えは至極単純。
日本はもう、石油を必要としなくなったから。
それから5年、日本は、この世界にとって寝耳に水な急成長を成し遂げ、経済成長率は、ダントツの1位となった。その契機となる1つの原因は、”新元素の発見”である。元素周期表上部には広大な空白が広がっている。メンデレーエフが「のちに発見されるであろう」ことを予測に設けられた空白。日本はここに再発展の糸口を見出した。設けられた空白の、5種を日本の1国のみでたった5年の間に次々と発見した。
1国のみで、たったの5年で、5種である。
世界は戦慄した。常識外れな日本の化学技術の前に世界は指を咥えることのみである。元素名は、発見された順に、ゼウシム、ジャパニウム、メシウム。後の2種はまだ名前が決定されていない。この中でも特筆すべきは、「ゼウシム」。全知全能の神、ゼウスの名を冠するこの元素は、名の通りの万能元素だった。ゼウシムの持つ常識はずれの性質は、
・電気抵抗が限りなく”無”であり。
・複数の元素と特殊加工を施すことで石油とほぼ同等の役割を果たしたり。
・燃料として使用後は、しっかり、わずかの時間を経てゼウシムに戻るという、循環可能な「無限資源」
が主だったものであるが、この元素の可能性は今なお未知数である。
全世界はこれに驚愕、我先にとゼウシムの獲得競争が白熱したものの、世界はすぐに行き止まる。
日本を除く世界各国がこの万能元素採取を拒む巨壁に衝突する。
ゼウシムは、地球の核付近のマントルに眠っており、ゼウシムとそのほか復数金属の合金でないと金属が融解するため、採取不可能である。
そして、
ゼウシムは、唯一日本でのみ発見された。それもほんとにたまたま。俺としては多分日本以外では採取されることはないと思っている。東南アジアの国々に米兵の調査団が強引に派遣され、現在大顰蹙を買っている真っ最中であるが、発見にはいまだ至っていない。それ以外の各国もまたしかり。友好条約を提案する中国や、多額の資金をくれてやろうとするアメリカ、おどしをかけるロシアなど、日本が我が国発展の「鍵」となるを知るや。気持ちいいくらいの手のひら返しを披露する先進国の皆さん方であるが、そのいずれの誘いも、日本は断固拒否の姿勢を置き、江戸時代以来の鎖国状態が完成した。日本の意思の断固曲げないを知るや、それに応戦するように、各国は連合となって戦争直前の緊張感が世界中に張りつめる。
以上終わり。
* + * + *
現在AM7:50
七南はすでに登校し、朝食を終えた俺も30秒で支度をし今日も今日とて学校へ。
8時を過ぎると、商店街が一斉に開店しだすため、ここいらが一気に騒がしくなる。通学路の途中にある草方駅を通過するころ、いつものように、
「ダイちゃーん」
と声をかけられる。
「お、おう」
いつも同じことが起こっているのに俺もまたいつものように動揺してしまうのは、声の主が早須川晴音だからだ。
早須川 晴音 恐ろしいくらいの美少女。俺とはある事がきっかけでそのころから幼馴染なのだがそのことについては後々説明することにする。黒髪ロングに凛とした面立ち。身長は160前半と女子としてはなかなか高めな方で、そんでプロポーションが、プロポーションが・・・ンもうすごい!ほんとすごい!幼馴染ながらにそう感じさせるそれを所持する彼女であるが、成績は俺の次に良い。委員長とかやってそうな感じだが、現実はこんな感じ。
「ダイちゃーん。ダイちゃーん。ちょ、冷たいってぇ」
あ・さ・か・らうるさいなあ。あと胸が、胸がぁぁぁぁ!
正直時いうと俺は彼女が苦手だ、少なくとも登校時にダイちゃんはやめてくれよみんな見てるだろ恥ずかしいんだよ!そんな俺への憂鬱お構いなしにまるで俺が女友達かのようにダイビングハグをかましてくる。以前これをよけたら早須川は盛大に地球と愛の抱擁をぶっかましたため大騒ぎになり、なぜか警察まで来た。どんだけ本気なんだよ少し引くよ。・・・ふぅ。これじゃあまるでラブコメじゃないか。確かにこんな女子に抱きつかれて嫌な気はしないが、
「俺はラブコメが書きたいんじゃなーい!!」
ほれ見ろ作者怒ってんだろ、直ちに離れろ俺消されるから。
「た、直ちにやめれ」
「いや」
だから胸。胸胸胸胸!おっぱい!!ふざけんないい加減にしろお前には羞恥心というものがないのか?俺にはある。
うへぇ。視線が痛い。くそっ・・・。”みんな”こっち見てんじゃねーか。おこな顔してる男子半分。にへらぁって顔してる男子4分の1。今にも殺しにかかってきそうな男子4分の1。おい、男子しかいないじゃん。どういうことだこれ。絶対お前ら合わせただろこいつに電車合わせただろ!お前らにそんな視線を俺に向ける資格はねえ。
「おはよう早須川さん。奇遇だね」
イラ♡
「ねえねえダイちゃん、昨日ね私が・・・」
クソモブのテンプレごあいさつに見向きもしない早須川様 (まじぱねえっす)。やべぇ。嬉しさとニヤケが止まらん。モブ太郎の顔を拝見し、殺されないうちに早須川を担いだまま足早に学校へ。
ああ、空がきれいだ。
* + * + *
現在8:50
途中足止めは食らったものの、どうにか予定通りというかいつも通りに正門をくぐる。正門の向こうには、外見特にいうことなしの普通の校舎。校舎の中央には大きな時計があり、その右側には本校舎よりも少しきれいで小規模な特別棟。左には体育館。そしてそのどれにも学園の校章である、3本のペンが剣を重ね合わせるかのように交差させるマークが描かれてある。”特別”私学というにはあまりに平凡な、どこにでもある公立高校となんら変わらぬ風景。俺は背に担いだ早須川と共に、(もう降りろよ。)校舎に入る。俺と早須川の教室は1年6組、1階は職員室やら保健室やらで、教室は存在しない。席に着くまでの過程は省略。
着席するや否や、SHRの予鈴が鳴る。この予鈴から本鈴までの10分間に読書をするのが俺の1つの楽しみである。
「タカ、おはよ」
まあ、大体こいつに邪魔されるのだが。
俺と何気ないあいさつを交わし、隣の席に座るのは、能一礼統。あだ名はレイト。母は国会中継でもよく目にする有名政治家で、国の補助とかなくても普通にいい学校行けよと思うのだが、諸事情あるらしい。
ところで、能一礼統とはいったい何者なのか、まあ俺の友人なのだが、少し自己紹介といこうと思う。
能一 礼統(17)先の通りにあだ名はレイト。身長は俺より少し高めの180前半。イケメンというよりは好青年といったほうがしっくりくる凛とした顔立ちは「女は早須川、男は能一」と言われるほど。