↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度見た魔法とスキルを【鑑定】したら、すべて習得できました  作者: 阿鼻恭介
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

136/200

第5章 第136話 六人それぞれの装備

 再現合金の二本目も、一本目と大きく変わらない品質に仕上がった。


【対象:再現合金試験片】

【品質:高】

【内部均質性:高】

【耐衝撃性:安定】

【魔力伝導性:安定】

【前試作品との差異:軽微】


「これなら、偶然じゃなさそうだね」


 ユウトが言うと、レティシアは試験片を持ち上げ、光へかざした。


「まだ製法完成とは言わねぇ。でも、装備用の試作へ進むには十分だ」


 工房中央の大机には、《アカシックレコード》六人が普段使っている装備が並べられていた。


 剣、刀、短剣、杖、軽装鎧、治療用装備、大盾。


 同じ再現合金を使うとしても、全員を同じ方法で強化するつもりはないらしい。


「いいか」


 レティシアが机を叩く。


「強い素材を使えば強い装備になる、なんて雑な考えは捨てろ。使う奴に合わなきゃ、ただの高い金属だ」


「では、拙者からお願いするでござる」


 アイリスが刀を置いた。


 レティシアは鞘から抜き、刃を確かめる。


「お前は受け止めるより、流して返す方が多い。ここを重くしすぎると切り返しが鈍る」


 ユウトも刀へ【鑑定】を使った。


【刃中央部:微細損耗多数】

【鍔元:反復負荷あり】

【刀身全体:重量配分良好】


「刃の中央と鍔元に負担が集まってるみたいだ」


「やっぱりな。全部を再現合金にするんじゃねぇ。負担が掛かる部分だけ補強する」


「承知いたした。今の剣筋を変えずに済むなら、それがよいでござる」


 次はフィーナだった。


「フィーナは軽いのがいい!」


「分かってる」


「音もしないやつ!」


「それも分かってる」


「あと、お肉も切れ――」


「飯用の刃物は別に持て」


「えへへ!」


 短剣を見ると、刃よりも柄と留め具の消耗が目立っている。


【柄固定部:摩耗あり】

【留め金:反復負荷】

【刃部:状態良好】


「フィーナのは、柄側を重点的に直した方がよさそうだね」


「そうだな。刃を重くする必要はねぇ」


「じゃあ軽いままがいい!」


 フィーナは即答した。


 ユウトは、その迷いのない返事に小さく笑った。


 エリシアの杖では、金属の使い方そのものが問題になった。


「再現合金は魔力をよく通しますが、増やしすぎると木部との境界で流れ方が変わります」


 エリシアが試験片へ魔力を通しながら言う。


「杖頭の固定環だけに使うのがよさそうです。威力を上げるより、魔石の揺れを減らしたいですね」


「そういう使い方なら賛成だ」


 レティシアが頷く。


「研究者の道具は、勝手に癖を変えない方がいい」


「どれだけ一緒に旅していると思っているのですか」


「だったら話が早ぇな」


「ええ。ですが、私の杖を勝手に改造するのは禁止です」


「分かってるよ!」


 セレスの装備では、守ることより動けることが優先された。


「私は治療中に腕を上げたり、人を支えたりすることが多いです。重い防具は困ります」


 レティシアは肩と脇腹を見比べる。


「胸の前だけ少し強くして、腕周りは触らねぇ方がいいな」


 ユウトも確認する。


【胸部前面:小規模損耗】

【肩部:可動摩耗あり】

【脇部:繰り返し伸縮痕】


「動く部分は今のままがよさそう」


「では、それでお願いします」


「任せな」


 ユウトの番になると、レティシアは腕を組んだ。


「……お前が一番面倒だ」


「なんで?」


「剣も使う。魔法も使う。前にも出るし、後ろにも回る。道具も持つ。戦い方が一つじゃねぇ」


「ごめん」


「謝るな。作りがいがあるって意味だ」


 レティシアはユウトの剣を抜く。


「お前に必要なのは、何か一つを極端に強くする装備じゃねぇ。何をしても邪魔にならない装備だ」


「全部を最高性能にするのは?」


「それをやると、大抵全部が半端になる」


 即答だった。


「万能ってのは全部盛りじゃねぇ。必要な時に足を引っ張らねぇことだ」


 ユウトは苦笑した。


「……それ、俺にも刺さるな」


「自覚あったのか」


「最近は」


 最後はレティシア自身だった。


 大盾を机へ置く。


「アタシは単純だ。受ける。止める。壊れねぇ」


「でも重くしすぎたら、動きづらくなるよ」


「分かってる。だから中心じゃなく、外周と固定部を強くする」


 ユウトが大盾を見る。


【外周部:打撃痕多数】

【固定金具:疲労あり】

【中央部:損耗軽微】


「たしかに端の方が傷んでる」


「だろ?」


「レティシアの読み通りだね」


「だったら完成するまで付き合え」


「もちろん」


 レティシアは満足そうに鼻を鳴らした。


 夕方までには六人分の試作設計がまとまった。


 同じ再現合金を使っているのに、使う場所も量も違う。


 その図面を見た王立工房の職人が唸った。


「ここまで変えるのか」


「使う奴が違うんだから当たり前だ」


 レティシアは言う。


「材料が主役じゃねぇ。使う奴が主役だ」


 ユウトは机いっぱいに広がった図面を見て、少し面白くなった。


 同じ素材でも、答えは六つある。


「完成が楽しみだな」


「当たり前だろ」


 レティシアが笑う。


「アタシが作るんだからな」


 その時、工房の奥から大きな木箱が運び込まれてきた。


「商業ギルドから追加依頼です!」


「追加?」


 蓋を開けると、中にはリバーシの盤、カルタ用の木札、回すコマ、積み木、知恵の輪が詰め込まれていた。


 どれも王国内で広がった品々だ。


「安全基準や品質表示は守られているそうです」


 職人が説明する。


「ただ、工房ごとに盤の厚み、駒の大きさ、木札の寸法、穴の位置まで違う。扱う数が増えたせいで、仕分けや交換部品の用意に手間が掛かっているらしくて」


「なるほど」


 ユウトは箱の中を見比べた。


 危険な粗悪品を防ぐための基準は、すでにある。


 今度必要なのは、大量に作り、運び、修理しやすくするための基準だ。


「全部同じ見た目にする必要はないよね」


「当然だ」


 レティシアが盤を一枚持ち上げる。


「寸法とか最低限の強度だけ揃えりゃいい。木の種類も装飾も仕上げも、好きにやらせりゃいいだろ」


「その方が各地の特色も残せますね」


 エリシアが頷く。


「庶民向け、一般向け、高級品でも分けられそうです」


 ユウトが言うと、レティシアの目が細くなった。


「値段まで一緒にする気はねぇぞ」


「うん。基準を揃えるだけ」


「なら話は早い」


 レティシアは木箱から盤、木札、コマを次々と机へ並べ始める。


「武器の次は玩具か。面白ぇじゃねぇか」


 六人分の装備図面の隣に、今度は何種類もの娯楽商品が積み上がった。


 グランバルドで鍛えるべきものは、金属だけではなかった。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。