1-1.近道したい
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「んー……」
瞼を上げて目を開く。短い針は9を、長い針は12を指していた。
平成25年4月12日金曜日午前9時――完全遅刻。
「……やっば」
掛布団を放り投げ、急ぎ箪笥から必要なものだけ攫って階段を駆け下りる。遅刻なんて不可抗力を除いて(小中1回ずつ、結局登校出来ず)、今までした試しがないのだが、もうこうなってしまってはなるべく早く行くしかない。
リビングで甘い柔軟剤の香りを頬張りながら着替えていると、食卓の方から聞き慣れた声がした。
「おはよう秋。ぐっすり寝てたわね、慌ててどうしたの?」
「寝坊」
「あらま、珍しい。秋全然起きてこないし、母さんてっきり今日は学校休みだと思ってたわ」
「……ド平日なんですけど」
他人事なのか、あっはっはと呑気に笑って母さんは洗い物を続ける。ボケ老人に付き合ってる暇はない。さっさと行かねば。
「朝ごはん出来てるから食べなさい」
「いい。行くよ」
「どうせもう遅刻してるんだから食べなさい。急がば回れって言うでしょ?」
「そういう考えが堕落の道へと子供を駆り立てるんだよ」
これくらい言っておいた方が、人の話を聞いてるようで聞いていない頑固者の母には丁度いい。
「でも、目立ちたくないなら休み時間に合わせて行った方がいいんじゃないの?うん、その方がいい。堂々と遅刻しなさい。その方がヤンキーっぽくてかっこいいわよ」
僕はただの陰キャなので居ても居なくても誰にも気づかれないし、ヤンキーを目指した覚えもない。
だが、こうなると母さんにはもう逆らえない。
まあ、授業の途中に教室に入って悪目立ちすることを考えたらその方がいいか、と自分を納得させて食卓に向かう。
「朝ごはんはトンカツよ。精をつけていってらっしゃい」
「重っ」
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「あら、寝坊?」
「まあ、そんなとこだね」
3限前の放課、僕はなんとか席に着いた。
あのヘビー級の朝食を済ませて家を出た後、学校に行くのが急に野暮ったくなり、通学路の途中にある迷路のように入り組んだ商店街をケッタでぐるぐると回るという迷走をした挙句、しっかりと疲れた体でのろのろと学校へ向かったのだった。
サボりというものは案外気持ちがいいことに気付いた。……その後のことを考えなければ、の話だが。
「なんだか疲れてるみたいだけど、何かあったの?」
と、座った先で隣の席の九重火凪さんが声をかけてきた。僕は「まあ色々とね」と適当に返事をし、次の授業の用具と文庫本を鞄から取り出す。
「そう。そんなあなたにビッグニュース」
「なにかな」
「飛鳥先生から、瑠璃川くんが登校してき次第、生徒指導室に来いと伝えて、って」
「…………」
飛鳥美子。僕達のクラスの担任であり2年の学年主任である。茶色に染めたストレートの長髪、かっちりとしたスーツが似合う175センチの長身とボンキュッボンなスタイル、芸能人顔負けの鼻立ちのいい顔、そしてその全てを覆す程のキレやすく暴力的な性格を併せ持つこの学校の名物教師。
因みに現在30代で独身らしい。
「そういえば2限、英語だったね……」
「今日は飛鳥先生機嫌悪くてHRでもう怒ってたわよ。2限には使いかけのチョークを7本も折ってたし」
「うわあ」
飛鳥先生がチョークを折る日は、大抵不機嫌なことが多いのである(僕調べ)。それに新品のチョークではなく使いかけの短いチョークを7本も折っていたともなれば尚更だ。
一体どんな力を加えれば折れるのだろうという疑問はさておき、はたして僕は無事に生徒指導室から生きて帰れるのだろうか。
to be continue……。
「本なんか読んでる暇はないんじゃないかしら。早めに職員室行くことをお勧めするわ」
「まあ、それもそうか。でも怒られるのは帰りのHR終わってからがいいし、職員室に行くのはやめよう」
放課も終わっちゃうしな。早く済ませたいが本当に残念だ。
「はあ、知らないわよ。……そういえば最近よく本を読んでいるわね。官能小説?」
「……読んでる本を聞く時に官能小説なんて単語が出てくるのは、世界中探しても君だけじゃないかな」
「年頃の男子の読む本なんて官能小説かラノベでしょう?次点で自分は違うアピールの純文学ね」
「偏見が過ぎるだろ……」
男子高校生なんて官能小説どころかラノベのエッチな展開でソワソワしちゃうんだから、過度な刺激は与えてはいけない。
「健全な男子高校生は官能小説よりもエロ漫画の方が沢山持ってると思うよ。僕もそうだし」
「年頃の男子は18禁という火に飛び入る夏の虫ね……」
よい子はマネしちゃダメだぞ!
僕は悪い子だから勿論OK。
「で、結局年頃の瑠璃川くんは何の本を読んでいるの?」
「『ボッコちゃん』さ。昔読んだものをまた読み返したくなってね」
僕は、この本に収録されている話の中でも『おーい でてこーい』と『親善キッス』が特に好きだ。『おーい でてこーい』に関しては、中学生の英語の教科書に英訳されたものが載っていて、当時は感動したものである。
「星新一なら、あの話が好きだわ」
「どんな話?」
「善良な市民が悪人を撃ち殺して終わる話。確か地の文が3文字しかないわ」
「まんま『悪人と善良な市民』だね。しかしその説明、皮肉過ぎないか?」
確かに『悪人と善良な市民』は、善良な市民が悪人を撃ち殺して終わる話だが、それに至る経緯と会話を読むのがあの話の醍醐味である。あらすじでそんなこと書いてあったら誰も読まないだろうなあ。
「その話、『ボッコちゃん』に収録されていたかしら?」
「いや、『宇宙のあいさつ』だね」
「ああ、『宇宙のあいさつ』。とある星に降り立った地球人が、その星の美人宇宙人にムラムラしてキスをした。地球式の挨拶だって言って。でも実はその宇宙人の口が肛門でした……みたいなオチだったかしら」
「それは『親善キッス』だよ。『ボッコちゃん』に載ってる話」
これに関しては昔僕も間違えて覚えていたことがあったり。星新一の物語は宇宙関連が多いのでそういうこともままある。
「中学の時に読んだことはあるけれど、結構忘れているものね」
「記憶ってのは不完全だから、印象が強い事柄をごちゃ混ぜにしてしまうこともよくあるさ。だからこうして昔読んだ本を時々読み返してるんだよ」
僕は、読んだ本や文の内容を忘れてしまうことはあっても、自分の人生に起きた出来事は寸分違わず記憶しているはずだと自負している。なんせ、中身がスカスカだからだ。僕の人生を表すのなら1行で事足りる。どうでもいいことばかりで、どうしようもない失敗の記憶などさっさと忘れてしまいたいと思い続けているが、未だに忘れることが出来ずにいる。
あと何年あれば忘れられるだろうか。
それとも、死ぬのが先か。
まあ、それすらどうでもいいが。
「1限と2限のノート、いるでしょ?」
九重さんは僕の机にノートを2冊置く。
「ありがとう。昼までには返すよ」
僕がそう言うと、九重さんはすっと席から立ち上がり、黒板を拭き始める。
九重さんとは不思議な縁があるのか、中学2年からずっと同じクラスである。何度かこうして隣同士の席にもなった。成績は学年トップで、容姿端麗。おまけに運動神経もいいと非の打ち所がない優秀な生徒。それでいて僕のような雑草にも親切と、まるでラブコメにでも出てきそうなフィクション染みた人物である。少し意地の悪い部分もあるが、まあそこは愛嬌というものだ。
「…………」
ノート一つ取ってみてもまるで小学生の落書きのような僕のものとは違い、分かりやすくまとめられている。無駄がない。女子の字は丸文字が多くて読みづらいと勝手な偏見があるが、九重さんの字は硬筆習字でも習っていたかのように綺麗だった。
そんなことに感心していると、教室がなにやら騒がしくなっていることに気づいた。
「瑠璃川くん」
右から声をかけられて振り返ると、さっきまで黒板を拭いていたはずの九重さんがそこにいた。
「お呼び出しよ」
「……?誰に」
「1組の御劔さん」
教室の前の方の扉に視線をやると、見覚えのある夜色の髪の女子がこちらを覗いていた。
名前は、御劔陽月。
「…………」
ああ、面倒臭い。
違う。
鬱陶しい。
「どうしたの?瑠璃川くん」
「……なんでもないよ。ありがとう、九重さん」
僕は席を立ち、扉に向かって足を進める。一歩一歩が重い。
教室を出る一歩手前で足を止め、顔を上げる。
「久しぶり、秋」
「御劔さん。何か用かな」
自分でもはっきりと分かるくらい冷たい声が出る。今の僕はどんな表情をしてるだろうか。
陽月はハッとした表情になって、左手に持っていた手提げ袋を僕に渡した。
「しゅ……瑠璃川くんのお母さんがさっき学校に来て、瑠璃川くんがお弁当忘れたから渡してあげてって。たまたま私が近くにいたから頼まれて……」
「そっか。どうもありがとう」
僕は適当に笑顔を作った後、ドアを閉めて足早に自席へ戻る。席に着いた時、隣の席に座っていた九重さんが、僕の机をトントンと叩いた。
「瑠璃川くん、何を貰ったの?ラブレター?チョコレート?それにしては大きい手提げね」
「そういうの好きだよね、女子って。バレンタインは2月に終わったよ」
「あら、おかしいわ。今までチョコを貰ったのはお母さんだけの瑠璃川くんがバレンタインの月を覚えているなんて……」
「ふうん。九重さんは、チョコ貰えない奴の方が余計にソワソワして2月14日を意識していることをご存じでないのか」
九重さんは顎に手を当て、少し思案に耽った様子を見せた後、「そういう考えもあるわね」と言った。
中学の時、クラスの皆が九重さんからチョコを貰えないかと妄想していたことは言うべきではあるまい。因みに、皆というのは男女含めた九重火凪片恋勢のこと。羨ましいくらいモテまくりである。
「で、結局何を貰ったの?」
「確かに愛情はたっぷり入っているけど、そういうプレゼント的なものとは違うよ。大好きなお母さんが作った大好きなお弁当さ。慌てて家を出たから忘れてた」
痛恨のミス。
母さんが陽月と僕を仲の良い友達だとまだ思っていることは仕方ないが、そもそも寝坊さえしなければ弁当を忘れるようなミスを僕はしない。
一度ミスをすると、ドミノ倒しのように不幸が重なっていく。
気分が悪い。
「なにそれ……フフッ、面白いこと言うわね」
「面白い?何が」
会話は終わっていたものと思っていたので、油断してそっけない返事をしてしまう。
ドミノ倒し。
そんな僕の過剰な自意識を物ともせず、九重さんは話を続ける。
「『大好きなお母さん』なんて言葉、高校生になって正味聞かないわよ。本気で言ってるのが伝わってくるし」
「まあね。僕は同級生の中で一番マザコンな自覚あるよ」
自覚も何も、多分他人から見れば僕は正真正銘のマザコンだろう。反抗期もなければ、乳離れすら出来てないと思う。
――早く、大人になりたいものだ。過去を過去として切り捨てられるような、立派な。
「あらそうなの。まあ、瑠璃川くんのお母さん綺麗だもの。仕方ないわね」
「あれ?九重さん僕の母さん知ってんだ」
九重さんは、初めて少し動揺したような顔を見せ、視線を逸らす。
「……えっと、どこかで見た気がするわね」
「どこかでって……」
「忘れたわ。それで、御劔さんとはどんなご関係なのよ」
話の流れからして聞かれるとは思っていたが、あんまり気持ちのいい話でもないのでご遠慮願いたい。九重さんは誰かに他人のことをベラベラと話すような人でもないし、単純な興味か。
それならまあいいか、と自分を納得させる。
「……小学校からの同級生だね。別に友達とかじゃないし、特に仲も良くないけれど、親同士の仲は良いっていう、よくあるやつだよ」
「ふうん。それにしては御劔さん、偉く緊張していたみたいだったけれど」
「なんだ、九重さんは僕の噂聞いてないんだ」
「噂……?特に聞いてないけれど」
「そっか。僕さ、小学生の時に同級生の女の子を虐めて、自殺未遂にまで追い込んだんだ。同じ小学校の奴に聞けば誰だって教えてくれると思うけど。……そんな奴とは、誰だって関わりたくないだろう」
九重さんの目が一瞬鋭くなる。
僕は震えそうになった右手首を左手で力一杯掴んだ後、九重さんから目線を逸らして自分のノートを開く。
「知らないから仲良くしてくれてたんだね。まあ、そりゃそうだよな……」
友人とか、そういう面倒なものは今まで捨ててきた。何にも縛られることのない一人が好きだ。
それに、無くなるようなものなら最初から必要無い。
「へえ、そう。貴方、人間のクズね」
「……本当そうなんだよね」
普通に幻滅するよな。そんな人間はさっさと死んで地獄で反省するべきだ。
本当、生き続けていることが烏滸がましい。
「で、御劔さんは緊張していたと。なるほど、よく分かったわ」
さっきまでの鋭い視線が嘘かのように、九重さんはあっけらかんとそう言った。
「なによ」
無意識的に、九重さんの方を凝視してしまっていた。
気まずくなって目線を外す。
「地獄に堕ちろ、とかそういうこと言われるの期待していたんだけど」
「貴方、ドMなの?」
「まあどっちかというとマゾだね」
九重さんは鼻で笑う。
「女の子を虐めて自殺未遂に追い込むような真正のゴミクズを地獄に送ったって、地獄の刑吏も迷惑してしまうわ。しかもドM。救いようがないから、残りの人生でたっぷり奉仕してから地獄に堕ちなさい」
「……君に言われたら仕方ないな」
ありがとう、なんて言いかけてやめた。
九重さんはその話のくだりに興味を無くしたのか、顎に手を当て、天井を見つめる。
「昔のこと知っている人も高校でバラバラになっている訳よね?それなのにクラスがザワつくなんて、瑠璃川くんも案外捨てたものじゃないのね」
「どういう意味?」
「モテモテってことよ。よかったわね」
どこが、と言いかけてクラスをくるっと見渡すと、何人かと視線が合う。
いかん、鵜呑みにしてしまった。
「……僕じゃなくて、御劔さんが別のクラスに来たことが珍しかったんでしょ。御劔さんが有名人だから、僕みたいな雑草に声をかけるのが珍しかったんだろうさ」
御劔陽月。
小学生の時からの知り合いで、我が校でも指折りの有名人。
彼女が有名な最大の理由は、その圧倒的なバスケの実力。実際、中3の時には夏の大会で全国優勝を経験している。
我が校はそれなりの強豪であるとはいえ、所詮公立高校。県内には全国でも有名なインターハイ最多優勝の私立高校があるのだが、何故ここを選んだのかは謎である。
まあ、単にお呼びが掛からなかっただけかもしれないが。女バスのレベルなんてよく分からないし。
「相変わらず自己評価が低いわね。クラスで密かに人気のある男子が、同学年でもファンの多い女の子に呼び出されたってなると、誰しも内心落ち着かないものよ」
「人気?それは作り話だとしても皮肉だろ……。なんせ、高校に入ったところで結局君以外友人ができた試しがない」
「あら、私達友達だったのね。知らなかった」
「僕の唯一の友人を奪わないでくれ」
高校生になれば適当に友人でも出来るかと創作物を見て漠然とそう思っていたけれど、中学の時もロクな繋がりがなかった人間が、まあそんな都合良く友人が出来るはずがなかった。
鬱陶しい人間関係を欲しいとも思わないが。これがまさに需要と供給の一致だな。
「でも貴方が人気があるのは残念ながら本当の話よ。昨日クラスの女子グループLINEで話題になってたわ、『瑠璃川くんって絶対受けだよね』って」
「全然嬉しくねえ」
腐ってんじゃねえか。クラスLINEでそんなニッチな話題を話すんじゃない。愚痴とか言っとけ。
まあ、僕なんかでもそういう需要くらいあるんだなと感心してしまった。腐女子コワイ。
そんなこんなでチャイムが鳴り、ざわついていた教室も静まりを見せ、教師が教壇に立つ。
今日も今日とて平和な1日だろう、と僕は安堵した。
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「はあ……」
全身埃まみれで人っ子一人いない体育館の壁に項垂れる。疲れた。
無理もない。朝っぱらから無駄に自転車を漕ぎ、無駄な体育の授業を受け、今こうして無駄な労働を強いられたのだから。
「終わったか、瑠璃川」
「はい。このくらいでいいですかね」
あの後、安堵出来たのは結局束の間であった。昼飯を済ませた後、職員室だけは行くまいと教室でダラダラと過ごしていた。しかし昼寝を始めて早々飛鳥先生に捕まり、こっぴどく叱られた挙句、放課後に体育館倉庫の掃除をするよう命ぜられた。
しかも見張り付き。
「チッ、隅に埃が溜まってるじゃねえか。まだまだ掃除が甘いようだが、まあ今日は勘弁しといてやる。次はこんなもんじゃ済まさねえからな」
「お手柔らかにして下さい……」
僕がいるのは高等教育の場ではなく、ブラック企業なのかもしれない。
「いいか?高校生活を平和に送りたいなら私の機嫌を損ねるなよ。社会に出たら通用せんぞ」
「朝から機嫌悪かったって聞いてるんですけど……僕、関係あります?」
「あ?誰から聞いたんだそんなこと。関係あるに決まってんだろが。……まあ、昨日の合コンでは盛大に失敗したし、朝から教頭が仕事を振ってくるし、お前以外の用件でイライラしてたのは事実だがな」
それは関係ないというのでは……と思ったが、火に油を注いだのは事実だし、そろそろ殴られそうなのでもう黙っておこう。
収穫もあったし悪いことだらけではない日だった。
「瑠璃川、てめえ何嬉しそうな顔してやがんだ?」
「と、当然掃除が終わったからに決まってるじゃないですか!飛鳥先生が合コン失敗して喜ぶはずがないですよ」
「…………」
「……?」
「よし、殺すか」
数秒考えてたのは僕の命の取り扱いですか…。
「仮にも教師なんですからそういう言葉遣いは改めた方がいいのでは」
「生徒が教師を語るんじゃねえ、殺すぞ」
「どうあっても僕は殺されるんですか……」
当然、掃除が終わったからではなく合コンが失敗して喜びを隠せなかったのだが。――飛鳥先生に男の影が全くないと分かったから。
飛鳥先生、本当にタイプなんだよな……美人でハキハキしてて背も高くて暴力的で。
もし飛鳥先生が卒業式までに彼氏出来なかったら、絶対プロポーズしよう。まあ、こんないい女が僕なんぞに振り向いてくれる訳もないか。
「それにしても瑠璃川。お前はいつもいつも何がそんなに退屈なんだ?」
「……というと」
浮かれていた心が、普段のように暗く――沈む。
聞きたくも、返事もしたくない話が始まる感覚。
「授業中も意欲的に受けているとは思えない。かと言ってサボっているわけでもなくテストの順位も上々。部活はしていないが、任された最低限の仕事はこなす。――行動に問題がある訳じゃない。だが、これは人間……いや、学生としてどうなんだろうか。授業がつまんねえと宣う奴らも放課後は打って変わって元気になったり、なにかしら気持ちの上下がある。それがお前には見えない」
「…………」
陰キャってこういうものなんですが……なんて言っても、ひょっとして先生はこんな感じなので陰キャという言葉自体ご存じでないのかもしれない。別の表現を考えたが、思いつかなかったので出力することをやめた。
「そんなお前が今日遅刻した。何かあったのかと思えばそういう感じもない」
「普通に寝坊ですよ。深い意味なんてないです。……別に、全てにやる気がない人間なんていくらでもいるでしょう?特別珍しいものでもないと思いますけど」
「まあ、そうかもな。ただ、なんとなくお前はなんか違う気がしてな。理由は分からん、というか理由なんてどうでもいいか……とにかくお前と少し話でもしてみたかったのさ。進路のこともそろそろ真面目に考えないといけないからな」
「うっ……」
進路希望、適当に書いたのがバッチリばれてた。頭の痛いことが過ったところで、体育倉庫の鍵を閉める。
「鍵はこっちで預かるから帰るといい。因みに親御さんには少し遅くなると連絡しておいたから安心しろ」
ああ、アフターケアもばっちり。
「分かりました。遅くまで付き合っていただき、ありがとうございました」
僕は一言飛鳥先生にお礼を言って、駐輪場の方へ足を進めた。
辺りはすっかり暗くなってしまって、明かりが見えるのは職員室だけ。飛鳥先生には付き合わせてしまったことに少し申し訳なさを感じた。
校舎を跡目に駐輪場に着いて、自転車につけられたダイヤル式の鍵の数字を合わせていると、ふと背後から人影が僕に重なった。
「おつかれ、秋」
久しぶりに……いや、さっき聞いた覚えのある声。振り返ると、夜色の髪が暗闇に溶けつつ月の光を受けて藍色に光るのが見えた。
御劔陽月――そう認識し終わる前に、僕は自分の自転車に視線を戻した。
「体育倉庫の片付けしてたね。大変だった?」
「……まあそれなりに」
声がうわずって、唾液をごくりと飲み込む。
さっさと会話を終わらせたかった。
「せっかくだしさっ!久しぶりに一緒に帰らないっ?」
自転車のカギを外して乱暴にバスケットに押し込んで、目線を合わせないまま、僕は返事をする。
「寄ってくとこあるから」
当然、寄るつもりのある場所なんてものはない。時間を共有したくないだけの嘘。暗にさっさと消えてほしいと言っている。
「そっか……じゃあ、また明日」
そう言ったかと思うと、彼女の影が僕から徐々に離れていった。
頭の足りない人間とはいえ、流石に対人関係のスキルは身についているようだった。
「…………」
気配が去った後、通り過ぎていく夜色の髪に消えるまで目線をやって、溜息をつく。
あいつを見ていると、昔の事を思い出す。
誰にどう赦しを乞うても贖われることのない罪悪。僕の自己満足が招いた惨劇。今更、何を思ったって何にもならない何か。そんなことを思い出して、一つだけ浮かんだ言葉を自分に問う。
――もしあの頃に戻れたら僕は昔とは違う選択をしただろうか。
いいや、絶対にしない。後悔していないことがたった一つだけ残っているから。
「…………」
そんなことを考えていたから、御劔陽月に言いそびれた言葉があったことに気付く。
「また明日」なんて言葉は、僕には必要なかった。
「さようなら」
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住宅街を抜けて右に曲がったところで、商店街に出る。
学校を出てから15分程経っただろうか、すっかり日が落ちて昼は活気のある商店街も閑散としている。まあ、活気があると言っても数件の店舗が頑張って営業しているだけで、僕が小学生だった頃に比べてシャッターが目立つ。
母さんがよく利用していた肉屋さんも、後継がおらず閉めてしまったと嘆いていた。あそこのメンチカツ美味しかったんだけどなあ、なんて思い出に浸りつつ足早に抜けていく。
商店街を抜けた先には大きな坂がある。ここからは住宅街の向こうにある田園地帯と山が一望出来る。坂の頂上に来たところでペダルにこめていた足の力を抜いて重力に従い下り始める。
因みに、完全に逆走。サイクル切符を切られたことはまだないが。
「…………」
それにしても今日は色々なことがあった。あんなに人と会話をしたのはいつぶりくらいだろうか。こんな日々が続くようなら平和な日常とはとても呼べない。
僕にとっての平和とは虚無。
良いことが起きた分、悪いことがあるのが世界のルールだったらば、そんなものは全てない方がいいと思う。
ただ生きていくという目的を果たすだけなら、死ぬまで息をしていればいいだけなのだから。
風を切っている感覚を味わいながらそんなことを考えていると、坂の終わりに差し掛かる。降りてきたスピードのまま、小さな交差点を左に曲がろうとして――。
「ちょっ」
坂を下り切る寸前、ゴッ!と嫌な音がしたと思えば、体が宙に浮かび上がる。状況を理解できずにそのまま前のめりになって自転車と体が離れ、坂道を下ってきた勢いのまま、道路に向かって体が放り出される。突然の出来事に咄嗟に受け身をとることもできず、勢いよく地面に叩きつけられ、転がった。
「あ……がっ……」
腕に広がる激痛によって飛びかけていた意識が鮮明になり、状況を理解する。自転車の前輪が何かにつまづいたのだ。
余所見をしていた。
「いって……」
クソ、骨をやったか。本当厄日だな……今日は。
……クラクラしてきた。気を張ってないと意識を失いそうになる。それにこんな車道のど真ん中で転がっていたら本当に死んでしまいかねない。
こんな人っ子一人歩いていない住宅街じゃ助けを呼ぼうにも呼べないし、情けないがとりあえず救急に連絡するしかないか。倒れたまま、なんとか無事な左手でズボンのポケットをさばくると、硬い感触がある。
…………。
よかった、携帯は壊れていない。そのまま119番にかけようとしたとき、僕はふと転がってきた方向へ視線をやった。
「……は?」
視線の先には自転車が二つ転がっていた。一つは僕の乗っていたもので、それはもう派手に転がっていたのだが、もう一方は僕のものではない。前輪が異様にひしゃげている。
左手を支えにして無理矢理立ち上がり、その自転車に近づくと、切れかかっていた街灯がはっきりとソレを照らし出した。
赤くて紅くて朱い――血痕を。
「なんだ……これ」
轢き逃げ、か?
いや、違う。周りには人間も転がっていない。
自転車に乗っていた人間を襲ったのか?――いや、それじゃあの自転車の有り様に説明がつかない。もっと大きくて重い物がぶつかったような壊れ方だ。
「…………」
これは危険な興味だ。
落ち着け。自分のことをまず先に考えろ。
だが、心では分かっていても体がそうはいかなかった。
反射的に、目線を回して――あろうことか、ピンポイントで目に入ってしまった。
見てしまった。
滴り落ちたような血痕が道路右脇の狭い路地に続いているのを。
それを見た瞬間、今日の出来事を思い出す。
ドミノ倒し。
血に導かれ、フラフラとバランスを崩しながらそこへ向かっていく。
これ以上行ってはいけない――そう思っても、引き寄せられるように足が動いていく。
そして、足が止まった。
「……は?」
そこには死体が転がっていた。
夜色の髪は血に染まり、身体の中心にはすっぽりと穴が空いている。そして、その顔には見覚えがあった。
「また明日」と言った彼女に。
「……みつるぎ……よづき……?」
つい先程僕に声をかけたそれは、最早人ではなく物としてそこに横たわっている。その瞳には光はなく、鏡のように周りの景色を映し出すものでしかなくなっていた。
痛みも忘れ、散らばっている赤黒い肉の欠片を掬い上げる。
まだ血液の手触りと温度を感じるが、目の前のものが生きているだなんて到底思えない。
「…………」
何が、起きた。
これは、事故なんかじゃない。明らかに、意図的に、殺されている。
状況を理解しようとするが、目の前の死体が思考の邪魔をする。
「うっ……」
たまらず、嘔吐した。
理解出来ていることは、それが死体だっていう事実だけ。生きているかどうかの確認などしていなくても分かる。こんな損傷じゃあ人間は生きていられないことくらい。
ただ、それを認めたくないのも事実だった。
御劔陽月は、かつて僕の大切な何かだったから。
「…………」
御劔陽月は死んだ。
力が抜け、死体の隣の血溜まりに座る。
「陽月」
返事はない。
「……ほらね。僕はお前の人生には不要だったろ」
僕なんかに話しかけずにそのまま帰ってたら、殺されずに済んだかもしれなかったのに。
いや、もうやめよう考えるのは。
何をしたって無駄だ。例え神にだって死は覆せない。
だから、冷静になれ。
「……ふう」
ゲロ臭さの入り混じった大きな息を吐いたら、落ち着いた。
これは終わった話。僕に出来ることは何もない。
せめて、警察に連絡しよう。
転んだ痛みが増してきているので早いとこ救急車を呼びたいけれど、死体を放置しておくわけにもいかない。第一発見者だから疑われないようにしなくてはならないが、最早そんなことを考えていられる余裕もない。
「…………」
死体の横に座り、血塗れの左手をポケットに突っ込んで携帯電話を取り出そうとした時、街路灯の灯りを遮るように僕に影が被さった。
「カタギか」
その声に反応し見上げた瞬間息を呑む。
目の前には身長2mはあろうかという大男が立っていた。
「あーあ、見られちまったか。お前も不幸だな、こっちは親切心で害虫駆除をしてただけなんだが」
筋骨隆々、スパイ映画で見るような服装、そして右腕は――赤黒く染まっている。
「……犯人は現場へ戻ってくるとは言うけど、こんなに早いものなんだ」
大男は僕を一瞥し、ゲラゲラと笑い出す。
「プハハ!!こいつは傑作だな。血溜まりの中で死体を横に転がしたままケツを地面につけて座って、それでいて冷静でいられるなんて。頭のネジがぶっ飛んでるどころかネジ穴すらねえんじゃねえか?しかもオレを見て動揺する素振りもない。お前、本当にカタギかよ」
「…………」
可笑しそうに笑う大男に僕は一つ質問を投げかける。
「コレ、やったのアンタなのか?」
笑いを止め、大男は答える。
「……だとしたらどうすんだ?」
僕はポケットにいれたままの左手で携帯を取り出し、大男に向かって投げた。
「命よりも大事なオカズが入ってる携帯。そのデータ全部消去して捨てておいてくれるかな。死んでから母親に笑われるなんて、ちょっと間抜けだからさ」
間違いない。陽月を殺したのはコイツだ。陽月の体にすっぽりと空いた空洞、大男の右腕に付着した血。
真っ当な死に方じゃない死体には、こんな化物染みた化物がおあつらえむきだろう。相対しただけで体から血の気がすっと引いていく。
何れにせよ、僕は口封じに殺されるかな。
「ハッ、物分かりがいいな。だが――こんなもんぶっ壊しちまえばおんなじだろ?」
転がっている携帯を踏みつけて壊した後、大男はこちらに向き直る。
「遺言でも聞いてやるよ、そこの小娘みたいに」
「……へえ、参考までになんて言ってたか教えて欲しいな」
男は、ボイスレコーダーを僕の目の前に投げた。僕は徐にそれを拾い上げる。
「俺の趣味だ。こっちの世界じゃ殺した奴の記録や死体はなんにも残りゃしねえ。だから殺す前にそいつの肉声を録音してやってんのさ。それが、そいつの残した遺言だ。見たところお前もソレと同じ、近所の学生のようだしな。せめて聞いてやれよ」
スイッチを押し、耳に当てる。
ノイズ混じりの中、聞こえてきた声で耳に残ったのは一節。
"一人にしてごめんね"と。
「…………」
僕は、自分から一人になっただけだ。
何を――勘違いしている。
「お前の遺言をさっさと残せ」
いつも楽しそうに笑っていた裏では、そんなおぞましい感傷に浸って、ずっと僕のことを見ていたのか。その事実が、これだ。こんなの笑うしかない。
僕はそんなこと、一片たりとも望んじゃいないのに。
たったそれだけのすれ違いが、この惨劇を引き起こしたのだとしたら、僕は。
僕は、何をするべきだ。
どうしたい。
「……壊したい」
「あ?」
男はポカンとした表情になる。
「今なんて言ったんだ、お前」
「死ぬのは……アンタを壊してからだっつってんだよ!」
ボイスレコーダーを男に投げつけ、距離を取ろうとする。しかし、血に足を取られ、前から転んだ。さっき大事故を起こしたばかりなのだから、体が思うように動かないのは当然だった。
「間抜けだなあ、ガキ。さっさと死ね」
その声に反応して男の方を振り返ると、右腕を振りかぶっていた。その右腕の周りには、黒い気流のようなものが渦を巻いている。
咄嗟に体勢を立て直して避けようとするが、残念ながらその答えは得も言われぬような腹部の痛みだった。
「ウッ……ゴェッ!」
さっきまでとは違う種類の、生と死を実感する痛み。
視線を体にやると、腹部にぽっかりと穴ができていて、そこから滝のようにドバドバと血と壊れた臓物が溢れ出す。
これか、陽月を殺ったのは。
「お前はもう終わったんだ。運が悪かったな」
段々と意識が遠のく。頭がグラグラして目の焦点も合わない。夜更かししすぎたあとの眠気みたいだ。
これが死ぬってことか。
――母さんはきっと、僕が死んだら悲しむんだろう。あの時みたいに無茶をした僕に怒りをぶつけながら。
いや、謝るのは後回しだ。
「悲鳴を上げないのは立派だ。苦痛を味わい続ける前にさっさと死にな」
最初から、例え五体満足でも、僕にはこんな化物どうにか出来るわけがなかった。
でも。それでも、やめられない。
体が機能を完全に停止するまでは、動いて、壊してやる。
「絶対……アンタは……ぶっ壊して地獄まで連れて行く」
「死人に口なしだ」
大男が右腕を振りかぶって僕に向け、そのまま突き出し、僕の身体を貫く。僕はその腕を力一杯掴んだ。甲高い音と共に、僕の手指が刻まれていく。
「なにをするッ!無駄だっつってんだろ!」
「なんにもしねえよ……お前にそんな魔法みたいなもんが使えるなら、僕にだって、何か……できんだろ」
「戯言を……」
「……だから、壊すんだ……お前だけはッ!」
そう言った瞬間、僕の体からドス黒い靄のようなものが溢れ出し、それは僕を伝って男の体まで飲み込む。
「ああああああああッ!!……お前!!」
黒い靄は僕の視界まで飲み込んでいく。
「……もう……どうにでもなれってんだ」
ブラックアウト。
アジカンが歌ってたっけ。東京事変だったか。
そんなことを考えながら、僕の意識は途切れた。
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目を覚ますと、路肩で大の字になっていた。
目を覚ました?
え?あれで生きてるって、何。
いやいやいや。何が起きた。今日はメルヘン感謝デーか何か?もしくは自転車で転んだ衝撃で頭を打っておかしくなったか。
なんて、そんなことはなく、あの痛みの記憶が頭をよぎる。
腹部に触れてもあの大男に開けられたはずの風穴はすっかり塞いでいる。手に刻まれた傷も、まるで最初からなかったかのようにどこにも痕跡がない。
「ようやくお目覚めかい」
頭上からの声に思わず立ち上がろうとする。
しかし、腹部に激痛が走り、ずるずると力なくまた同じ体勢に戻る。
「あ、まだ動かない方がいいぜ。君の《エス》はそこまで即効性がないようだ」
恐る恐る顔を見上げると、そこには一人の男が軽薄な笑みを携えて僕の顔を覗いていた。
「アンタ……誰だ。……いてて」
「だから起きんなって言ったのに。それにしてもまた厄介な目に遭ったもんだよね。瑠璃川秋くん……と、御劔陽月ちゃんね。近所の高校の学生か」
男は僕と陽月の学生証を両手で開きながらそう言った。
白髪、咥えタバコでニヤニヤと笑う口。明らかに日本人ではなさそうだ。
「ああ、自己紹介しなきゃね。――オレはファイブ。悩める少年少女を助けにやってきたヒーロー……なんちゃって。そんなんじゃないけどね」
男――ファイブはそう言うと倒れている僕の眼前に瓶を差し出して「起きたんならさっさとこれを飲んでくれ」と言った。
見るからに怪しいが、とりあえず手を伸ばしてそれを受け取る。
「…………」
「怪しんでるのかい?でも、こんな満身創痍の君を殺してないって状況が理解できないわけでもないよな。少なくとも俺は君の敵ではない。利用する気も毛頭ない。助けに来たと言っている」
ファイブの言い分はもっともだった。先程の大男の気配はなく、僕はのんびりとここで寝ていたのだから。
大男を追い払ったのは、こいつか?
「……わかった、これは飲む。だけど一つ条件がある」
「条件?なんでこっちが慈善事業しようとしてるのに……ってまあいいか。なんだい?時間がないから手短に」
「あの大男がどこへ行ったか知っているなら、教えろ」
ファイブはスッと真顔になり、僕の向こう側に目をやる。
「大男……か。そこにあるものはそういうことだったんだね」
ファイブの目線に沿うように、僕は辛うじて動く首を左に向ける。そこには人型に盛られた白色の砂のようなものがあるだけだった。
「なんだ……これ」
「君が、殺ったのさ。君自身の《エス》でね」
「はあ?」
理解しようとしても、常識が思考を阻む。
消せ、そんなもの。
あの大男が目の前に現れた時点で、僕の中の常識は既に常識ではない。
「はい、条件は飲んだ。――詳しい説明は後だ。結界を張っているけど、そう長くはもたない。とにかくここを離れるから、グイっと飲んじゃって!」
「わかった」
ファイブから差し出された瓶を掴み、その中の液体を口の中に放り込む。
「おえ……めっず……」
その瞬間、きつい渋味が口の中に広がった。
想像を絶する不味さ。人間が口にしていい類のものじゃない。通学路に落ちていた渋柿を拾って食べた時の数十倍は渋い。口の水分が跡形もなく消え去り、渋味の後ろから臭みと吐き気が襲ってくる。
さっき吐いたゲロの方がまだマシだった気がする。
「日本では良薬口に苦しって言うんだろ?」
「そんなレベルじゃないだろ……おえっ」
「ハハッ!これは即効性の痛み止めだ。君の見た目、治っているように見えるけど完全じゃなさそうだからさ。今から君には一働きしてもらわないといけないし」
「一働き?」
「言っただろ?――俺は《悩める少年少女》を助けに来たんだぜ?」
「は?」
痛みも忘れて飛び上がり、ファイブの方を見る。
「そんな……」
「驚くことか?君は理解したはずだ、その身で」
そこには、さっきまで死んでいたはずの御劔陽月が寝息を立てて寝ているのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ぼのぼのは、いいぞ。
因みに、ゲームがやばいのは最近知りました。




