打鍵、リズム崩壊
「ひぇ……。」
とにかく、Enterキーとスペースキーを押すときの感覚がまるで違った。
本当に“触れただけで押せる”という言葉が誇張にならないほど、
指の動きと入力がぴたりと連動してくれる。
Enterキー、スペースキーがどれほど軽いのか?
机の上にあった目薬容器で試してみる。
ポリエチレン製の5mlの軽いボトルを、約3センチの高さから落とす――押せた。
これが荷重30gの世界だ。
ただ、まだ一抹の不安はある。
これまでのキーボードも、すぐ手が届くようにUSBでつないだままにしている。
そもそも、なぜ私は“ご神体”を手に入れようと思ったのか。
理由はいくつかあるが、一番大きいのは小指だ。
一日2~3万打鍵を超えてくると、左手の小指が痛くなってくる。
原因は明確で、速く打とうとすると小指の腹ではなく、
小指の“左側面”でキーを押してしまう癖があるのだ。
細かい力の調整が苦手な小指は、余計な力を入れてしまう。
ならば、キー荷重を30gにすればどうか。
小さな力で押せるようになれば、無駄な力みも改善するのではないか。
そう思ったのが、“ご神体”購入の動機である。
それで、だ。
まずは感覚をつかもうと、タイピングゲームをやってみる。
が……驚くほど遅い。
もう一度やってみる。
やっぱり遅い。
なんでだろう……?
もう一度、感触を確かめながらタイピングしてみる。
少しずつ見えてきたのは、キーにより押し込む深さがバラバラになっていること。
それによって、リズムがぐちゃぐちゃだ。
ここは頭で考えずに、ひたすらタイピングを続けよう。
キーボードに慣れるしかない。
ただ一つ、テーマだけははっきりさせておく。
――ミスをしないように打つこと。
慣れることが目的であり、速さはあとからついてくる。
(ご神体での総打鍵数:19,893)




