訓練
ジョスはただの平凡な若者だった。毎日同じ日常に閉じ込められていた。
しかし、ある超自然的な出来事が彼の世界を揺るがし、彼はすべてを一から始めることを余儀なくされる。
理由も分からず、頼る者もおらず、望んでもいない運命を背負わされた彼は、未知に満ちた新たな現実に立ち向かわなければならない。
選ばれたのか? それとも間違いだったのか? あるいは、ただの終わりの始まりにすぎないのか?
もはや見慣れた世界ではない場所で、ジョスは気づくだろう——すべての再出発が平和をもたらすわけではない。
中には、本当の戦争への序章となるものもあるのだと。
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第6章:訓練
イネ市。
「火を…火を撃て!」
「軍曹、弾丸が効きません!」と伍長が叫んだ。
「それが何なのか特定しろ!」と軍曹が命じた。
「了解、軍曹!」と伍長が答えた。
兵士たちは必死に銃を撃ち続けたが、巨体で筋骨隆々、尖った耳を持つ存在は弾丸を受けても微動だにしなかった。
「バズーカを用意しろ!」と軍曹が命じる。
兵士たちは素早く従った。
「構え…よし…撃てぇ!」と軍曹が叫んだ。
ミサイルは正体不明の存在に直撃し、爆発とともに吹き飛ばした。
「ハァッ…ハァッ…」とその存在たちは唸った。
「隊長…ミサイルは効果がありました」と一人の隊長が言った。
「もう一度バズーカを装填しろ!」
「はいっ…はいっ…はいっ…!」と伍長たちは答えた。
「軍曹…あの存在の正体が通知されました」と伍長が告げた。
「では言え!」と隊長が怒鳴る。
軍曹と隊長は真剣に伍長を見つめた。
「それが…そ、その…」と伍長は言い淀む。
「はっきり言え!」と軍曹。
「…オーガです、軍曹…」
「オーガ? 馬鹿なことを言うな、伍長! 『デイネディア』と言え…!」
その瞬間、軍曹は激しい攻撃に遮られた。岩が宙を舞い、爆発が響き渡った。
「岩だ…岩が飛んでくる!」
「入ってきた…奴らが来たぞ!」
「うわぁぁぁ!」と兵士たちは悲鳴を上げた。
軍曹、隊長、伍長はテントから飛び出した。大木が倒れ、軍曹の上にのしかかった。
「うわぁっ!」
「軍曹ぉぉ!」と隊長が叫ぶ。
一体のオーガが巨大なメイスを持って現れ、伍長を叩き潰した。そして隊長の背後に立つと、ゆっくりと振り返った隊長は恐怖で硬直した。
「はぁ…はぁ…」と隊長は震えた声を漏らした。
オーガは片手で隊長の頭を掴み、低く太い声で言った。
「この土地は我らのものだ」
「や、やめろ…ああああっ!」
オーガは拳を握り締め、容易く隊長の命を奪った。
「女、子供、そして何人かの男を捕らえろ! 残りは皆殺しにし、全てを破壊しろ!」
「この土地は我らのものだ! 誰も止められぬ、貴様すらもな!」
オーガは天にある裂け目を指し示しながらメイスを掲げて叫んだ。
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寂れた静かな村。
「調和の取れた場所を作るって、どういう意味だ?」とリクが尋ねた。
「皆が平和に暮らせる王国を作るんだ」とジョスが答えた。
「ははは…王国? 馬鹿なことを言うな!」とインが笑った。
ジョスは驚いた目で見た。
「笑われても仕方ないな、ジョス。ここは中世じゃないし、アニメや映画でもない」とリクが加えた。
「好きに言え。俺は皆が平和に暮らせる王国を作る」とジョスは強く繰り返した。
「どうやって作るつもりだ? お前はさっきの悪魔に殺されかけたんだぞ。王国を守るどころか、住民はどうする?」とリク。
「気を使えば、皆を守れる」とジョスは答えた。
(家族も探せる…)と心の中で思った。
「気? 誰が教えるんだ?」とインが問う。
ジョスは真剣な目でベルを見た。
「お前は気を知ってるな? 教えてくれ」
「なぜ俺が? お前の友を殺し、この世界を襲った悪魔の一人だぞ」とベル。
「人類が抵抗するのが面白いって言ったろ? それにソタを殺したのはお前じゃない。俺たちも自分の利益を優先できる」とジョスは言った。
マリアとリクはジョスを疑いの目で見た。
「何も教えずにそんな話だけするのは、無意味で無駄だ」とジョスは続けた。
「この世界には既にそれを扱える者がいる。例えば仏の信者たちだ。彼らに頼め」とベルは答えた。
ジョスは震える体でベッドから降り、ベルの前に跪いた。全員が驚いたが、ベルだけは軽蔑の目で見た。
「仏の信者を探すのは今の状況では遅すぎる! 頼む…いや、俺たち三人全員に教えてくれ! 頼む!」
「人間は簡単に自分を貶めるものだな」とベルは言い、次の瞬間笑みに変わった。
「だが確かに面白い。お前らの抵抗…そしてお前の未来の王国。いいだろう、気の使い方を教えてやる」
ジョスは真剣な目で顔を上げた。
「さて、もう遅い。休め。明日から訓練だ」とベル。
「聖なる道具について質問がある」とインが言った。
「もう答えた。休め」とベルは真剣な目で言った。
皆、それぞれ眠る場所を探し、ベルの言葉を胸に悲しみと考えを抱えたまま眠りについた。
時は過ぎ、全員が眠っていた…ベルを除いて。彼は屋根の上で空の裂け目を見つめていた。
(古代の存在を遠ざけていた封印が…人間どもが神話や伝説と呼ぶ存在を…解かれた)
(だが、なぜ聖なる道具をこの世界に放った…? 神の力すら宿すものを…)
(悪魔には禁じられたはずの道具を…)
ベルは怒りで眉をひそめ、裂け目を睨んだ。
そして笑った。
(だが構わん…計画が上手くいけば…全てが滅びる…お前たちもな)
「ハハ…ハハハハ…」とベルは笑った。
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夜明け、インは既に訓練のためのストレッチをしていた。
マリアとジョスは眠っており、リクはソタの墓地にいた。
しばらくして全員が外に集まった。
「さて…ベルはどこだ?」とイン。
「誰か見たか?」とマリア。
皆が顔を見合わせたその時、ベルが袋を持って飛んできた。
「やあ、来たぞ」とベル。
「どこに行ってた?」とジョス。
「ちょっとした場所だ」とベルは笑った。
「教えるって言ったよな?」とマリア。
「ああ、そうだったな…だが、ちゃんと食って休んだか?」
皆は顔を見合わせた。悪魔の襲撃以来、何も食べていなかったのだ。
「何も食べてない。襲撃で食料は地面に落ちて全部食えなくなった」とリク。
「やはりな。だから食料を取りに行った」とベルは袋から食料を出し、渡した。
「食え…集中できなければ発動できん」
皆は疑いの目を向けた。
「なぜそんな目で見る? 殺す気ならもう殺している」
「…わかった」とジョスとイン。
「ありがとう…」とリクとマリア。
皆は食事をとり、ベルはじっと彼らを見つめた。
(まるで変態が見ているみたいだ…)とインは思った。
「そうだ、未来の王国の住民についてはまだ答えてないな」とリクが皮肉を込めて言った。
「ああ、それは救った人々だ」とジョス。
「救う?」とマリア。
「ああ、各地を回って人を救う」
「ははは…本気か? 誰が手伝う?」とイン。
「この村にはもう何も残ってないし、皆逃げた。だから一緒に来てくれないか? どうだ?」
皆は驚いて顔を見合わせた。
「俺が行く」とベル。
ジョスは戸惑った顔で見た。
「ぺ…ぺ…」と言いかけたが、インに遮られた。
「よし! 一つ条件だ! 俺が軍の総司令になる!」
「私も行く! 王国の金庫番になりたい!」とマリア。
ジョスは驚き、笑って承諾した。
リクはレストランと周囲を見て、懐かしそうにため息をついた。
「わかった、でもしばらくだけだ」とリク。
「しばらく…それでいい」とジョス。
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「訓練の時間だ」
「やるべきことは、心・体・精神の完全な均衡を見つけること。深く滑らかな呼吸だ」とベルは説明した。
まずは瞑想から始め、その後ベルが教えるゆっくりとした正確な動きに移った。
「おお、これ映画みたい」とマリア。
(言うほど簡単じゃないな…)とイン。
時間が経つにつれ、ベルは一人ひとりの姿勢と動きを直していった。
数日後──
インは寝ずに集中し、わずか2日半で発動した。
マリアとリクは4日で、全力の努力の末に発動。
ジョスは7日で、素早く洗練された動きで成功した。
それぞれが異なる困難と疲労を味わった。
その間にも、多くの都市がオーガや悪魔など目的の異なる存在により陥落していった。
1週間後──
「1週間経ったが、お前たちはまだ数分しか発動できない。教えたのは基礎だ。戦いなどの極限状態で向上するだろう。常に均衡を保て。それができれば、この世界が知らない領域に到達できる」
皆は疲労の中にもやる気を宿した目でベルを見た。
数分後、ジョス、リク、イン、マリアはソタに別れを告げ、敬意を示した。
(必ず彼女を見つける…)とインはメダルを握った。
「ありがとう」とリク。
「すまない」とジョス。
「見つけよう」とマリア。
ジョス、リク、ベル、マリア、インは未知の道へと旅立った。
(全てを変える時だ)— ジョス
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