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神話の品

ジョスはただの平凡な若者だった。毎日同じ日常に閉じ込められていた。

しかし、ある超自然的な出来事が彼の世界を揺るがし、彼はすべてを一から始めることを余儀なくされる。

理由も分からず、頼る者もおらず、望んでもいない運命を背負わされた彼は、未知に満ちた新たな現実に立ち向かわなければならない。


選ばれたのか? それとも間違いだったのか? あるいは、ただの終わりの始まりにすぎないのか?


もはや見慣れた世界ではない場所で、ジョスは気づくだろう——すべての再出発が平和をもたらすわけではない。

中には、本当の戦争への序章となるものもあるのだと。



---

第5章:神話の品


「なに?」とリクが言った。


皆の視線が小さな悪魔に向けられた。


「うわあああ! 立っている悪魔だ!」とマリアが叫んだ。


インとリクは棒を掴み、その小さな悪魔を叩き始めた。


「ハァッ…ハァッ…ま、待って…待って! 危害は加えない!」と悪魔は殴られながら言った。


「もっと叩け!」とマリアが言った。


「やめ…や…叩かないで! 本当に危害は加えない…」と怯えながら繰り返した。


「ストップ、やめろ!」とリクが言った。


「何を言ってるんだ! 殺すべきだ!」とインが叫んだ。


「いや、待って! 何もしないって言っただろ?」とリクは憎しみの目で小さな悪魔を見ながら言った。


「な、何もしない…」と小さな悪魔は震えながら答えた。


インとマリアは驚いてリクを見た。

そしてため息をついた。


「はぁ…わかった」と同時に言った。


「よし、お前は誰だ?」とリクが聞いた。


「ベルと言います。よろしくお願いします」と小さな悪魔は頭をさすりながら言った。


「で、何しに来た?」とインが聞いた。


「なんでそんなに小さいの?」とマリアが付け加えた。


「質問は後だ。まずは友達を見た方がいい」とベルが答えた。


イン、マリア、リクは仲間たちのいる方を振り返った。


「イン、マリア、ソタのところへ行け」とリクが命じた。


「わかった」とイン。


「はい」とマリア。


その瞬間、インとマリアはソタの元へ駆け、リクはジョスのいる場所へ向かった。


「はぁ…ボコボコにされたな」とリクは呟いた。


リクはジョスの脈を確認し、自分の服を裂いて傷口を覆った。


一方、インはソタの脈と心音を確かめたが、反応はなかった。


「いやだ、いやだ、いやぁぁぁ!」とマリアが叫んだ。


涙を浮かべたインとマリアは、ソタが逝ったことをリクに伝えた。


「はぁ…そんな…」とリクは悲しげに言った。


彼らはジョスを家へ運び、治療を受けさせた。


ソタは特別な場所に埋葬されたが、その前にインは娘の写真が入ったメダルを外した。


「必ず届けるよ、ソタ」とインが言った。


その後、イン、マリア、リクは敬意と涙を持ってソタを見送った。


その間、ベルは眠っているジョスをじっと見つめていた。


数分後、全員がジョスの周りに集まり、心配そうにしていた。


ジョスは目を開け、そこに皆がいるのを見た…ただしソタは居なかった。


「ソタはどこだ?」とジョスが聞いた。


「助からなかった」とインが答えた。


ジョスは片手で目を覆い、涙をこぼした。


「もっと早く攻撃していれば…」と悲しげに言った。


「お前のせいじゃない。あの時は誰にも何もできなかった」とリクが言った。


ジョスはベルに目を向け、攻撃しようとしたが、インとマリアが止めた。


「お前は誰だ? ここで何をしている?」とジョスが言った。


「やめろ、ジョス。それがこれからの話だ。お前が目覚めるのを待っていたんだ、ベルに話をさせるためにな」とリクが言った。


ジョスは真剣な目でリクを見たまま、インとマリアに押さえられていた。


「じゃあ話せ」とジョスが命じた。


ベルはジョスをじっと見つめ、浮遊し始めた。


「初めまして、ベルです。ジョス、お前が倒した悪魔のことでここにいる」


「じゃあなんで帰らなかった?」とジョス。


「戦いの間ずっとお前を見ていた。もっと知りたかったんだ」


「どういう意味だ? はっきり言え」とリクが言った。


「俺はあの悪魔と一緒にポータルで来て、この村の何人かを捕らえるつもりだった…でも帰れなかった。俺は低位の悪魔で、ポータルを開けない。でもお前の戦いを見て、気づいた。お前はを解放できた」


「気? それって神話か何かじゃなかったのか?」とイン。


「いや、俺の世界では本物だ。でもこっちでは嘘だと思われてる」


「ちょっと待て…よくわからない。最初から説明しろ。お前らは何者で、なぜこの世界に来た?」とリク。


「そうだ、それにあの空の裂け目と、そこから落ちてきた物は何だ?」とインが付け加えた。


「話すのは気と聖なる道具のことだけだ。他はお前らで調べろ」とベル。


「なんでだ! 全部答えろ!」とジョスが怒鳴った。


「声を抑えろ。俺は本気を出せば全員を簡単に殺せる」とベルが警告した。


全員がベルの言葉に緊張した。


「わかった…」とリク。


「最後に一つだけ。なぜ俺たちを助けるようなことを言う?」とマリア。


「俺は低位の悪魔。悪魔は皆、自分の利益しか考えない。だが人間のお前らが俺たちや上の連中に勝つ可能性があるとすれば面白いと思っただけだ」


「上の連中…?」とインは心の中でつぶやいた。


「お前、リクみたいにな。あの映像で、ひ弱で醜い人間が悪魔を倒したことを多くの人間に見せられた。そしたらみんな必死で悪魔を倒す方法を探すだろう。今は強い者か賢い者しか生き残れない」とベルは笑った。


「なぜ仲間を助けなかった?」とリク。


ベルは笑って目を逸らした。


「言ったろ、悪魔は自分の利益しか考えない。あいつは俺より高位だった…一緒にいても得はなかった」


全員は不信の目を向けた。


「あの裂け目から落ちた物について何か知ってるか?」とイン。


「俺たちはそれを聖なる道具と呼ぶ。それぞれ特定の能力を与える。例を挙げよう。あの電気を操る人間は、その力を与える果実を食べたんだ」


「果実を食べて力を? どこかのアニメみたい…」とマリアが心の中で思った。


「果実? 物だけじゃないのか?」とイン。


「例外もある。裂け目からは果実と物の両方が落ちた。それぞれが力を与えるが、大きな代償がある」


「代償…?」とジョス。


「代償は単純だ。存在の半分と体の何かを失う。記憶、感覚、体の一部、あるいは命そのものだ」


全員が驚愕した。


「だが悪いことばかりじゃない。完全に融合できれば、力の増大、能力の完全操作、神にも匹敵する力を得られる。孫悟空やポセイドンを知ってるか? まあ、どの道具にも長所と短所がある」とベルは笑った。


(だがなぜこの世界にそれらを落とした…)とベルは心の中で思った。


「神に…?」とマリア。


「なぜだ?」とインが困惑して聞いた。


ジョスとリクはベルをじっと見た。


「中には気でしか制御できないほど強力な物もある。気は全てを支配できる力だ。この世界では昔、治癒にしか使われなかった…その本当の力を知らずにな」


「ジョス、お前はあの時、あの人間の死による感情とアドレナリンで数分間だけ気を発動できた」とベル。


ジョスはまだ混乱していたが聞いた。


「どうやって発動する?」


「簡単だ。気は人間だけに与えられた力。精神、肉体、感情、魂の状態を均衡させればいい。鍛えれば遠くまで行ける。気はかつて、今、そしてこれから生きる全ての人間の体に流れている」


ベルは皆の周りを回りながら楽しそうに笑った。


「よし、目標ができた」とジョス。


「どういう意味?」とリク。


「俺は作る! 誰もが平和に暮らせる場所を! 問題も悪もない世界を!」とジョスは決意を込めて叫んだ。


ベルは回るのをやめ、笑みを浮かべて彼を見た。



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