魔法のアイテム
ジョスはただの平凡な若者だった。毎日同じ日常に閉じ込められていた。
しかし、ある超自然的な出来事が彼の世界を揺るがし、彼はすべてを一から始めることを余儀なくされる。
理由も分からず、頼る者もおらず、望んでもいない運命を背負わされた彼は、未知に満ちた新たな現実に立ち向かわなければならない。
選ばれたのか? それとも間違いだったのか? あるいは、ただの終わりの始まりにすぎないのか?
もはや見慣れた世界ではない場所で、ジョスは気づくだろう——すべての再出発が平和をもたらすわけではない。
中には、本当の戦争への序章となるものもあるのだと。
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第4章:魔法のアイテム
太陽が昇り、穏やかで平和な朝。ジョスは眠っているインをじっと見つめていた。その時、インがゆっくりと目を開け、五本の指ほどの距離でジョスを見た。
「はぁぁ! 何してるの?」とインは驚いて聞いた。
「君、いびきかいてたよ。朝4時から眠れなかったんだ」
「言おうと思ったけど、どう言えばいいかわからなくて考えてたんだ」とジョスは答えた。
「いびき? 私が? もしかして、一晩中私のこと見てた変態じゃないの?」とインは冗談めかして言う。
「変態? それを言うなら、俺に『スプーンの形で寝よう』って言ったのは君だろ」
「あれは冗談だってば」
「もういいや! レストランに行かないと。着替えて、昨日から同じ汚れた服着てるでしょ」とインが言う。
「ええっと…その…着るものがないんだ」とジョスは答えた。
インはジョスをじっと見つめて、ため息をついた。
「はぁ…わかったわ。これ着なさい。きっと似合うわ」
インはクローゼットから服を取り出し、ジョスにTシャツとズボンを渡す。ジョスはそれを受け取り、素早く着替える。二人は一緒にレストランへ向かった。
歩きながら、ジョスは小さな村をよく観察する。人口は二十人にも満たない。
「村は完全に壊れてはいないけど、人は少ないね?」とジョス。
「ええ、大きな都市が主に攻撃されたの。この村は一度だけ悪魔に襲われただけで、その後は戻ってこなかったの」とインが答える。
「話は変わるけど、警備の仕事っていくらもらってるの?」とジョスが尋ねる。
「給料? 無料で働いてるよ」
「無料で?」とジョスは驚く。
「レストランのみんなは無償で働いてるの。あなたみたいに何も持ってない人を助けるために」
「じゃあ食材はどうやって手に入れるの?」
「さぁ、それはマリアが担当してる。ある日突然、レストランに現れるの」
ジョスは心の中で思った。「ああ、だからリクは俺に無理やり働かせたんだな…」
数分後、二人はレストランに着き、他のみんなも揃っていた。
「おはよー!」とインは笑顔で挨拶する。
「おはよう、ソタ、マリア、リク」ジョスも挨拶する。
「やっと来たわね、もうすぐ開店よ」とリクとソタが言う。
「ごめんごめん、ジョスのせいで寝坊しちゃった。起こすのに時間かかっちゃった」とインが謝る。
ジョスは口を開けたまま、インに向かって無言で手振りする。
「まあいいわ、もう来たんだし。それが大事よ」とマリア。
「ところで、昨夜どこで寝たのジョス?」とリク。
「ああ、昨日君に放置されたから、インのところに行ったんだ」
みんなジョスを見てニヤリとする。
「はははは」とマリアとソタは笑う。
「ふん、私の家に泊めるほど知り合ってないわよ」とリク。
「おおっと、手厳しいなジョス、ははは」とインが茶化す。
「もうやめろよ。みんな揃ったし、開店だ」とソタ。
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客が入り、みんな忙しく働き始める。
ジョスが少し休んでいると、近くのテーブルで不思議な光景に気づく。
男が両手で電気を発生させていた。道具は使っていない。
「電気…?」
ジョスはソタに話しかけた。
「なあソタ、あの人誰?」
「あの人か…あの人はこの村全体の電気を管理してるんだ」
「村全体? どうやって?」
二人は、両脇に女を抱えて座る太った男を見た。
「あの男の体は特別なんだ。道具なしで電気を作れる。
ある者は、敵の世界から来た存在だと言うし、
ある者は悪魔から力を与えられたと言う」とソタ。
ジョスは真剣な表情で彼を見つめた。
「でも、あのクズのせいで俺は娘を失ったんだ」とソタは悔しそうに言う。
「娘がいたのか?」
「悪魔に襲われた日、俺と娘は隠れてた。
でもあのクズが悪魔をこっちに引き寄せたんだ。
俺たちは囮にされた。娘を守るために、車に乗せて逃がした。
その間に俺が足止めしたんだ」
ソタはズボンをめくり、木製の義足を見せた。
「でも一番腹が立つのは、あいつが村を利用してることだ。
電気を独占し、欲しい物を要求する。
手に入らなければ発電を止めるんだ」
その時、外から大きな轟音が響く。
ジョス、ソタ、マリア、リクは急いで外に出た。
空には翼を持つ悪魔が、首を掴みこちらを睨んでいた。
村人たちは逃げ惑い、隠れる者もいた。
「逃げろーー!!」とイン。
その瞬間、悪魔の攻撃がレストランの半分を吹き飛ばした。
リクとインは瓦礫の下敷きになり、マリアが必死に救出しようとする。
ソタは動けず、悪魔を見つめていた。
悪魔がソタに攻撃する。ジョスが飛び込んで回避させる。
「反応しろソタ!!」
悪魔はジョスを蹴り、8メートル吹き飛ばした。
「ぐはっ!」
再びソタを攻撃。ソタは避けるが、右腕が消えて血が飛ぶ。
「ははっ…!」ソタは笑う。
ジョスとマリアは呆然。リクとインも穴から覗いて驚く。
ジョスは瓦礫の中のナイフで悪魔の背中を刺すが、折れてしまう。
悪魔はジョスの首を片手で掴む。
「お前には俺を倒せない」
ジョスは酸欠で意識を失う。
ソタは瓦礫の中の刀を手に取り、再び攻撃するが通じない。
「何をする気だ?」悪魔はソタの手首を掴み、折った。
刀は落ち、悪魔はソタを刺し貫いた。
「うわああああ!」ジョス、イン、リク、マリアが叫ぶ。
ソタはジョスを最後に見て、地面に崩れた。
ジョスは怒りで拳を叩き込み、悪魔を4歩後退させた。
悪魔はジョスを睨み、ジョスはソタの刀を投げつける。
悪魔は黒いオーラを纏った剣を取り出し、ジョスに襲いかかる。
激しい攻防が続く。
マリア、イン、リクは瓦礫から脱出。
「逃げて!」リクが叫ぶ。
「ジョスも早く!」マリア。
「俺が援護する! 離れろ!」リク。
「ダメだ、一緒に戦う!」インとマリア。
4人は戦場に近づく。
悪魔は考える。
「どこからこんな力が…?」
ジョスの体から赤と黄色のオーラが発生していた。
「まさか…気(Chi)を…」
リクは電気を操る男ロベルトを見つけた。
「マリアは電話を探して! イン、手伝って!」
「電話で何する気?」
「いいから信じて!」
ロベルトに電気を流させ、戦闘を撮影・配信する。
ジョスは体力が限界に近づいていた。
「はぁ…もう終わらせるしかない…」
悪魔が腰から首にかけて深く斬る。
「ぐっ…!」
だがジョスは笑い、悪魔の隙を突いて体を貫く。
「なっ…?」
最後に首を斬り落とす。悪魔の体は黒い煙を吐き、倒れた。
ジョスは出血し、気を失って倒れた。
リクたちは驚愕し、ロベルトは隙を見て逃げた。
「どうやって…?」インが呟く。
そこに小さな悪魔が現れる。
「今のは…気(Chi)だ」
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別の場所
「今の配信はどこからだ?」
「小さな村からです、閣下」
「視聴者数は?」
「250万人以上です」
「ふむ…悪魔を倒した最初の人間か…」
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