とてつもない力
ジョスはただの平凡な若者だった。毎日同じ日常に閉じ込められていた。
しかし、ある超自然的な出来事が彼の世界を揺るがし、彼はすべてを一から始めることを余儀なくされる。
理由も分からず、頼る者もおらず、望んでもいない運命を背負わされた彼は、未知に満ちた新たな現実に立ち向かわなければならない。
選ばれたのか? それとも間違いだったのか? あるいは、ただの終わりの始まりにすぎないのか?
もはや見慣れた世界ではない場所で、ジョスは気づくだろう——すべての再出発が平和をもたらすわけではない。
中には、本当の戦争への序章となるものもあるのだと。
---
第10章:とてつもない力
ジョスは真剣で疑いの目を向けながら、どうやって勝てばいいのか分からなかった。
見知らぬ男は傲慢かつ自信に満ちた笑みを浮かべていた。
「みんな、ここから離れろ!」ジョスは命じた。
「あなたを置いていけない!」リクは答えた。
「信じてくれ。全員をここから避難させてくれ」ジョスは繰り返した。
リクは迷いながらも、その男の力を見てから、ジョスを一人にしたくなかったが、人々を避難させ始めた。ユインとリクは凍ったマリアの体を慎重に持ち上げた。
「負けるんじゃないよ」リクは真剣な目で言ってから離れた。
ジョスと見知らぬ男だけが残った。
「逃げさせたこと、後悔することになるぞ」男は自信満々に笑った。
「へへ…お前と俺、一対一だ。卑怯なことはしたくない」ジョスは笑いながら答えた。
「俺の名はシロ。お前に勝つのが楽しみだ」彼は手のひらと拳を合わせて挨拶した。
「最高の戦いをしよう」ジョスも笑った。
ジョスはシロに向かって走り、刀を抜いて腹を貫いた。
だがシロは微動だにしなかった。
「なぜ動かなかった?」ジョスは思った。
その瞬間、シロはジョスの腹に膝蹴りを入れた。
「うっ…!」ジョスは呻いた。
シロはジョスの首をつかんで持ち上げた。
「お前の攻撃じゃ傷一つつかない」彼は目を見つめながら言い、ジョスを力強く投げ飛ばした。
ジョスは痛みで地面に倒れた。シロを見ると、攻撃のダメージはまったくなかった。
「よく見ろ…俺の体は氷でできている…」彼は自分の腹から刀を抜いて地面に投げ捨てた。「この戦いの結末はすでに決まっている」
「普通の攻撃じゃ通じないってことか…数日前に覚えたばかりだけど…使うしかないな…」ジョスは思った。
彼は笑みを浮かべながら立ち上がり、服の土を払った。
「つまり…お前にはダメージを与えられない。完全に氷でできてるんだな?」
「察しがいいな」シロは答えた。
ジョスは目を閉じ、深く息を吸い、体を落ち着かせた。
「何をしている…?」シロは思った。
ジョスは目を開き、走り寄って渾身のパンチを繰り出し、シロを後退させた。
「ぐっ…!」
「なっ…どうして!?」シロは驚いた。
「なにをした!?」彼は叫んだ。
「気を使った」ジョスは冷静に答えた。
「本当に効くとは思わなかった…」ジョスは思った。
「気?バカなことを言うな!」
「冬の像!(ふゆのぞう)」シロは地面を叩いた。
地面が凍り始めた。
ジョスは迷わず、全力で気を使って地面を叩き割った。氷は砕け散った。
だが一瞬で、シロが目の前に現れ、顔面に膝蹴りを入れ、続けて回し蹴り。
「ドンッ!」ジョスは地面に倒れた。
シロがとどめを刺そうと蹴りを放つが、ジョスは足を掴んで転ばせた。
その瞬間、シロはジョスの手首を凍らせた。
ジョスは素早く離れ、自分の手が完全に凍っているのを見た。
彼はベルの言葉を思い出した。
「昔は、気は治癒にも使われていたんだ」
ジョスは集中し、体をリラックスさせ、気を使って氷を一撃で砕いた。
「これで終わりだ!」シロが再び目の前に現れ、蹴りを繰り出した。
ジョスはそれを避けた。
シロは驚いた。
「どうして避けた…?」
「シロの気の流れが感じられる…」ジョスは思った。
二人は信じられない速さで打ち合いを始めた。
拳と拳、蹴りと蹴り。
互いにかわし、攻撃し、戦いは激化した。
---
町の別の場所
「助けに行かないと!」ユインは叫んだ。
「だめだ…彼を信じよう。それに君は蹴りを受けて戦えない」リクは言った。
「くっ…!」ユインは悔しげに唸った。
「ベルはどこ?」
「最後に見たときは、マリアと一緒だった」
ユインは立ち上がり、凍ったマリアのもとへ向かった。彼女は驚いたことに、ベルもマリアの背中にしがみつくように凍っていた。
「あなたも助けられないのか…」
「なぜだ?」
「彼も凍っている…」
ユインとリクはジョスのことを心配しながら見つめ合った。
---
町の別の場所
ジョスとシロは激しい打ち合いを続けていた。
その速さにより、体が一瞬消えては再び現れるように見えた。
「どうして俺の攻撃を避けられる?武術を知っているのか?それとも…」シロは考えた。
二人は同時に顔に一発ずつ入れて後退した。
「その気ってやつ、何のことだ?」シロは尋ねた。
「なぜ聞く?武術家なら知ってるはずだろ」ジョスは答えた。
「氷の矢!(こおりのや)」シロは叫んだ。
氷の矢がジョスに向かって放たれた。
彼はそれを避けたが、いくつかの傷を負った。
「冬の像!」再びシロが叫んだ。
一帯が凍りついた。
ジョスの足もすぐに凍りついた。
シロはゆっくりと近づき、ジョスの目の前に立った。
「もう終わりだ。お前には勝ち目などなかった」彼は言った。
ジョスはパンチを試みるが、腕を止められた。
シロはその腕を凍らせた。
ジョスはもう一方の腕も凍り始めるのを見た。
胴体と頭も動けなくなった。
「まさか…そんな…」
シロは氷の槍を作り、それをジョスの腹に突き刺した。
「勝ったぞ」シロは耳元でささやいた。
ジョスは混乱と痛みにより、ほとんど反応できなかった。
シロはジョスの前に椅子を作り、落ち着いて座った。
「“第一の司令官”ってどういう意味だ?」
「はぁ…はぁ…俺は王国を作ろうとしている…お前を最初の司令官にしたかったんだ」ジョスは血を吐きながら答えた。
「王国?中世じゃあるまいし、笑わせるな」
「そう言われたよ。でも、あの鬼たちや悪魔のことが起きてから…世界は後退してる」ジョスは笑って答えた。
「お前はそれらの存在について何を知っている?」
「それは教えない。賭けの条件は質問一つと食事だっただろ」
「じゃあ、“聖なる物”については何を知ってる?」
「あの空の裂け目から出てきた果実や物…一つ一つがユニークな力をくれるが、代償もある」
「どんな代償だ?」
「存在の半分と、体の何かを失う…それしか知らない」
「そうか…だから俺がその果実を食べたとき、すべてが変わったのか…」シロは考えた。
「もし俺が今お前を殺したら、その王国はどうなる?」
「それなら…あの世へ行けるし、こんな人生を気にしなくてすむさ」
シロは彼の目を見つめた。
「もし俺が“第一の司令官”になると言ったら?」
「なぜそんなことを…俺は負けたのに」
「条件付きなら受けてもいい」シロは笑みを浮かべた。
「どんな条件だ?」
シロは近づき、彼の耳に何かをささやいた。
ジョスは呆然とした。
「もしその条件を受けるなら…本当に仲間になるのか?」
「うん」シロは落ち着いて答えた。
ジョスは数秒考え、迷いながらも、
「受ける…」
「交渉成立だ!」シロは大きな笑みで言った。
---