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始まり

ジョスはただの平凡な若者だった。毎日同じ日常に閉じ込められていた。

しかし、ある超自然的な出来事が彼の世界を揺るがし、彼はすべてを一から始めることを余儀なくされる。

理由も分からず、頼る者もおらず、望んでもいない運命を背負わされた彼は、未知に満ちた新たな現実に立ち向かわなければならない。


選ばれたのか? それとも間違いだったのか? あるいは、ただの終わりの始まりにすぎないのか?


もはや見慣れた世界ではない場所で、ジョスは気づくだろう——すべての再出発が平和をもたらすわけではない。

中には、本当の戦争への序章となるものもあるのだと。



---

第1章:始まり


太陽が高く昇る、ありふれた日常。都市の賑やかなレストランでは、17歳の青年が白いシャツと黒いエプロンを身に着け、礼儀正しい笑顔でウェイターとして働いている。彼の名前はジョス。


「おはようございます!ご注文はお決まりでしょうか?」

テーブル5番に座るカップルに、彼は丁寧に声をかける。


「チキンライスとマンゴージュースをお願いします」

女性が答える。


「よく焼いたステーキと細切りポテト、そしてレモネードを」

男性が付け加える。


「承知しました。すぐにお持ちします」

ジョスは素早くメモを取りながら答える。


彼はテーブルの間を軽やかに動きながら、注文を届け、皿を片付け、新しい注文を取っていく。


「ご注文の品になります。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとう、若者よ」

年配の女性が優しい声で答える。


レストランの賑わいの中で、笑い声、注文の声、グラスやカトラリーの音が空間を満たしている。


やがて、夜が訪れる。


「今日はお疲れ様、ジョス!」

同僚がエプロンを外しながら言う。

「ありがとう、また明日ね」

ジョスは少し疲れた笑顔で答える。


午後7時、退勤時間。ジョスは仲間たちに別れを告げてレストランを出る。空はすでに暗くなり始め、涼しい風が彼の頬を撫でる。街灯が一つずつ灯っていく。


彼は通りを歩きながら、通り過ぎる車、道を渡る人々、閉まりかけの店を眺める。静かだが穏やかな街。自宅に着き、鍵を取り出しドアの鍵穴に差し込むと…


「ジョス、お誕生日おめでとう!」

皆が一斉に叫ぶ。


部屋は風船や飾りでいっぱいで、「18」の大きな数字が壁に掲げられている。みんな笑顔だ。


「な、なんだって…?」

驚いたジョスがつぶやく。


父イスラエルが大きな笑顔で近づいてくる。

「息子よ、大人の仲間入りだな!」

「おめでとう、兄貴!」

ヴィクターが強く抱きしめる。

「ついに18歳だね!」

サラが興奮気味に彼に抱きつく。

「あなたの大好きな料理を作ったわ」

母リアが優しく微笑む。

「見てよ、兄ちゃん!ドラゴンのケーキだよ!」

弟エヴァンが指差す。

「飾り付け、私が手伝ったの!」

ベレンが壁に貼られた絵を見せる。


ジョスは感動して、両親を強く抱きしめる。

「ありがとう…本当に…みんな大好きだ」

「ジョス、あなたはこれにふさわしいわ」

リアが彼の髪を撫でながら言う。


笑い声と料理、思い出、写真の時間が過ぎていき、夜も更けていく。愛されていることを感じながら、ジョスは自室へ向かい、ベッドに横たわり、目を閉じて深い眠りについた。



---


次の日の朝…


未知の場所の地面が、2秒間だけ裂ける。わずかな振動が空気を揺らす。


ジョスは目覚ましの音で目を覚ます。10月23日、月曜日。ベッドに座り、ため息をつく。


「高校最後の年か…」


制服に着替え、窓の外を見る。通りはまだ静かだが、頭の中は思考でいっぱいだ。


「卒業したら何をすればいいんだろう…?働く?何か勉強する?…全然わからない」


部屋を出る。家の中は静まり返っている。両親は仕事へ、兄弟たちも学校へ行った後だった。


玄関を出て、扉を閉めて通学路を歩く。遠くで鳥のさえずりが聞こえ、風が枯れ葉を舞い上げる。


同じ頃、世界のどこかで、またしても地面が2秒間だけ裂け、深い亀裂を作り、何事もなかったかのように閉じる。


ジョスは学校に到着し、教室に入り、席につく。窓の外を見つめ、思いに沈む。


「未来はどうなるんだろう…」

「すべてが変わったら…?」

「何も変わらなかったら…?」

「他人のようにただ働いて、請求書を払い、そして死ぬだけの人生は嫌だ」


午前中の授業が過ぎていくが、ジョスの頭には入ってこない。チャイムが鳴り、下校時間だ。家路につく途中、家電量販店の前に人だかりができている。


世界中のニュースが画面に映る。


「世界各地に謎の亀裂が出現!」

「…その中から何かが現れたと証言する目撃者も…」

「…原因は今のところ不明…」


ジョスはほとんど気にも留めずに通り過ぎる。


「どうせ誇張だろう」

そう思いながら帰宅する。


家に到着し、扉を開けると、家族がテレビの前に集まってニュースを見ている。空気が張り詰めている。


「どうしたの?」

ジョスが尋ねるが、返事はない。


そのとき、床が大きく揺れ始める。リビングの中央が突然裂ける。

その亀裂から、巨大な角と燃えるような目を持つ漆黒の存在が現れる。


ゆっくりと奈落から浮かび上がりながら、低くうなるような声で呟く。


「封印が…解かれた…」


悪魔は完全に姿を現し、家族を見据える。


咆哮と共に黒い剣を引き抜き、イスラエル(ジョスの父)に振りかざす。


「父さん!」

ジョスが叫ぶ。


だが、ヴィクターが飛び出し、父を押しのける。剣は空を切り、家具や壁を破壊する。家全体が揺れ、崩れ始める。


窓の外を見ると、街は炎に包まれ、人々は逃げ惑い、さらに多くの亀裂から悪魔が現れていた。


「ここから逃げるのよ!」

母リアが叫ぶ。


出口へ向かおうとするが、悪魔が行く手を阻む。影のナイフを次々と投げつけ、家具の陰や床に飛び込むことでようやく避ける。


ジョスは絶望の中で、床に落ちていた鉄棒を掴み、悪魔に立ち向かう。


「うおおおおおっ!」

勇敢に叫ぶ。


悪魔は胸に一撃を与え、ジョスは6メートル以上吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。


家族が恐怖に凍りつく中、悪魔は再び剣を振り上げる。


だが、ジョスは血まみれのまま立ち上がり、鉄棒を持ち直す。勇気を振り絞り、悪魔に飛びかかり、その首元に鉄棒を押し当てながら叫ぶ。


「逃げて、今だ!走って!!」


イスラエル、リア、ヴィクター、サラ、ベレン、エヴァンは、近くに開いた裂け目から逃げていく。後ろを振り返らずに。


ジョスは煙と瓦礫の中で、家族の姿を最後に見届ける。


悪魔が彼の服を掴み、地面に叩きつける。咳き込みながらも再び立ち上がる。震える手に、鉄棒がまだ握られている。


悪魔がとどめを刺そうと宙に舞ったとき、地面の亀裂がさらに広がり、激しい地震が発生する。床が破裂するように崩壊し、ジョスは瓦礫の中へと落ちていく。


コンクリートや木の破片、塵が彼を覆う。


まぶたが重くなる。


暗闇。


そして、彼は目を閉じた。崩れ落ちた瓦礫の中で——。



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