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第32話 決めた

 草薙は、ミゲルとジークが戦っている所へと突進していく。


「殺せるもんなら殺してみろぉ!」


 拳を振りかざし、突進する勢いそのままにぶん殴る草薙。その攻撃を見越して、ミゲルとジークは道を開ける。


 草薙の攻撃が男に入る。男の右肩に入ったパンチは、脱臼したような動きを見せるだろう。


「そんなものか?」


 しかし男はニヤリと笑う。右腕が鞭のようにしなり、手のひらがこちらを向く。


『チャージ・エンファイア』


 手のひらから火炎放射のような、直線状の炎が噴出する。その射程には草薙がいた。


「くっ……!」


 一度バックステップで回避するものの、それに合わせるように火炎放射の射出方向を変えてくる。


「短地!」


 短地スキルを使用し、横方向に瞬間移動する。


「ほう、なかなか良いスキルを持っているようだな。しかし、まだだ」


 男は火炎放射を止め、脱臼した右肩を自力で戻す。少し肩を回して、違和感がないかを確認した。


 そこに幾千ものダガーナイフが降り注ぐ。ジークのスキルだ。しかも先ほどよりダガーナイフの密度が高い。


「食らえっ!」

「先ほどよりはいいが、それでもまだだな」


 両手のひらをダガーナイフの群れに向ける。手のひらの前に魔法陣が展開し、そこから超高温の熱が噴きだした。


 それによってダガーナイフの群れは融解し、やがて消失する。


「なっ……! 魔力で出来ているとはいえ、熱には強いはずなのに……!」


 その様子を見たジークは驚きを隠せなかった。当然ながら、スキルで増やしたダガーナイフは幻影に近い。しかし、それを熱だけで消し去ったのだ。文字通り火力が違う。


「ふふふ、驚くのも当然だろう。私が全力を出せば、この程度のことは余裕で可能なのだよ」


 まるで自慢するかのように話す男。それでも怯まずにミゲルは接近する。


「はぁ!」


 ミゲルは複数回男に斬りかかる。しかし腕や手のひらで受け流されているようで、刃が男の皮膚に接触していない。


「なんだ、この感触は……!? まるで斬れないスライムを斬っているような感覚だ……!」

「そうだ。熱を使って貴様の剣の軌道を変化させている」


 ミゲルは一度後ろに一歩下がり、剣を地面と水平に構える。


「そんなに話していいのか!?」


 そういってミゲルは剣先を突く。男はそれを右腕で、体の外側へと受け流す。


「残念。それも無力化できるのだよ」


 ニタリと笑う男。ミゲルはそのまま体ごと男の横を通り過ぎる。だがミゲルは諦めていなかった。


「短地!」


 スキルを使用した草薙が、今度は宙に浮きながら回し蹴りを入れる。その回し蹴りは男の側頭部へと吸い込まれる。


 だが草薙の攻撃も、男の左腕によって防御される。さらに左腕が熱を帯び、草薙の靴を溶かす。


「あっち!」


 草薙は蹴りが当たった反動で男から距離を取る。そこへミーナとアリシアがやってくる。


「大丈夫ですか?」

「一応。水あります?」

「それなら私の魔法があります」


 そういってミーナが手を合わせ、掬水を生み出す。その水で、草薙の足を冷やす。


「助かりました」

「いえ。しかし、どうやってあの男を倒しましょう……?」

「ミゲルのスキルを使うしかないと思うのです……」


 ミーナとアリシアが、向こうで男と戦っているミゲルの様子を見る。


 しかし、草薙は何か考えている。


「いや、もしかしたらミゲルのスキルを使わずに倒せるかもしれません」

「え?」

「どういうことなのです?」

「この作戦としては……」


 そういって草薙はミーナとアリシアに草薙の考えた作戦を伝える。


「……てな感じです」

「確かにいけるかもしれないですけど……」

「それはタケルさんがあまりにも危険なのです!」

「そもそもアイツの狙いは自分です。自分が倒さないといけないんです」


 草薙はなぜか使命感のようなものを感じていた。その使命感を感じたミーナも覚悟を決める。


「分かりました。やりましょう」

「え、え? じゃ、じゃあ私もやるです!」


 こうして草薙の作戦は開始する。


 一方のミゲルだが、剣を振り回し攻勢を続けるも命中はしていない。


「くそ、このままだと……」

「負けるぞ。当然ながらな」


 ミゲルの呟きに答える男。それほどまでに劣勢な状態になっている。


「せぇい!」


 ミゲルの隙を埋めるようにダガーナイフを振り回すジーク。普段ならスキルによる攻撃を主体としているが、この時ばかりは積極的に前に出ていた。


「連携攻撃もいいが、一人にこれだけ手こずっているのは少々いただけないな。普段から人間相手に戦っていない証拠だ」


 そういってジークの腹に蹴りを入れる。ジークは吹き飛び、ミゲルに命中する。そのまま二人は地面を転がった。


「さて、後は目標を殺すだけだな……」


 男はクルリと草薙のほうを見る。そこにいた草薙は、右手を上に掲げ、拳より大きな水を纏っていた。


「殺せるものなら殺してみろ!」


 すると水が螺旋を描いて回転を始める。その様子は、マンガやアニメで見られるようなデフォルメされたドリルのようだった。


「必殺! アクア、ドリルゥ、デストロイ!」


 水のドリルは、ミーナの水魔法とアリシアの拡張魔法、そして草薙の放出魔法スキルによる操作によって、巨大なドリルと化していた。


 そのまま短地を使って男に向かって飛ぶ。


「無駄だぁ!」


 男も手を前に出し、巨大な火炎放射を発射する。しかし草薙のドリルは、螺旋の回転によって炎を弾き飛ばしている。


 そのままドリルは男の体に接触する。


 通常の水であれば、超音速で接触しても人体を切断することは困難である。だが水に研磨剤を混ぜれば、金属などの硬い物質でも切断することができる。


 それと同じ要領で、草薙は水のドリルに自身の魔力で作った架空の研磨剤を混入させ、切断性能を向上させたのだ。


 男の体は、水のドリルの回転力と草薙の短地スキルによって、一瞬でバラバラに分断される。


「ぐあぁぁぁ!」


 男の体を通り過ぎ、草薙は彼の後ろのほうで止まる。


 水のドリルは回転を停止し、普通の水と同じように地面へと落ちる。


「はぁ……、何とかなった……」


 そこへミーナとアリシアがやってくる。


「タケルさーん! 大丈夫でしたかー?」

「はい、大丈夫です」


 そこにミゲルとジークもやってくる。


「あんな魔法は見たことない。一体どうやって思いついたんだ?」

「まぁ、ちょっと似たようなことしてた人がいまして……」


 そういって草薙ははぐらかす。


(本当はアニメの影響だなんて言えない……)


 そこへマシューが走ってやってくる。


「君たち、無事だったか」

「はい。ナターシャさんは?」

「アニスが森の中で守っている。だが暗殺者の様子を見るに問題ないようだな」


 そういってマシューが暗殺者だった肉片を見る。


「とにかく、君たちが無事でよかったよ。じゃあ俺は馬車を呼んでくる」


 そういってマシューは去っていった。


 その会話の横で、草薙はある決意をする。

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