第一話 はじまり
僕らはこの先、どんな大人になるんだろう…。
高校二年の春、学校生活にも慣れある程度のグループが出来上がってしまっている教室の中にひとり、窓際の席に座る綺麗な黒髪を持つ女の子。恋愛小説ならきっと、主人公が目を奪われ物語が始まる、そんな風に思える景色が目の前にあった。そんな景色から目をそらし、僕は平穏な学校生活を送れるように静かに願いながら自分の席へと向かった。
冬美レイナ、彼女は去年の冬にこの学校に編入してきた。編入したての頃は、とんでもない美人が編入してきたと、学校中で話題になった。そんな騒ぎも、一か月もたたないうちにおさまってしまい、彼女に関する話題はほとんど聞かなくなってしまった。簡単な話で、彼女は誰ともかかわろうとしなかったのだ。編入当初は、多くの人が冬美レイナに話しかけていた。でも彼女は、無視はしないが必要最低限の事しか話さないため、そのうち誰も話をしに行かなくなってしまった。今でも彼女に話しかけに行くのは、彼女狙いの男子ぐらいだ。
「今日は、グループでの調べ学習を行う。順番にくじを引いてグループで集まって座っていけー。」
そんな一言から今日の授業は始まった。自分でも理由は分からないが、面倒なことが起こる、そんな予感がした。そして、見事予感は的中するのであった…。
「よろしく、冬美さん。始業式の日にも自己紹介したけど改めて、雨宮藍兎です。」
嫌な予感は、冬美さんと同じグループといった形で的中したのだった…。
「冬美レイナです。よろしく。」
そう言うと彼女は、配られた資料に視線を落とすのだった。
「全員グループになったみたいだな。それじゃあ、軽く自己紹介してから配った資料に書かれている課題を進めていってくれ。」
先生がそう告げると、教室は一瞬で騒がしくなった。僕のグループの一人も騒がしくなった原因の1人みたいだ。
「冬美さんと同じグループになれるとか超ついてるじゃん!俺、紗和光輝ね!よろしく!」
そう言って自己紹介するのは、冬美さんによく話しかけている、学校でも有名なチャラ男の俺の親友だった。中学からの友人で、タイプは違うが何かと気が合うのでよくつるんでいる。相変わらずのハイテンションで場を和ませてくれて助かった。
「僕は、雨宮藍兎です。よろしく。」
「冬美レイナです。」
彼女は一言だけで、さっきよりもそっけなかった。
「橘結衣です。冬美さんたちと話すのははじめてだよね。よろしく!」
明るくあいさつした彼女は、冬美さんとは違い、明るい茶色の髪をしたクラスの人気者だ。芸能界からもスカウトが来るほどの美人だが、スカウトはすべて断っているらしい。その理由は誰も知らない。だがそんなところも彼女の魅力の一つだと、彼女のファンが言っていたのを聞いたことがある。
学校でも有名なメンバーがそろったグループ…。そんな中に平凡な男子がひとり。僕はふと思ったのだった。
「漫画かよ…。」
そんなことを思ったのも束の間、さらに僕を悩ませる問題が待っていたのだった…。