第9話 新国家の爆誕
俺は会議室に足を踏み入れた。
立派な石造りの建物で、窓から差し込む光が柔らかく室内を照らしている。
(綺麗な朝日だな…。)
ここで、俺たちの村が正式に「国」として歩み始めるための重要な決定が下されることになるだろう。
(ふぅっ…、もうみんな集まってるのか。)
幹部たちが既に集まっており、緊張感の中にも期待の色が見て取れる。
「さて、皆揃ったな。今日は重要な議題がある。この村を、正式に『国』とする。名前も決めなければならない」
俺がそう告げると、ゼドがまず口を開いた。
「エルターナ様、村としての規模は既に超えています。これまでの発展も素晴らしいものですが、今こそ名実ともに一つの国として宣言するべき時です」
ゼドは俺に対して敬意を持って話してくれる。
どこまでいっても忠実なやつだ。
俺たちがこの新しい世界で共に築いてきた信頼が、こうした言葉に表れているんだろう。
「俺もそう思う。名ばかりの村ではなく、しっかりとした国として認められるための一歩を踏み出そう。国名は………『ノルデン自由連邦国』にする!!」
俺がそう告げると、リリアンがメモを取りながらうなずいた。
「ノルデン自由連邦国、いい名前です。北の地を象徴し、自由を求める我々の意志を込めた名ですね」
リリアンは俺の秘書として、常に俺を支えてくれている。
その真摯な態度と洞察力は、これまでの多くの決定において重要な役割を果たしてきた。
まじでありがたい。
「そうだ、俺たちはこの北の大地で、自由を追い求めて生きていく。そして、全ての種族が協力して楽しく暮らす国を築くんだ」
その瞬間、部屋の隅から勢いよく手を挙げた男が一人。
「あのー、俺も意見あるんだけど!」
彼は新しく加わった仲間、グレンだ。
自分で自分自身をボケ担当などと言っている奴である。
彼は真面目な会議の場にもかかわらず、どこかおどけた表情で皆の注目を集めた。
「どうした、グレン?」俺は軽く笑いながら尋ねた。
「いやさ、国名は良いとして、国のシンボルとか決めた方がいいんじゃね?俺的には、巨大なスライム像とかどうかな!?」
ゼドは頭を抱えながら苦笑した。「グレン、国のシンボルはもっと厳粛なものにすべきだろう。スライム像じゃ、敵に舐められるかもしれないだろう」
リリアンも笑いをこらえながら、「グレンさん、それはさすがに…」と言った。
グレンは肩をすくめながら、「まあ、冗談だよ冗談!でも、なんかユニークな要素を入れてもいいんじゃない?」と続けた。
(まあ…、それはごもっともである笑)
俺はその言葉にうなずく。
「確かに、国としての象徴は重要だ。だが、今はまず国名を定め、皆に知らせることが先決だ。シンボルについては後日話し合おう」
会議はその後も進み、国の体制や役割分担についても話し合った。
外交担当のセレスティアは既に多くの国と接触を図っているが、今後さらに広範な外交戦略が必要だという議論が持ち上がった。
「セレスティア、今後の外交方針についてはどのように考えている?」俺は彼女に尋ねた。
セレスティアは冷静に答えた。
「エルターナ様、現在、我々の国に対して好意的な国もいれば、警戒している国もあります。特に、南方のアーデン王国は我々の動きを注視していますが、まだ明確な敵意は示していません。今は慎重に接触を図りつつ、彼らとの関係を築くことが重要かと思います」
(頼もしいなっ…!)
「そうだな、今はまだ同盟を結ぶ時期ではないが、少なくとも敵対関係にはしたくない。引き続き、情報収集と交渉を進めてくれ」
セレスティアは頷き、「お任せください、エルターナ様」と静かに応じた。
その後、建設担当のグラントも報告を行った。
「エルターナ様、街の発展についてですが、これまでの計画通り、中央広場を拡張し、新たな住居や店舗を建設中です。さらに、会議や執務を行う建物も完成しましたので、国としての機能も整いつつあります」
「素晴らしい。これで俺たちも正式に国としての体裁が整うな。引き続き、街の発展に力を入れてくれ」
「はい、エルターナ様。次の段階では、より多くの公共施設を建設し、住民の生活をさらに豊かにする計画を進めます」
会議は順調に進み、最終的にノルデン自由連邦国としての体制が整った。そして、いよいよこの決定を国民に伝えるために、広場での宣言が行われることとなった。
会議が終わると、俺たちは広場に集まった村人たちの前に立った。
ふう、なかなか緊張するもんだ。
新しく作られた執務の建物を背に、俺は高台から皆に語りかけた。
「皆、聞いてくれ。俺たちは今日、この村を正式に『国』として名乗ることを決定した。俺たちの新しい国の名は………『ノルデン自由連邦国』だ!」
その言葉が広場に響き渡ると、村人たちの間に歓声が上がった。
子供たちは飛び跳ね、老人たちは感慨深げに頷いている。
(喜びすぎやろ。)
皆が新たな未来に向けての希望を抱いているのが伝わってきた。
「これからは、ノルデン自由連邦国として、俺たち全員が協力してこの国を築き上げていく。そして、この地で自由に、そして楽しく生きていくんだあ!」
俺は村人たちを見渡しながら、その言葉に力を込めた。
そして、その場に立っていたグレンがまた一言。
何回ふざけるんだコイツは。
「いやー、こういうときはやっぱり国歌が欲しいよね!俺、即興で作っちゃおうかな?」
(まあ、こんなボケ担当も1人は必要か笑)
その言葉に、皆が笑い声を上げた。俺もつい笑ってしまったが、すぐに真剣な表情に戻して言った。
「国歌はもう少し時間をかけて作ろう。俺たちにはまだまだやるべきことがたくさんある」
グレンは頬をかきながら、「そっか、まあ急ぎすぎてもダメだよな」と照れくさそうに笑った。
こうして、ノルデン自由連邦国は正式に誕生した。
新たな課題が山積しているが、俺たちは一つの国として、共に未来を切り開いていく。
俺たちの物語はまだ始まったばかり。
このようにして、国の体制や役割分担がさらに明確になり、ノルデン自由連邦国としての新たな一歩を踏み出すことができた。
今後、さらに街が発展し、他の国々との交流も深まることだろう。
(…なるようになるもんよ!)