表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/49

第6話 自称発明家

 俺の村は日々発展を遂げ、少しずつその姿が「国」と呼べるものに近づいていた。



 村人たちはエリザの管理の下、健康を維持しながら効率よく食料を生産し、ラルフとレオの指導によって防衛力も強化されていた。


 ゼドの魔法による支援も、村の発展に大いに役立っていた。





 ある日、村の外れに一人の奇妙な訪問者が現れた。



 背の高い帽子に長いマントを羽織り、その姿は一見して普通の人間とは異なる。彼の名前はトリスタンというそうだ。


 魔法の研究者であり、世界を放浪しながら奇妙な発明品を作り続けている人物らしい。




 トリスタンは村の門前に立ち、悠々とした声で言う。


「ここはエルターナ様が統治している村でしょうか? 私はトリスタンと申します。ちょっとした興味があって、この村に訪れました」



 俺は彼の言葉に興味を引かれつつ、慎重に対応することにした。



(なんか胡散臭そうなやつだな。)


「はい、私がエルターナです。トリスタンさん、どのような目的でこの村に?」



 トリスタンはニヤリと笑い、「まあ、実は私は世界各地を旅していて、面白いものを見つけるのが趣味なんです。あなたの村の噂を聞いて、興味を持ちましてね。それに、私の発明品が役に立つかもしれないと思いまして」と言う。



(よくわかんない奴だが、悪いやつじゃないやろ…。)


 俺はそう思い、彼の発明品にも興味があったため、トリスタンを村に迎え入れることにした。



 村に到着したトリスタンは、すぐに自分の発明品を見せびらかし始めた。



 最初に取り出したのは、奇妙な形をした小さな箱だった。


「これが私の最新作、『自動料理機』です! この箱に食材を入れるだけで、簡単に美味しい料理が作れますよ!」


 村人たちは興味津々で箱を見つめる。



 エリザが試しにいくつかの野菜を箱に入れ、レバーを引くと、数分後に美味しそうなシチューが出来上がった。


 村人たちは歓声を上げ、その味に驚いた。



「現代よりも有能な機械を発明してんじゃねえか…」      

 俺はそう呟き、苦笑いする。


(こいつ以外と凄い奴なのかもな…。)



 トリスタンは自慢げに鼻を鳴らし、「これくらいは序の口ですよ!次にお見せするのはもっと凄いものです!」と言いながら、大きな袋からさらに奇妙な装置を取り出す。



「これが『魔法増幅装置』です! どんな小さな魔法でも、この装置を通せば10倍の効果を発揮します!」



 ゼドが試しに簡単な火の魔法を使うと、装置から巨大な炎が吹き出し、村の広場が一瞬で炎に包まれた。


 幸い、ゼドがすぐに消火の魔法を使ったため、大事には至らなかったが、俺は少し青ざめる。


(天才とバカは紙一重とは、よく言ったものだな…笑)



「トリスタンさん、これを使うにはもう少し注意が必要ですね……」と、苦笑いしながらエリザが言う。



 トリスタンは肩をすくめ、「まあ、実験は失敗から学ぶものですからね。それでも、興味があればこの装置を使ってみてください」と軽く流した。




 トリスタンの奇妙な発明品は村の生活に少なからず影響を与えた。


 特に『自動料理機』とやらは大変好評で、村人たちの食事作りを大いに助けることになった。



 しかし、『魔法増幅装置』の使用には厳しい制限が設けられ、ゼドの監視下でのみ使用されることとなった。




 俺はトリスタンを村に滞在させることに決めた。彼の発明品が村の発展に寄与する可能性は高いと判断したからだ。


 そして、トリスタンには村の技術面の発展を担当してもらうことにした。



 俺は幹部会議でそのことを発表した。


「トリスタンさんには、これから村の技術開発を担当してもらいます。彼の発明品が我々の生活をより良くしてくれることを期待しています」


(そうは言ったはいいものの、ホントにこいつ大丈夫か…?笑)



 トリスタンはニヤリと笑い、「お任せください、エルターナ様。私の頭脳がこの村をもっと素晴らしい場所に変えてみせます」と自信満々に答える。


 エリザが少し心配そうに尋ねる。「トリスタンさん、技術開発はいいですが、あまり大きな事故が起こらないように注意してくださいね」



 トリスタンは軽く手を振り、「大丈夫です、大丈夫です! 失敗は成功の母と言いますからね!」と全く悪びれない様子だった。





 村が発展し、俺たちは少しずつ国としての形を整えつつあった。


 トリスタンの発明品が生活を豊かにし、防衛隊の強化も進んでいた。



 村の周辺地域にもその噂が広まり、交易を求める商人たちが訪れるようになった。



 俺はこの機会を捉え、周辺国との交流を視野に入れ始めた。


 しかし、まだ時期尚早だと感じていた。まずは村をより安定させ、内外の問題を解決することが先決だった。



 


 夜、星空の下で一人考え込んでいた。


 村が国と呼べるほどに成長したとき、俺が目指す「全ての種族が楽しく生きられる国」を実現するためには、さらに多くの試練が待ち受けているだろう。


 しかし、俺はその未来を信じていた。




 ゼドが俺に近づき、静かに語りかけた。


「エルターナ様、村の発展は順調に進んでおりますが、次なる段階に進むためには、さらに強力な支援が必要かもしれません。私がかつて研究していた古代の魔法技術も、その助けになるやもしれません」



 俺はゼドの言葉に耳を傾け、「ゼド、その技術がどのようなものか、詳しく聞かせてくれ」と返す。


 ゼドは頷き、「はい、エルターナ様。古代の魔法技術は非常に強力ですが、正しく扱わなければ大きな危険を伴います。今後の計画を慎重に練りながら、その力を使うべきかどうか、共に考えましょう」と言う。



 俺は深く頷き、ゼドと共に今後の展望について語り合った。



 村が国へと成長する日が近づいていることを感じながら、俺たちは未来への準備を進めていった。




 そして、新たな挑戦が俺たちを待ち受けていた。周辺国との交流、内部の統治、さらなる発展。まだまだ課題は山積みだな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ