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第48話 対立の深淵

「南方諸国連合の動きが加速しています」



 幹部会議室に響くセレスティアの冷静な声が、張り詰めた空気をさらに重くする。



 大理石のテーブルを囲む各担当者たちの顔は皆一様に厳しい。俺は腕を組んで、じっとセレスティアの報告に耳を傾けた。


 聖国協商共栄圏が新大陸の利権分配について合意に達した今、その内部はひとまず安定している。しかし、外部からの圧力、特に南方諸国連合からの動きが激しくなっている。



「大イギリシアの調査隊が報告してきた通り、新大陸には膨大な資源が眠っています」


「金や銀、さらには希少金属の発見も相次いでいるとのことです。そのため、南方諸国連合が新たな利権を手に入れようとするのは必然でしょう」



 セレスティアは資料を手にし、厳しい表情で続けた。


「特に、皇治連邦シャドウルアとマレフィクス王国は新大陸の資源に強い興味を示しています。彼らが何かしらの行動を起こす前に、我々も次の一手を打たなければなりません」




「確かに、ただ座して待つわけにはいかないな」


 俺は静かに頷き、テーブルの上に広げられた地図に目を落とした。


 新大陸の中央部には、最近発見された鉱山の位置が示されており、共栄圏各国がその利権を分け合っているのがわかる。



 だが、その外側、特に西部にはシャドウルアとマレフィクス王国の旗がちらついていた。




「共栄圏内での利権分配はすでに固まっています。しかし、彼らがそれを快く思っていないのは明らかです…」


 セレスティアの言葉に、俺は再び地図を見つめた。


 

 南方諸国連合は、我々の動きに対して必ずや反応するはずだ。新大陸の利権を巡る争いが、単なる外交上の緊張を超えて、戦争の火種となりかねない状況が迫っていた。



「現時点で、彼らはどういった動きを見せている?」



 俺は尋ねた。



「シャドウルアが新大陸の西側に拠点を築き始めています。特に港湾施設の建設が急ピッチで進んでおり、そこから資源の輸送を進めるつもりのようです」


 セレスティアの報告に、一瞬、会議室の空気がさらに重くなった。



 彼らが拠点を築き、資源輸送の体制を整えるということは、軍事的な動きがいつでも始まる可能性があることを意味している。



「ノルデンも、これ以上傍観するわけにはいかないでしょう」


 レオが低い声で口を開く。


「もし彼らが本格的な軍事行動に出れば、我々は応戦せざるを得ない…。共栄圏としての防衛体制を強化する必要があります」




 彼の言葉に同意しつつ、俺は頭の中で次の一手を考えていた。


 シャドウルアが西側に拠点を築くということは、新大陸全体を巡る勢力争いがいよいよ本格化する兆しだ。もしこのまま放置すれば、いずれ共栄圏と南方諸国連合の全面対決に発展しかねない。



「新大陸での活動を強化しつつ、防衛体制を整えるべきだな。しかし、同時に外交努力も怠るな。戦争は避けるべきだ」



 俺は強い口調で言う。



「我々の目的は、新大陸の資源を平和的に活用し、国を豊かにすることだ。それが戦争で全てを失うようなことがあってはならない」




「そのためには、こちらの軍事的準備も急務です」


 レオが即座に応じた。


「ノルデンの軍だけでは限界があります。大イギリシアやリュクシス公国とも連携を強化し、共栄圏全体で防衛体制を整える必要があります」



 レオの言葉に、他の幹部たちも一様に頷いた。


 共栄圏内での結束は固く、利権分配についての合意が得られた今、内部での争いは少なくなっている。しかし、それでも外部からの圧力は日増しに強まっているのだ。




「南方諸国連合の動きは、まだ外交の範囲内に留まっていますが、彼らが軍事行動に出る可能性は否定できません」


 セレスティアは冷静に続ける。


「彼らの目論見は、我々の拠点を削ぎ落とし、資源を独占することにあります。それを阻止するためには、こちらも防衛と外交の両面での対応が求められます」


「その上で、世界大戦のリスクも考慮しなければなりません」




 俺は深く息を吐く。



 新大陸を巡る争いは、単なる地域的な対立では済まされない。


 もし戦争が勃発すれば、シャドウルアやマレフィクスだけでなく、彼らの同盟国も巻き込み、世界全体が戦火に包まれる可能性がある。



「彼らが本気で新大陸の支配を狙うなら、全世界が巻き込まれることは避けられないだろうな」と、俺は言う。




 セレスティアは一瞬目を閉じ、再び俺に向き直った。


「シャドウルアはすでにマレフィクス王国や、アーデン王国との軍事同盟を強化しています。彼らが同時に動けば、共栄圏の防衛網を突破し、新大陸だけでなく本土への攻撃も考えられます」




「まさに、戦争が始まる一歩手前だな……」


 俺は視線を地図に戻した。



 新大陸での利権争いが世界規模の戦争に発展する危険性は、日々増している。


 特に、南方諸国連合が軍事行動に出れば、それは単なる資源争奪戦では済まされないだろう。



「戦争は絶対に避けなければならない。しかし、現実問題として、備えておくことは必要だ」



 俺は厳しい声で言う。


「大イギリシアやリュクシス公国との連携をさらに強化し、共栄圏全体で防衛体制を整える。そして、同時に外交交渉を進め、南方諸国連合との直接的な対話の機会を模索する」




「了解しました」


 一同が頷く中、俺は再び地図に目を向けた。




 新大陸の膨大な資源は、我々にとっては希望の象徴でもあり、同時に大きな危険を持っている。


 その資源を巡る争いが世界を揺るがす大戦に発展する前に、何としてでも平和的な解決策を見つけ出さねばならない。



しかし、そのために与えられた時間は、決して無限ではないことを俺は強く感じていた。

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