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第4話 老魔法使いの秘密

 村の復興が少しずつ進み、俺たちの努力は実を結び始めていた。


 荒れ果てていた村には、新たな家々が建ち、村人たちの活気が戻り始めている。

 村に住む人々は、少しずつ笑顔を取り戻し、未来に希望を抱くようになっていた。



 俺たちのリーダーシップのもと、村の周囲には畑や果樹園も作られ始め、食料の自給自足も見込めるようになっていた。


 村人たちは、日々の労働に汗を流し、子どもたちの笑い声が村中に響いていた。



「エルターナ様、これでようやく村も復興の目処が立ちましたね」


 エリザが笑顔でそう言いながら、俺の隣にやってくる。



 俺は彼女に微笑み返しながら頷く。


「そうだな、でもまだ始まりに過ぎない。ここからが本当の戦いだ」



 エリザは、俺の言葉に少し緊張した表情を見せたが、すぐに覚悟を決めたように頷いた。





 しかし、俺の胸には一つの疑問があった。


 それは、ゼドがなぜこの荒れ果てた村で一人で暮らしていたのかということである。


(一体なんでこんなところに住んでたんだろう…。てかなんで生きていけてたんだよ!)






 ある日、俺は決意を固め、ゼドにそのことを尋ねることにした。


 ゼドはいつものように村の外れで魔法の研究をしていた。

 彼の背中はどこか寂しげで、年老いた魔法使いの孤独を感じさせる。



「ゼド、少し話がしたいんだ」と俺は声をかける。


 ゼドはゆっくりと振り返り、微笑みながら「何かご用でしょうか、エルターナ様?」と丁寧な言葉で応じる。



「ゼド、なぜ君はこの村で一人で暮らしていたんだ? もっと良い場所で、他の人と一緒に暮らすこともできたはずだろう?」


 ゼドは一瞬、目を伏せた後、深いため息をついた。


「そうですね……私には、ここに留まる理由がありました。それは……ある過ちを犯したからです」



 俺は驚く。


「過ち? どういうこと?」



 ゼドは静かに語り始める。


「かつて私は、この地で大きな魔法実験を行いました。人と魔物を融合させた新たな生物を作るための研究です。しかし、その実験は失敗し、多くの命が失われ、この村も壊滅状態に陥りました。私の罪は深く、この地でその贖罪を果たそうと決めたのです」



 俺は驚きのあまり、言葉を失う。


(爺さん…、見た目の割にえげつないことやってたんだな…。)



 ゼドが背負ってきた罪の重さを感じ、彼が孤独に耐え続けてきた理由が理解できた。



「でも、ゼド……君は今、こうして村の復興を手伝ってくれているじゃないか。過去の過ちを償おうとするその姿勢こそが、君の強さだと思う」


 ゼドは苦笑しながらも、俺の言葉に救われるような表情を見せる。


「ありがとうございます、エルターナ様。しかし、私にはまだやるべきことが残っています。この村が完全に復興するまで、私はここで力を尽くします」



 俺は深く頷き、「俺も一緒にやるよ。君だけに責任を背負わせるつもりはない。俺たちは仲間だ」と力強く言った。






 その夜、俺は村の広場で焚き火を囲みながら、村人たちと共に夕食を楽しんでいた。


 ゼドもその場にいて、静かに食事を取り ながら皆の笑顔を見つめていた。


 彼の心には、少しずつ新たな希望が芽生え始めていた。



 俺は焚き火の前で立ち上がり、村人たちに語りかける。


「俺たちはこれからも困難に直面するだろう。しかし、俺たちには目指すべき未来がある。全ての種族が共に楽しく生きられる国を作るんだ。それが俺たちの夢であり、目標だ!」


(ふ、我ながら良い感じに決まったな。)



 村人たちは力強く頷き、俺の言葉に勇気づけられた。(と思う。)



 ゼドも静かに立ち上がり、俺に向かって一礼した。


「エルターナ様、これからもどうかよろしくお願い申し上げます。私も全力でお力添えいたします」



 俺はゼドの手を握り返し、笑顔で答える。


「もちろんだ、ゼド。俺たちは一緒にこの国を作るんだ」





 星空の下で俺とゼドは共に未来を見つめながら、これからの戦いに備えた。



 過去の過ちから立ち直り、新たな希望を胸に抱いた二人の絆は、ますます強固なものとなっていく。



 そして、俺たちの冒険は、さらに広がりを見せる。


 新たな仲間との出会い、さらなる試練と戦いが待ち受けているだろう。


 俺の夢が現実となる日は、まだ遠いが、その第一歩は確実に踏み出されていた。






 その後、村の復興が進む中で、俺たちはさらに新たな挑戦に直面することになる。



 ある日、村の周辺で不審な動きを察知した村人が、俺の元に駆けつけてきた。



「エルターナ様! 村の外に見知らぬ集団がいます。どうやら武装しているようです」



 俺はすぐにゼドとエリザを呼び、事態を確認するために現場に向かった。


 村の外れには、確かに十数人の武装した男たちが集まっている。


 彼らは、俺たちの村に向かってゆっくりと進んでいる。



「これは…ただの通りすがりじゃなさそうだな」


 俺は状況を冷静に分析しながら、エリザに指示を出す。


「エリザ、村人たちを避難させてくれ。何が起きてもいいように準備しておいてくれ」



 エリザは真剣な表情で頷き、村人たちを避難させるために動き出した。




 一方、俺とゼドは武装集団のリーダーと思われる男の前に立ちはだかる。



「お前たち、何者だ? ここで何をしている?」


 俺は毅然とした態度で問い詰める。



 リーダーの男は冷笑を浮かべながら答えた。


「俺たちはただの流れ者だ。だが、この村が新たな拠点として使えそうだと聞いてな。お前たち、俺たちの仲間に加われば命だけは助けてやるよ」



(いかにもチンピラみたいなセリフだな。)



 俺は男の言葉に軽くため息をつき、彼の提案を一蹴する。


「悪いが、俺たちはお前たちと同じ道を歩むつもりはない。この村は俺たちの手で守る」



 リーダーの男は俺の態度に不満を覚えたようで、手下たちに命令を下した。


「やれ、こいつらを黙らせろ!」



 手下たちは一斉に武器を構え、俺たちに襲いかかってきた。


 しかし、ゼドがその瞬間に防御魔法を展開し、彼らの攻撃を全て跳ね返した。



「ふん、無謀なことをするものだ。エルターナ様、この程度の連中なら私一人で十分ですよ」


 ゼドは冷静な口調でそう言い放つと、瞬く間に攻撃魔法を発動させる。


 空気が震え、彼の手から放たれた光が集団に向かって飛び込む。


 強烈な閃光と共に爆発音が響き、手下たちは次々と倒れていき、残ったものは逃げていった。


(ゼドっ!!やるじゃーん!!)



「ありがとうゼド!」


 俺はそう、ゼドに礼を言う。




「大したことじゃぁありませんよ!」


 ゼドはそう言うと、また魔法研究に戻っていった。






(ゼドっ…!カッコいーい!!)

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