第38話 大国への第一歩
俺たちノルデン自由連邦国が主導する「聖国協商共栄圏」の設立がいよいよ目前に迫っていた。
この経済圏は、ただの貿易協定ではない。軍事同盟としても機能する強固な枠組みだ。
4カ国の首脳たちがそれぞれの国益を見据え、共に協調することで、この圏内の安定と繁栄を約束するものとなるだろう。
加盟する国々は、ノルデン自由連邦国、強大な大イギリシア帝国、資源豊富なリュクシス公国、そして俺たちの傀儡国家、共和政アルテウス。
この4カ国が結びつくことで、我々は他の大国とのバランスを保ちつつも、軍事的にも経済的にも強固な地盤を築くことができるだろう。
調印式は、大イギリシア帝国の首都ロンディーネで行われる。
大イギリシアは古くからの大国であり、その歴史的な威信と経済力、軍事力に支えられてきた。
今回の協定によって、俺たちはさらに強力な国際的枠組みを持つことになる。帝国との関係を深めることは、ノルデンにとって非常に重要な一歩だ。
「いよいよですね、エルターナ様。これが成功すれば、ノルデンはさらなる繁栄への道を進むことになります」
秘書のリリアンが俺の隣で、少し硬い表情でそう言った。
普段は大胆で活発な彼女も、今日はその鋭い感覚を研ぎ澄ませているようだ。
「ああ、成功すればな。けど、まだ気を抜けない。この協定が本当に機能するかどうか、今日の調印式で各国の反応をしっかりと見極める必要がある」
俺はそう返しつつ、目の前に広がる大イギリシア帝国の首都ロンディーネを見つめた。壮麗な宮殿、整然とした街並み、そのどれもが帝国の力を示している。
帝国に到着した瞬間から、その威光を感じざるを得なかった。
街全体が帝国の繁栄を体現している。広がる石造りの建物や、堂々とした軍隊の行進。これが、彼らが長い年月をかけて築き上げてきた力の象徴だ。
「さすがだな、イギリシアは」
俺がそうつぶやくと、隣にいるリリアンも少し感心した様子で答える。
「確かに、圧倒的ですね。これだけの力を持つ国と同盟を結ぶことで、我々も多くの利益を享受できるでしょう。しかし、油断は禁物です。彼らは常に自国の利益を最優先に考える国ですから」
彼女の指摘は正しい。
俺たちノルデンも相応の力をつけてはいるが、まだ大イギリシア帝国ほどの影響力を持っているわけではない。
だからこそ、この協定で確固たる地位を築くことが重要だ。
調印式が行われる宮殿の大広間に入ると、その壮大さに圧倒される。
高い天井、豪華な装飾、そして各国の旗が掲げられている。俺たちノルデン自由連邦国の旗もその中に誇らしげに翻っていた。
会場にはすでに各国の首脳たちが集まっていた。
大イギリシア帝国のヴィクトーリア2世、リュクシス公国のファドゥーツ公爵、そして俺たちの影響下にある共和政アルテウスのグスタフ大統領。
全員が、この歴史的瞬間に立ち会うためにここに集っている。
調印式が始まると、会場内は静寂に包まれた。
各国の代表たちが厳粛な表情で待ち構えている中、俺は一歩前に進み、まずはこの協定の意義について述べる必要がある。
「本日、ここに集った我々は、未来の繁栄と平和を共に目指すため、聖国協商共栄圏を結成します」
「この経済圏は、貿易協定を超えて、軍事的な協力関係をも深めるものです。我々が協力し合えば、この圏内の安定と発展を確実にすることができるでしょう」
俺の声は広間に響き渡り、各国の代表たちが静かに頷く。
ヴィクトーリア2世が微笑みを浮かべながら、ゆっくりとした口調で答える。
「エルターナ、あなたの考えに賛同します。我が大イギリシア帝国も、この協定を通じてさらなる繁栄を遂げたいと考えています。この協商共栄圏は、我々にとっても大きな一歩となるでしょう」
「はい、我々が団結すれば他の大国も安易に介入することはできないでしょう」
俺がそう言うと、次にグスタフが少し緊張した表情で前に出てきた。
「エルターナ殿、共和政アルテウスも全力で協力させていただきます。我々の経済は先の戦争の影響で、まだ成長段階にありますが、この協定によって大きく発展することができると信じています」
ファドゥーツ公爵も静かに口を開く。
「リュクシス公国も、この協定に大いなる期待を寄せております。我々の資源は、この経済圏に大きな利益をもたらすことでしょうな」
彼らの言葉を聞きながら、俺は深く頷いた。そして、静かに協定書を前に進み出し、サインをするためのペンを手に取る。
サインを終えた瞬間、会場全体に拍手が巻き起こった。
聖国協商共栄圏は、これで正式に発足した。この瞬間から、俺たちの国々はさらに強い絆で結ばれることになる。
経済的な利益だけでなく、軍事面でも協力体制を築き上げ、共に成長していく。
「エルターナ様、おめでとうございます。これでノルデンはさらに強力な同盟を築くことができましたね」
リリアンが満足そうに笑いながら話しかけてくる。
「ああ、これで我々の地位は確実に上がるだろう。しかし、これが始まりだ。この協定が真に機能するかどうかは、今後の行動にかかっている。俺たちノルデンが、他国をリードしていく必要がある」
俺はそう答えながら、これから待ち受ける課題に思いを巡らせる。
ヴィクトーリア2世が近づいてきて、俺に微笑む。
「エルターナ、この協定は新たな時代の幕開けです。共にその未来を築いていきましょう」
俺は彼女に頷き、力強く答えた。
「もちろんです。我々の協力こそが、この地域に新たな秩序をもたらしますから」
調印式は無事に終わり、各国の代表たちは祝杯を挙げていたが、俺の頭の中では次なる策がすでに動き始めていた。
この協定を成功させ、ノルデンがその中心となるために、俺はさらなる計画を練らなければならない。




