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第37話 平和の行方(後編)

 俺はその場から立ち去ることを決意した。


 だが、リーダーが何かを感じ取ったのか、その場を立ち去ろうとする俺を鋭い声で呼び止める。



「待て」



 彼の声は冷たく、しかし何か不思議な力を帯びていた。


「お前は俺たちと戦うつもりか?」



 俺は振り返り、リーダーを静かに見つめる。


「俺の目的は、戦いではない。ノルデンを守り、未来を築くために必要ならば戦うが、最初からそのつもりで来たわけではない」



「そうか…だが、お前がこの地に足を踏み入れた時点で、すでに俺たちとの戦いは避けられない。お前は俺たちを脅威と見なし、俺たちはお前を敵と見なしている。それが現実だ」


 彼は静かに言い放ち、その姿勢からは一切の妥協が感じられなかった。



「争いなど無意味だ」


 俺は再び説得を試みた。


「お前たちが何を求めているのか、その真意が知りたい。復讐は何も生まない。それはお前自身も理解しているはずだ」




 リーダーはしばらく沈黙した後、重々しい声で語り始めた。


「俺たちはかつて信頼していた者たちに裏切られた。仲間を失い、居場所を失い、家族を失った。そんな俺たちに残されたのは、この憎しみだけだ。お前には分かるまい、この痛みが」




 その言葉には、深い悲しみと絶望が滲み出ている。



「俺はお前の痛みを理解することはできない。しかし、俺はそれを少しでも癒すために協力したいと思っている。過去を変えることはできないが、未来を変えることはできるだろう?」


「俺たちが手を取り合えば、もっと良い未来を築くことができるはずだ」



 その言葉に彼は一瞬戸惑ったように見えた。しかし、彼の目にはまだ深い憎しみが宿っていた。



「それでも、俺たちはこの憎しみを捨てることはできない。お前が言うことは、甘い幻想に過ぎない。現実は、俺たちが望むようには動かない」



 リーダーはそう言い放つと、突然、鋭い短剣を取り出し、俺に向けて投げつけた。



(やばい!避けれない!!終わった。)


 俺は死を悟り目を瞑った。






 しかし、目の前にあったはずの短剣は目を開けるとどこにもなかった。






〚まだ死んでもらっては困るぞ?私が防いでおいてやった。感謝しろ〛






 どこからか声が聴こえる。誰の声かは分からない。


 周りを見渡すが、俺とリーダーの2人以外誰もいなかった。







 俺がポカーンとしている間にリーダーはどこかへ行ってしまったようだ。



 

 遠くからリリアンが走ってくる。



「お怪我はないですか?」


「今は退却するべきです。ここは彼らの縄張りです。無理に戦う必要はありません」



 リリアンは冷静な口調で言ったが、その目には俺を守ろうとする強い決意が感じられる。



 俺は一瞬迷ったが、リリアンの言葉が正しいと悟った。


「分かった、ここは一度帰ろう」



 リーダーは逃げてしまったが、また仲間を連れて来る可能性が高い。一度退くのが無難だろう。







 俺とリリアンは夜の闇に紛れて、ノルデンへの帰路についた。


 俺の心には、戦いを避けることができたという安堵と、これからの展開に対する不安が混在していた。


 ………それと、俺を助けた者は一体誰なのか。







 森を抜け、ノルデンの街並みが見えてくると、俺はふと立ち止まり、リリアンに問いかける。


「リリアン、俺たちはこれで正しかったのだろうか?」



 リリアンはしばらく考え込んだ後、優しく微笑んで答えた。


「正しいかどうかは、私たちが決めることです。エルターナ様が信じる道を進むこと、それが最も重要だと思います」



 俺はその言葉に力を得て、深く頷いた。


「そうだな。俺たちが信じる道を進むしかない。だが、奴と再び戦う日は近いだろう」



 俺は再び歩みを進め、ノルデンの街が近づいてくるのを見つめながら、自分自身を奮い立たせる。


 「夜の影」との戦いは避けられないかもしれないが、それでも俺は彼らと理解し合える未来を信じていた。








 俺がノルデンに戻ると、幹部たちとの会議がすぐに開かれた。



 リリアンの報告を受けた幹部たちは、エルターナの決断に賛否両論を持っていた。



「リーダーとの対話は無駄だったのではないですか?」


 レオが問いかける。彼は常に直線的な行動を好むやつだ。



「彼らとの対話が無意味だったとは言えない。彼らの中にも迷いが見えた。今後、彼らがどう動くかを慎重に見守るべきだろう」


 俺は冷静に答える。




「彼らが再び攻撃してくる可能性は高いです。しかし、彼らとの接触が無駄でなかったのなら、対話の兆候が見え始めるはずです」


 セレスティアが言葉を継ぎ、戦略を練り直す必要性を訴える。



「一騎打ちでの勝敗が未来を決めることは少ないでしょう。しかし、我々は次の戦いに備えなければなりませんぞ」


 グラントが力強く言い、街のさらなる防衛強化に取り掛かることを提案する。




 俺は全員の意見を聞き入れ、今後の対応をまとめた。


「俺たちは次の戦いに備えつつも、彼らとの接触を完全に断つつもりはない。もし、彼らが再び手を差し伸べてきたならば、それに応じる準備を整えておこう」



「了解しました」


 幹部たちは全員がその方針に同意し、それぞれの役割を再確認した。





 会議が終了した後、俺は一人、夜空を見上げた。



 星々が輝くその空には、俺の心の中で揺れる未来の可能性が映し出されているように感じられる。


「夜の影…お前たちとの戦いが避けられないならば、それを受け入れるしかない。だが、その先にある未来を信じて、俺は戦い続ける」




 俺はそう心に誓い、新たな一日を迎える準備を始めた。


 未来はまだ不確かだが、俺には信じる道がある。そして、その道を進む限り、彼らとの対話は決して諦めない。

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