第30話 神託之使
平和な日常が続いていたコペンホルム。
「ふわぁぁあ……ねむ」
(何の変わりもない朝だなぁぁ…。)
そう言った途端、慌てた様子のセレスティアが駆け込んできた。
「エルターナ様、大変です!」とセレスティアは息を切らしながら報告する。
「颱風龍テュポーンが極北の大山脈から出現し、東の大国ルーシス連邦を壊滅させました。さらに、ノルデンにも向かっているとの情報があります!」
(あ?)
俺は驚きと不安が入り混じった表情でセレスティアの言葉を聞いた。
(テュポーン??ギリシア神話にそんなのがいたような……?)
(こっちの世界には実在すんの??)
すぐに俺の頭の中に情報が浮かび上がる。
〘実在していますが 最後の出現が2000年以上前のため 多くの人は伝説に過ぎないと考えていました»〙
〘2000年前の出現では 世界人口の60% 魔物も20%が死亡したと言われています»〙
(………ん?ヤバくね??)
俺は事態の深刻さを理解した。
テュポーンの存在が単なる伝説ではなく、実際に人々に恐怖をもたらしていることを実感する。
最悪の事態が現実のものとなっていることを認識し、すぐに冷静に対処する決意を固めた。
俺は、その場でスキル『神託之使』を思い出した。
〘神託之使:効果»»特定可能な対象生物に問答無用で死を宣告します»〙
「…なかなかに鬼畜だな笑」
(ふうっ…)
俺はこのスキルを使ってテュポーンに立ち向かう決意をする。
「すぐに準備を整え、テュポーンとやらに向かう」
俺は命じ、幹部たちと共に迅速に行動を開始した。
レオが部隊を編成し、セレスティアが情報収集を行い、リリアンが俺の装備の準備を進める。
俺自身は『神託之使』の使い方を再確認し、戦いに備えた。
(ガブリエルさんよろしく頼むぜぇ〜。)
ガブリエルとしての記憶があるわけではなかったが、スキルの使い方については確かな自信があった。
ノルデンの部隊は、テュポーンの進行を阻むために山脈の近くに到着した。
目の前には、テュポーンの壮絶な姿が広がっている。
その巨体と炎の息吹は、圧倒的な威圧感を放ち、周囲の空気を凍らせるかのようだった。
「とりあえず俺に任せてくれ」
俺は決然と叫び、1人でテュポーンに立ち向かう。
テュポーンはその巨大な翼を広げ、恐ろしい咆哮を上げながら攻撃を開始した。
火焰が空を焼き尽くし、大地が震える。その圧倒的な力に、俺は防戦一方となった。
俺は冷静に『神託之使』を発動させ、テュポーンに向けて死を宣告する言葉を紡ぐ。
「テュポーンよ、散り去れ」
スキルが発動すると、テュポーンは一瞬動きを止め、驚きと痛みに満ちた表情を見せる。
しかし、その巨体と魔力の強さが相まって、スキルの効果を完全に発揮するには困難が伴った。
テュポーンの反撃は凄まじく、火炎や岩石が俺を襲う。
(まあ…そら1回じゃ無理よな〜)
俺は冷静に状況を分析しながら、テュポーンの動きを探った。
(物理攻撃もいるな。)
爆炎の攻撃をかわしつつ、テュポーンの体力を削るために、持てる力を尽くして戦い続けた。
テュポーンの攻撃を耐え忍び、隙を見て反撃を繰り返す。
時間が経つにつれて、テュポーンは次第に疲弊していった。
その隙を見逃さず、俺は再度『神託之使』を発動させる。
「最高神ヤハウェよ。我、大天使ガブリエルにその力を与え給え」
発動すると、テュポーンは激しく反応し、最後の咆哮を上げながら、その身に致命的なダメージを受ける。
テュポーンは、ついに倒れる前に最後の力を振り絞って咆哮を上げた。
その咆哮は、周囲の空気を震わせ、地響きを起こした。
「これで終わりだな」
俺は息を切らしながらも決意を込めて言う。
〘テュポーンの討伐を確認»身体に取り込みますか?〙
(ん? ……はい?)
〘スキル『颱風神』を獲得しました»〙
(おぉー…、こんなことできるんだ〜。)
テュポーンが倒れると、辺りは静寂に包まれる。
俺は、勝利を収めたが、戦いの余波で全身に疲労感が残っていた。
(あぁー…、疲れた〜。)
戦いが終わると、俺たちはコペンホルムに戻り、幹部たちと共に戦果を報告した。
テュポーンの脅威が去ったことで、ノルデンの人々は安堵の息をついたが、今回の出来事は多くの教訓をもたらした。
「今回の戦いで得た経験をもとに、ノルデンの防衛力をさらに強化する必要があるな」
俺は幹部たちに語りかける。
「テュポーンが何者かに召喚された理由も調査し、今後の安全に備えましょう。私たちの安全を脅かすモノがいるかもしれません」とセレスティアが言う。
(召喚……か。)
「そうだな…」
深い息をつきながら、未来に向けた決意を新たにした。
俺の心には、今回の戦いを通じて得た教訓と、ノルデンのためにさらに力を尽くすという決意が刻まれている。




