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第3話 まずは第一歩

 俺とエリザが到着した廃村は、かつて栄えていた痕跡を残しながらも、今では荒れ果てた地となっていた。


 村の家々は崩れ、畑は雑草に覆われ、風が吹くたびに軋む音が響き渡る。



 俺は、ここが新たな国の出発点だと自分に言い聞かせた。



「まずはこの村を復興させよう。人も魔物も、安心して暮らせる場所を作るんだ」と俺は力強く宣言した。


 エリザは不安げに俺を見つめる。


「でも、エルターナ様、どうやってこんな荒れた村を復興させるのですか? 人もいませんし、資源も足りないでしょう」



 ゼドも腕を組んで考え込んでいた。


「確かにな。この地は厳しい寒さと魔物の脅威にさらされている。普通の方法じゃあ、村を復興するのは難しいでしょうな」



(……、この爺さん魔法使えるんだっけ。それで何とかならんのかな。)


 俺は深く息を吸い込み、ゼドを見つめた。

「ゼド、魔法で何とかできないか? 村の復興に使えるような魔法はないのか?」



 ゼドは眉をひそめて考え込んだ後、杖を振りかざした。


「ふむ、村の修復自体は魔法で多少なりともできますが、根本的な解決にはならないでしょう。それに、わしの魔力も無限ではございませぬ」



「なるほどな……」


 俺は考え込む。


「じゃあ、まずはここに人を集めよう。人がいなければ村も国も成り立たないからな」





 俺たちは村を出て、人々を探す旅に出た。



 すると、少し離れた山中で、一人の青年が木を切っているのを見つけた。

 彼の名はラルフで、家族を養うために森の中で木を切り、かろうじて生活をしているらしい。



(若いのに大変だな。まあ12歳の俺が言えた話じゃないけど。)



 俺はラルフに声をかける。「君、名前は? こんな場所で何をしているんだ?」



 ラルフは驚いた表情で俺を見る。


「俺はラルフ。ここら辺じゃあ、木こりをやってる。お前さんたちは誰だ?」



「俺はエルターナ。ここから少し離れた村で新しい国を作ろうとしているんだ。もし良ければ、君も協力してくれないか? 一緒に村を復興し、新たな国を作るんだ」



 ラルフは戸惑いながらも、俺の目に宿る決意を感じ取った。


「……国を作るって、そりゃ大変なことだな。でも、今の生活も決して楽じゃないし……話だけでも聞かせてくれ」




 こうしてラルフは俺たちに加わり、村の復興に協力することを決意した。



(ありがたい。仲間なんて、いくらおっても困らんからねえ〜。)



 彼の家族も村に呼び寄せられ、少しずつだが村に人々が集まり始めた。




 村に戻った俺たちは、まず住まいを整えることに取り掛かった。


 ゼドの魔法で一部の建物が修復され、ラルフとその家族が新たに住み始めた。

 俺は、彼らと共に村の畑を耕し始めた。



「まずは食糧だ。この土地で生き残るためには、自給自足が必要だ」と俺は語りかける。


 エリザは笑顔で俺のそばに寄り添い、「エルターナ様、私も手伝います。あの……畑仕事は得意ではありませんが、できることなら何でもします」



(ああ〜、癒しだな…。)


 俺は彼女の手を取り、「ありがとう、エリザ。君のその気持ちが、この村を救ってくれるよ」と優しく言った。




 畑作業は順調に進み、ラルフとその家族が植えた種も芽を出し始めた。


 村には少しずつ活気が戻り、俺たちの努力が実を結びつつあった。




 しかし、順風満帆な日々がいつまでも続くわけではない。


 ある夜、俺が村の見回りをしていると、暗闇の中で異様な気配を感じた。


 何かが村に近づいている。


 俺はすぐにゼドを呼び出し、魔法の明かりを灯させる。



 光の中に浮かび上がったのは、巨大な狼のような魔物だ。その赤い目が村を狙っている。


「まずい……この村を狙っているのか!」俺は剣を抜き、身構える。


 ゼドも杖を振りかざし、「こやつは簡単に倒せる相手じゃないですぞ、エルターナ様!」



 俺は冷静に魔物の動きを観察する。

 魔物は俺たちを睨みつけ、低い唸り声を上げながら近づいてくる。


 俺は心の中で作戦を立てた。



「ゼド、あの魔物を引き付けてくれ。俺が背後から攻撃を仕掛ける」


 ゼドは頷き、魔物に向かって強力な火の魔法を放った。

 炎が魔物を包み込むが、それでも魔物は倒れず、俺に向かって突進してくる。



「くっ……強いな!」

 俺は素早く魔物の動きをかわし、背後に回り込んだ。


 そして、全力で剣を振り下ろし、魔物の首を狙う。


 刃は深く魔物に食い込み、ついにその巨体は地面に崩れ落ちた。



「やったか……」

 俺は肩で息をしながら、剣を鞘に収めた。


(ふぅ…、こう見えて剣道部主将だったんだよ!舐めんな!)



 ゼドも疲れた表情で俺の隣に立ち、「ふぅ、厄介な奴でしたな。でも、これで村は守られました」


 俺は頷き、「これからも、こうした脅威は続くかもしれない。でも、俺たちは諦めない。必ずこの地に、人も魔物も安心して暮らせる国を作るんだ」と決意を新たにした。




 その後、俺たちは村の防衛を強化し、魔物の再襲撃に備えた。ラルフも村の防衛隊を組織し、村人たちと共に訓練を始めた。



「俺たちは弱いけど、みんなで力を合わせれば魔物にも対抗できるはずだ」とラルフは村人たちに語りかけた。


 俺は彼の成長を見て、微笑む。


「ラルフも頼もしくなってきたな。この村が少しずつだけど、前に進んでいる」



 エリザも俺の隣に立ち、俺を見る。


「エルターナ様、私たちはきっと、素晴らしい国を作れますね」


 俺は深く頷き、「ああ、絶対に。ここからが本当の始まりだ。これからも共に頑張ろう」とエリザの手を取り、未来への希望を胸に抱いた。





 そして、俺たちは再び村の復興に取り組み始めた。


 人々が集まり、村が栄え、新たな国が形作られていく日々が少しずつ現実のものとなっていく。



 俺たちの戦いはまだ始まったばかりだが、その先にある未来には、必ずや俺たちが望む「全ての種族が楽しく生きる国」が待っているはずだろう。




(まあ…、期待しとけって!!)

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