第29話 波紋 《三人称有り》
ノルデン自由連邦国と魔王ヴェルフェンの同盟が結ばれたという知らせは、瞬く間に周辺諸国に伝わった。
その情報は各国の政府を揺るがし、国々の会議室では激しい議論が繰り広げられることとなった。
───アーデン王国
アーデン王国の王城にある大理石でできた会議室。壮麗な装飾に囲まれた空間に、アーデン王国の王とその重臣たちが集まっていた。
「ノルデンが魔王と同盟を結んだ…だと?」
王は驚きを隠せず、その眉間に深い皺が刻まれる。
「一体何を考えているのだ、エルターナは…」
側近の老賢者ベレーモンが静かに言葉を返す。
「ノルデンが魔王と同盟を結んだというのは驚きですが、それが我々にとってどう影響するかを慎重に見極めねばなりません」
「確かに。我々が警戒すべきは、ノルデンがこの同盟を使ってどのような動きを見せるかだ。もし彼らがこちらに敵対的な行動を取れば、我々も応じざるを得ない」
王は憂慮の色を隠さずに述べた。
「現時点では彼らの出方を見極めるべきかと。しかし、軍備の強化を怠るわけにはいきません」
ベレーモンが提案すると、他の重臣たちもそれに賛同する。
「わかった、まずは情報収集に努めるとしよう。ノルデンの動向を注視しつつ、備えを固めておけ」
王は厳しい口調で命じ、会議は一旦幕を閉じた。
───リュクシス公国
リュクシス公国では、公爵が領内の城にて重臣たちと議論を重ねていた。
「エルターナ殿が魔王と同盟を結んだと…?」
公爵は眉をひそめ、その顔には驚きと戸惑いが見て取れた。
「はい、どうやらその同盟が現実のものとなったようです。魔王がエルターナを友として認めたのか、あるいは他の理由があるのか…」
宰相のエルネストが冷静な口調で答える。
「我々はこの動きをどう捉えるべきか。ノルデンは同盟国だが、魔王と手を組んだことが今後の国際関係にどのような影響を与えるのか…」
公爵は思案に沈む。
「現状、我々はノルデンとの友好関係を保ちつつ、彼らの意図を探るべきです。もしこの同盟が有益であると判断すれば、それを活用する方法も考えなければなりません」
エルネストは慎重な姿勢を示した。
「確かに。まずはエルターナ殿と連絡を取り、彼の意図を確認しよう。必要であれば、改めて交渉の場を設けることも視野に入れておく。」
公爵の言葉に、重臣たちは一様に頷いた。
「それと、魔王との接触についても慎重に検討する必要があります。我々の国が彼らとどう向き合うか、慎重に考えていきましょう。」
エルネストの言葉に公爵は同意し、会議は続いた。
───マレフィクス王国
マレフィクス王国の宮廷では、重苦しい空気が漂っていた。
王位を継いだばかりの若き王は、ノルデンと魔王の同盟の報を受け、深刻な顔をしていた。
「ノルデンと魔王が手を組んだとなると…、我々の立場はどうなる?」
王は重臣たちに問いかける。
「王よ、ノルデンと魔王の同盟は脅威にもなり得ますが、逆にチャンスでもあります。」
宰相が静かに進言する。
「チャンス?」
王は訝しげに聞き返す。
「はい、もし我々が彼らと友好を結べば、強力な後ろ盾を得ることになります。我々もまた彼らと同盟を結ぶ道を模索すべきです。」
宰相の言葉に、他の重臣たちも次第にその考えに賛同していった。
「なるほど…。だが、慎重に動かねばならぬ。無謀に近づけば、逆に敵に回る可能性もある。それに…、我が父は彼の祖国、レコンキーム帝国を滅ぼした。許しているわけはないだろうな」
若き王は考え込むように言った。
「その通りですね。まずは、ノルデンの動きを観察し、必要に応じて交渉を行うべきでしょう。我々の国益を最大化するためにも、賢明な選択をしなければなりません。」
宰相の冷静な判断が、王の心を落ち着かせた。
「よし、まずは情報を集め、慎重に動くとしよう。」
王はそう決断し、会議は次の策を練るために続けられた。
───大イギリシア帝国
大イギリシア帝国の首都にある荘厳な王宮、その中でも最も重要な決定が下される「大円卓会議」の部屋。
帝国の女王ヴィクトーリア2世と、帝国を支える最高顧問たちが一堂に会していた。
「ノルデン自由連邦国が魔王ヴェルフェンと同盟を結んだという報告が入りました」
帝国の情報局長が静かに告げると、部屋の中に緊張が走った。
「魔王と…同盟ですか?」
ヴィクトーリア2世は、少し驚いた表情を浮かべた後、冷静さを取り戻し、周囲を見渡した。
「これは単なる噂ではなく、信頼に足る情報なんですね?」
鋭い目で局長を見据える女王に、局長は即座に頷いた。
「はい、確かな筋からの情報です。ノルデンと魔王の間で正式に同盟が結ばれたとのことです」
「なるほど…。エルターナがあの魔王と手を組みましたか」
女王は少しの間沈黙した後、重臣たちに向かって続けた。
「各々の意見を聞かせてもらいましょう」
まず、軍務卿が口を開いた。
「この同盟は、我々にとって潜在的な脅威となり得ます。ノルデンが魔王の力を借りて勢力を拡大することがあれば、帝国の安定が脅かされる可能性があります。」
そして、内務卿が冷静に述べる。
「帝国内の反応も重要です。民衆がノルデンとの関係をどう受け止めるか。魔王と結びつくことで不安を感じる者も少なくないでしょう。我々は慎重に事態を見極めるべきです。」
女王はそれぞれの意見を聞き、思案に沈んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「まずは、ノルデンとの接触を試み、エルターナの意図を探ることが急務でしょう。彼らの動向を注視しつつ、帝国の安全と繁栄を確保するために最善の策を講じます」
そして、力強く宣言した。
「この同盟が我が帝国にどのような影響をもたらすかは分かりませんが、帝国の威信と力をもって対処する準備を整えよ」
顧問たちは皇帝の決定に従い、それぞれの役割を果たすべく動き出した。ノルデンと魔王ヴェルフェンの同盟が帝国にどのような波紋を呼ぶのか、帝国は慎重に事態を見極めつつ、その影響に備えることとなった。
───ノルデン首都コペンホルム
俺は執務室の窓から、賑わうコペンホルムの街を眺めていた。
(ふうっ……。)
その時、扉がぶっ壊され1人の男が入ってくる。
「は?」
「よぉぉ!!ガブリ…、エルターナよ!!遊びに来てやったぞ!!!!」
入ってきたのは魔王ヴェルフェンだった。
「別にこなくていいんだけど!」
「まあまあそんなこと言うなって!!反抗期かー??また一緒に『温泉』とやらに行こうぞ!!」
(暑苦しいわコイツ)
「もー!1人で行っとけよ〜!」
(まったく…、魔王がこんな奴とはな。この先一体どうなるのやら…。)




