第28話 旧知の仲?
「…ん!?お前久しぶりだな!!!」
突然、目の前にいる魔王が懐かしげに声をかけてくる。
彼の瞳にはどこか懐かしさと驚きが混じっているようで、その様子に俺は戸惑いを隠せなかった。
彼が何を言っているのか全く理解できず、ただただポカーンと口を開けて立ち尽くしていた。
「…は?」
その一言しか口から出てこなかった。頭の中が混乱して、言葉が追いつかない。
「そんな格好していても、俺様の目は騙せないぞ!!大天使ガブリエルよ!!」
魔王はさらに畳み掛けるように言い放った。
彼の表情には確信があり、その言葉に全く疑いを持っていない様子だ。
しかし、俺にとっては全くの初耳だ。
(えぇ????俺が?ガブリエル??)
どうしても繋がらない。
俺は確か、亡国の皇太子として転生したはずだ。
それがいつの間にか「大天使ガブリエル」だと言われる始末。冗談にも程がある。
「にしてもほとんど人間だな!!見た目だけではわからなかったぜ!!!」
魔王ヴェルフェンは大声で笑いながら続けた。
俺はその言葉にますます混乱した。
(……意味が分からない…。あ、そうだ。解析してくれ!!!)
頭の中で解析を命じる。
〘少々お待ち下さい»〙
少しの間、頭の中でシステムの処理音が響く。そして、結果が表示された。
〘解析が完了しました»〙
(おぉ!!で??)
期待と不安が入り混じる中、表示された結果を見つめる。
〘あなたは間違いなく大天使ガブリエルです»〙
(詳細に説明してくれ!)
冷静さを保とうとするが、心の中は既に混乱の嵐だ。
俺が本当に大天使ガブリエルなのか?信じられないまま、システムの説明を待った。
〘はい» 13年前 大天使ガブリエルは天界で暇を持て余していたため人間に転生することを決めました»〙
(え?そんなことできんの??)
〘はい» 人間の寿命は100年程度» 天界に100年ぐらいガブリエルがいなくとも何の問題もありませんから»〙
(なるほどな…。)
大天使であるガブリエルが、人間界でたかだか100年過ごすことは、天界にとってはさほど大きな出来事ではないのかもしれない。
(そして…、ガブリエルがエルターナとして生まれ、その後エルターナに俺が転生したわけか。)
それが本当ならば、俺は二重の転生を経験していることになる。
ガブリエルとして、そしてエルターナとして。
だが、ガブリエルは今どこにいるのだろう?
(んー…、じゃあガブリエルはどこにいるんだ??)
頭の中で問いかけると、すぐに返答があった。
〘大天使ガブリエルは既に体に取り込まれています»あなたの膨大な魔力もそれが理由でしょう»〙
(え?まじ?)
その事実に少し驚きを隠せない。
〘はい»その証拠に スキル『神託之使』を獲得しています»〙
(『神託之使』…。それがガブリエルの力の一端ということか。)
(え?じゃあさ、俺の寿命ってあとどのくらいなの?)
〘大天使ガブリエルを取り込みましたが あなたの種族は『人間』のままなので 寿命に変化はありません»〙
(あ、そうなのね。)
全く信じられないことが次々と起こる。俺の頭はこの異常な事態を理解するのに追いつかない。
(はあ…、全くなんでもありだな…。)
ため息をつきながら、現実を受け入れようとするが、どうにも複雑な気分だ。
「おーい!!何ぼーっとしてるんだぁ!?」
魔王がデカい声で俺を呼ぶ。
「……まあこんなところじゃ退屈だろう。良いところに連れて行ってやるよ」
そう言って俺は魔王ヴェルフェンを誘い、近くの温泉へと向かった。
魔王ヴェルフェンと共に温泉へと向かう道中、俺の心は依然として不安定だった。
大天使ガブリエルとしての記憶が蘇るわけでもなく、ただただ目の前の現実に困惑していた。
温泉に到着し、二人で湯に浸かると、ようやく緊張が少しずつ解けていくのを感じた。
魔王ヴェルフェンは俺に話しかけ、過去の思い出や魔界での生活について楽しそうに語り始めた。
「それにしてもガブリエルよ、お前の国はなかなか面白そうだな。俺様も一度見てみたいものだ」
彼の言葉に俺は少し驚いた。
まさか、魔王が俺の国に興味を示すとは思わなかったのだ。
「実は、俺たちの国は今、成長の途中で、いろんな問題に直面してるんだよ」
正直な気持ちを口にすると、ヴェルフェンは眉をひそめた。
その表情には、真剣さと共感が垣間見えた。
「問題か…。確かに、人間の国はそういう問題がつきものだな。でも心配するな。俺様が協力してやろう」
俺はその言葉に驚き、ヴェルフェンの顔を見つめた。彼の目には、嘘偽りのない真摯な光が宿っていた。
「え、本気で言ってんの??」
俺は自分の耳を疑った。魔王が本当に協力を申し出るなんて。
ヴェルフェンは頷き、力強く答えた。
「おう、もちろんだ。お前が困っているなら、俺様も力を貸すさ。魔王である俺様が味方すれば、どんな脅威も恐れることはない。」
彼の言葉には、絶対的な自信と確信が込められていた。
俺はその言葉に感謝しながらも、まだ心の奥底では信じられない部分があった。
(まじか!!)
思わず心の中で叫ぶ。
「てかお前…本物のガブリエルじゃないよな?」
俺の正体に気づいたかのように、ヴェルフェンが問いかけてくる。
「あ、バレた??」
俺は仕方なく笑ってごまかすしかなかった。
「はっはっは!俺様の目を騙せるわけがないだろう!!」
ヴェルフェンは大声で笑い飛ばした。
「…見たところ、転生者か何かか?」
彼は再び問いかけてきた。その鋭い眼差しに、俺は少しだけ怯んだが、すぐに笑顔で答えた。
「せいかーい!」
軽い調子で返すと、ヴェルフェンもまた笑みを浮かべた。
「はっ、なかなか面白いやつだな!!俺様は嫌いじゃないぞ!!!」
(はっ、やかましいやつだな。俺は好きではないぞ。)
「あぁ?なんか変なこと考えてるな??」
ヴェルフェンは俺の心の中を読んだかのように問い詰めてくる。
「いやいやいや、なんもない!!」
こうして、魔王ヴェルフェンとの間に思わぬ協力関係が築かれた。
温泉から上がった後、ヴェルフェンは力強い言葉を残した。
「ガブリエル……いや、エルターナか。これからも俺様たちは共に戦う。お前の国がどれほどの困難に直面しようと、俺様がいる限り、それを乗り越えてみせるぜ!」
その言葉に、俺は深く感謝の意を込めて頷いた。
ノルデンは今、かつてないほど強力な同盟者を得たのだ。
ノルデンと魔王ヴェルフェンとの協力関係が、どのような未来をもたらすのかはまだわからない。
しかし、この新たな同盟は、ノルデンの未来を大きく変えることになるだろう。
そして、これから始まる出来事は、ノルデンの歴史に新たな1ページを刻むことになるに違いないだろう。




