表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/49

第2話 亡国の皇太子の大きな夢

 北の地へと逃れる途中、俺は無限に広がる荒野を見渡しながら、大きな夢を抱き始めていた。


 かつては皇太子として、レコンキーム帝国の繁栄だけを考えていたが、今は違う。


 自分が生まれ育った世界とは全く異なるこの異世界で、俺は新たな未来を描こうとしていた。



(どうせ、コッチに転生してきたんだ。平和に暮らしたいものだな。)



 俺が望むのは、人間だけではなく、魔人や魔物も共に暮らすことができる国。


 すべての種族が協力し、楽しく生きることができる場所だ。


 新しい形の共生を目指したいと考えている。



「人間だけの国ではなく、全ての種族が平等に暮らせる国を作ろう。そうすれば、無用な戦争も避けられるはずだ」と呟いたその時、隣のエリザが不安そうに顔を覗き込んできた。



「エルターナ様、本当にそんな国が作れるのでしょうか?」



 俺は笑顔で答える。


「もちろんさ! だって、俺は転生者だぞ? 不可能を可能にするのが異世界転生モノのお約束だろう?」



 エリザは困惑した表情を浮かべる。


「転生者……ですか? すみません、よく分かりませんが……」



 苦笑いしながら「気にしなくていい、ただの冗談さ」と返す。


 しかし、俺の言葉にはどこか本気が込められていた。

 俺には、この異世界でしかできないことがあるという確信があった。



(もう…、どうにでもなれ!!)






 北の地に到着すると、荒れ果てた村を見つけた。



 その村はかつて栄えていたが、魔物による襲撃や極寒の気候によって放棄されていた。


 村に足を踏み入れると、凍てつく風が頬を撫で、荒れた地面に散らばった廃材が俺たちの歩みを阻む。


 ここにはかつての活気は全く感じられない。




 しかし、その廃墟の中に、一人の老魔法使いが住んでいた。


(…現代で表すと…、ハ〇ーポッターの校長とか、そんな感じの見た目だな。)



「おい、若いの! この村に何の用ですかな?」


 老人は、白髪と長いひげをたくわえた魔法使いで、その名をゼドと言うらしい。


 彼は俺たちに向かって、杖を振りかざして警戒している。


 彼の眼光には長年の経験と知識が感じられる。



「俺たちは、この地で新たな国を築こうとしているんだ」


 俺は真剣な表情で答える。


「人と魔人、魔物が共に暮らせる国を作りたい。それには、あなたのような賢者の力が必要だ」



 ゼドは驚きとともに笑い声を上げた。


「ふん! 若いの、夢みたいなことを言いおりますな。しかし、面白いことを考えるやつもいるもんですな。いいだろう、老いぼれだが、ちょっとだけ力を貸してやりましょう。ほーほっほ」



(陽気な爺さんだな…。まあ特に困ることはないか…。)





 こうして、俺はゼドを仲間に迎えることができた。


 彼の知識と魔法の力は、新たな国を築くための大きな助けとなるだろう。


 ゼドは俺を見つめながら、「それにしても、若いの、どこでその服を手に入れたんじゃ?随分と豪華な鎧ですな」と尋ねる。


 俺は一瞬、何のことか分からず、ゼドの指差す方を見ると、慌てて言葉を飲み込んだ。


「あ、これか? まあ、いろいろあってな」とだけ答えるに留めた。


 まだ出会ったばかりだ。

 俺がレコンキーム帝国の皇太子だということは、まだ言わない方が良いだろう。



 ゼドは大声で笑いながら、「ふむ、お前さんが普通の若造だってことが分かりましたよ。まぁ、そのおかげで私も安心して協力できるってもんよ!」と、わけの分からないを言いながら、俺の背中を軽く叩いた。



(何を言ってんだコイツは?)




「ところで、エルターナ様」


 エリザが話しかけてくる。


「この荒れ果てた地で国を築くには、まずは住む場所を整え、村の復興を進める必要があります。どうやってこの地を活気づけますか?」



 俺は少し考えた後に答える。


「まずは、寒さに強い植物や家畜を取り入れ、この地に適応した食料の生産を目指そう。次に、村を防衛するための壁や施設を作る。住民が安心して暮らせる環境を整えることが先決だ」



 ゼドは興味深げに頷く。


「なるほどな、若いの。お前さん、ただの夢想家ではないようですな。実際に手を動かしてみせるつもりか」



 俺は自信を持って答える。


「もちろんだ。俺たちは、ただの夢で終わらせるつもりはない。現実にしてみせるよ」



 その言葉にエリザも頷き、ゼドも笑みを浮かべた。


「よし、それならば、私の力でこの村に魔法の障壁を張ってやりましょう。少なくとも、外からの襲撃を防ぐことはできますぞ」



 ゼドが杖を振ると、村全体に淡い光が広がり、しっかりとした結界が張られた。


「これで魔物どもも簡単には近づけないだろう。効果は1日ですからな」



 エリザはその光景を見て感嘆の声を上げる。


「素晴らしい…! ゼドさん、ありがとうございます」



「ふん、礼はいらんですぞ。若いの、お前さんの夢に賭けてみただけさ」


 俺はゼドに感謝の意を示し、これからの道を共に進むことを誓った。






 北の地という過酷な環境だが、仲間たちと共に努力し続けることで、俺の夢は現実のものとなるだろう。



「まずは、この村を復興させるところから始めよう。俺たちの国は、ここからだ!」



 俺の熱意は、エリザやゼドにも伝わり、彼らは共に新たな国を築くための一歩を踏み出した。



 村の復興作業は厳しいものであったが、ゼドの魔法と俺たちの努力によって少しずつ進展し始めた。


 以前の繁栄を取り戻すための準備が整ってきた。


 周囲の荒野にも少しずつ緑が戻り、温かい陽光が差し込む日々が続く。





(…まあ、なるようになるでしょ!!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ