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第18話 戦の火蓋

 ノルデン自由連邦国とアルテウス王国との戦争が、ついに火蓋を切られた。



 コペンホルムの空は、硝煙と戦の轟音で満ちている。

 空は灰色に煙り、轟音が耳をつんざく中、地上では戦火が猛威を奮っていた。


 風に乗って立ち昇る煙が、空を濁らせ、戦場の激しさを物語っている。



 ノルデン連邦軍とアルテウス王国軍の間で激しい戦闘が繰り広げられている。


 数の上で圧倒的に劣る我々ノルデン連邦軍は、徐々に押し込まれていた。


 アルテウス王国軍の数の優位性が、次第に戦局を不利に進めていく。



 戦線では、双方の兵士たちが血にまみれながら、命を賭けて戦っている。


 無数の弾丸が飛び交い、火花が散り、怒号と鉄砲の音が鳴り響く。

 どこを見ても、戦争の悲劇が広がっていた。








 俺は行政府の会議室で戦況報告を待っていた。



 扉が開き、レオが入ってくる。



 彼の顔には深い疲労と重圧が刻まれている。


 レオの後ろには、疲れ切った兵士たちの姿がちらりと見えた。



「状況は厳しい。アルテウス王国軍の攻撃がますます激しくなっている。兵士たちも疲弊し、数でも劣る我々には手をこまねくしかないです」


 レオは険しい顔でそう言う。

 その声には、戦局への深刻な不安が滲んでいた。



「そうか…」


 俺は深く息を吐き、額に浮かんだ汗を拭う。



(まずいまずいまずい……、)



 ノルデン連邦軍の総大将として指揮を執っているレオと副官のラルフは、最前線で戦ってくれている。


 だが、戦況は日に日に悪化している。



 見渡す限りの戦場には、無数の兵士たちが倒れ、血で染まった大地が広がっている。


 アルテウス王国軍はその数の優位を活かし、着実にノルデン連邦軍を押し込んでいた。




「どうしますか? エルターナ様」


 エリザが心配そうな目で俺を見つめる。


 その瞳の奥には、切実な不安と焦燥が映し出されていた。



「シルヴァ、提案を」


 俺は幹部会議のメンバーに目を向ける。



 シルヴァは魔物との外交担当としての知識を活かし、戦局打開のための提案をしていた。


 彼の表情には、わずかでも希望を見出そうとする必死な思いが見える。



「はい。魔物や魔人を最前線に送り込むという案があります。彼らは飛行することができ、アルテウス王国軍の強力な大砲の射程外から攻撃を行えるはずです」


 シルヴァは、その提案に自信を持っていた。






 幹部会議では、その案がすぐに決定され、魔物たちが戦線に送り込まれることとなった。


 会議室には一瞬の安堵が広がったが、その期待はすぐに裏切られた。




 アルテウス王国軍の大砲の精度と威力により、多くの魔物が撃ち落とされてしまい、この案も期待された成果を上げることはできなかった。


 魔物たちの果敢な攻撃も、アルテウス王国軍の数の優位に押し切られていた。



 戦局はますます厳しくなり、ノルデン連邦軍は完全に押し込まれてしまった。



「どうしても状況が変わらない…」


 俺は苛立ちを隠せない。



(ヤバすぎる…、一体どうしたらいいんだぁぁ?)



 会議の室内には、沈黙と絶望が漂っている。



 幹部会議のメンバーは深刻な表情で議論を続けている。


 疲労とストレスが積もり、皆の顔には疲れが色濃く浮かんでいた。




 会議が長引く中、俺の心には焦りが募っていた。


 時計の針が進むたびに、戦況が悪化する現実が重くのしかかってくる。




 古代魔法の使用も考えたが、俺は自分に言い聞かせる。


 古代魔法の発動には時間がかかるし、一度失敗すれば再発動までに戦線が崩壊する可能性が高い。


 冷静に考えれば、使用のリスクがあまりにも大きいだろう。





 そのとき、会議室の扉が開き、セレスティアが急いで入ってきた。


 彼女の顔には、一筋の希望と緊張が入り混じっている。



「エルターナ様、リュクシス公国からの知らせです。援軍が明日に到着するとのことです。数は5万です」


 セレスティアは息を切らしながら、急報を伝える。


 彼女の言葉には、希望とともに、残された時間が限られているという現実が反映されていた。




「そうか……。明日まで、どうにか持ちこたえてくれ…」


(頼む頼むっ、ガチで……。)



 俺は祈るように指示を出す。



 リュクシス公国からの援軍の到着が、もはや唯一の希望となっていた。








 その夜、俺は執務室で考え事をしていた。


 戦局が急速に悪化する中で、何度も会議を重ね、策を練り直しても、状況は一向に好転しない。


 自分が君主として何をすべきか、またそれにどう応じるべきか、頭の中がごちゃごちゃになっていた。


 机の上には、戦況を示す地図と報告書が散らばり、灯りが疲れた目を照らしていた。







 翌日、到着したリュクシス公国軍がノルデン連邦軍と合流し、戦局の打開に向けて動き出した。


 リュクシス公国軍の兵士たちが果敢に戦い、連携を深める中、俺たちの希望が少しずつ現実となりつつある。



 しかし、アルテウス王国軍の勢いは衰えず、双方の兵士が戦い続けていた。


 ノルデン連邦軍もリュクシス公国軍も、戦線の維持に必死だったが、結局アルテウス王国軍の数の優位が勝ってしまう。




「失礼します」


 レオが執務室に入ってくる。


 彼の姿には疲れと悲壮感が色濃く見えていた。



「レオ、どうだ?」


 俺は再び戦況を確認するためにレオに問いかける。



「状況はさらに悪化しています。援軍も役に立たず、ノルデン連邦軍も壊滅状態です」



(は…?あれだけの援軍でも挽回できないの…?)




 報告を受け、俺は決意を固めた。


 これまでの戦の全責任を感じながら、ついに古代魔法の使用を決意する。



(なんで俺は今までためらっていたんだろう…。少しでも希望があるのなら、それに賭けるべきだった。)









 俺は戦線に赴き、古代魔法を使うための準備を整えた。



(ふうっ…、俺のせいで多くの命が失われたんだ…。自分でどうにかせねば。)



周囲は静寂に包まれ、戦場の喧騒とは対照的な光景が広がっている。



 夜の帳が降り、月明かりが戦場を照らす中、天に向かって祈りをし、古代魔法の呪文を唱える。






「神よ、我らを救い給え」






 俺の声が戦場に響き渡る。


 この瞬間に、全てがかかっている。



 成功しなければ、ノルデン自由連邦国の敗北が確定するだろう。


 俺の心には、成功させるという強い決意が込められていた。






(頼む頼む神様頼むマジで)

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