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第1話 転生ガチャ大成功………のはずが!!!

 東京の街はいつもと変わらず、喧騒と雑踏が入り混じっている。



 俺は黒田慶樹。35歳、そこそこ良い大学を出て、そこそこ良い会社に就職し、そこそこ良い生活を送っている。


 毎朝、混み合った電車に揺られ、職場で業務をこなし、夜遅くに帰宅する日々。


 特に不満はない。いや、むしろ贅沢を言えば罰が当たるような人生だ。



 だが、どこか物足りなさを感じていたのも事実だ。


 俺は何か大きなことを成し遂げることなく、ただ流されるままに生きている。



 そんな感じの思いが、時折胸をよぎる。






 ある冬のある日、俺はいつも通りの朝を迎えた。



 通勤ラッシュの中、スマートフォンでニュースを眺めながら、何気なく駅のホームに立っていた。


 その瞬間、背後から突如として強烈な衝撃が襲った。



「……っ!?」俺は咄嗟に振り返る。


 しかし、目に映ったのは、何の変哲もない日常風景だった。


 周囲の人々は忙しそうに足早に歩き、誰も俺に気を留めていない。



 だが、次の瞬間、鋭い痛みが背中を襲い、俺はその場に崩れ落ちた。



 ………俺を刺したのはコイツか……?



 ふと、上を見上げると、血のついたナイフを持った男が立っていた…。




――その男は、何の感情も持たずにナイフを突き立てた通り魔だった。




「くっ……、結局そこそこの人生かよっ…」




 体の力が抜けていく。




 ……死ぬ瞬間とはあまり苦しいものではないんだな……。



 それが黒田慶樹の最後の言葉だった。

 あっけないものである。













 暗闇の中、俺は目を閉じていた。



「死んだのか……俺は?」そんな思いが頭をよぎる。しかし、次に目を開けた時、そこは見覚えのない場所だった。


 青々と茂る草原と澄み渡る空が広がり、遠くには壮麗な城がそびえていた。


 自分が何故ここにいるのか、何が起きたのか理解できないまま、俺は立ち上がった。



「ここは……どこだ?」俺が呟いたその時、突然頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。




 俺の名前は黒田慶樹ではなく、レコンキーム帝国の皇太子、エルターナだということ。

 この世界は俺が知る東京でもなければ、現実のどこかでもないということ。そして、この世界には魔法や魔物が存在する異世界であることを。



「異世界転生……本当にあったんだな」と、思わず苦笑する。



(………にしても転生ガチャ神引きじゃねえか???!!!

帝国の皇太子!?勝ち組じゃん!!)



 俺の中に湧き上がる感情は不安や混乱ではなく、喜びだった。


 前世の記憶はあるが、俺はこの世界での生活を受け入れることにした。




 俺はすでに12歳の少年であり、皇太子としての教育も受けている。

 剣術や戦術、そして帝国の政治に関しても一通りの知識がある。加えて、この世界のことを理解するための情報が頭に自然と流れ込んでくる。


「俺は、もうエルターナとして生きるしかないよな!!!」

 やる気満々である。




 レコンキーム帝国は西方の大国であり、隣国であるマレフィクス王国とは長年、微妙な緊張状態にあった。


 だが、ここ最近、その緊張が高まりつつあり、戦争が避けられない状況にある。



 エルターナとしての俺は、この国を守るために、皇太子としての責務を全うする決意を固めていた。


(…せっかくだし、順風満帆な生活を送ってやろう。)




 宮殿の中庭に出ると、そこには侍女のエリザが待っていた。

「エルターナ様、今日も剣術の稽古がございます」と   彼女は微笑む。


(かわいすぎだろっ!!)



 エリザは俺に仕える忠実な侍女であり、幼少期からの友人でもあるらしい。

 彼女の存在が、異世界の生活に対する不安を和らげてくれる。


「ありがとう、エリザ。今日は少し頭を使った訓練もしたいところだ」と俺は応じる。



 その日も、平和な一日が過ぎていくかのように見えた。


(最高な毎日だぜっ!)




 しかし、その夜、俺の運命を大きく揺るがす出来事が起こる。






 夜が深まるとともに、城の外から不穏な気配が漂ってきた。


「何だ……?」と俺が窓から外を覗くと、遠くの空が赤く染まり始めていた。燃え上がる火の光が見える。


 次の瞬間、宮殿中に響き渡る警鐘の音が鳴り響く。



「マレフィクス王国の軍が攻め込んできました!!」


 帝国騎士団の一人が慌ただしく駆け込んできた。「エルターナ様、急いでお逃げください!敵がこの城に迫っています!」



(嘘でしょ嘘でしょ…!)


 俺は急いで鎧を身に纏い、剣を握りしめる。


「父上と母上はどうなった!?」

 俺が叫ぶと、騎士団員は震える声で答えた。


「申し訳ありません、すでに……皇帝陛下と皇后様は……。」



(まじかよ!流石に急展開すぎだって!)


「そんな……」

 その言葉が俺の心に突き刺さる。


 転生してきた俺には関係のない人だと思うだろうが、エルターナ皇太子の昔の記憶も俺に引き継がれているため、どこからか悲しいという感情が芽生えてくるものだ。



 絶望と怒りが胸の中で渦巻くが、俺には今やるべきことがある。


「ここで倒れるわけにはいかない……俺は、必ず生き延びる!」


(せっかく帝国の皇太子に転生できたんだし。)



 エリザと共に、俺は密かに用意されていた脱出路を通って城を抜け出した。


 しかし、俺の心には一つの決意が固まっていた。



「このまま終わるわけにはいかない。俺は必ず……マレフィクス王国に復讐してみせる!!」




 北の地に向かう途中、俺は新たな国を築き、強大な力を持つ統治者となり、そしてマレフィクス王国を滅ぼすことを心に誓う。


(まあ、あんまし戦争はしたくない派なんだけどね…。)



 それと…、俺は前世の頃から無駄な争いはしたくない主義だから、国をつくる時は『全ての種族が平和に暮らす国』みたいな感じが望ましいよな〜。 





(……てか神様ふざけんなよっ!!神引きかと思ったのに全然ちげえじゃねえかよ!!)


(異世界転生して失脚するなんて滅多に聞かねえよ!)


 こうして俺の異世界 "失脚" 建国記が始まった。

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