魔王と親子
勢力図を塗り替えた魔王が暮らす砦には訪問者で連日賑わっていた。
「魔王、まだ並んでるがサキチに任せるのか?」
「おう、いちいち会ってられるか!面倒くさい。」
「しかし、続々と来るなぁ。今日で10日ぐらい経つんじゃないか?」
「そうだな私が来た事による影響は大きいようだなキナヴァリ。」
「はっはっはっはっ骨が来たから犬っころがどんどん来やがるんだな!はっはっはっはっ」
「くっ!今に見ておれ、こいつらで私の軍勢を作り魔王様の精鋭部隊として活躍してくれるわ!」
「ほぉ、そりゃ楽しみだ。どんな犬が良いかお前もサキチと一緒に話しを聞いてこいよ。」
「言われるまでもない!」
砦には魔族達が押し寄せていた。無論戦う意思などなく傘下に加えてくれと懇願する者達である。
ごく一部の魔族は依然として魔王は己自身だと虎視眈々と機会を狙っているようだが、ほとんどの魔族は新たな魔王を歓迎していた。いや、逆らってもメリットが皆無であると悟ったのであった。
「サキチ王子、本日から私もご一緒しますので。」
「マーゴスか。構わないけど、挨拶だけで終わりだ。お父様に合わせろなどと言うやつはその場で蹴散らすからそのつもりでな。」
「ええ、勿論。しかし良い人材がいれば直接話しをさせて下さい。」
「構わないぞ。そんな奴が来るとは思えないがな。」
この10日間サキチは稽古を我慢しひたすら訪問者と会談を重ねていた。
基本的には傘下に入る事の了承のみであり、サキチの了承を得た魔族は外で待つダイモナスに魔族名と頭数を伝えて帰路につくのである。
魔族長が来れば早いのだが、末端の者などがそれぞれバラバラに来るので終わりが見えないのであった。
「昨日までにどれ程の数となったのです?」
「ああ、確か1万を超えたと言ってたな。」
「なんと1万!?さ、さすが魔王様ですな。」
「当たり前だろ!まだまだお父様には少ないぐらいだ!」
「た、確かにそうですね。我々魔族を総べるお方ですからね。」
砦内に臨時で作られた会談部屋は簡素なものであった。長机に椅子が置かれただけで威厳など微塵も無い場所であった。
その為か、はたまたドワーフの子供が会談相手だからか血気盛んな魔族は度々いざこざを起こしていた。
「いつまで待たせんだ!!」
扉を勢いよく開けて魔族が入ってくる。
「うるさい奴め、そこに座り名と用向きを話せ。」
サキチは冷たく言い放つ。
「ああ!?なんで魔王様の砦にこんなドワーフがいるんだ!騙しやがったのか!?」
「なんだと?ドワーフの俺がいると何か不都合でもあるのかこの野郎ぉ」
「偉そうにしやがって!てめぇなんざ、一捻りで殺してやるわ!」
「やってみろよ下等種族が!」
ドン!
サキチと魔族が言い争う側でマーゴスが机を叩き制止する。
「キサマ、魔王様の砦で騒ぐとはどういうつもりだ?」
「ああん!?今度は骨か!?スケルトスには用は、、、、ん?話すスケルトス、、、もしかしてマーゴス様ですかい?」
「ああ如何にも。」
魔族はマーゴスと気付くと平身低頭跪き種族と名を伝え傘下にしてくれるよう懇願した。
「もういい、外の者に了承されたと伝えろ。」
「はっ!有難き幸せ!魔王様、そしてマーゴス様の為に粉骨砕身働きます!」
その様子をサキチは苛立ちながら見ていた。
「さっ次を呼びましょう。」
「おう」
今日はサキチに突っかかる者が特に多い日であった。「ドワーフのガキ」「無能なドワーフ」「場違い」などとサキチを見るや罵詈雑言の嵐であった。
その度にマーゴスが名乗り出て場を収めるというのが繰り返された。
バンっ!
サキチは立ち上がり無言で出ていく。
「王子、どちらへ?」
「知らん!!後はお前だけでやれ!!」
サキチは扉から出るとそこらの椅子や書紀をしているダイモナスを蹴り飛ばしたりと収まらない怒りを様々にぶつけていった。
「やれやれ、王子などと呼ばれ調子乗っているのぉ。ドワーフなどに務まる筈も無いのに、、、さて邪魔なガキがいない方が捗るというもの。さあ、次々と中に入れてくれ。」
マーゴスはサキチがいない間にスムーズに選別をしていく。魔法に長けた種族については、魔王の傘下にするのは勿論のこと個別に声を掛けていった。
「私は魔王様の精鋭部隊を作るのだが、キミは私の下で働いてくれるかな?」
大魔法使いマーゴスからの誘いであれば断る者などいなかった。なぜなら魔法を使う魔族にとっては天上人のような存在であるからだ。
日も落ち夜は更けていく。
「本日の会談は終了である!!」
外にいるダイモナスが並ぶ者達に伝える。
「早い」「会わせろ」など騒ぐ者もいるが、殆どは仕方ないとその場で野宿を始めていた。
「うーん、、」
マーゴスが大きく伸びをするとパキパキっと骨が鳴る。
「ふぅ、、、今日だけで1500人、、、外にはまだまだ列が続くか、、、さあ休もう休もう。」
その日から会談はマーゴスが担当するようになる。
サキチは稽古もせずにそこらをぶらぶらする毎日であった。魔王の祝福を受け、力を得た時には自身も魔王であるかのように錯覚し気も大きくなっていたサキチであったが、鬼神族にはボロボロにやられる毎日を過ごし、ここ数日は様々な魔族に馬鹿にされ罵られる日々を送っていた。
祝福を受けたとはいえ子供である。
そのような日々に嫌気が差しても仕方あるまい。
「おい、お前の息子が荒れてるみたいだぞ。」
「息子?ああサキチか、、そんなんほっとけ。」
「気にならんのか?」
「あ?何を気にすんねん?」
「ジュニアがあんな感じであれば、俺なら張り倒してるがな。」
「なんでや?」
「不貞腐れてる奴なんて苛つくだろ?」
「、、、苛つくなぁ。」
「だからバシッと張り倒すんだよ。」
「、、、面倒くさいな。」
「それが親だろう?」
「、、、やめるか。」
「あ?なんだ?」
「いや、親子やめるかな。」
「はっはっはっはっ親子をやめる?そんなんで良いのか?」
「何となく欲しくて力も分けてやったが、イマイチやねんなぁ。」
「そりゃドワーフなんかそんなもんだぞ。今更気付いたのか?はっはっはっはっ」
「カタリーはこっちに呼んで、あいつらは帰すか。」
「そうしろ。獣人の嫁さんだけ大事にすりゃ良い。」
「そういや、お前の嫁はどこにおんねん?」
「ああ、別の砦だ。鬼神族は男と女は別々に住むことになってるんだ」
「へえ、変な文化やな。」
それは突然であった。
サキチとサヨは砦の出入りを禁止されウエストバンクに戻るよう伝えられた。二人とも「なぜだ!」と魔王に会いたがったがそれも叶わずに追い出される。
そして入れ替わるようにカタリーが砦に連れて来られた。カタリーは一切抵抗することもなく、ただ黙って従っていた。




