魔王とマーゴス
砦では、キナヴァリがマーゴスを連れて魔王ヨウヘイ達に紹介していた。
「魔王、この骨に魔法教えてもらえよ。」
「なんやねん急やな。誰?というかめっちゃ骨やん。」
「私はマジェイアのマーゴスである。」
「おん。ほいで。」
「だからマジェイアという魔法を操る魔族の大魔法使いマーゴスであるのだ。」
「だから何やねん!」
「だから、、、なんや、、、と言われても。」
「魔法が使えない魔王の為に連れて来てやったんだぞ感謝しろよ。」
「キナヴァリ、俺はメシを頼んだんやで。なんで骨に魔法を教えてもらうねん。」
「こいつはただの骨じゃねえぞ、俺と互角に渡り合ったんだ。魔王より強いかもな。」
「なんやと?キナヴァリと互角?ほんまかいな、、、」
「であれば私の魔法を受けてみるか?」
「なんやヤル気まんまんやんか。ええで、やろうや」
「ギヴン、マーゴスってあのマーゴスか?」
「そうでしょうねぇ。トリアは他にマーゴスという名のマジェイアを知ってますか?」
「いや知らんなぁ、、、ワシも初めて会うな。」
「そりゃそうでしょ。何百年も前の魔族ですからね。」
「魔王の次はワシがやり合おうか。」
「好きにすれば良い。私は片付けをしておきましょう。そういえばブロンドがいないですね。」
「ギヴン、それなら荷車に乗ってるぞ。」
ジュニアは、荷車で横たわるブロンドを降ろしギヴンに見せる。
「あらら、静かだと思っていたら死んだのですね。キナヴァリ様のお陰で戻ってこれたのだから感謝して貰わなければね。」
ギヴンはブロンドを端に寄せて食料を運び込んでいった。
外ではヨウヘイとマーゴスが対峙していた。
「魔王、死んでも恨まなぬようにな。」
「やってみろや骨!」
「スフィリブロンテス」
マーゴスが詠唱すると雷撃がヨウヘイを襲う。
見物しているトリアとジュニアも雷撃の威力に驚いていた。
マーゴスから放たれた雷撃はドドンっとヨウヘイを直撃した。
「キナヴァリ様、あれを受けたんで?」
「ああ。めちゃくちゃ痛いぞ。」
「でしょうねぇ。」
「俺もアレは受けたくないな、、、」
「ジュニア、あれを受けきって初めて俺と肩を並べる事ができるぞ。やってみろよ?」
「いいよ、親父じゃあるまいしアレじゃ魔王もヤバいんじゃないか?」
「どうだろうな。それならそれまでだろう。」
衝撃は地響きを伴って砦に広がる。
直撃したヨウヘイは、手をクロスにして防いだように見えるが、その場から動かずにいた。
「魔王、キサマの力も見てみたかったよ。残念だ。」
マーゴスは手応えを感じ勝利を確信した。
「いてぇーーーーーーー!!!」
叫ぶヨウヘイに、その場の全員が目を丸くして驚いている。
「!?」
「ほう耐えたか。それに気も失わないとは、、、俺よりも頑丈になったのか?」
「親父より硬いなんて、、、魔族最強だろ、、、」
「ぐわははは!すげぇぞ魔王!ワシとやった時とは大違いだな!」
「いてぇな!骨!なんやねんビリビリするやんけ!」
「えーー、、、ビリビリ、、、えーー、、、」
「次は俺の番やぞ!その王冠無くなっても知らんからな!」
ヨウヘイは青龍を具現化させる。
その青龍は砦に来た時よりもその容貌は凶暴さを増していた。鋭く伸びた爪、風格漂う角、口元はどんなものでも噛み千切れるような牙が見えていた。
「ま、参りました、、、魔王様。」
「ん??なんや?」
「参りました。降参です。」
マーゴスは青龍を見てそのまま跪き屈伏する。
「ええ、なんやねん。これからやんけ、、、もうシラケるわぁ。ほな、終わりかぁ、、、」
「はっはっはっはっ。魔王、強くなったなぁ!」
「そりゃそうや!お前らと毎日鍛えとんねん。」
「なら骨から魔法を教えて貰えりゃ、あっという間に最強じゃねえか?」
「、、、そうか。ほなそうしよか。」
「はっ。私が持つ全ての知識を魔王様へ。」
「はぁ、、、思いっきりやりたいなぁ。」
「も、申し訳ございません。私には耐えられぬかと、、、」
「骨やもんなぁ、、、まあ宜しくなマーゴス。」
「はっ!」
正式にマーゴスが魔王ヨウヘイの下へと入る。
鬼神族の四天王に加えて大魔法使いマーゴスが傘下となり、魔族達の勢力図は大きく傾いた。
「キナヴァリ、どこが弱いのだ?」
「ん?」
「キサマが魔王様は弱いと言ったではないか!」
「ん?あーー言ったなぁ、、、すまん。強くなってたな。はっはっはっはっ。」
「くっ、、、笑いごとではないわ!龍を具現化するなど聞いたこともない、、、森に来たのがキサマではなく魔王様であれば今頃亡骸となっていた、、、。」
「じゃあ、良かったじゃねえか。お前はまだ動いてんだから。」
「くっ、、、うるさい!」
デモンストレーションのような戦いを終えたヨウヘイの下に慌てた様子のサキチが駆け寄っていく。
「お、お父様!」
「なんや?」
「あ、あの、ブロンドが、、、」
「おう、ブロンドがなんや?」
「し、、、死んでます」
「おう。ほんで?」
「え?」
「なに固まってんねん。『ブロンドが死んでます』ほんでなんやねん?続きを話さんかい。」
「い、いえ、、、そのご報告に、、ドワーフのブロンドが、お父様が最初に力を分け与えた、、ブロンドが、、し、死んでいたので、、その、、」
「おぉ、そやったなぁ。やっぱりドワーフはドワーフやなぁ、、、はぁ勿体ないことしたな。」
「も、勿体ないというのは、惜しい者を亡くしたと?」
「は?なんでやねん。俺の魔力を使ったのに、簡単に死んでまうなんて俺が損したみたいやんけ。」
「そ、損ですか、、、」
「お前とサヨはブロンドより弱いよなぁ?」
「えっ、、、」
「サヨは捕まってたし、お前は何もしてへんし。」
「、、、」
「とりあえず、弱い奴はいらんぞ。お前らは俺の子供なんや、恥かかすなや。」
「は、はい。」
サキチは魔王の側を離れるとその日から地獄のような特訓をし始める。
ブロンドのようにならぬよう、自分だけでも魔王に認められる強さを得ようと必死に取り組んでいった。
「なにあれ?必死過ぎるでしょ。」
サヨは冷ややかな目でサキチを見ていた。
「サキチ王子はブロンドが死んで、強さを求めてるみたいですよ。」
「ブロンドもサキチも私に比べたら弱っちいからね。」
「あれ?王女はお強かったですか?」
「ギヴン言葉に気をつけなさいよ。私は魔王の娘なの、強くないワケないじゃない。」
「はははは。それは失礼しました。では、私もサキチ王子の相手をしなければなりませんので。」
「ふんっ。勝手にやってなさい。」
サヨは怠けているワケでも魔王から認められる事を放棄したワケでも無かった。
彼女の中にある独占欲は誰よりも強くそれが魔王に対する執着となっている。それはいまの王女という立場では不十分だと感じさせるようになる。いずれは妃となり魔王と永遠を誓いたいと考える程であった。
魔王とその子供達の歪な関係は続いてゆく。




