魔王四天王とスケルトス④
遺跡の残る不気味な森では、雷鳴と殴打の音が繰り返し流れていた。それは時に激しいハードロックのような縦揺れするリズムを刻んでいた。
鬼神族のキナヴァリとマジェイアのマーゴスは互いに相手の攻撃を全身で受け止めては持てる力を振り絞り反撃を繰り返す。
互いの攻撃の度に周囲のスケルトスは巻き込まれていき、二人の周りにはバラバラになった骨が散らばっていた。
何度同じ事を繰り返したであろう、そこら中に戦いの跡が刻まれていた。
「この筋肉野郎がぁ、、、」
「うるせえ骨野郎、、、」
マーゴスの底しれぬ魔力は遂に底を知る。
キナヴァリの強靭な肉体も今はただの重い肉となる。
互いに立っているだけで精一杯であった。
「ス、スフィリブロンテス」
マーゴスからは糸のように細い稲妻が飛ばずに落ちた。
「はっはっはっはっ、何だそのカスみたいな雷は!俺の、、か、、勝ちだ!」
キナヴァリは振りかぶってマーゴスの身体に拳をぶつける。
ペチッと音を立て骨に拳が当たる。
「くっくっくっくっ、蚊でも殺したのかキナヴァリ!我が、、ま、、魔法の前では、、、はぁはぁ。」
「は、話し終えろよ骨ぇ、、、はぁはぁ」
二人はそのまま前のめりに倒れる。
不気味な森ではスケルトス達の残骸の中心でマーゴスとキナヴァリが同時に気を失った。
パチパチ、パチパチ
焚き火の音が静かな森の中で聞こえる。
焚き火からのぼる煙には香ばしい肉が焼ける匂いも混じっていた。
「う、、、うぅ、、」
「おう目が覚めたか。」
「き、キサマ、、何をしているのだ、、、」
「腹減ったんだよ。俺はお前と違って食わなきゃ死ぬもんでな。」
マーゴスは満足気な顔で肉を頬張るキナヴァリを眺めていた。
「わ、、、私は負けたのか、、、」
折角取り戻した声と魔力で魔王になろうと立ち上がったものの、たった数日でその夢も潰えてしまいマーゴスは悲壮感を漂わせて呟いた。
「骨、黙って俯くなよ。辛気臭えんだよ。それでなくても骨なんだからよ。」
「、、、キナヴァリ、私の負けだ、、、核を奪い殺すがいい。」
「あぁっ?負け?勝負はついてねぇよ」
「な、何?」
「引き分けだって言ってんだ。いやぁ、久しぶりに外に出てみりゃ、お前みたいなワケ分からん奴がいるなんて、俺は運が良いなぁ。」
「引き分け、、、負けてはおらんのか、、、」
「そうだ。まあでもお前の魔法は全て受けきったからなぁ、、、そういう意味ではお前は俺に一生勝てないがな。」
「ふ、ふざけた事を、、、時があれば更なる進化を遂げた雷魔法で屠ってやるわ、、、」
「骨、あの雷より強え魔法が打てるってのか?」
「、、、今は打てぬ、、、しかし時間さえあれば習得出来る筈である!」
「なんだそれ、打てねぇのかよ。」
「今は打てぬだけだ!時間さえあれば、私ならば必ず習得してみせるわ!お前が来なければ、、、忌々しい奴め。それに新たな魔王とやらも私の魔法にかかれば、、、」
「じゃあ魔王のとこに来りゃ良いじゃねえか。」
「はぁ?な、なんだと?」
「だから魔王のとこに来いよ。」
「な、なんでそうなる?」
「時間が欲しいんだろ?俺もその進化した魔法を食らってみてえし。」
「いやいやいや、ここで時間を過ごし完成したらいの一番にキサマに叩き込んでやる!」
「うーーん、、、でもお前弱いからなぁ、、、完成する前に誰かに殺されるだろ?」
「舐めるなキナヴァリ!我にはこのスケルトス達が
、、、」
マーゴスが辺りを見回す。そこには本当の亡骸となったスケルトスの残骸が散らばっていた。
「キサマ!同胞たちを、、、よくも、、キサマーー!!」
「、、、いや、半分以上はお前だろ。」
マーゴスは雷撃に巻き込まれていった同胞たちを思い出していた。
「、、、、私、一人か、、、」
「だな。」
「さてと」
キナヴァリは立ち上げり食料を荷車に乗せていく。ボロボロになった遺跡で食料庫が無事だつたの奇跡かも知れない。
キナヴァリはあらかた積み終わると、その荷の上に座る。
「おい骨。」
「なんだ?」
「なんだじゃねえよ、運べって。」
「なに?何故私が」
「なぜってお前飛べんだろ?だから運べよ。」
「知るか!勝手に持ってゆけ!」
「お前がブロンドを殺したからこうなったんだぞ、俺はへとへとなんだよ。」
「、、、あのドワーフか。」
「そうだよ、あいつに運ばせるつもりだったのによぉ、、、それに魔王も待ってんだよ早くしろよ。」
「、、、新たな魔王、、、そいつはやはり強いのか?」
「あ?魔王が強い?、、、いや弱いな。」
「なっ!?よ、よ、弱いだと!?」
「あぁ、俺の方がまだ強えな。」
「何故そのような奴の言う事を聞いておるのだ!」
「別に言う事を聞いてるワケじゃねえよ。あいつの真っ直ぐな欲に感化されただけだ。」
「真っ直ぐな欲、、、」
「とりあえず難しい話しは後にしようぜ。俺は疲れてんだよ。」
「分かった、、、キサマらの魔王とやらをこの目で見定めてくれる。」
「はぁ、、、どこに目があんだよ。」
「うるさい!黙っておれ!」
マーゴスは荷車ごとキナヴァリを持ち上げ、浮遊していく。
「おっと忘れてた、あそこに転がってる奴も乗せろ。」
「なんだ折角飛んだというのに、、、ドワーフか?」
「ああ、ほらあいつ魔王の側近だって喚いてたからな持って帰ってやんなきゃな。」
「ならば早くしろ。」
キナヴァリは胸にぽっかりと穴が空き絶命したブロンドを荷車に乗せてマーゴスと共に砦へと戻っていった。
「おい骨、方向が間違ってんぞ。あっちだよ。」
「くっ、、、もっと早く言え馬鹿者。」
魔王ヨウヘイが知らぬ間に、魔族マジェイアの大魔法使いマーゴスがその一味となる。人数だけでいえばブロンドが死にその欠員をマーゴスが埋めたのだが、実力だけでみれば凄まじい戦力が加わった事になる。
魔王四天王鬼神族のキナヴァリとスケルトスの中から復活したマジェイアの大魔法使いマーゴスが手を組み魔王の傘下に入ったというニュースは、再びハコニワに衝撃を与えるのであった。




