魔王四天王とスケルトス②
朝靄の中キナヴァリとブロンドは様子のおかしな不気味な森を遠目に見ていた。
「キナヴァリ、あれはどう見ても臨戦態勢ではないか?」
「んー、、、最近はギヴンに任せていたがこのような報告は受けた事がないな。」
不気味な森の中に石垣で作られた防壁に囲まれた場所が出来ており、物見やぐらには武装したスケルトスが監視をしている。
「私達が来ることを予期していたかのようだが?」
「んー、、、俺達ではなく何か別の魔族と対峙しているのかも知れんな。」
「行くのか?」
「ん?」
「いや、あの状況のスケルトスから食料を奪いに行くのかと聞いているんだ。」
「はっはっはっ行くに決まってるだろう。どんな格好をしてても骨は骨だぞ。はっはっはっ。」
「、、、簡単にいくとは思えんな。」
「考えてるだけでは、メシは食えんぞ。さぁ行くぞブロンド。」
キナヴァリは不穏な空気を気にかけもせずに正面から防壁へと近付いていく。
物見やぐらのスケルトスは直ぐに気が付くと念波で全員にキナヴァリの姿を共有する。
彼らにとって鬼神族も憎悪の対象であった。共有されたキナヴァリの姿に彼らの中に芽生えた復讐の炎が燃え上がっていく。
ドンドン、ドンドン
武具を打ち鳴らす度にスケルトス達の戦意が高まっていく。
ドンドン、ドンドン
「キナヴァリ、やはりこの雰囲気は只事ではないぞ。」
「うるせえなブロンド。スケルトスに怯えているならすぐに魔王から見捨てられるぞぉ。」
「くっ、、、怯えてなどおらんわ!」
そんな会話をしているキナヴァリ達に向けて数本の矢が飛んでくる。
パキッパキッっとキナヴァリに当たった矢は刺さることなく折れて地面に落ちる。
「な?こんな攻撃の何が怖いんだ?」
「だから怖がってなどおらん!」
ブロンドは矢の勢いを見て安心したのかキナヴァリを置いて防壁に向かい飛んでいく。
「見ておれキナヴァリ!私一人でもスケルトス達を蹴散らしてくれるわ!!」
防壁に向かうブロンドを物見やぐらのスケルトスが弓矢を放つ者に映像を共有する。
弓矢を放つ者の肩には魔族長の手が置かれており、怪しげな妖気が彼を包んでいた。
「放て」
魔族長はそう言うと肩に置いた手に力を込める。
妖気は矢に集まりビュンっと勢いよく射出された。
その矢はブロンドの視界にも入っていた。
普段のブロンドであれば、用心深く躱していただろう。しかしキナヴァリに当たり刺さりもせずに落ちた光景や、キナヴァリからの煽りもあり強さを誇示しようとその矢を正面から受け止めようと構えていた。
矢に纏わりつく妖気は鏃に集中していく。
その違和感に気づいたのも束の間、ブロンドの胸に妖気を纏う矢が突き刺さるとそのまま貫通する。
ブロンドは声をあげる間もなく羽を奪われた鳥のように地面に落下して倒れた。
「はぁ、ドワーフは鍛えてもドワーフか、、、なんと柔な身体なんだ。」
キナヴァリはその様子を呆れ顔で眺めていた。
倒れたブロンドに歩み寄り様子を見るが、貫通した場所は心臓付近であり魔族であれば核を撃ち抜かれたと同じである。
「こりゃダメだな。」
キナヴァリはすっと立ち上がりブロンドを見捨てて防壁に向かって歩き始めた。
「おい!骨!とりあえずメシ出せば許してやるぞ!」
防壁に向かい叫びながら近づいていく。
防壁の内側では、再び矢を放とうと構えている。
魔族長は、二人の射手に手を置き力を込めていた。
「放て」
二人は交互に矢を放っていく。
妖気を纏った矢が次々と射出され防壁の外のキナヴァリへ向かっていった。
「ほう、やる気か」
キナヴァリは真っ直ぐに飛んでくる矢を打ち払おうと腕を振りかぶる。そして振り下ろそうとした瞬間、鏃に妖気が集約されたのが視界に入った。
キナヴァリは振り下ろす動作をやめて、咄嗟に身体を捻らせて躱す。しかし一本の矢はキナヴァリの頬を掠めていた。
外れた矢はズバンっズバンっと鋭く大きな音と共に地面に深く深く刺さっていく。
掠っただけだったキナヴァリの頬もぱっくりと切れており、裂傷から流れ出た血は首を通り越し肩を濡らしていた。
「、、、小賢しい、、、何者かが味方しているのか?」
キナヴァリはスケルトスに何か大きな後ろ盾でも出来て違う魔族が攻撃を仕掛けてきたと思っていた。なぜなら過去の経験やギヴンの報告からスケルトスにこのような芸当が出来る筈がないと知っているからである。
キナヴァリの顔ははみるみる紅潮し血管が浮き出てくる。込み上がる怒りは身体を震わせていた。
「誰だか知らんが、俺の顔に傷を付けたこと後悔させてやる!お前ら皆殺しだ!!」
キナヴァリは防壁に向かい猛烈な勢いで走り出し、血管が浮き出た腕を振りかぶる。
勢いそのままに防壁となっている石を殴り壊した。
凄まじい衝撃音と共に壊れた石が飛散する。
キナヴァリは内側へ足を踏み入れ雄叫びをあげる。
「おおーーーー!!」
ビリビリとした緊迫した空気がスケルトス達を包む。
「同胞たちよ怯むな!!」
空気をかき消したのはスケルトスの魔族長の一喝であった。スケルトス達は震える身体を抑え、再び臨戦態勢を取った。
その一喝はスケルトスだけではなく、キナヴァリにも届いていた。
キナヴァリは怒りを鎮め冷静に声の主を見上げる。
「王冠の骨、、、話せるのか。」
「ディアモス魔族長キナヴァリ!我はマジェイア最期の大魔法使いマーゴスである!!今宵貴様を地獄へ屠る者なり!」
王冠を被りマントを靡かせるスケルトス魔族長マーゴスは高らかに名乗りを上げる。
黒く重い雲からは稲光が走り爆音の雷鳴を轟かせ、マーゴスの復活を讃えているかのようであった。




