魔王四天王とスケルトス①
カチャカチャ、コツコツ、カチャカチャ、コツコツ
不気味な森の中で魔族スケルトスが戦いに備えて武具を揃えていく。
魔族長は遺跡の中に何か真新しい武具や素材がないかと探しに入る。
骨になった腕でカチャカチャと辺りを探す。
幾重にも重なった木片をどかしていくと、今迄発見していなかった地下へと続く階段を見つける。
何も見えない暗闇の中、戸惑う事もなく階下へと降りていく。スケルトスは目で見る事はできない。念波で意思の疎通を図る特殊な能力は、見るという事についても特殊であった。骨が鳴り響く音やサーモグラフィーのように感じる周囲の温度変化は彼らの意識の中に空間の状況を鮮明に映し出していた。
コツコツ、カチャカチャと階下へ降りていく魔族長。
地下へ着くとそこには手付かずの財宝が山のように積まれていた。
魔族長は財宝には目もくれず、いや目はないのだが無関心にという事である。目もくれずに、財宝の奥にある異様な熱反応に意識を集中させていた。
コツコツ、カチャカチャとその熱に向かい歩き出す。
その熱は豪華な装飾が施された宝箱の中に入っていた。ギィっと宝箱を開けるとそこにあるのは王冠であった。
魔族長は躊躇することなくその王冠を自身の頭蓋にはめた。
魔族長にとっては稲妻が全身の骨を貫くような衝撃を受けた感覚があった。
王冠を付けて数分間、魔族長はその場に立ち尽くしていた。
カチャ、、、カチャ、、、コツ、、、コツ、、、
魔族長は指をゆっくりと動かしていく。
「、、、、」
カチャカチャ
指で王冠を触り、衝撃で少しズレた王冠をより深く頭蓋にはめ込んだ。王冠はまるで最初からその場にいたかのようにぴったりと魔族長の頭蓋にはまった。
「、、、この力は、、、」
「!?」
「は、話せる、、、話せる!!」
魔族長は王冠が持つ不思議な力により言葉を発する事が出来た。それはこの魔族長にとって世界を一変させるような出来事である。
なぜなら彼は生前、ハコニワ全土に名を轟かせたマジェイアという魔法を駆使し圧倒的な力を有する魔族だったからだ。意識の中や念波でいくら詠唱しようが習熟した魔法を発動することは出来なかった。
極めた魔法が一切使えず、不得手な肉弾戦ばかりの日々は苦痛と悔恨の日々であった。
魔族長は宝箱の側にあったマントを纏い地上へと出ていき骨になった手を天に向ける。
「ブロンテ」
手から稲妻が天に向かい放たれる。
魔族長は遠のいていた感触に酔いしれていた。
曇天の空は触発されたのか雷雲となり不気味な森には稲光が何度も何度も落ちていく。
「同胞たちよ!我らの復讐の時である!!」
カタカタカタカタとスケルトスは進化した魔族長を称えるように手を叩き応えていた。
キナヴァリとブロンドは徐々に北上していく。
「キナヴァリ、どれぐらいの量を持ち帰るのだ?」
「まあ、あるだけだな。」
「あるだけ?どのような量なのか分からんが、手で持ちきれるのか?」
「持つ?何言ってんだ、骨が作ってる荷車ごと貰うんだよ。荷車が山積みになってるの見ただろ?」
「荷車ごと、、山積み、、、おお、砦の隅に置いてあったやつか。あれはスケルトスが作っていたのだな。」
「そうだ、何回奪っても馬鹿の一つ覚えみたいに作り続けるんだよ。」
「スケルトスとは謎の多い魔族と聞いていたが、肉を加工したり荷車を作ったりと戦いとは無縁の魔族だな。」
「そらそうだろ。魔族とはいえただの骨だからな。バキっと折って核を潰せば終わりだ。」
「そんな容易に倒せるのか?」
「正面のアバラを開けば終わりだ。」
キナヴァリは両手で開く素振りを見せていた。
「骨だけとはいえ、そのような簡単に開くとは思えないが。何かコツはあるのか?」
「コツ?はぁ、ブロンドお前は細かい所ばかり気にするなぁ。こりゃ早死にするタイプだな。」
「ふんっ!用心に越したことはないんだ!お前こそ寝首をかかれんよう気をつけるのだな。」
「はっはっはっはっ俺が?はっはっはっはっ。」
「けっ、笑いたければ笑え!後悔しても知らんぞ。」
北上していく道程は険しいものでなない。
砦からは一泊野宿をすれば良いだけで、ヨウヘイやブロンドのように空を飛ぶならあっという間に着く。
「何故飛んで行かんのだ?」
「ん?ブロンド、これもまた一興ではないか。こうして歩き回るのも久しぶりなんだ付き合え。」
「チッ。早く魔王様の下へ戻りたいというに。帰りは絶対に飛ぶからな。」
「うーーん、、、まあ考えておこう。」
とそんな感じでキナヴァリは魔族長の任が解けた今、反動で自らの足で行くのが楽しいのだ。それに、ブロンドは知らないが鬼神族はそもそも飛べない。
もし飛ぶなら巨躯のキナヴァリと大量の食料が積まれた荷車ごと飛ばなければならないのだが、ブロンドにそのような力は無い。
「考える?いや絶対だ!」
「はいはい。」
そんな不毛なやり取りをしていく内に日は落ちて野営をする。とはいえ適当な場所でゴロっと横になるだけである。
キナヴァリは持参した握り飯を頬張り、少し酒を入れればぐつすりと眠りについた。
ブロンドは一人焚き火を見ては恋しい魔王の事を想っていた。
「はぁ、、、なぜ私がオニなんかと野宿しなければならないのか、、、魔王様のお側に戻りたい、、、」
ブロンドのため息が炎を揺らし夜は更けていく。
カチャカチャ、コツコツ
スケルトス達はキナヴァリやブロンドが近づいてきている事などは知らずに黙々と戦の準備を進めていた。
「そうだ!もっと武器を作るのだ!そして頑丈な防壁を積み上げるのだ!魔族を総べる魔王は我である!虐げられた過去を力に変えて、我々はこの世界を手に入れるのだ!」
ドンドンドンドン
スケルトス達は手にした武具を打ち鳴らし呼応する。
骸となってからというもの、様々な魔族に奪われ続けていた。食料、武具、道具、、、いや一番奪われたものは彼らの誇りである。
声に出せず、涙も流せずにいた無言の日々は彼らの心を復讐の業火で焼き尽くすには十分過ぎる時間であった。
カチャカチャコツコツ
カチャカチャコツコツ




