魔王に対抗するエルフ達④
エトナ火山で難なく魔族ファイティオの魔族長ペラード達を倒した精霊ミントは、アフテアにマグマの力を授けた。
それは実際に地底を流れるマグマとアフテアの想像力が相俟って凄まじい力を授かっていた。
精霊ミントは、ギルドマスターであるソウジロウの番だと言い美しい羽を羽ばたかせてソウジロウの胸元で浮遊していた。
「精霊様、私はただの人間です。アフテアさんのようにはいかないと、、、」
「ふふふ、分かってるわよ。だからソウちゃんはコレをプレゼントするのよ。」
ミントはソウジロウが帯刀している剣の周りを浮遊する。
「正しい力の使い方をしてきたのね。」
「え?剣ですか?女神の祝福を受けましたので、多少は剣技を心得ていますが、、、」
「そういう意味じゃないわよ。ソウちゃんの正義の為に使ってきたのねって言ってるのよ。」
「そうですか、、、女神の祝福を受けた後はそうであるように肝に命じておりましたので。」
「でも今は少し濁ってるわね。」
ミントは胸元で浮遊する。
「、、、濁ってますか、、、」
「復讐ならやめときなさい。」
「、、、」
「気持ちは分かるわよ。でもソウちゃんの剣はそうやって振ってきてないでしょ?誰かの為に振ってきたんでしょ?」
「、、、はい。」
「じゃあ、私はそれを祈ってコレをプレゼントするわ。」
ミントは剣の柄に手を置き光で剣全体を包んだ。
剣にはみるみる焼印のように炎のゆらめきが刻印されていった。
「はいおしまい。ちゃんと使いなさいよ。」
「はい。改めて肝命じます。」
ソウジロウは柄を握り絞めていた。
レイシアの肩に戻ったミントは、二人に「あと始末しなきゃ」と残る魔族ファイティオ達の討伐を命じる。アフテアはマグマの力を宿したその身体で、ソウジロウは剣に纏うマグマの力でパノエンチャントやエンチャント達を次々に撃破していく。
魔族長ペラードと側近テクテクを失ったファイティオは今迄よりも統率が無くなり右往左往としているだけであった。放つ魔法も散発するだけで、力を得た二人の敵では無かった。
アフテアとソウジロウが殲滅を終えたのは、エトナ火山に入り込んでから僅か一時間の事であった。
エトナ火山の山頂に全員が揃う。
「族長、私この力を魔王のいない平和な世界の為に使います。」
「ええそうしましょう。私もエルフだけではなく魔族に苦しめられている種族の為に戦います。」
「精霊様。」
「なあに?ソウちゃん。」
「私は森を出ます。」
ミントはレイシアの肩に乗り、ソウジロウが何を考えているのかを感じ取っていた。
「うん。良いと思うわよ。」
「ありがとうございます。」
「きっとソウちゃんを必要とする人達で溢れてるわね。」
「はい。この力が必要な人達の為にハコニワを巡ろうと思います。」
ソウジロウはレイシアとアフテアにも別れを告げて、里で待つティアや他の獣人達を伴ってハコニワを巡っていく事となった。それは途方もない厳しい旅となるのであった。
エルフの皆はソウジロウ達一行を見送っていた。
「ソウジロウさん、残ってくれたら凄い戦力だったのにな。」
「今のアフテアなら大丈夫ですよ。それに、私も居ますから。」
「ほんとですかぁ〜?放浪しないでくださいよっ。」
「ふふふ。それはミントさん次第かもですね。」
その後エルフ達は、土地を奪われ逃げてきた種族達を森やエトナ火山に住まわせて永きに渡り魔族達と戦っていく事になる。
いつしかアフテアは、【火炎の姫】と呼ばれエルフや他の種族からは救世主や英雄として称えられ、魔族からは憎き邪魔者としてハコニワに名を残していく。
エルフが魔王や魔王に触発された魔族に対抗する為に絶大な力を得た事などまったく知らない魔王ヨウヘイは今日も鬼神族のキナヴァリ達と稽古と宴の毎日を送っていた。
「魔王!その程度の魔力量で魔の王とは誇大広告もいいとこだな。はっはっはっはっ」
「それじゃあ詐欺だな!」
キナヴァリとトリアが、寝そべるヨウヘイを笑っていた。
「ほんまに、お前らバケモノ過ぎるやろ、、、しんどいわぁ」
「それを言うならば二人について行けてる魔王様も十分バケモノかと。」
寝そべるヨウヘイに水を渡すのはギヴンである。
「はぁ、、そうかぁ。」
ドワーフのブロンドも側に仕えていた。
「魔王様タオルです。」
「おう、すまん。」
鬼神族のギヴンとドワーフのブロンドは共に執事のようにヨウヘイに仕えている。しかしブロンドはギヴンや他の鬼神族がヨウヘイとの距離感が近付くのをよく思ってはいなかった。それは魔王の祝福を最初に受けた事が大きな理由であり、自分こそが側近中の側近であると自認しているからだ。
ヨウヘイのもとへ別の者達が駆け寄っていく。
「お父様、私達もご一緒したいです!」
「そうですお父様、俺もオニなんかに負けてられません!」
ヨウヘイは、サキチを鬼神族の砦に呼び元々捕らわれていたサヨも含め共に暮らしていた。
メガミノオトシモノであるヨウヘイの魔力には劣るものの、ブロンドやサキチやサヨもドワーフには似つかわしくない魔力を持っており強くなりたいという純粋な欲望は彼らを大いに成長させていた。
「アホ、俺が勝てへんのにサキチで勝てるワケあらへんがな。」
ヨウヘイは水を飲み干し立ち上がると、再びキナヴァリとトリアに挑んでいく。
「王子、王女、私がお相手しましょう。」
「ギヴン望む所だ!」
「ブロンドくん、君は良いのかい?」
「舐めた口を、、、やってやろうではないか。」
「良いですねぇ。ちゃんと殺気が込められていますよ。」
「その嫌味な笑顔を消してくれるわ。」
「それは楽しみですねぇ。」
ドワーフの3人は、日々ギヴンや他の鬼神族達と稽古を続けていった。
そんな日々を過ごす中、ヨウヘイ達は更なる身体強化を自身にかける事が出来るようになっていた。
魔族達とは筋肉の付き方から全く違うヨウヘイ達にとってはどれだけ筋肉量を増やそうが縮まる事の無い差をこの力で補う事ができた。
そして、その能力は四天王との差も埋めていく事になる。それは他の魔族から見ればバケモノと言っても良いほどの進化である。
バキィ!
「当たった!当たったぞ!」
ギヴンの頬にサキチの拳があたる。
喜ぶサキチをギヴンは思いっきり蹴り飛ばした。
「たった一度でそんなに喜ぶなど愚の骨頂ですね。」
「それにしては、笑顔が消えてるじゃないかギヴン。」
「そう見えますか?ブロンドくん。私はまだまだ余裕なんですがねぇ。」
「なら、今度は私がその顔に叩き込んでやろう。」
砦の中では続々とバケモノが生まれていった。




